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301226更新 (薬局)平成29 年度に実施した個別指導指摘事項(溶け込み)

改訂後 ⑴ 依存性連用により薬物依存を生じることがあるので 観察を十分に行い 用量及び使用期間に注意し慎重に投与すること また 連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により 痙攣発作 せん妄 振戦 不眠 不安 幻覚 妄想等の離脱症状があらわれることがあるので 投与を中止する場合には 徐々に

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査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

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Transcription:

2009 年 7 月 6 日 厚生労働大臣舛添要一殿厚生労働省医薬食品局安全対策課長森和彦殿ファイザー株式会社 ( 日本法人 ) 代表取締役社長岩崎博充殿 薬害オンブズパースン会議 代表鈴木利廣 162-0022 東京都新宿区新宿 1-14-4AMビル 4 階 電話 03(335 0)0607 FAX 03(5 363)7080 e-mail yakug ai@t3.ri m.or.jp URL://w ww.yakug ai.gr.jp 禁煙補助剤 チャンピックス の安全対策に関する要望書 第 1 要望の趣旨 以下の事項を求めます 1 添付文書を以下のとおり改訂すること (1) 抑うつ気分 不安 焦燥 興奮 行動の変化 自殺念慮 自殺などの有害事象が報告されていることについて 警告 欄に記載する (2) これらの症状が本剤を使用しながら喫煙を継続している患者で報告されていることを明記し 禁煙によって起こったと思わせるような現在の添付文書の不適切な記載を改める (3) 車の運転等危険を伴う機械の操作をしないよう患者に指導する旨を記載する (4) 本剤の適応をニコチン置換療法が使えない場合に限定する 2 米国 FDA が行っている取り組みも参考に リスク軽減の取り組みを強化すること 3 適切な比較群があり 薬剤投与と重症の精神神経系障害との前後関係が明確になるデザインでの薬 剤疫学研究を早急に実施すること ~ 1 ~

第 2 要望の理由 1 本剤の概要と重大な有害事象の存在 (1) チャンピックスの概要ファイザー社 ( 日本法人 ) の禁煙補助剤 チャンピックス ( 一般名 : バレニクリン酒石酸塩 ) は ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助 の効能 効果で 2008 年 1 月に販売承認 4 月に薬価収載 ( 健保等一部限定使用 ) 5 月に販売が開始されました 本剤は 市販直後調査 の指定品目となっています 従来の禁煙補助剤は ニコチン置換療法剤で ニコチンパッチが標準剤として用いられており 他にニコチンガムがあります これに対し チャンピックス は α4β2 ニコチン受容体部分作動剤という 新しい作用機序の内服剤です 米国ではファイザー本社により 2006 年 5 月にチャンティックス (Chantix) の商品名で販売が開始されています 日本では 欧米のデータを用いたブリッジング臨床開発が行われ 販売承認されています (2) 精神神経障害の有害事象 2006 年 5 月 米国で発売された際の添付文書には すでに感情障害 攻撃性など精神神経障害 の有害事象の記載がありましたが それらが人々に意識されるようになったのは市販後の 2007 年 夏頃からです インターネットで服用者の質問に答えていたアントニオ ハウエル医師が添付文書に 精神神経障害の記載が多いことに気付き そのことをコメントし それを見た患者家族などから相談 が持ち込まれました さらに 2007 年 9 月ミュージシャンのカーター アルブレヒトが服用開始 1 週後に異常行動を起こし それに恐怖を感じた隣人に射殺されるという事件があり バレニクリンの 有害事象に一気に注目が集まりました [1] そして 2006 年 5 月から 2007 年 12 月までの間 米国 FDA は 227 件の自殺行動や自 殺念慮 397 件の精神病の可能性 525 件の攻撃性といった米国内の事例報告を受けています [2] 2008 年 1 月 ファイザー本社は添付文書を改訂し 警告欄に 精神神経症状 の項を新設し 行動異常 興奮 抑うつ 自殺念慮 自殺行為などの有害事象 ( 副作用 ) について 注意喚起しました [3] 日本で販売承認後 情報公開されたファイザー社 ( 日本法人 ) の チャンピックス申請資料概要 に よれば 欧米で行われたバレニクリンを 1 年間継続使用したランダム化比較試験では 中止に至った 精神障害は プラセボ群では 2.4%(126 人中 3 人 ) でしたが バレニクリン群では 3.6 倍の 8. 0%(251 人中 20 人 ) にのぼりました その内容として 不眠 ( バレニクリン群 8 人対プラセボ群 1 人 ) 異常な夢 (6 人対 0 人 ) うつ病 (5 人対 1 人 ) 感情の高ぶり (3 人対 0 人 ) が報告されています 神経系の障害も 9 人対 1 人でした [4] 欧米で行われた 4 つの第 Ⅲ 相ランダム化比較試験を合計すると バレニクリンでは自殺による死亡 が 1 人のほか 重篤なものとして自殺念慮 精神病性障害 急性精神病 大発作型けいれんがそれぞ れ1 件 計 5 件報告されています しかし プラセボでは統合失調症の1 件だけでした [5] なお 日本では市販後 2008 年 12 月 31 日までに 医療機関 薬局および製薬企業から チ ャンピックスによる副作用が疑われる症例 として 自殺念慮 自殺既遂 異常行動などの精神障害 ~ 2 ~

が25 件 意識消失 意識低下 昏迷などの神経系障害が18 件報告されています [6] また 2008 年 5 月 8 日から11 月 7 日の6か月間に実施された 市販直後調査 ( 病院 185 7 施設 診療所 8903 施設 ) の結果では 有害事象 ( 副作用 ) は985 例 1536 件であり その内精神 神経系障害が330 例 425 件で胃腸障害に次いで多く報告されました 精神 神経系障害が発現し 症状消失までの期間が確認できた204 件中 84 件 (41%) が 2 週間以上症状が持続しています 報告された重篤な症例は36 例 61 件であるが 精神 神経系障害が23 例 38 件と 3 分の 2 を占め 希死念慮を有するうつ病 3 件 自殺念慮 2 件 自殺既遂 1 件 異常行動 2 件 暴力関連症状 1 件 精神障害 2 件 意識消失 2 件 意識変容状態 2 件などが報告されています [7] チャンピックス はニコチン受容体の部分作動剤ですが ニコチン受容体は単純なものでなく 多くのタイプがあり それぞれが薬理作用をもち ドパミンなど多くの神経伝達物質の放出を促進し 精神神経機能に様々な影響を及ぼします [8][9] 本剤の精神障害の有害事象は 本剤がニコチン受容体の部分作動剤であり 同時に受容体拮抗剤でもあるという薬理作用からも 因果関係が考えられるものです (3) 報告されている有害事象と本剤の有用性本剤服用によっても禁煙が難しいことは 本剤の臨床試験での持続禁煙率が20% 台 -40% 台であることにも示されています その一方で 前記のとおりの重大な有害事象の報告があります そもそも 日本での本剤やニコチンパッチの比較臨床試験では プラセボ ( 偽薬 ) でも20% 以上の禁煙成功率が示されているように くすりに頼らなくとも禁煙できることも多いのです [10] 本剤についてファイザー社 ( 日本法人 ) は ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙補助薬という性質上 バレニクリン投与に伴うリスクは最小限でなければならない [11] と記載していますが 報告されている重篤な有害事象は 本剤の有効性にとうてい引き合うものではありません 本剤には ニコチン剤 ( ニコチン置換療法剤 ) という代替標準剤があります ニコチン依存症を克服するにあたって薬物治療の果たす役割は先にあげたように大きいものではありませんが 薬物療法を考慮する場合はニコチン剤が第 1 選択剤です そして 重篤な副作用が危惧される本剤は ニコチン剤が使えない場合に限定して使用されるべきです なお これに関連して 本剤は保険給付上 ニコチン依存症管理料の算定に伴って処方された場合に限り薬剤料が算定できることになっています そしてニコチン依存症管理料の算定には 初回算定日より 1 年間を超えた日からでなければ 再度算定できないという条件が付けられています 本剤の使用をニコチン剤が使えない場合に限定した場合 この規定は支障となり得ますので 支障がないようにする必要があります 2 日米の添付文書の差異 (1) 米国の添付文書米国の添付文書 (2008 年 5 月改訂 ) では 以下のとおり記載されています ( 太字は原文のまま )[12] < 注記 : 2009 年 7 月 1 日 FDA はファイザー本社に対し これを更に 黒枠警告 (Boxed Warnings) 欄に記載するよう求めました [19]> ~ 3 ~

[ 警告精神神経症状 ] チャンティックスによる治療を受けている患者には 重篤な精神神経症状が起こっている 喫煙を中止した患者については ニコチンの禁断症状と合併している可能性のある事例もある しかし これらの症状のいくつかは 喫煙を継続している患者でも起こっている チャンティックスによる治療を受けているすべての患者は 行動の変化 不安 抑うつ気分 自殺念慮 自殺行動を含む精神神経症状について観察が行われるべきである これらの症状及び従前から存在する精神疾患の悪化は チャンティックスを服用して喫煙をやめようとしている患者の一部について 市販後調査で報告されている 統合失調症 躁うつ病 臨床的抑うつなどの重い精神疾患を有する患者は チャンティックスの市販前調査には参加しておらず これらの患者に対するチャンティックスの安全性と有効性は まだ確立されていない 不安 抑うつ気分 患者の通常と異なる行動の変化が観察される場合や 患者に自殺念慮 自殺行動があらわれた場合には 患者はチャンティックスの服用を中止し 医療機関にただちに連絡するべきであることを 患者や介護者に指導すること (2) 日本の添付文書 一方 日本の添付文書 (2009 年 5 月改訂 ) では 以下の通り記載されています [13] [ 使用上の注意 2. 重要な基本的注意 ] (2) 禁煙は治療の有無を問わず様々な症状 ( 不快 抑うつ気分 不眠 いらだたしさ 欲求不満 怒り 不安 集中困難 落ち着きのなさ 心拍数の減少 食欲増加 体重増加等 ) を伴うことが報告されており 基礎疾患として有している精神疾患の悪化を伴うことがある 本剤を使用して禁煙を試みた際にも 因果関係は明らかではないが 抑うつ気分 不安 焦燥 興奮 行動の変化 自殺念慮及び自殺が報告されているため 本剤を投与する際には患者の状態を十分に観察すること また これらの症状 行動があらわれた場合には本剤の服用を中止し 速やかに医師等に連絡するよう患者に指導すること この日本の添付文書の記載は 極めて不明確 不十分なものです まず 日本ではこれらの記載が 添付文書で 使用上の注意 の 2. 重要な基本的注意 に書かれていますが 医療用医薬品の記載要領 ( 平成 9 年薬発 607 号 ) において警告欄記載の要件として設定された 副作用が発現する結果極めて重大な事故につながる可能性があって 特に注意を喚起する必要がある場合 に該当するので 警告欄 での記載が適切です また 日本の添付文書には 禁煙が精神神経症状を起こすことが長々と記載されているのみで 米国のファイザー本社の添付文書には記載がある 本剤使用中にも喫煙を継続している患者でも精神神経症状が報告されていることが明記されていません 同じファイザー社の添付文書であるにもかかわらず 日米で大きな差がある ダブルスタンダード ( 二重基準 ) の状況にあり 早急な改善が必要です 3 安全対策の日米差 (1) 米国 FDA 及び ISMP( 薬物療法安全性研究所 ) の対応 ~ 4 ~

自発的有害事象報告制度 (AERS) におけるバレニクリンの報告数が突出して多く FDA は 200 7 年 11 月 本剤の安全性レビュー ( 有害事象に着目して精査 ) を行っているとの安全性注意喚起を行いました [14] 2008 年 2 月 FDA は本剤について医療従事者 患者 市民に対する安全性注意喚起のため 公衆衛生勧告 チャンティックスに関する重要情報 を発出しました [15] そこでは有害事象がバレニクリンによる可能性が強まったので販売企業に添付文書の改訂を求めたこと 薬局を通じて患者に対する注意喚起の徹底を図るため販売企業とともにメディケーション ガイドを作成中とも記載されています 2008 年 5 月 FDA は公衆衛生勧告を改訂し 添付文書が改訂されメディケーション ガイド [16] も確定したことを伝え 一層の安全性注意喚起を図りました [17] 2009 年 1 月 1 5 日には FDA 医薬品安全ニューズレター [18] で 本剤を取り上げています 2009 年 7 月 1 日 FDA は FDA 再生法で得た安全確保のための権限に基づき ファイザー本社に対し精神神経障害のリスクを 添付文書で最も重大な警告である 黒枠警告 (Boxed Warnings) に記載するよう指示しました [19] このように FDA はさまざまな手段で警告の強化 リスク低減に取り組み 安全対策が進められています ISMP は 2008 年 5 月 FDA に報告されたバレニクリンの有害事象を分析し 精神神経障害のほか 多岐にわたる副作用リスクについて警告しています そのなかで2006 年 5 月から2007 年 12 月の間に報告された事故につながる有害事象が173 件あり うち28 件は交通事故であることから 本剤使用中に機械類を扱わないよう FDA による強い警告を求めています [2] (2) 日本の対応の遅れ日本で本剤が販売承認されたのは2008 年 1 月であり 審査段階で米国において精神神経障害などの有害事象が問題になり FDA が安全性注意喚起を行ったことも伝わっていました それにもかかわらず 厚生労働省は承認条件を付すこともせず本剤を承認し その後米国のような取り組みもなされていません 早急にリスク軽減のために取り組みを強化すべきです 4 薬剤疫学研究の実施 禁煙補助剤 チャンピックス について 有害事象との因果関係が確定する以前でも医療従事者 患者への適切 十分な注意喚起がなされるべきことは前記のとおりです 同時に チャンピックス と精神神経障害などの有害事象との因果関係解明のため薬剤疫学的 分析疫学的研究の実施が急がれます この研究は インフルエンザ治療剤タミフルでの経験に学び チャンピックス と精神神経障害などの有害事象の関係に的を絞り 適切な比較群があり 薬剤投与と有害事象との時間的な前後関係が明確になるデザインで行う必要があります 以上 ~ 5 ~

文献 1. http://whyquit.com/pr/082506.html 2. http://www.ismp.org/docs/vareniclinestudy.asp 3. http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2008/021928s007lbl.pdf 4. チャンピックス申請資料概要 A3051037 試験 (2.7.6 p471) http://www.info.pmda.go.jp/ 新薬の審査報告書等に収載 5. チャンピックス申請資料概要 A3051028 試験 (2.7.6 p307) A3051036 試験 (p348) A3051035 試験 (p405) A3051037 試験 (p471) 6. http://www.info.pmda.go.jp/fukusayou/menu_fukusayou_attention.html ( 平成 16 年度以降の報告 ( 新掲載様式 )> 説明事項を了解 ( はい をクリック)> 検索条件設定 > 医薬品名に チャン ピックス を入れ検索実行 > 青字の 症例 および 件数 をクリック ) 7. ファイザー株式会社チャンピックス市販直後調査結果のお知らせ 2009 年 1 月 8. 末丸克矢ほか 日薬理誌 119 295 2002 9. Paterson, D ほか Progress in Neurobiology 61, 75, 2000 10. 浜六郎 薬のチェックは命のチェック誌 33 号 2009 年 1 月 11. チャンピックス申請資料概要 (2.5.6 p115) 12. http://www.pfizer.com/files/products/uspi_chantix.pdf 13.http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/400079_7990003F1028_1_05.pdf 14. http://www.fda.gov/newsevents/newsroom/pressannouncements/2007/ucm109032.htm 15. http://www.fda.gov/drugs/drugsafety/publichealthadvisories/ucm051118.htm 16. http://www.fda.gov/downloads/drugs/drugsafety/ucm088569.pdf 17. http://www.fda.gov/drugs/drugsafety/publichealthadvisories/ucm051136.html 18. http://www.fda.gov/downloads/drugs/drugsafety/drugsafetynewsletter/ucm107318.pdf 19. http://www.fda.gov/drugs/drugsafety/postmarketdrugsafetyinformationforpatientsandprovide rs/drugsafetyinformationforheathcareprofessionals/ucm169986.htm ~ 6 ~