株式保有会社の相続税評価の緩和

Similar documents
2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

1. 改正のポイント (3) 影響改正が株価に与える影響は下表の通り また現在及び将来の株価が変動するため事業承継計画全体へ影響が出る 改正が株価に与える影響 改正内容 会社規模の判定基準 ( 大会社及び中会社の範囲拡大 ) 株式保有特定会社の判定基礎 ( 株式及び出資の範囲拡大 ) 類似業種比準価

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

有償ストック・オプションの会計処理が確定

「恒久的施設」(PE)から除外する独立代理人の要件

税金読本(14-2)株式の評価

税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

いよいよ適用開始 投信制度改革 トータルリターン通知制度

平成 29 年度税制改正解説資産課税 納税義務の見直し 1 国外財産に関する相続税 贈与税の納税義務の範囲が見直されます 被相続人が日本国籍を有しない者であって 一時的滞在 ( 2) をしていたものを除く 2

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

第 5 章 N

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

年金型生命保険の二重課税問題についての論点整理

( 相続時精算課税適用者の死亡後に特定贈与者が死亡した場合 ) (6) 相続時精算課税適用者 ( 相続税法第 21 条の9 第 5 項に規定する 相続時精算課税適用者 をいう 以下 (6) において同じ ) の死亡後に当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者 ( 同条第 5 項に規定する 特定贈与者

開示府令改正案(役員報酬の開示拡充へ)

第7条 著しく低い価額の対価て財産の譲渡を受けた場合においては当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第3章に特別の定めがある場合にはその規定により評価した

2011年度税制改正大綱(相続・贈与税)

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

Q. 確定申告は必要ですか? A. 今回の配当によるみなし譲渡損益が特定口座の計算対象とならない場合 または源泉徴収の無い特定口座や一般口座でお取引いただいている場合につきましては 原則として確定申告が必要になります 申告不要制度の適用可否を含め 株主の皆様個々のご事情により対応が異なりますので 具

<TAC> 無断複写 複製を禁じます ( 税 18) 相上 (8)C10-1 相続税法 上級 演習 8 テキスト 2 第 8 回 - 解答 点 - 第一問 問 1 持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があった場合において 税負担の不当減少を防 止

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

新規文書1

税制改正大綱―資産課税・相続税等の見直し

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

(4) 今月下旬に所得税法施行令を改正するとともに 法令解釈通達を発遣し 上記のとおり 保険年金 に係る所得税の取扱いを変更いたします 取扱い変更後 所得税の還付の手続きが可能となります なお 納税者の方々には 次の点にご注意いただく必要があります 所得税が納めすぎとなっていた場合の還付手続きには

服部法律事務所ニュース 遺言書について その4(相続税)

平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 事例から検討する事業承継対策の限界 バックナンバーは 当事務所のホームページで参照できます 1

(2) 源泉分離課税制度源泉分離課税制度とは 他の所得と全く分離して 所得を支払う者 ( 銀行 証券会社等 ) がその所得の支払の際に 一定の税率で所得税を源泉徴収し それだけで所得税の納税が完結するものです 1 対象となる所得代表的なものとして 預金等の利子所得 定期積金の給付補てん金等があります

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

また 国外財産調書制度は 2013 年 12 月末の国外財産から調書の提出義務が始まりましたので 5,000 万円超の国外財産を保有の方はご留意ください これに関連して 国税庁より 2013 年 11 月 15 日に FAQ が発表されており FAQ は国税庁のホームページで閲覧等できます 資産税ニ

税金の時効 税務では 時効のことを更正 決定処分の期間制限 = 除斥期間 といいます その概要は 以下の通りです 1. 国税側の除斥期間 ( 通則法 70) 1 期限内申告書を提出している場合の所得税 相続税 消費税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 3 年 2 無申告の場合

2017年度税制改正大綱 資産税関連の主な改正点

 

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

Microsoft Word - News_Letter_Tax-Vol.43.docx

上場株式等の住民税の課税方式の実質見直し

役員給与の見直し(10月施行分)のポイント

例題 B さんは 被相続人 A から H22 年 7 月 7 日に C 社上場株式 50,000 株を相続した この年の C 社株式の株価推移は以下の通りである このとき C 社株式の相続税評価額は? ( 終値月平均値 ) 4 月平均 5 月平均 6 月平均 7 月平均 7/7 終値 500 円 5

第 6 講更正の請求 Q1 更正の請求と修正申告は どのような点で違いがあるか? Q2 通常の更正の請求 ( 通則法 23 条 1 項 ) はどのような場合に認められるか? Q3 特別の更正の請求 ( 通則法 23 条 2 項 ) はどのような場合に認められるか? Q4 通常の更正の請求と特別の更正

て 次に掲げる要件が定められているものに限る 以下この条において 特定新株予約権等 という ) を当該契約に従つて行使することにより当該特定新株予約権等に係る株式の取得をした場合には 当該株式の取得に係る経済的利益については 所得税を課さない ただし 当該取締役等又は権利承継相続人 ( 以下この項及

法関係法人税法関係 zeimu QA テーマ分類別索引 法人税

時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税され かつ その所得税は相続税の課税価格の計算上被相続人の債務として控除されていることにより 所得税と相続税の負担の調整は済んでいますので この特例の適用は受けられません 2 取得費に加算される金額平成 26 年度の改正前は 相続財産である土地等の一部を譲渡し

用語の意義 この FAQ において使用している用語の意義は 次のとおりです 用語 意義 所得税法 ( 所法 ) 所得税法 ( 昭和 40 年法律第 33 号 ) をいいます 所得税法施行令 ( 所令 ) 所得税法施行令 ( 昭和 40 年政令第 96 号 ) をいいます 改正所令 所得税法施行令の一

措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

上場株式等の住民税の課税方式の解説(法改正反映版)

2017 年度税制改正大綱のポイント ~ 積立 NISA の導入 配偶者控除見直し ~ 大和総研金融調査部研究員是枝俊悟

平成  年(オ)第  号

平成30年公認会計士試験

(イ係)

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

事業承継支援について

3 減免の期間及び割合 下表の左欄の期間に終了する事業年度又は課税期間に応じて右欄の減免割合を適用します H27.6.1~H 減免割合 5/6 納付割合 1/6 H28.6.1~H 減免割合 4/6 納付割合 2/6 H29.6.1~H 減免割合 3/6 納

プルータスセミナー 新株予約権の税務について 株式会社プルータス コンサルティング 平成 18 年 12 月 7 日

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

過納金とは 納付納入の時にはそれに対応する租税債務が存在していたが 結果的に不適法な納付納入となった場合における地方公共団体の徴収金のことであり 1 納付納入の時には一応適法であったものが その申告 更生 決定又は賦課決定が誤って過大にされていたため 後になって減額更正 減額の賦課決定又は賦課決定の

例えば毎年 子供 2 人に対し110 万円づつ贈与し続けるのであれば 10 年間で2,200 万円の財産を無税で子供に移すことができます 贈与税の基礎控除額を上手く活用する方法だけでも 計画的に行うことがどれだけ大切なのかご理解いただけると思います とにかく財産を所有している人が高齢になればなるほど

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

平成19年12月○日

改正 ( 事業年度の中途において中小企業者等に該当しなくなった場合等の適用 ) 42 の 6-1 法人が各事業年度の中途において措置法第 42 条の6 第 1 項に規定する中小企業者等 ( 以下 中小企業者等 という ) に該当しないこととなった場合においても その該当しないこととなった日前に取得又

〇本事例集は 平成 31 年 3 月を期限とした個人の確定申告について 国税通則法関連 ( 所得税 の納税地を含む ) の 誤りやすい事例 について取りまとめています 〇本事例集は 誤りやすい事例 を載せた後に 正しい解釈 処理方法を提示しています なお 無用 な文字数 ページ数の増加を避けるため

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

<4D F736F F D C8E7396AF90C582CC82A082E782DC82B E31312E3195CF8D58816A>

相続税の大増税に備える! 不動産による最新節税対策

事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

Microsoft Word - zeisyou9記載の手引.doc

< D91E F15F8EE18E528EF597542E706466>

[Q1] 復興特別所得税の源泉徴収はいつから行う必要があるのですか 平成 25 年 1 月 1 日から平成 49 年 12 月 31 日までの間に生ずる所得について源泉所得税を徴収する際 復興特別所得税を併せて源泉徴収しなければなりません ( 復興財源確保法第 28 条 ) [Q2] 誰が復興特別所

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

間の初日以後 3 年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間 6 高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例事業者 ( 免税事業者を除く ) が簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に国内における高額特定資産の課税仕入れ又は高額特定資産に該当する課税貨物の保税地域からの引取り ( 以下 高

1 仮想通貨の売却問保有する仮想通貨を売却 ( 日本円に換金 ) した際の所得の計算方法を教えてください ( 例 )3 月 9 日 2,000,000 円 ( 支払手数料を含む ) で4ビットコインを購入した 5 月 20 日 0.2 ビットコイン ( 支払手数料を含む ) を 110,000 円で

【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

Microsoft Word - 最新版租特法.docx

発行日取引の売買証拠金の代用有価証券に関する規 同じ ) であって 国内の金融商品取引所にその株券が上場されている会社が発行する転換社債型新株予約権社債券 ( その発行に際して元引受契約が金融商品取引業者により締結されたものに限る ) 100 分の80 (7) 国内の金融商品取引所に上場されている交

平成 30 年度改正版 平成 30 年 6 月 1 日から平成 31(2019) 年 5 月 31 日までの間に終了する事業年度に ついては 減免割合が 2/6 に変更となりましたので 30 年度改正版をご使用くださ 1 減免の対象 ( 変更はありません ) 詳細は次ページをご覧ください 1 資本金

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

Microsoft Word - c014r.docx

その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

債務控除できるもの できないもの 1. 概要相続税の申告で 債務控除できるものや葬式費用には 被相続人名義の銀行借入金や未納の所得税等の公租公課 未払医療費等のいわゆる債務の金額 葬式費用が挙げられます ( 相法 13) 斎場へのタクシー代や式後の飲食代なども含みますが 通常必要とされる範囲内とされ

Invincible

<4D F736F F D C A838A815B E63389F1534F8F5D8BC688F581698DC58F49816A2E646F63>

Microsoft Word - _ doc

第 1 編第 章評価明細書第 1 表の 37 第 章評価明細書第 1 表の 第 1 ひな型 第 章

( ロ ) 出資等減少分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る出資等減少分配 ( 所得税法第 24 条に定めるものをいいます 以下 本 ( ロ ) 出資等減少分配に係る税務 において同じです ) のうち本投資法人の税務上の資本金等の額に相当する金額を超える金額がある場合には みなし配当 ( 計

録された保有個人情報 ( 本件対象保有個人情報 ) の開示を求めるものである 処分庁は, 平成 28 年 12 月 6 日付け特定記号 431により, 本件対象保有個人情報のうち,1 死亡した者の納める税金又は還付される税金 欄,2 相続人等の代表者の指定 欄並びに3 開示請求者以外の 相続人等に関

(1) 改正の内容 内容 現行制度 特例制度 納税猶予対象株式 納税猶予税額 発行済議決権株式総数の 3 分の 2 に達するまでの株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係る贈与税の全額 相続の場合 : 納税猶予対象株式に係る相続税の 80% 取得した全ての株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係

2. 改正の趣旨 背景 国内に住所を有しないことにより相続税 贈与税の課税を免れる租税回避行為を抑制するため 平成 12 年度改正 ( 相続人 受贈者の国籍による納税義務判定の導入 ) 平成 25 年度改正 ( 相続人 受贈者が日本国籍なしの場合の課税強化 ) が行われてきた 平成 29 年度改正で

事業承継税制の全体像は ( 図表 1) の通りである ( 図表 1) 事業承継税制の全体像 経営者 1 代目 経営者 2 代目 一括贈与 大臣認定 贈与税の課税 贈与税の納税猶予の適用 相続税の納税猶予制度と同様 雇用確保を含む 5 年間の事業継続を行い その後も株式を継続保有 生前贈与により株式の

相続税と所得税の二重課税容認へ?

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

投資主の皆様へ 平成 29 年 3 月 マリモ地方創生リート投資法人 第 1 期分配金の税務上の取扱いに関するご説明 拝啓平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます さて 本投資法人は 平成 29 年 2 月 14 日開催の役員会において 第 1 期 ( 平成 28 年 12 月期 ) の (A)

株主各位 証券コード 7022 平成 29 年 6 月 23 日 大阪市北区中之島三丁目 3 番 23 号 取締役社長上田 孝 第 6 期期末配当の税務上の取扱いに関するご説明 拝啓日頃より格別のご高配を賜り厚く御礼申しあげます さて 当社は 平成 29 年 6 月 23 日開催の第 6 期定時株主

フェア・ディスクロージャー・ルール細則案の概略

公社債税制の抜本改正(個人投資家編)<訂正版>

<4D F736F F D FC194EF90C C98AD682B782E >

Transcription:

税制 A to Z 2013 年 6 月 19 日全 6 頁 株式保有会社の相続税評価の緩和 大会社 の株式保有割合 25% 以上 から 50% 以上 に改正 金融調査部研究員是枝俊悟 [ 要約 ] 2013 年 ( 平成 25 年 )5 月 27 日 国税庁は 財産評価基本通達 を一部改正した これは 大会社 における株式保有特定会社の判定基準を改正するものである 取引相場のない株式の相続等をした際には 会社の規模に応じて 原則として類似業種比準方式 純資産価額方式 併用方式などにより株式の評価を行う ただし 株式保有特定会社 に該当する場合については 純資産価額方式または S1+S2 方式により評価を行うことになる 従来は 大会社 においては株式保有割合が 25% 以上の場合に株式保有特定会社としていたが 改正後は 50% 以上の場合に株式保有特定会社とする この改正は 平成 25 年 5 月 27 日以後に相続等が行われた場合に適用される また 平成 25 年 5 月 26 日以前に行われた相続等について 平成 25 年 5 月 27 日以後に申告をする場合にも適用することができる 既に申告書を提出済であっても 過去に遡って改正後の基準を適用することにより 相続税等が納めすぎになる場合は この通達の改正を知った日から 2 ヵ月以内に所轄の税務署に更正の請求をすることにより 納めすぎの税額が還付される ( ただし 法定申告期限から既に 5 年 ( 贈与税の場合は 6 年 ) を経過している相続税等については 減額できない ) 1. 従来の株式保有特定会社の財産評価の概要 取引相場のない株式の評価の概要相続税法では 相続 遺贈 贈与 ( 以下 相続等 ) により取得した財産の評価は時価によるという原則を示しており 個別の財産の具体的な評価方法は 主に国税庁の財産評価基本通達 ( 評価通達 ) により定められている 取引相場のない株式の評価については 財産評価基本通達により 会社の規模に応じて 原則として 類似業種比準方式 純資産価額方式 併用方式の 3 方式のいずれかにより算出する 株式会社大和総研丸の内オフィス 100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号グラントウキョウノースタワーこのレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが その正確性 完全性を保証するものではありません また 記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります 大和総研の親会社である 大和総研ホールディングスと大和証券 は 大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です 内容に関する一切の権利は 大和総研にあります 無断での複製 転載 転送等はご遠慮ください

2 / 6 類似業種比準方式とは その会社と類似の業種を営んでいる会社の株価から評価額を計算する方式である 純資産価額方式は その会社の純資産から評価額を計算する方式である 併用方式はこの 2 つの方式を併用する ( 一定割合を類似業種比準方式により計算し 残りの割合を純資産価額方式で計算する ) 方式である 原則としてこれらの 3 種類の方式で評価額を求める ( このような原則的評価方法が適用される会社を一般評価会社という ) が 会社の資産の保有状況や営業状態等が一般評価会社とは異なる特定評価会社の場合は 会社の種類に応じて純資産価額方式などで計算する なお 株式の保有者が同族株主等以外の場合は これらの方法のほか 配当還元方式 ( 配当額から株式の評価額を計算する方式 ) を選択することも可能である 図表 1 取引相場のない株式の評価方式の概要 一般評価会社 特定評価会社 同族株主等 ( 原則的評価方式 ) 類似業種比準方式純資産価額方式併用方式のいずれか 純資産価額方式など ( 出所 ) 大和総研金融調査部制度調査課作成 同族株主等以外の株主 左記のほか 配当還元方式を選択可能 左記のほか 配当還元方式を選択可能 株式保有特定会社の評価 ( 従来の基準 ) 類似業種比準方式においては 配当 利益 純資産価額 ( 簿価ベース ) の 3 要素を類似業種と比較することで 株価を評価する 一方 純資産価額方式においては 会社資産の相続税評価額 ( すなわち 時価ベース ) をもとに株価を評価する このため 会社資産に占める株式等の割合が高く かつ含み益が生じている状況においては 時価ベースを用いる純資産価額方式よりも 簿価ベースを用いる類似業種比準方式の方が 一般的に評価額が低くなりやすい この開差がこれを利用した租税回避行為の原因にもなっていることから 課税の公平の観点から そのような開差の是正及び評価の一層の適正化を図る目的で 1 特定評価会社の一類型として 株式保有特定会社 の区分が平成 2 年 8 月 3 日付の通達により新設 ( 平成 2 年 9 月 1 日以後の相続等について適用 ) された 2 具体的には 財産評価基本通達 189(2) において 会社の総資産に占める株式および出資の価 1 平成 24 年 3 月 2 日 東京地方裁判所 民事第 3 部 判決 平成 21 年 ( 行ウ )28 号 ( 以下 東京地裁判決 ) における被告 ( 国 ) の主張部分より引用 2 このほか 特定評価会社には比準要素数 1 の会社 土地保有特定会社 開業後 3 年未満の会社等 開業前または休業中の会社 清算中の会社があり それぞれ評価方法が定められている

3 / 6 額の合計額の割合 ( 株式保有割合 ) が 大会社では 25% 以上の場合 中会社 小会社では 50% 以上の場合に 株式保有特定会社 とされた ( 従来の基準 ) 株式保有特定会社 に該当する場合の株式の評価額は純資産価額方式または 図表 2 に示す S 1 +S 2 方式で計算される( 納税者がいずれかを選択する ) このような方式で計算することとした理由は 株式保有特定会社の株式 の評価方法としては その資産価値をよく反映し得る純資産価額方式を原則的な評価方法として定めた しかしながら 上記の基準 ( 筆者注 : 株式保有割合のこと ) により抽出される株式保有特定会社の株式には その会社の営業の実態に応じ実質的に類似業種比準方式の適用も受けられるよう 納税者の選択により S 1 +S 2 の計算によっても評価できるものとしている 3 とされていた 図表 2 S 1 +S 2 方式における評価額 評価額 =S 1 +S 2 S 1 : 株式保有特定会社の株式について原則的評価方式 ( 類似業種比準方式 純資産価額方式 併用方式のいずれか ) を一定の条件の下で当てはめて計算した額 S 2 : 以下の計算式で求められる額 株式等の価額の合計額 ( 相続税評価額 ) 株式等の価額の 株式等の価額の - 合計額 - 合計額 ( 相続税評価額 ) ( 簿価 ) 法人税等相当率 ( 現在は 42% ) 課税時期の発行済株式数 平成 24 年 4 月 1 日以後の相続等において 42% とされている ( 出所 ) 財産評価基本通達をもとに大和総研金融調査部制度調査課作成 2. 株式保有割合が 25% 以上である大会社の株式の評価額についての裁判 平成 15 年度に発生した相続により 相続人の一部 ( 以下 X) が 自らの取得した会社 ( 以下 A 社 ) の株式について 株式保有特定会社 にあたらないものとして相続税額等を算出し申告した しかし 国は A 社の株式を 株式保有特定会社 にあたるものとして相続税額等を算出し増額更正などの課税処分を行ったところ X はこれを不服として提訴を行った A 社は大会社に相当し 国側の主張によると A 社の株式保有割合は 25.9%( 株式保有特定会社の判定上の割合は 1% 未満の端数を切り捨てて 25%) であり 財産評価基本通達 189(2) に従えば 株式保有特定会社 にあたることになる 3 山田弘 国税庁資産評価企画官補佐 相続税財産評価通達 ( 株式関係 ) の一部改正の解説 ( 商事法務 No.1229 pp.102-105 1990 年 ) より引用

4 / 6 しかし Xは 被告 ( 筆者注 : 国 ) が評価通達 189 の (2) に定める基準の合理性の根拠として掲げる法人企業統計 ( 筆者注 : 国内の営利法人等の活動実態についての統計 ) に基づく数値でも 有価証券が総資産に占める割合は 本件相続が生じた平成 15 年度において 17.39% であり 25% から大きく離れた数値とはいえない 4 として 25% という株式保有割合は 平成 15 年度における法人企業の統計的な平均値から大きく離れた数値ではないと主張した その上で 例えば 株式保有割合 50% 超というようなその数値だけで持株会社と分類することに合理性のある数値を用いるのならばともかくとして 株式保有割合 25% 以上という数値のみをもって持株会社と位置づけることは通常はない数値であり かつ 一般的な企業における株式保有割合と著しくかい離していることが明らかでもない数値をもって 一律に株式保有特定会社としてしまうという基準は 相当ではない 5 などとして財産評価基本通達 189(2) の非合理性を訴え 課税処分の取り消しを主張した 東京地裁判決平成 24 年 3 月 2 日 東京地方裁判所 ( 以下 東京地裁 ) は X の訴えを認め 国の課税処分を取り消す判決を出した 東京地裁は 評価通達の平成 2 年改正がされた当時においては ( 中略 ) 評価通達に定めるところにより算定した株式保有割合が 25% 以上である大会社につき 一律に 資産構成が類似業種比準方式における標本会社に比して著しく株式等に偏っているものとして株式保有特定会社に該当するものと扱うことには ( 中略 ) 合理性があったものというべきである 6 と 平成 2 年の通達改正時の基準に合理性があるものと判断した しかし 評価通達の平成 2 年改正がされた後 平成 9 年の独占禁止法の改正によって従来は全面的に禁止されていた持株会社が一部容認されることとなり ( 同法 9 条 4 項 1 号参照 ) これを契機として 商法等において 持株会社や完全親子会社を創設するための株式交換等の制度の創設 会社の合併に関する制度の合理化 会社分割制度の創設といった企業の組織再編に必要な規定の整備が進められるなど 本件相続の開始時においては 評価通達の平成 2 年改正がされた当時と比して 会社の株式保有に関する状況は大きく変化したものというべき 7 とした その上で 少なくとも本件相続の開始時においては 評価通達に定めるところにより算定した株式保有割合が 25% 以上である大会社の全てについて 一律に 資産構成が類似業種比準方式における標本会社に比して著しく株式等に偏っており その株式の価額の評価において類似業種比準方式を用いるべき前提を欠くものと評価すべきとまでは断じ難いものというべきである そうすると 少なくとも本件相続の開始時を基準とすると 評価通達 189 の (2) の定めの 4 5 6 7

5 / 6 うち 大会社につき株式保有割合が 25% 以上である評価会社を一律に株式保有特定会社としてその株式の価額を同通達 189-3 の定めにより評価すべきものとする部分については いまだその合理性は十分に立証されているものとは認めるに足りないものといわざるを得ない 8 とした したがって A 社が株式保有特定会社に該当するか否かについて 株式保有割合に加えて その企業としての規模や事業の実態等を総合考慮して判断 9 した上で その株式の価額の評価において類似業種比準方式を用いるべき前提を欠く株式保有特定会社に該当するものとは認めるに足りないものというべきである 10 とした 東京高裁判決国は控訴したが 平成 25 年 2 月 28 日 東京高等裁判所 ( 以下 東京高裁 ) は 控訴を棄却する判決を出した 国が上告しなかったため 判決は確定した 東京高裁は 大会社の株式保有割合の基準について 平成 2 年当時は合理性を有していたという東京地裁の判断を是認した その上で 本件相続時 ( すなわち平成 15 年度 ) においてもなお合理性を有していたか検討を行い 評価通達 189 の (2) の定めのうち 大会社につき株式保有割合が 25% 以上である評価会社を一律に株式保有特定会社と定める本件判定基準が本件相続開始時においてもなお合理性を有していたものとはいえない 11 と判断した したがって 東京地裁判決と同様に A 社について株式保有割合に加え 企業規模 事業の実態等を総合考慮した上で 類似業種比準方式を用いるべき前提を欠く株式保有特定会社に該当するとは認められないと判断した 本件に限らず 平成 15 年度において 大会社につき株式保有割合 25% 以上をもって株式保有特定会社とする基準を 合理性を有していたものとはいえない という東京高裁の判断が下されたため 通達を改正する必要性が生じた 3. 財産評価基本通達の改正 東京高裁の判決を受け 国税庁は 現下の上場会社の株式等の保有状況に基づき 財産評価基本通達 189(2) における大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準を改正した 具体的には 大会社において株式保有特定会社とする株式保有割合を 25% 以上 から 50% 以上 に改正した 8 9 10 11 平成 25 年 2 月 28 日 東京高等裁判所 判決 平成 24 年 ( 行コ )124 号 より引用

6 / 6 図表 3 株式保有特定会社とする株式保有割合の判定基準 改正前 改正後 大会社 25% 以上 50% 以上 中会社 50% 以上 50% 以上 小会社 50% 以上 50% 以上 ( 出所 ) 財産評価基本通達より大和総研金融調査部制度調査課作成 国税庁は 高裁判決においては 株式保有割合に加えて その企業としての規模や事業の実態等を総合考慮して判断するとしているが これは 改正前の評価通達 189(2) における大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準 ( 以下 大会社の判定基準 という )(25% 以上 ) が合理性を有していたものとはいえないことを前提としているためであり 大会社の判定基準 が合理性を有するものであれば 企業としての規模や事業の実態等を総合考慮することまでを求めるものではないと解される ( 下線部は筆者による ) 12 としている この改正は 平成 25 年 5 月 27 日以後に相続等が行われた場合に適用される 平成 25 年 5 月 27 日以後に相続税等の申告をする者が 平成 25 年 5 月 26 日以前に相続等により取得した財産を評価する場合にも適用することができる さらに 本改正は判決に伴うものであるため 通則法施行令第 6 条第 1 項第 5 号に規定する更正の請求の事由に該当し 過去に遡って改正後の評価通達を適用することにより 過去の相続税等の申告の内容に異動が生じ相続税等が納めすぎになる場合には 通則法第 23 条第 2 項第 3 号の規定に基づき 本改正を知った日の翌日から 2 月以内に所轄の税務署に更正の請求をすることができる なお 法定申告期限等から既に 5 年 ( 贈与税の場合は 6 年 ) を経過している相続税等については 法令上 減額できない ( 本改正に係る改正後の評価通達を適用できない ) ことに留意する 13 としている 以上 12 国税庁資産評価企画官資産課税課 財産評価基本通達の一部改正について 通達等のあらましについて ( 情報 ) ( 平成 25 年 5 月 28 日 ) の別添 ( 以下 国税庁情報 ) より引用 http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hyoka/130528/pdf/01.pdf 13 国税庁情報より引用