第 6 講更正の請求 Q1 更正の請求と修正申告は どのような点で違いがあるか? Q2 通常の更正の請求 ( 通則法 23 条 1 項 ) はどのような場合に認められるか? Q3 特別の更正の請求 ( 通則法 23 条 2 項 ) はどのような場合に認められるか? Q4 通常の更正の請求と特別の更正
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1 第 6 講更正の請求 Q1 更正の請求と修正申告は どのような点で違いがあるか? Q2 通常の更正の請求 ( 通則法 23 条 1 項 ) はどのような場合に認められるか? Q3 特別の更正の請求 ( 通則法 23 条 2 項 ) はどのような場合に認められるか? Q4 通常の更正の請求と特別の更正の請求はどのような関係にあるか? 1 更正の請求制度の基礎 1.01 修正申告と更正の請求との差異 内容 修正申告 (= 増額修正申告 ) 平成 30 年度 所得税の計算期間 ( 暦年課税 ) 平成 31 年度 確定申告期間 1/1 12/31 2/16 3/15 申納税義務の成立告 訂正 増額 更正の請求 平成 30 年度 所得税の計算期間 ( 暦年課税 ) 平成 31 年度 確定申告期間 1/1 12/31 2/16 3/15 申納税義務の成立告 訂正 減額 法的効力 修正申告 1
2 更正の請求 国税通則法 23 条 1 項及び 4 項 1 納税申告書を提出した者は 次の各号のいずれかに該当する場合には 税務署長に対し その申告に係る課税標準等又は税額等 につき更正をすべき旨の請求をすることができる 4 税務署長は 更正の請求があつた場合には その請求に係る課税標準等又は税額等について調査し 更正をし 又は更正をすべき理由がない旨をその請求をした者に通知する Question 減額修正申告を認めず 更正の請求によるべきこととされているのはなぜか? 1.02 更正の請求の手続 国税通則法 23 条 3 項更正の請求をしようとする者は その請求に係る更正前の課税標準等又は税額等 当該更正後の課税標準等又は税額等 その更正の請求をする理由 当該請求をするに至つた事情の詳細その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならない 2
3 国税通則法施行令 6 条 2 項更正の請求をしようとする者は その更正の請求をする理由が課税標準たる所得が過大であることその他その理由の基礎となる事実が一定期間の取引に関するものであるときは その取引の記録等に基づいてその理由の基礎となる事実を証明する書類を法第 23 条第 3 項の更正請求書に添付しなければならない その更正の請求をする理由の基礎となる事実が一定期間の取引に関するもの以外のものである場合において その事実を証明する書類があるときも また同様とする Question 詳細な更正請求書を納税者に提出させるのは どのような理由によるものか? 宇都宮地判昭和 57 年 3 月 4 日税資 122 号 478 頁 ( 参考 ) 更正の請求は 一定の事項を記載した書面を提出してすべきものである ( 国税通則法 23 条 3 項 ) から 仮に原告主張のように所定の期間内に口頭で更正の請求をしたとしても 同条にいう更正の請求があったものと解することはできない 2 通常の更正の請求 国税通則法 23 条 1 項納税申告書を提出した者は 次の各号のいずれかに該当する場合には 当該申告書に係る国税の法定申告期限から5 年 以内に限り 税務署長に対し その申告に係る課税標準等又は税額等 ( 更正 があった場合には 当該更正後の課税標準等又は税額等 ) につき更正をすべき旨の請求をすることができる 一当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかつたこと又は当該計算に誤りがあったことにより 当該申告書の提出により納付すべき税額 ( 当該税額に関し更正があつた場合には 当該更正後の税額 ) が過大であるとき 二号 三号省略 3
4 2.01 適用対象者 Question 国税通則法 23 条 1 項の括弧書内の下線部を読んだ上で 申告書を提出した納税者に対し て増額更正処分がなされた場合において それを不服として 更正により増額された税額について更正 の請求をすることは認められるべきか? 東京地判平成元年 7 月 26 日判タ 732 号 217 頁 ( 参考 ) 申告による納付すべき税額が申告の際の誤り等それ自体によって過大であった場合に更正がその過大な申告に係る税額を前提として他の更正要素による更正をした場合には 更正による税額の中に過大な申告に係る税額が含まれることになることから なお更正の請求を許すこととしたまでであ る 2.02 請求期限 請求期限 ( 通則法 70 条 1 項 ) 国税通則法 70 条 1 項 3 項 1 次の各号に掲げる更正決定等は 当該各号に定める期限又は日から5 年 を経過した日以後においては することができない 一更正又は決定その更正又は決定に係る国税の法定申告期限 3 前 2 項の規定により更正をすることができないこととなる日前 6 月以内にされた更正の請求に係る更正 は 前 2 項の規定にかかわらず 当該更正の請求があつた日から6 月を経過する日まで することができる 4
5 更正の請求の期間制限と更正の期間制限との対称性 請求期限切れ 防止措置 ( 通則法 70 条 3 項 ) < 趣旨 > 更正の除斥期間の終了間近になされた更正の請求に税務当局が適切に対応できるように < イメージ図 > 2.03 請求事由 以下のどちらかの事由により申告書に記載された税額が過大であること Question 次の各例は 法律の規定に従っていなかったこと に該当するか? 収入が 100 しかないのに 収入が 120 あると勘違いしたまま 税金の計算を行った 法律上は 罰金として支払った額は控除できない とされているにもかかわらず 控除した 5
6 法律上 税金の計算をしてマイナスの額が出た場合には翌年度の税金の計算上控除するものとする とされているにもかかわらず 翌年度の申告の際 前年度のマイナスを控除するのを忘れていた 法律上 控除できる とされている罰金の額を控除するのを忘れていた < まとめ > 3 特別の更正の請求 ( 後発的事由に基づく更正の請求 ) 国税通則法 23 条 2 項納税申告書を提出した者又は第 25 条 ( 決定 ) の規定による決定 を受けた者は 次の各号のいずれかに該当する場合 ( 納税申告書を提出した者については 当該各号に定める期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る ) には 同項の規定にかかわらず 当該各号に定める期間において その該当することを理由として同項の規定による更正の請求 をすることができる 一その申告 更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決 ( 判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む ) により その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したときその確定した日の翌日から起算して2 月以内二その申告 更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算に当たってその申告をし 又は決定を受けた者に帰属するものとされていた所得その他課税物件が他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正又は決定があつたとき当該更正又は決定があつた日の翌日から起算して2 月以内三その他当該国税の法定申告期限後に生じた前 2 号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき当該理由が生じた日の翌日から起算して2 月以内 6
7 国税通則法施行令 6 条 1 項法第 23 条第 2 項第 3 号 に規定する政令で定めるやむを得ない理由は 次に掲げる理由とする 一その申告 更正又は決定に係る課税標準等 又は税額等 の計算の基礎となった事実のうちに含まれていた行為の効力に係る官公署の許可その他の処分が取り消されたこと 二その申告 更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に係る契約が 解除権の行使によって解除され 若しくは当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され 又は取り消されたこと 三帳簿書類の押収その他やむを得ない事情により 課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき帳簿書類その他の記録に基づいて国税の課税標準等又は税額等を計算することができなかつた場合において その後 当該事情が消滅したこと 四省略五その申告 更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に係る国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈その他の国税庁長官の法令の解釈が 更正又は決定に係る審査請求若しくは訴えについての裁決若しくは判決に伴って変更され 変更後の解釈が国税庁長官により公表されたことにより 当該課税標準等又は税額等が異なることとなる取扱いを受けることとなったことを知つたこと 3.01 特別の更正の請求と通常の更正の請求との関係性 国税通則法 23 条 2 項にいう 同項の規定による更正の請求 とは 国税通則法 23 条 2 項の機能 3.02 適用対象者 7
8 3.03 請求事由 前提要件 後発的事由の発生日の翌日から 2 か月に当たる日が 法定申告期限から 5 年後に到来すること ( 通則法 23 条 2 項括弧書内の下線部 ) < イメージ図 > Question 後発的事由の発生日の翌日から起算して2か月に当たる日が 法定申告期限から5 年以内に到来する場合 23 条 2 項の適用はなく 23 条 1 項が適用されることになる このような条文の構造を前提とした場合 23 条 1 項の請求事由 ( 国税に関する法律の規定に従っていなかったこと ) には 23 条 2 項の後発的事由が含まれていると解するべきか? 8
9 実体要件 ( 法律の規定に従っていなかったこと ) を充足すること Question ある個人事業者 A と法人 B は ある年に商品を販売して代金を得ていた しかし 販売 した商品に欠陥があったため 顧客から解除の申出がなされ これを受け入れ 原状回復した この場 合 特別の更正の請求は認められるか?( 応用 ) 所得税法 51 条 2 項居住者の営む 事業所得 を生ずべき事業について その事業の遂行上生じた売掛金 貸付金 前渡金その他これらに準ずる債権の貸倒れその他政令で定める事由により生じた損失の金額は その者のその損失の生じた日の属する年分の 事業所得の金額 の計算上 必要経費に算入する 所得税法施行令 141 条 2 項法第 51 条第 2 項 に規定する政令で定める事由は 次に掲げる事由で 事業所得 を生ずべき事業の遂行上生じたものとする 一販売した商品の返戻又は値引き ( これらに類する行為を含む ) により収入金額が減少することとなったこと 具体的請求事由
10 Question 特別の更正の請求の事由は 通則法 23 条 2 項 3 号にあるように いずれも やむを得ない理由 に該当する このような理解を前提とした場合 関連者間で行われた取引について 契約の合意解除 馴合訴訟の判決 通謀虚偽表示による遺産分割の無効判決などの事実は それぞれ特別の更正の請求の事由に該当するか? 3.04 請求期限 請求期限 ( 通則法 23 条 2 項 ) 更正の請求の期間制限と更正の期間制限との非対称性 ( 通常の更正の請求との比較 ) 国税通則法 71 条 1 項 2 号更正決定等で次の各号に掲げるものは 当該各号に定める期間の満了する日が前条の規定により更正決定等をすることができる期間の満了する日後に到来する場合には 前条の規定にかかわらず 当該各号に定める期間においても することができる 二申告納税方式による国税につき その課税標準の計算の基礎となつた事実のうちに含まれていた無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたこと 当該事実のうちに含まれていた取り消しうべき行為が取り消されたことその他これらに準ずる政令で定める理由 * に基づいてする更正 当該理由が生じた日から3 年間 * 政令で定める理由 通則法 23 条 2 項 1 号及び 3 号 ( 通則法施行令 6 条 1 項 5 号を除く ) 10
11 1 減額更正処分は後発的理由の発生から 3 年できるように延長されているのに 更正の請求は後発的 理由の発生から 2 か月のみ認められる 更正の申出従来 更正の請求の可能期間と減額更正処分の除斥期間との非対称を背景として 更正の請求の可能期間を経過した後であっても 減額更正処分の除斥期間が徒過していない場合 法定外の手続により非公式に税務官庁に対して減額更正を求める 嘆願書 を提出するという実務慣行があった 現在では 更正請求書と基本的に同じ様式の 更正の申出書 という公式の書面が国税庁の HP に公表されている 2 特定の後発的理由については 請求期間の延長に対応する形で減額更正の期限が延長されていない Question 後発的理由の中で 減額更正の期限が延長されていない項目は何か ( 前ページに掲げた国 税通則法 71 条 1 項 2 号の波線部分を参照 )? また その項目につき 更正の請求期間の延長に対 応する形で減額更正の除斥期間が延長されてなかった理由は何か? ( 応用 ) 11
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