21 年 1 月 13 日 マクロ経済中国 Global Research China Economic Spotlight 金融引き締め開始と今後の見通し 人民銀による刺激策の解除は段階的なものとなる公算が大きく 向こう数四半期は手形増発や預金準備率の引き上げが中心となる見通し 利上げの実施も見込まれるが 開始時期は 21 年 3Q となる見込み 新規インフラ プロジェクトの着工ペースを落とす措置がより効果的と思われ これが景気過熱リスクをコントロールする主な手段となろう この数日間 銀行間金利を上方に誘導していた人民銀は 12 日 預金準備率の bp 引き上げを発表した 今回の預金準備率の引き上げで中国の刺激策の解除が始まった GDP 成長率が 1% を上回る公算が大きくなり ヘッドライン CPI がプラスに転じ 依然として加速 中国の銀行が急ピッチで貸し出しを増やしている兆しも出ており 政策当局は景気過熱とインフレリスクをコントロールするため 大規模な刺激策を解除し始めなければならない しかし 世界需要の二番底リスクを考えると 引き締めは段階的なものとなる公算が大きい HSBC では 向こう数四半期は銀行システムの流動性吸収に向けて主に中央銀行手形の増発や一段の預金準備率引き上げが行われるとみている 今年半ば以降は 実質預金金利がマイナスとなる事態を防ぐため 利上げも必要だろう ただ HSBC では 新規インフラ プロジェクトの着工ペースを落とす措置がより効果的であり これが今年の景気過熱を落ち着かせる主な政策手段になるとみている 上振れサプライズ Qu Hongbin * Economist The Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limited (HK) +82 2822 22 hongbinqu@hsbc.com.hk Sun Junwei * Economist *HSBC Securities (USA) Inc の非米国関連会社の従業員であり NYSE/NASD の RR ではありません 発行 :The Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limited 12 月の貿易統計が上振れサプライズとなったことから 向こう数週間以内に発表される経済指標も好調が予想され 9 年 4Q の GDP 成長率は前年比 +1% を上回り 12 月の CPI は前年比 +2% 近くまで上昇することが見込まれるほか 先に発表された輸出の前年比伸び率は 2 ケタまで回復した GDP 成長率が 9% を下回り CPI がマイナス 輸出が 2 ケタ減となっていた数カ月前とは様変わりしている 確かに 21 年 1Q と 2Q は前年の水準が低く ベース効果によるところが大きいが それでも主要なヘッドライン統計でこれほどの伸びが示されれば 国内市場のセンチメントに影響が及び 景気の過熱やインフレリスクをめぐる議論が活発化する公算が大きい まず GDP 成長率である 9 年 3Q は前年比 +8.9% 季調前期比 +2.% だった 9 年 4Q と 1 年 1Q の GDP 成長率が季調前期比 +2% だったと仮定しても 2 ケタを上回る成長が見込まれる 実際 多くの指標を見ると 中国の成長回復が加速し 向こう数四半期は季調前期比の伸びが 2% を上回る公算が大きいことを示唆している ディスクレーマー / ディスクロージャー 本レポートの末尾に記載されています 併せてお読みください
21 年 1 月 13 日 9 年 4Q は工業生産の伸びが急加速しており GDP 成長率が 1% を上回ることを示唆している 12 月の輸入は前年比 +6% を記録したほか 原油輸入が平均で初めて日量 万バレルを超え 中国の内需の力強さを反映している 輸出の上振れサプライズが続けば 政府目標の 8% 成長を下支えするどころか 目標を上回るリスクを高める HSBC では 来週発表される 9 年 4Q の GDP 成長率を前年比 +1.2% と見込んでいる 第 2 に 製造業 PMI の堅調な拡大が示すとおり 中国の GDP の 4% を占める工業生産が増勢を維持している 12 月の HSBC 中国製造業 PMI は 6.2( 季調済み ) まで加速し 24 年 4 月の調査開始以来 2 番目の高水準を記録した 構成指数を見ると 生産と新規受注がともに加速した 一方 中国の輸出も回復軌道にあり 12 月は前年比で+17.7% と大幅な伸びを記録したほか HSBC の推計によれば 前月比 ( 季調後 ) でも 11 月の+2% 弱から+6.7% に加速した 製造業 PMI の堅調な新規輸出受注指数や 台湾の新規輸出受注 ( 通常 中国の輸出を 2 カ月程度先行 ) を見ると 輸出の一段の回復を示唆しており 工業生産が押し上げられよう HSBC では 9 年 1Q が 1 ケタの伸びだったことも踏まえ 21 年 1Q の工業生産は前年比 +16% 超を維持するとみている 最後に CPI が予想を上回るペースで上昇し インフレ期待が高まる公算が大きい 昨年は 2 月から 9 カ月連続で前年比マイナスとなったが ヘッドライン CPI は急速に上昇するとみられる 食品価格の上昇が主因となり 9 年 11 月の CPI は前年比 +.6% と昨年 1 月以来のプラスを記録した 寒波による野菜などの値上がりで食品価格が引き続き大幅に上昇し HSBC では 12 月の CPI が前年比 +1.8~1.9% に加速すると予想している 商務省が発表した 12 月の食用農産物価格は前月比 +3.% だった 6 年連続の豊作で食料の備蓄や供給は十分で食品価格が急騰する可能性は今のところ限定的だが 1~2 月に寒さが一段と厳しくなれば 短期的には食品 CPI の上昇圧力が強まろう 前年水準が低いことを踏まえると 21 年 1Q と 2Q に CPI はどの程度上昇するのだろうか 前月比横ばいでも キャリーオーバー効果で 21 年 1Q のヘッドライン CPI は 1% 押し上げられるとみられる この上昇も勘案すると 21 年 1Q のヘッドライン CPI は前年比 +3% に近づき 2Q には同 +3% を上回る月も出てくる可能性が高い しかし ベース効果が徐々に剥落するため ヘッドライン CPI は今年下半期に前年比 +2~3% に戻るとみられる 以上の要因に加え 今年の新規融資額がこれまでに 6, 億元を超えたことで 景気の過熱やインフレをめぐる懸念が強まり 中国内の引き締め観測が広がる公算が大きい 12 日の意表をついた預金準備率の引き上げや 最近の中央銀行手形の発行利率の引き上げは 人民銀が銀行貸し出しの急増を受けて流動性を吸収する意図を浮き彫りにし 刺激策の解除を始めたとの明確なシグナルを送っている 今後の見通し HSBCでは 向こう数四半期は流動性の吸収に向けた量的な政策手段 ( 預金準備率の引き上げや中央銀行手形の発行 ) が引き締めの中心になるとみている 21 年前半は引き続き中央銀行手形の増発や一段の預金準備率の引き上げが行われる見込み しかし 1 年物貸出基準金利と1 年物預金基準金利は今年半ばまで据え置かれる公算が大きい 時期尚早で積極的な利上げは資本流入増などの望ましくない結果をもたらす可能性があり 民間経済への影響も懸念されるだ 2
21 年 1 月 13 日 けになおさらだ しかし 実質預金金利のマイナス化を回避するには小幅な利上げが必要となる HSBCでは 年内に預金準備率がさらに1bp 引き上げられ 今年下半期に4bpの小幅な利上げが実施されると予想している しかし HSBCでは 新規インフラ プロジェクト向けの支出を減らすなどの施策がより効果的であり これが景気の過熱リスクをコントロールする主な政策手段になるとみている 景気の過熱を落ち着かせ 民間部門が回復を続ける余地を残すには 政府部門の投資をペースダウンする措置しかないだろう さらに 貸し出し急増の根本的な原因は主に昨年行われた新規インフラ プロジェクト向けの中長期融資の急回復にあることから 新規インフラ プロジェクトの着工ペースを落とさなければ 金融引き締めは効果が乏しい 実際 謝旭人財政相は今週 21 年の中央政府の公共投資の伸び率が昨年の前年比 +12% 超から同 +7% 前後に落ち着くことを示唆している 新規インフラ投資を減らせば 政府は予防的な家計貯蓄率の低下に向けて教育や医療への支出を増やすことができ 向こう数年内に個人消費の拡大やより均衡のとれた成長の実現を図ることができるのである 3
21 年 1 月 13 日 1. 工業生産と PMI の推移 2. 輸出は回復へ 2 (% yr, 3mma) 6 4 (%yr, 3mma) 2 3 1 1 4 2 1 4-1 98 99 1 2 3 4 6 7 8 9 6 7 8 9 IP (Lhs) Manufacturing PMI(Rhs) 3-2 -3-4 TW ex ports orders China ex ports 3. 食品価格は上昇 4. 実質金利の推移 2 (%yr) 8 (%) 2 6 1 4 1 2-2 97 98 99 1 2 3 4 6 7 8 9-1 2 3 4 6 7 8 9 CPI Food -6-4 Real 1Y deposite rate. 人民銀は公開市場操作を通じて流動性を吸収 6. 28 年以来の預金準備率引き上げ 4(RMB bn) 3 2 1-16-Jul-9 17-Aug-9 28-Sep-9 9-Nov -9 21-Dec-9-2 -3-4 Liquidity injection Liquidity w ithdraw al Net position 19 (%) 17 1 13 11 9 7 86 88 9 92 94 96 98 2 4 6 8 1 4
21 年 1 月 13 日 重要開示事項 本レポートはマクロ経済に関する情報提供を目的として作成されたものです 当レポートで使用しているグラフ 表等は参考データであり 将来の結果を保証するものではありません 本レポートの原文 ( 英語版 ) は HSBC グローバルリサーチに属するグローバルエマージングマーケット マクロ アンド ストラテジー チームによって 21 年 1 月 13 日に発行されました 追加重要事項開示 : 以下 HSBC グローバルリサーチが発行するリサーチレポート アナリストレポートに関する重要事項を記述いたします アナリストの報酬は投資銀行部門を含む HSBC 全体の収益性を一部勘案して支払われます 本レポートを執筆したアナリストの証言 本レポートで述べられている個別企業や証券に関する見解はすべてアナリスト個人の見解を正確に反映したものであり アナリストの報酬は 直接 間接の別を問わず 本レポートで述べられている見解と一切関連がなく 今後もないことを証します HSBC は リサーチ業務に関連して起こる潜在的な利害の対立を適切に確認して 管理する手順を採用しています リサーチの作成と配布に従事している HSBC のアナリストとその他のスタッフは HSBC の投資銀行業務とは独立した管理報告ラインの下に業務を遂行しています 投資銀行業務とリサーチの間に適切なチャイニーズ ウォールを設置し 全ての機密および価格敏感情報が適切に取り扱われることを確実にしています
21 年 1 月 13 日 ディスクレーマー ( 当資料記載内容についてご留意いただきたい事項 ) 1. 当レポートは HSBC 投信株式会社 ( 以下 当社 ) が情報提供を目的として編集したものです したがって勧誘を意図したものではありません 2. 当レポートの内容は 当社が信頼に足ると判断する情報に基づき作成していますが その正確さを保証するものではありません 3. 掲載された企業につきましては あくまで直近のトピックとしてご紹介させていただいたものであり 個別銘柄の売買の推奨を意図したものではなく 当社が運用を行う投資信託への組入れを示唆するものでもありません HSBC 投信株式会社 金融商品取引業者関東財務局長 ( 金商 ) 第 38 号加入協会 /( 社 ) 投資信託協会 ( 社 ) 日本証券投資顧問業協会 13-27 東京都中央区日本橋 3 丁目 11 番 1 号 HSBC ビルディング Tel:3-348-69 Fax:3-348-679 4. 当レポートにおける見解等は 作成時点のものであり 今後予告なしに変更される場合があります データ等は過去の実績を示したものであり 将来の成果を示唆するものではありません また 当社は 当資料に含まれている情報について更新する義務を一切負いません 21HSBC 投信株式会社 無断転載を禁ず 6