(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

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(1) 改正の内容 内容 現行制度 特例制度 納税猶予対象株式 納税猶予税額 発行済議決権株式総数の 3 分の 2 に達するまでの株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係る贈与税の全額 相続の場合 : 納税猶予対象株式に係る相続税の 80% 取得した全ての株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係

事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

事業承継税制の全体像は ( 図表 1) の通りである ( 図表 1) 事業承継税制の全体像 経営者 1 代目 経営者 2 代目 一括贈与 大臣認定 贈与税の課税 贈与税の納税猶予の適用 相続税の納税猶予制度と同様 雇用確保を含む 5 年間の事業継続を行い その後も株式を継続保有 生前贈与により株式の

平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

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法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

日税研メールマガジン vol.143 ( 平成 31 年 2 月 15 日発行 ) 公益財団法人日本税務研究センター Article 平成 31 年度税制改正大綱の解説 ( 2) 税理士金井恵美子 * 本稿では 前号 ( vol.142) に引き続き 平成 31 年度税制改正の大綱 に示された改正事

未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

平成19年12月○日

個人版事業承継税制の創設について 現行税制上の事業承継支援特例を踏まえた検討

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

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納税猶予打切りリスクの緩和 利子税率の引き下げ 承継 5 年超で 5 年分の利子税の免除 債務控除方式の変更 債務控除を株式以外の財産から行うことで 納税猶予の効果を高める < 平成 27 年度税制改正 > 贈与税の納税猶予 免除制度の拡充 1 代目が存命中に 2 代目が 3 代目に納税猶予 免除制

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

速報!  平成27年度税制改正セミナー

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

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Microsoft Word - 東日本大震災により被害を受けた場合の相続税・贈与税の取扱い

第 5 章 N

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

平成16年版 真島のわかる社労士

参考. 改正前の制度概要 ( 改正対象は太字 ) (1) 税の納税猶予の全体像 ( 概要 ) の要件 会社の代表者であったこと 時には代表権を有していないこと と同族関係者で決議数の 50% 超の株式を保有かつを除いた同族内で筆頭株主であったこと 認定対象会社の要件 の要件 会社の代表者であること

個人事業者向けの事業承継税制が創設

ェア また地域医療提供体制の確保のため地域医療構想で合意された病床の再編等の建物及びその附属設備 さらに共同利用の推進など効率的な配置の促進に向けた高額医療機器の 3 点において 特別償却制度の拡充 見直しを行う 税制改正大綱 5 頁記載 医療用機器の特別償却制度について 次の見直しを行う ( 所得

5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

2015 年 1 月いよいよ施行! 相続税増税の影響と対策 Part 1 相続税はどう変わる? 影響は? Part 2 相続税の負担を軽減するには?

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102 第 4 章 農業 農地の承継時の特例 資価格は 国税庁 HPの路線価ページから確認できます なお 平成 30 年度税制改正において 対象となる農地の範囲等が改正されました 詳細は 後記 6を参照してください 3 適用要件 (1) 被相続人この特例の対象となる被相続人は 次のいずれかに該当する

2018年度税制改正大綱 - 資産税関連の主な改正点

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テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相

(2) 青色申告書を提出する中小企業者等 ( 平成 3 年 4 月 日以後開始する事業年度については 適用除外事業者 ( 注 4) を除く ) が 平成 30 年 4 月 日から平成 33 年 3 月 3 日までの間に開始する各事業年度において 国内雇用者に対して給与等を支給する場合に継続雇用者給与

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

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目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

事業承継関連税制について 関東経済産業局 平成 30 年 6 月 中小企業金融課

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13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

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Microsoft Word - 第58号 二世帯住宅の敷地にかかる小規模宅地等の特例

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税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

所令要綱

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

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2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

( 相続時精算課税適用者の死亡後に特定贈与者が死亡した場合 ) (6) 相続時精算課税適用者 ( 相続税法第 21 条の9 第 5 項に規定する 相続時精算課税適用者 をいう 以下 (6) において同じ ) の死亡後に当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者 ( 同条第 5 項に規定する 特定贈与者

5 適用手続 ⑴ 相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は 贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に 相続時精算課税選択届出書 ( 贈与者ごとに作成が必要 ) を贈与税の申告書に添付して 納税地の所轄税務署長に提出する ( 相法 21の92) なお 提出された当該届出書は撤回することができない

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

資産運用として考える アパート・マンション経営

2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

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相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

第25回税制調査会 総25-1

税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

2011年度税制改正大綱(相続・贈与税)

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

事業承継税制の拡充・資産税逃れ対策等

平成29年 住宅リフォーム税制の手引き 本編_概要

2011年税制改正のポイント

12. 小規模宅地等の特例の見直し 1. 改正のポイント (3) 適用時期平成 30 年 4 月 1 日以後に相続又は遺贈により取得する宅地等に係る相続税について適用される ただし (2)1 の改正について 平成 30 年 3 月 31 日においての別居親族の要件を満たしていた宅地等を平成 32 年

3. 住宅税制 消費税率の引上げに伴う一時の税負担の増加による影響を平準化し 及び緩和する観 点から 住宅税利について以下のとおり所要の措置を講じます 住宅ローン減税を平成 26 年 1 月 1 日から平成 29 年末まで 4 年間延長し その期間のうち平成 26 年 4 月 1 日から平成 29

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

問題 1 1 問題 1 1 納税義務者 相続税の納税義務者及び課税財産の範囲 課税価格 1 納税義務者 ⑴ 次に掲げる者は 相続税を納める義務がある 1 居住無制限納税義務者 ( 法 1 の 3 1 一 ) 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有するもの

時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税され かつ その所得税は相続税の課税価格の計算上被相続人の債務として控除されていることにより 所得税と相続税の負担の調整は済んでいますので この特例の適用は受けられません 2 取得費に加算される金額平成 26 年度の改正前は 相続財産である土地等の一部を譲渡し

コピー又は web からダウンロードしてご使用ください 答案用紙 Chapter1 問題 1 個人とみなされる納税義務者 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 遺贈財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額 2 生前贈与加算される贈与財産の額の計算 ( 単位 :

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平成 31 年度住宅関連税制改正の概要 ( 一社 ) 住宅生産団体連合会 平成 31 年 3 月 (1) 住宅ローン減税の拡充 ( 所得税 個人住民税 ) 消費税率 10% が適用される住宅取得等をして 2019 年 10 月 1 日から 2020 年 12 月 31 日までの間にその者の居住の用に

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内に 耐火建築物以外の建物についてはその購入の日以前 20 年以内に建築されたものであること 地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の中古住宅 を 平成 17 年 4 月 1 日以降に取得した場合には 築年数に関係なく適用が受けられます (56ページ 一

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(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

Microsoft Word - 第65号 二世帯住宅と小規模宅地等の特例

おき 太郎様 Inheritance Report 相続診断書 税理士法人おき会計 平成 28 年 7 月 20 日作成

である 12 遺留分とは 遺言の内容にかかわらず一定の相続人が確実に受け取ることができる一定の 割合のことである 直系尊属のみが相続人である場合は 被相続人の財産の 1/3 その 他の場合には 被相続人の財産の 1/2 である ただし 兄弟姉妹には遺留分はない 13 相続の放棄は 被相続人の生前に行

2 税額控除等の計算 ( 単位 : 円 ) 項目対象者計算過程金額 答案用紙 Chapter2 問題 3 課税価格の計算 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 分割財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 2 みなし取得財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額

2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

この特例は居住期間が短期間でも その家屋がその人の日常の生活状況などから 生活の本拠として居住しているものであれば適用が受けられます ただし 次のような場合には 適用はありません 1 居住用財産の特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合 2 自己の居住用家屋の新築期間中や改築期間中だけの仮住い

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目次 特例措置の概要等... 5 ( 問 1) 非上場株式等についての相続税 贈与税の納税猶予及び免除に係る一般措置と特例措置との違い... 5 ( 問 2) 相続開始後の特例承継計画の提出... 8 ( 問 3) 特例措置の対象となる株式等の種類... 9 ( 問 4) 特例措置における雇用確保要

措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

平成 30 年度税制改正 ( 所得税 ) の主な内容 1. 給与所得控除 公的年金等控除から基礎控除への振替給与所得控除及び公的年金控除の控除額を一律 10 万円引き下げ 基礎控除の控除額が一律 10 万円の引き上げとなる 2. 給与所得控除 公的年金等控除 基礎控除の見直し (1) 給与所得控除の

このうち 申告納税額がある方 ( 納税人員 ) は640 万 8 千人で は41 兆 4,298 億円 申告納税額は3 兆 2,037 億円となっており 平成 28 年分と比較すると 人数 (+0.6%) (+ 3.4%) 及び申告納税額 (+4.6%) はいずれも増加しました 所得者区分別の状況イ

(2) 父母 ( 祖父母 ) から子 ( 孫 ) への住宅取得等資金の贈不 父母 ( 祖父母 ) など直系尊属から その子 ( 孫 ) へ居住用の家屋の新築 取得または増改築のための金銭 ( 住宅取得等資金 ) を贈不した場合 表の通りの金額について贈不税が非課税となります また 贈不税の基礎控除

『事業承継の際の相続税・贈与税          の納税猶予制度』

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1. はじめに 中小企業経営者の高齢化が進展する中 事業承継の円滑化は喫緊の課題です 平成 30 年度税制改正において 事業承継の際に生ずる相続税 贈与税の負担を軽減する 非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例 ( 以下 事業承継税制 ) が抜本的に改正されました 本改正では

Transcription:

資産課税個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設 個人事業者の事業承継税制が 10 年間の時限措置として新たに創設される 認定相続人 受贈者が 青色申告の承認を受けていた個人事業者から 相続等又は贈与によりその個人事業者の事業の用に供されていた 特定事業用資産 を取得し 事業を継続していく場合には その取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税又は贈与税の全額について その納税を猶予する < 改正のポイント > 2019 年 1 月 1 日から 2028 年 12 月 31 日までの時限措置である 法人の非上場株式等に係る納税猶予制度の特例に準じた制度である 相続のみならず生前贈与にも適用が可能であり 税額の猶予割合はともに 100% とされる 宅地以外にも 事業用の建物及び一定の減価償却資産が制度の対象となる 相続税の納税猶予制度は 現行措置 ( 特定事業用宅地等の小規模宅地等の特例 ) との選択適用となる 認定受贈者が贈与者の推定相続人以外の者であっても 相続時精算課税制度の適用が可能となる 1

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る ) 3 建物以外の一定の減価償却資産 ( 1) で 青色申告書に添付される貸借対照表に計上されているもの 1 2 担保提供を条件に 特定事業用資産の課税価格 ( 2) に対応する相続税の全額を猶予猶予税額の計算方法は非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例と同様 相続開始前に青色申告の承認を受けていること 相続人の要件 承継計画の提出 1 2 認定相続人 ( 承継計画に記載された後継者であって 経営承継円滑化法の認定を受けた者 ) であること相続開始後に青色申告の承認を受けていること 2019 年 4 月 1 日から 2024 年 3 月 31 日までの間に都道府県に対して承継計画 ( 3) の提出が必要 猶予税額の納付 1 特定事業用資産に係る事業を廃止した場合等には 猶予税額の全額を納付 ( 4) 2 特定事業用資産の譲渡等をした場合には 譲渡等をした部分に対応する猶予税額を納付 ( 4) 猶予税額の免除 特定事業用資産の現物出資 継続届出書の提出 小規模宅地等の特例の適用 1 2 認定相続人が死亡の時まで特定事業用資産を保有し 事業を継続した場合等は全額を免除経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において 特定事業用資産の一括譲渡等を行うときは一部を免除 相続税の申告期限から 5 年経過後に特定事業用資産を現物出資し 会社を設立した場合において 認定相続人がその会社の株式等を保有していることその他一定の要件を満たすときは 納税猶予を継続 税務署長に対し相続税の申告期限から 3 年毎に継続届出書の提出が必要 特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例との併用は不可 ( 1) 固定資産税の課税対象となっているもの 又は営業用として自動車税若しくは軽自動車税の課税対象となっているもの その他これらに準ずるものに限る ( 2) 被相続人に債務がある場合には特定事業用資産の価額からその債務の額 ( 明らかに事業用でない債務の額を除く ) を控除した額を猶予税額の計算の基礎とする ( 3) 認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて作成された特定事業用資産の承継前後の経営見通し等が記載された計画をいう ( 4) 猶予税額の全部又は一部を納付する場合には その納付税額について法定申告期限からの利子税を併せて納付原則 : 年 3.6% ( 利子税の特例を適用した場合には 2019 年は 0.7% となる ) 2

(2) 贈与税の納税猶予制度の概要 制度の概要 猶予税額の納付 免除等については (1) 相続税の納税猶予制度の概要と同様 贈与税の納税猶予制度特有の論点は以下の通り 1 認定受贈者の要件 20 歳 (2022 年 4 月 1 日以後の贈与については 18 歳 ) 以上である者に限る 2 贈与者死亡時の相続税の計算と相続税の納税猶予制度の適用 贈与者の死亡時には 特定事業用資産 ( 1) をその贈与者から相続等により取得したものとみなす 特定事業用資産を贈与時の時価により他の相続財産と合算して相続税を計算する 都道府県の確認を受けた場合には 相続税の納税猶予制度の適用を受けることができる ( 1) 既に納付した猶予税額に対応する部分を除く 3 相続時精算課税制度の適用対象者の拡大 贈与税の納税猶予制度の適用を受ける場合において 認定受贈者が贈与者の直系卑属である推定相続人以外の者であっても その贈与者がその年 1 月 1 日において 60 歳以上である場合には 相続時精算課税の適用を受けることができる 3

(3) 猶予税額の免除 1 全額免除 次の場合には猶予税額の全額が免除される イ. 認定相続人 受贈者が その死亡の時まで 特定事業用資産を保有し 事業を継続した場合ロ. 認定相続人 受贈者が一定の身体障害等に該当した場合ハ. 認定相続人 受贈者について破産手続開始の決定があった場合ニ. 相続税又は贈与税の申告期限から 5 年経過後に 次の後継者へ特定事業用資産を贈与し その後継者がその特定事業用資産について贈与税の納税猶予制度の適用を受ける場合 2 一部免除 次の場合には猶予税額の一部が免除される イ. 同族関係者以外の者へ特定事業用資産を一括して譲渡する場合ロ. 民事再生計画の認可決定等があった場合ハ. 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において 特定事業用資産の一括譲渡又は特定事業用資産に係る事業の廃止をするとき ( 注 ) 経営環境の変化を示す一定の要件 とは 非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例に準じた要件とする なお 上記 1 ハ又は 2 の場合には 過去 5 年間に認定相続人 受贈者の青色事業専従者に支払われた給与等のうち 必要経費として認められない額については免除されない 4

(4) 被相続人に債務がある場合の取り扱い 被相続人に債務がある場合には 特定事業用資産の価額から債務の額 ( 明らかに事業用でない債務の額を除く ) を控除した額を 猶予税額の計算の基礎とする ( 計算例 ) 前提 : 特定事業用資産 (3 億円 ) その他の資産(4 億円 ) 債務の総額(2 億円 )( ) ( ) 内訳 : 事業用債務 (1.5 億円 ) その他の債務(0.3 億円 ) 住宅ローン(0.2 億円 ) 相続人 : 子 ( 後継者 ) 1 人 イメージ図 参考 債務の額を控除しない場合被相続人の財産および債務猶予税額の計算猶予税額の計算 特定事業用資産 3 億円 事業用債務 1.5 億円 その他の債務 0.3 億円 住宅ローン 0.2 億円 特定事業用資産 3 億円 事業用債務 1.5 億円 その他の債務 0.3 億円 特定事業用資産 3 億円 その他の資産 4 億円 明らかに事業用でない債務は除く 課税価格 : 5 億円 (7 億円 -2 億円 ) 相続税額 : 1.9 億円 猶予税額の計算の基礎となる金額 : 1.2 億円 (3 億円 -1.8 億円 ) 猶予税額 : 1,820 万円納付税額 : 1 億 7,180 万円 (1.9 億円 -1,820 万円 ) < 小規模宅地等の特例 ( 特定事業用宅地等 ) における債務の取り扱い > 特定事業用宅地等の購入のために行った借り入れに係る債務が 特定事業用宅地等以外の資産からも債務控除される 猶予税額の計算の基礎となる金額 : 3 億円 (3 億円 -0 円 ) 猶予税額 : 9,180 万円 納付税額 : 9,820 万円 (1.9 億円 -9,180 万円 ) 特定事業用宅地等 3 億円 事業用債務 1.5 億円 小規模宅地等の特例を適用 特定事業用宅地等 0.6 億円 減額 2.4 億円 事業用債務 1.5 億円 3 億円 80% を減額 0.9 億円 (1.5 億円 -0.6 億円 ) を特定事業用宅地等以外の資産から債務控除 5

(5) 非上場株式等の納税猶予制度 ( 特例措置 ) との主な比較 個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度 非上場株式等についての相続税の納税猶予制度 ( 特例措置 ) 適用期間 2019 年 1 月 1 日から 2028 年 12 月 31 日まで 2018 年 1 月 1 日から 2027 年 12 月 31 日まで 対象資産 土地 (400 m2まで ) 建物 ( 床面積 800 m2まで ) 一定の減価償却資産 非上場株式等 承継計画の提出期間 2019 年 4 月 1 日から 2024 年 3 月 31 日まで 2018 年 4 月 1 日から 2023 年 3 月 31 日まで 猶予割合 100% 100% 全額免除の要件 一部免除の要件 利子税 継続届出書の提出 ( 税務署 ) 後継者が死亡した場合 後継者が一定の身体障害等に該当した場合 後継者について破産手続開始の決定があった場合 5 年経過後に 後継者から次の後継者へ贈与しかつ次の後継者が贈与税の納税猶予を適用した場合 同族関係者以外の者へ一括譲渡した場合 民事再生計画の認可決定等があった場合 経営環境の変化を示す一定の要件を満たし 一括譲渡または廃業する場合 年 3.6% ( 特例基準割合が 7.3% に満たない場合は負担軽減あり ) 3 年ごとに 1 回 後継者が死亡した場合 5 年経過後に 破産手続開始の決定があった場合 5 年経過後に 後継者から次の後継者へ贈与しかつ次の後継者が贈与税の納税猶予を適用した場合 対象株式を一部贈与する場合は一部免除 5 年経過後に 同族関係者以外の者へ一括譲渡した場合 5 年経過後に 民事再生計画の認可決定等があった場合 5 年経過後に 一定の合併 株式交換をした場合 5 年経過後に 経営環境の変化を示す一定の要件を満たし 一括譲渡または廃業する場合 猶予税額の再計算あり 年 3.6% ( 特例基準割合が 7.3% に満たない場合は負担軽減あり ) 5 年経過後に 期限確定事由に該当した場合 当初 5 年間は年 0% 当初 5 年間は毎年 1 回 5 年経過後は 3 年ごとに 1 回 当初 5 年間毎年 1 回 都道府県への年次報告書の提出あり 6

2. 適用時期 2019 年 1 月 1 日から 2028 年 12 月 31 日までの間に 相続等または贈与により取得する財産に係る相続税または贈与税について適用する 3. 実務上の留意点 贈与者が死亡した場合には 特定事業用資産を贈与時の時価で相続により取得したものとして 相続財産に加算されるため 時価の下落が見込まれる建物 一定の減価償却資産の適用については 留意する必要がある 推定相続人以外の後継者への贈与について 相続時精算課税制度が適用できるため 推定相続人以外にも納税猶予により承継しやすくなるが 贈与者の死亡時には 相続税の納税義務者になるため留意が必要である 債務がある場合 猶予税額の計算上 特定事業用資産の価額から控除されるため ( 明らかに事業用でない債務を除く ) 猶予税額は債務控除後の 純資産 で計算することになる ( 小規模宅地等の特例は債務控除前で計算 ) 特定事業用資産の価額から控除される債務には 事業用債務に限らず 明らかに事業用でない債務 ( 住宅ローン 教育ローン等 ) 以外の債務も含まれるため 留意が必要である 利子税について 5 年経過後の軽減措置は設けられていない 贈与で承継する場合 登録免許税および不動産取得税等の諸費用について 留意する必要がある 当該制度の適用を受ける場合には 小規模宅地等の特例 ( 特定事業用宅地等 ) の適用は受けられないため どちらの制度を適用するかは有利判定が必要となる 7

4. 今後の注目点 事業からは不動産貸付事業等を除くとあるが 等 の範囲 納税猶予適用後 後継者が現物出資により医療法人を設立した場合についても 納税猶予継続となるのか ( 現状 新設の医療法人は持分なし医療法人となる ) 特定事業用資産全てでなく 適用対象資産を選択して納税猶予制度を適用することはできるのか 特定事業用資産の範囲を 土地 としているが 借地権などは含まれるのか 事業用兼家事用資産については どのような計算方法により猶予税額を計算するのか 期限確定事由である特定事業用資産の譲渡等の 等 の範囲 ( 建物 一定の減価償却資産を除却 滅失 買い換え等した場合の取扱い ) 特定事業用資産を譲渡等し猶予税額を納付する場合 譲渡時等の対価の額により納付税額を再計算することができるのか 従業員がいない個人事業者も適用対象となるのか 複数後継者への相続等または贈与も適用されるのか 本制度を適用して贈与を行い 2029 年以降に当該贈与者が亡くなった場合の相続税は この制度を適用することができるのか 8