<4D F736F F F696E74202D E8DDE97BF82CC96F C982E682E997F289BB8B9393AE C835B F38DFC94C5205B8CDD8AB B83685D>

Similar documents
高 1 化学冬期課題試験 1 月 11 日 ( 水 ) 実施 [1] 以下の問題に答えよ 1)200g 溶液中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 整数 ) 2)200g 溶媒中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 有効数字 2 桁 ) 3) 同じ

2004 年度センター化学 ⅠB p1 第 1 問問 1 a 水素結合 X HLY X,Y= F,O,N ( ) この形をもつ分子は 5 NH 3 である 1 5 b 昇華性の物質 ドライアイス CO 2, ヨウ素 I 2, ナフタレン 2 3 c 総電子数 = ( 原子番号 ) d CH 4 :6

Microsoft PowerPoint - 01_内田 先生.pptx

京都大学博士 ( 工学 ) 氏名宮口克一 論文題目 塩素固定化材を用いた断面修復材と犠牲陽極材を併用した断面修復工法の鉄筋防食性能に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 塩害を受けたコンクリート構造物の対策として一般的な対策のひとつである, 断面修復工法を検討の対象とし, その耐久性をより

Microsoft PowerPoint - 薬学会2009新技術2シラノール基.ppt

Word Pro - matome_7_酸と塩基.lwp

els05.pdf

木村の理論化学小ネタ 熱化学方程式と反応熱の分類発熱反応と吸熱反応化学反応は, 反応の前後の物質のエネルギーが異なるため, エネルギーの出入りを伴い, それが, 熱 光 電気などのエネルギーの形で現れる とくに, 化学変化と熱エネルギーの関

Microsoft Word - _博士後期_②和文要旨.doc

物薬

Microsoft PowerPoint - S-17.ppt

<4D F736F F F696E74202D E9197BF36817A90DA92858DDC8DCC8EE68E8E97BF92B28DB8>

(Microsoft Word - \230a\225\266IChO46-Preparatory_Q36_\211\374\202Q_.doc)

sample リチウムイオン電池の 電気化学測定の基礎と測定 解析事例 右京良雄著 本書の購入は 下記 URL よりお願い致します 情報機構 sample

Decomposition and Separation Characteristics of Organic Mud in Kaita Bay by Alkaline and Acid Water TOUCH NARONG Katsuaki KOMAI, Masataka IMAGAWA, Nar

Microsoft PowerPoint - D.酸塩基(2)

<4D F736F F D2093C58C8088C38B4C A F94708AFC96405F2E646F63>

e - カーボンブラック Pt 触媒 プロトン導電膜 H 2 厚さ = 数 10μm H + O 2 H 2 O 拡散層 触媒層 高分子 電解質 触媒層 拡散層 マイクロポーラス層 マイクロポーラス層 ガス拡散電極バイポーラープレート ガス拡散電極バイポーラープレート 1 1~ 50nm 0.1~1

スライド 0

スライド 0

品目 1 エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト ( 別名 EPN) 及びこれを含有する製剤エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト (EPN) (1) 燃焼法 ( ア ) 木粉 ( おが屑 ) 等に吸収させてアフターバーナー及びスクラバーを具備した焼却炉で焼却する ( イ )

コンクリート工学年次論文集Vol.35

2019 年度大学入試センター試験解説 化学 第 1 問問 1 a 塩化カリウムは, カリウムイオン K + と塩化物イオン Cl - のイオン結合のみを含む物質であり, 共有結合を含まない ( 答 ) 1 1 b 黒鉛の結晶中では, 各炭素原子の 4 つの価電子のうち 3 つが隣り合う他の原子との

木村の有機化学小ネタ セルロース系再生繊維 再生繊維セルロースなど天然高分子物質を化学的処理により溶解後, 細孔から押し出し ( 紡糸 という), 再凝固させて繊維としたもの セルロース系の再生繊維には, ビスコースレーヨン, 銅アンモニア

Microsoft PowerPoint - 技術資料_NeedlEx.ppt

研究報告58巻通し.indd

図 維持管理の流れと診断の位置付け 1) 22 22

Microsoft PowerPoint プレゼン資料(基礎)Rev.1.ppt [互換モード]

Crystals( 光学結晶 ) 価格表 台形状プリズム (ATR 用 ) (\, 税別 ) 長さ x 幅 x 厚み KRS-5 Ge ZnSe (mm) 再研磨 x 20 x 1 62,400 67,200 40,000 58,000

B. モル濃度 速度定数と化学反応の速さ 1.1 段階反応 ( 単純反応 ): + I HI を例に H ヨウ化水素 HI が生成する速さ は,H と I のモル濃度をそれぞれ [ ], [ I ] [ H ] [ I ] に比例することが, 実験により, わかっている したがって, 比例定数を k

化学 1( 応用生物 生命健康科 現代教育学部 ) ( 解答番号 1 ~ 29 ) Ⅰ 化学結合に関する ⑴~⑶ の文章を読み, 下の問い ( 問 1~5) に答えよ ⑴ 塩化ナトリウム中では, ナトリウムイオン Na + と塩化物イオン Cl - が静電気的な引力で結び ついている このような陽イ

練習問題

(Microsoft PowerPoint - \201\232\203|\203X\203^\201[)

Problem P5

すとき, モサプリドのピーク面積の相対標準偏差は 2.0% 以下である. * 表示量 溶出規格 規定時間 溶出率 10mg/g 45 分 70% 以上 * モサプリドクエン酸塩無水物として モサプリドクエン酸塩標準品 C 21 H 25 ClFN 3 O 3 C 6 H 8 O 7 :

品目 1 四アルキル鉛及びこれを含有する製剤 (1) 酸化隔離法多量の次亜塩素酸塩水溶液を加えて分解させたのち 消石灰 ソーダ灰等を加えて処理し 沈殿濾過し更にセメントを加えて固化し 溶出試験を行い 溶出量が判定基準以下であることを確認して埋立処分する (2) 燃焼隔離法アフターバーナー及びスクラバ

平成 27 年 7 月 1 日発行 86 反応性接着剤の分析装置を用いた硬化度合い評価方法 はじめに 反応性接着剤は 硬化反応を経て液体から固体となり機能を発現します 一般的に 反応性接着剤の硬化判断は主に接着強度の測定によって行われてきましたが 使用目的が接着用途以外にも多様化するなかで 硬化の状

<4D F736F F D A C5817A8E59918D8CA B8BBB89BB8A778D488BC B8BBB F A2E646F63>

EOS: 材料データシート(アルミニウム)

HP_GBRC-141, page Normalize_3 ( _GBRC-141.indb )

2011年度 化学1(物理学科)

必要があれば, 次の数値を使いなさい 原子量 O= 標準状態で mol の気体が占める体積. L 問題文中の体積の単位記号 L は, リットルを表す Ⅰ 次の問いに答えなさい 問 飲料水の容器であるペットボトルに使われているプラスチックを, 次の中から つ選び, 番号をマークしなさい ポリエチレン

(Microsoft PowerPoint - \211\273\212w\225\275\215t.ppt)

i ( 23 ) ) SPP Science Partnership Project ( (1) (2) 2010 SSH

PowerPoint プレゼンテーション

7.6.2 カルボン酸の合成 è 酸化による合成 { 第一アルコールまたはアルデヒドの酸化 R Ä C 2 Ä! R Ä C Ä! R Ä C (7.104) [ 例 ]1-プロパノールを硫酸酸性の条件で二クロム酸カリウムを用いて酸化する 3C 3 C 2 C 2 + 2Cr 2 2Ä

はじめに 液体クロマトグラフィーには 表面多孔質粒子の LC カラムが広く使用されています これらのカラムは全多孔質粒子カラムの同等製品と比べて 低圧で高効率です これは主に 物質移動距離がより短く カラムに充填されている粒子のサイズ分布がきわめて狭いためです カラムの効率が高いほど 分析を高速化で

抗体定量用アフィニティークロマトグラフィー

2 私たちは生活の中で金属製の日用品をたくさん使用していますが 錆びるので困ります 特に錆びやすいのは包丁や鍋などの台所用品です 金属は全て 水と酸素により腐食されて錆を生じますが 台所は水を使う湿気の多い場所なので 包丁や鍋を濡れたまま放置しておくと水と空気中の酸素により腐食されて錆びるのです こ

エポキシ樹脂の耐熱性・誘電特性を改良するポリアリレート樹脂低分子量タイプ「ユニファイナー Vシリーズ」の開発について

CERT化学2013前期_問題

第3類危険物の物質別詳細 練習問題

Microsoft PowerPoint - 第3回技術講演会 修正 [互換モード]

<4D F736F F D F88DB8E9D8AC7979D82C98AD682B782E9918A926B8E9697E1>

POCO 社の EDM グラファイト電極材料は 長年の技術と実績があり成形性や被加工性が良好で その構造ならびに物性の制御が比較的に容易であることから 今後ますます需要が伸びる材料です POCO 社では あらゆる工業製品に対応するため 各種の電極材料を多数用意しました EDM-1 EDM-3 EDM

DURACON POM グレードシリーズ ポリアセタール (POM) TR-20 CF2001/CD3501 ミネラル強化 ポリプラスチックス株式会社

indd

EM-Tec 導電性接着剤の仕様 ペイント / セメント EM-Tec C30 EM-Tec C33 EM-Tec C39 EM-Tec AG42 EM-Tec AG44 EM-Tec AG46 EM-Tec NI41 パーツ番号

Taro-化学3 酸塩基 最新版

Microsoft PowerPoint - siryo7

東レポリフェニレンサルファイド (PPS) フィルム は 東レ が開発した世界で唯一のポリフェニレンサルファイド (PPS) フィルムです そのれた耐熱性 難燃性 耐薬品性 電気特性により 工業分野において幅広く使用されています は他のフィルムに比べて次のような特性を有しています 1. 耐熱性 耐寒

IC-PC法による大気粉じん中の六価クロム化合物の測定

ここで Ω は系全体の格子数,φ は高分子の体積分率,k BT は熱エネルギー,f m(φ) は 1 格子 あたりの混合自由エネルギーを表す. またこのとき浸透圧 Π は Π = k BT v c [ φ N ln(1 φ) φ χφ2 ] (2) で与えられる. ここで N は高分子の長さ,χ は

平成27年度 前期日程 化学 解答例

ゴム固定用両面接着テープ VR-5311/VR-5321 概要 ポリエステルフィルムを支持体とし 片面にゴム系粘着剤 片面にアクリル系粘着剤を組み合わせた両面接着テープです ゴムと金属 プラスチックとの接着に適しています テープ構成 VR-5311/VR-5321 テープ厚:0.15 mm ( はく

武蔵 狭山台工業団地周辺大気 環境調査結果について 埼玉県環境科学国際センター 化学物質担当 1

< イオン 電離練習問題 > No. 1 次のイオンの名称を書きなさい (1) H + ( ) (2) Na + ( ) (3) K + ( ) (4) Mg 2+ ( ) (5) Cu 2+ ( ) (6) Zn 2+ ( ) (7) NH4 + ( ) (8) Cl - ( ) (9) OH -

53nenkaiTemplate


CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐火性能の評価 ~ 平成 26 年度建築研究所講演会 CLTによる木造建築物の設計法の開発 ( その 3) ~ 防耐火性能の評価 ~ 建築防火研究グループ上席研究員成瀬友宏 1 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐

第 11 回化学概論 酸化と還元 P63 酸化還元反応 酸化数 酸化剤 還元剤 金属のイオン化傾向 酸化される = 酸素と化合する = 水素を奪われる = 電子を失う = 酸化数が増加する 還元される = 水素と化合する = 酸素を奪われる = 電子を得る = 酸化数が減少する 銅の酸化酸化銅の還元

スライド 1

Microsoft PowerPoint - 数学教室2.pptx

平成 27 年 9 月埼玉県東松山環境管理事務所 東松山工業団地における土壌 地下水汚染 平成 23~25 年度地下水モニタリングの結果について 要旨県が平成 20 年度から 23 年度まで東松山工業団地 ( 新郷公園及びその周辺 ) で実施した調査で確認された土壌 地下水汚染 ( 揮発性有機化合物

untitled

PC農法研究会

コンクリート工学年次論文集 Vol.25

BOND_specialty_PDF作成用.indd

Microsoft PowerPoint - 第8章 [互換モード]

スライド タイトルなし

<4D F736F F F696E74202D20824F DA AE89E682CC89E696CA8DED8F9C816A2E >

Microsoft Word - 酸塩基

2009年度業績発表会(南陽)

Xamテスト作成用テンプレート

スライド 1

Microsoft Word - 2_新技術紹介_大野_最終.docx

キレート滴定

Microsoft PowerPoint - 熱力学Ⅱ2FreeEnergy2012HP.ppt [互換モード]

Microsoft PowerPoint - Š’Š¬“H−w†i…„…C…m…‰…Y’fl†j.ppt

コロイド化学と界面化学

産総研プレス発表資料

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

Fr. CO 2 [kg-co 2e ] CO 2 [kg] [L] [kg] CO 2 [kg-co 2e] E E E

<4D F736F F D2095BD90AC E93788D4C88E689C88A778BB389C88BB388E78A778CA48B868C6F94EF95F18D908F912E646F6378>

原子吸光分光光度計 : 島津製作所 AA-6400F ホットプレート : ヤマト科学 HK-41 3 方法 1) 銅葉緑素製剤の銅含有量の測定公定法の検討において, 抽出試験での回収率を算出するため, 各製剤の銅含有量を衛生試験法 3) に示された方法に従い, 測定した. 2) 公定法の検討 CuC

Microsoft Word - t30_西_修正__ doc

Microsoft Word - 化学系演習 aG.docx

サイズ排除クロマトグラフィー SIZE EXCLUSION CHROMATOGRAPHY TSKgel SuperMultiporeHZ シリーズ 細孔多分散型有機系セミミクロ SEC カラム 特長 主な対象物質 技術資料 細孔多分散型充塡剤を用いています 合成高分子 オリゴマー S/R 較正曲線の

新規な金属抽出剤

1. 災害調査の概要 1.1 災害の種類塩酸供給バルブからの塩酸漏洩 略 1.4 災害概要清掃工場の汚水処理設備施設において, 純水設備へ塩酸を供給するため, 塩酸貯槽 (6 m 3 ) から 35% 濃度の塩酸をマグネットポンプにて圧送していたところ, 塩酸貯槽のレベル異常 ( 水

Transcription:

2014.1.29 & 30 中小企業者のための地下水汚染未然防止対策セミナー プラスチック材料の薬液による劣化挙動 東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻教授久保内昌敏 講演内容 1. プラスチック材料の薬液による劣化 1-1. 物理的劣化と化学的劣化 1-2. プラスチック材料の腐食形態 2. 物理的劣化とその浸入挙動 2-1. 薬液の浸入挙動 2-2. 物理的劣化の可逆性 2-3. 薬液浸入に及ぼす充填粒子の効果 3. 化学的劣化とその形態に基づく劣化機構 3-1. 表面反応型と腐食層形成型の劣化挙動 3-2. 全面浸入型の劣化挙動 3-3. 形態に基づく劣化機構 4. 劣化形態に基づく寿命予測 4-1. 表面反応型と腐食層形成型の寿命予測 4-2. 全面浸入型の寿命予測 2

1. プラスチック材料の薬液による劣化 浸透, 透過溶出, 抽出 化学反応 分解 酸化, 加水分解アルカリ融解など 環境剤の浸入 ( 時間, 温度 ) 高分子材料 溶媒和 膨潤 溶解膨潤 分子結合の弱化, 形状の変化極端な強度低下 外観の変化機械的性質の低下物理的性質の低下 環境応力割れ 動的条件 応力温度勾配流動 クレーズ き裂 分子配向 分子結合の切断 水蒸気拡散 3 プラスチックの腐食劣化事例 腐食劣化事例集 樹脂ライニング工業会 樹脂ライニング皮膜の劣化診断指針 (2009) 写真で見る樹脂ライニング皮膜の劣化 損傷とその診断 [ 改訂版 ] 化学工学会 化学装置材料委員会 有機材料分科会 有機材料資料集 Ⅸ; 有機材料の劣化事例解析 (2006) 4

1.1. 物理的劣化と化学的劣化 物理的劣化 ; 薬液浸入による膨潤 極性が一致すると膨潤 溶解 ( 溶媒和 ) 乾燥により強度回復 溶解度パラメータ (SP) 化学的劣化 ; 化学反応による分子鎖切断 加水分解反応などによる不可逆反応 強度は回復しない 5 1.2. プラスチック材料の腐食形態 6

2. 物理的劣化 ( 浸入 ) とその寿命評価 環境液がプラスチックへ吸着, 浸入, 拡散 環境液 ( 水 ) の拡散浸入 Fickの理想拡散で整理される 分解反応せずに浸入した環境液は, 追い出すことができる 上手く追い出せば, 元に戻る 環境液が基材まで到達すれば, 基材劣化が始まる 7 2.1. 薬液の浸入挙動 環境液の拡散浸入 Fick の理想拡散で整理される 8

薬液の浸入しやすさ 溶解度パラメータによる評価 ;SP 値 凝集エネルキ ー密度 種々の溶媒のSP 値 溶媒 SP 値 クロロホルム 5.4 n-ペンタン 7.0 n-ヘキサン 7.2 四塩化炭素 8.6 トルエン 8.9 酢酸エチル 9.0 ベンゼン 9.2 アセトン 9.8 2-ブタノール 11.0 2-プロパノール 11.2 1-プロパノール 12.1 酢酸 12.6 エタノール 12.8 メタノール 14.8 水 23.4 9 薬液の浸入挙動評価 EDS(EDX) による評価 ステップ状の分布 CaseⅡ 表面 環境液の浸入方向 アミン硬化 EPを80,10% 硫酸に 100h 浸漬後の試料断面 左図四角部分のEDSによる S 元素分析結果 10

追補 ;EDS による試料断面元素分析について エネルギースペクトル 分析顕微鏡 元素マッピング分析 溶質と溶媒の浸透挙動 12 10 8 6 4 2 0 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 試験片深さ [mm] S element distribution 30% H 2 SO 4 20h BTB&BPB Water distribution 30wt% H 2 SO 4 20h BTB 12

有機溶媒の浸入挙動 有機溶剤の場合には濃度勾配有 Fick 型理想拡散に近い EP/ クロロトルエン,80 22hr 13 2.2. 物理的劣化における可逆性 膨潤 乾燥により強度回復 メタノール中での UP: 強度低下 乾燥により強度回復 ortho-up: オルソフタル酸系不飽和ポリエステル RFS:Retention of Flexural Strength 強度保持率 水中でのナイロン : 強度低下 乾燥により強度回復 しかし 硫酸中では回復せず 化学的な劣化 14

2.3. 薬液浸入に及ぼす充てん粒子の効果 球形粒子周りの環境液浸入 接液面 接液面 ガラスビーズ 15 フィラーの充てん効果と粒径効果 充てん効果は大きいが粒径効果は少ない! 浸入を促進させる効果が利いている 粒子表面積ではない! 16

フレークライニング フレークライニングによる透過の抑制 排煙脱硫装置の防食 ( 非常に厳しい条件 ) 水蒸気拡散による透過の道のりを長くする 材料科学 17 フレークの妨害効果と促進効果 フレークライニング 妨害効果と促進効果 (80,10% H 2 SO 4 /EP,200h) 材料科学 18

3. 化学的劣化とその形態に基づく劣化機構 腐食 劣化 電気化学反応ではないけれど 代表的な腐食環境 ( 酸 アルカリ 塩素 ) 化学反応による不可逆変化 金属の均一腐食と同様の取り扱いが可能 エポキシ樹脂の耐食性 エポキシ樹脂の酸 & アルカリ環境における耐食性は, 典型的に硬化剤によって変わる. 酸 アルカリ 酸無水物硬化 アミン硬化 19 アミン硬化と酸無水物硬化エポキシの比較 硫酸の浸入挙動 EP でも硬化剤により挙動は大きく異なる アミン硬化剤 硫酸 苛性ソーダ 酸無水物硬化剤 20

有機材料の腐食形態 21 3.1. 表面反応型と腐食層形成型の劣化挙動 材料の分解速度 >> 環境液の浸入速度材料は表面から徐々に溶出する. 残存樹脂内に環境液は全く浸入しておらず, 材料の劣化は減肉による厚さ減少で評価できる. 例 : アミン硬化エポキシ / 硝酸など 22

3.1. 表面反応型と腐食層形成型の劣化挙動 材料の分解速度 > 環境液の浸入速度材料の表面に 腐食層 が形成される. 腐食層は膨潤による寸法増加や溶出による減肉など複雑な挙動を示すが, 徐々に内部に進行する. 未腐食部は健全. 例 : 不飽和ポリエステル /KOH 水溶液など 23 3.1.1 表面反応型 <EP-MDA / HNO 3 > 外観観察 表面から徐々に溶出. 材料は薄肉化. 表面に付着した分解物は容易に除去でき, 試験前と同じ外観が現れる. 24

表面反応型 <EP-MTHPA / NaOH> 厚さの変化 (MTHPA / DGEBA-EP) /(NaOH) 1 次式 x k 1 t どの条件でも, 厚さ変化は時間に対して直線関係にある. 25 表面反応型 <EP-MTHPA / NaOH> IR スペクトル 65,10%,120hr 80, 10%, 192hr 26

3.1.2 腐食層形成型 イソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂 NaOH 環境 ; 腐食層形成型 KOH 環境 ; 表面反応型 80, 50%NaOH, 500hr 80, 60%KOH, 71hr 27 腐食層形成型 1<Iso-UP / NaOH> 断面観察 変色層 非変色層 IR 測定 変色層 = 腐食層 28

腐食層形成型 1 <Iso-UP / NaOH> 腐食層形成速度 x = k 2 t x= h 0 -h 2 h h 0 29 腐食層形成型 2 <Iso-UP / KOH> 腐食層形成速度 x = k 1 t 材料科学 30

3.2. 全面浸入型の劣化挙動 材料の分解速度 << 環境液の浸入速度環境液が材料内部に浸入し, 完全に飽和状態になった後に, 表面と内部で同時に反応が起こる. 分解前に浸入した環境液を追い出せば, 強度がほぼ回復. 例 : アミン硬化エポキシ / 硫酸など 31 全面浸入型 環境液が浸入してから分解が始まる 樹脂に特有の腐食形態 ( 金属にはない ). オルソフタル酸系不飽和ポリエステル / 水, 有機溶剤 アミン硬化エポキシ樹脂 / 硫酸水溶液 全面浸入型の系は多くないが, コンクリートライニング用樹脂として多用されている アミン硬化エポキシ樹脂 と, 近年問題になっている 硫酸環境 の組み合わせは全面浸入型となる. 初期は環境液が浸入するだけ. その後, 表面と内部で同時に強度が低下. 32

全面浸入型 重量変化 長期浸漬実験結果 アミン硬化エポキシ / 硫酸 ( 重量変化率 ) 15000 hrs= 約 2 年間の浸漬実験結果 長期浸漬試験 EP1 硫酸 同じ傾向 水 乾燥重量 時間 33 全面浸入型 アミン硬化エポキシ / 硫酸 0.95 曲げ強度の経時変化を調べた. アルカリ環境では強度低下が全く見られない. 硫酸環境では, 一定時間経過後に強度が低下. 34

全面浸入型 アミン硬化エポキシ / 硫酸 ある吸液量に達すると, その後は重量変化なしに強度が低下. 非常に危険な腐食形態である. 35 3.3. 形態に基づく劣化機構 化学反応が主体な表面反応型と腐食層形成型 劣化層の下はほとんどバージンの状態 樹脂に特有の全面浸入型 環境液が入ってからあるとき急激に強度低下 拡散と反応によって統一的な理解が可能 形態による分類と腐食の機構 腐食層形成型 表面反応型 反応が早い 全面浸入型 拡散が早い 形態による分類と腐食の予測 腐食層形成型 表面反応型 保守が容易 全面浸入型 注意が必要 36

腐食の統一的な理解 腐食形態 表面反応 腐食層形成 拡散速度と反応速度の関係 拡散 << 反応 メカニズム 分子量 低 高 腐食生成物 拡散抵抗 材料と環境の例 無 ( 溶出 ) MDA-EP / HNO 3 PA-EP n=0 / KOH 無 有 Iso-UP / KOH PA-EP n=0.5 / KOH iso-up / NaOH PA-EP n 1 / KOH 中間拡散 反応 PA6 / H 2 SO 4 全面浸入拡散 >> 反応生成しない MDA-EP / H 2 SO 4 ortho-up / H 2 O boil 37 4. 劣化形態に基づく寿命予測 38

4.1. 腐食層形成型 : 加速因子とアレニウス 腐食層形成型 : 腐食層の形成速度 腐食層の形成速度 UP/NaOH; 時間に1/2 次 UP/KOH; 時間に1 次 温度因子 アレニウスプロット 濃度因子 反応速度式 39 4.1. 腐食層形成型 : 加速因子とアレニウス 腐食層形成型 : 腐食層の形成速度 腐食層の形成速度 UP/NaOH; 時間に1/2 次 UP/KOH; 時間に1 次 温度因子 アレニウスプロット 濃度因子 反応速度式 40

4.1. 腐食層形成型 : 加速因子とアレニウス 腐食層形成型 : 腐食層の形成速度 腐食層の形成速度 NaOH; 時間に1/2 次 KOH; 時間に1 次 温度因子 アレニウスプロット 濃度因子 反応速度式 最後に残るのは 材料因子??? 41 4.1. 表面反応型, 腐食層形成型の寿命予測 強度低下 サンドイッチモデル b 2x h 2x 表面反応型 x k 1 exp 腐食層形成型 x k 1 exp n Q / RT C t L iso-up, KOH n Q / RT C t L iso-up, NaOH RFS bh iso-up, NaOH iso-up, KOH 2 2 42

4.2. 全面浸入型の寿命予測 長期浸漬実験結果 アミン硬化エポキシ / 硫酸 ( 浸入深さ ) ( 環境液浸入 = 元素分析 ) 濃度分布はステップ状 浸入深さは長期に渡って時間の平方根に比例 43 EP 樹脂ライニング材料の浸透評価試験方法 アミン硬化エポキシ樹脂 透過試験装置 TP 厚さ約 300 m セル容量 100 ml 44

エポキシへの硫酸の浸透試験 S 元素が透過する時 phは急激に低下 SO 2-4 は急激に上昇 EP4 硫酸として透過する 透過時間が寿命の設計 45 寿命予測 3 420 10 x k2 t t 30 2 x 1.4 10 t 3 2 t 5.1 10 x 5,000 x k x 1.1 10 t 2 t 55 10 50 3 5 2 8.3 10 x 8.3 t 3 約半年 t 100 年 10 46 5

エポキシ樹脂への硫酸浸透速度の推定 浸透速度の温度依存性, 濃度依存性 硫酸浸透深さの時間変化 EP2 のマスターカーブ 47 硫酸浸透深さのマスターカーブ EP2:λ=2.4 10 9 C 0.5 e -6800/T EP7:λ=2.1 10 10 C 0.5 e -7625/T EP4:λ=3.1 10 3 C 3 e -4042/T EP9:λ=2.3 10 7 C 0.5 e -5400/T 樹脂毎にマスターカーブが得られる 任意の温度 濃度における浸透速度が求められる 種々の EP 樹脂のマスターカーブ 48

接着試験結果 硫酸がコンクリートまで到達したものだけ強度が落ちている ライニングの寿命は硫酸がライニングを透過するまで コンクリート 49