を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

Similar documents
平成18年3月17日

長期/島本1

( 平成 22 年 12 月 17 日ヒト ES 委員会説明資料 ) 幹細胞から臓器を作成する 動物性集合胚作成の必要性について 中内啓光 東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO 型研究研究プロジェクト名 : 中内幹細胞制御プロジェクト 1

研究成果報告書

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

スライド 1

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

PowerPoint プレゼンテーション

Establishment and Characterization of Cynomolgus Monkey ES Cell Lines

1. 背景生殖細胞は 哺乳類の体を構成する細胞の中で 次世代へと受け継がれ 新たな個体をつくり出すことが可能な唯一の細胞です 生殖細胞系列の分化過程や 生殖細胞に特徴的なDNAのメチル化を含むエピゲノム情報 8 の再構成注メカニズムを解明することは 不妊の原因究明や世代を経たエピゲノム情報の伝達メカ

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

Microsoft PowerPoint - 4_河邊先生_改.ppt

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

Microsoft PowerPoint - 資料6-1_高橋委員(公開用修正).pptx

3 SCN1A ips 2. SCN1A ips SCN1A GABA ips

資料 3-1 CREST 人工多能性幹細胞 (ips 細胞 ) 作製 制御等の医療基盤技術 平成 20 年度平成 21 年度平成 22 年度 10 件 7 件 6 件 進捗状況報告 9.28,2010 総括須田年生

STAP現象の検証の実施について

<1. 新手法のポイント > -2 -

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

<4D F736F F F696E74202D2097D58FB08E8E8CB1838F815B834E F197D58FB E96D8816A66696E616C CF68A4A2E >

PowerPoint プレゼンテーション

Untitled

背景 歯はエナメル質 象牙質 セメント質の3つの硬い組織から構成されます この中でエナメル質は 生体内で最も硬い組織であり 人が食生活を営む上できわめて重要な役割を持ちます これまでエナメル質は 一旦齲蝕 ( むし歯 ) などで破壊されると 再生させることは不可能であり 人工物による修復しかできませ

細胞老化による発がん抑制作用を個体レベルで解明 ~ 細胞老化の仕組みを利用した新たながん治療法開発に向けて ~ 1. ポイント : 明細胞肉腫 (Clear Cell Sarcoma : CCS 注 1) の細胞株から ips 細胞 (CCS-iPSCs) を作製し がん細胞である CCS と同じ遺

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

Microsoft PowerPoint - 資料3-8_(B理研・古関)拠点B理研古関120613

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

研究の詳細な説明 1. 背景細菌 ウイルス ワクチンなどの抗原が人の体内に入るとリンパ組織の中で胚中心が形成されます メモリー B 細胞は胚中心に存在する胚中心 B 細胞から誘導されてくること知られています しかし その誘導の仕組みについてはよくわかっておらず その仕組みの解明は重要な課題として残っ

<4D F736F F F696E74202D2097CE93E08FE188EA94CA8D EF D76342E B8CDD8AB B83685D>

れていない 遺伝子改変動物の作製が容易になるなどの面からキメラ形成できる多能性幹細胞 へのニーズは高く ヒトを含むげっ歯類以外の動物におけるナイーブ型多能性幹細胞の開発に 関して世界的に激しい競争が行われている 本共同研究チームは 着床後の多能性状態にある EpiSC を着床前胚に移植し 移植細胞が

PowerPoint プレゼンテーション

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

STAP現象の検証結果

Powered by TCPDF ( Title 造血器腫瘍のリプログラミング治療 Sub Title Reprogramming of hematological malignancies Author 松木, 絵里 (Matsuki, Eri) Publisher P

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 7 月 12 日 独立行政法人理化学研究所 生殖細胞の誕生に必須な遺伝子 Prdm14 の発見 - Prdm14 の欠損は 精子 卵子がまったく形成しない成体に - 種の保存 をつかさどる生殖細胞には 幾世代にもわたり遺伝情報を理想な状態で維持し 個体を

Untitled

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

本成果は 主に以下の事業 研究領域 研究課題によって得られました 日本医療研究開発機構 (AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム ( 平成 27 年度より文部科学省より移管 ) 研究課題名 : 遺伝子改変マーモセットの汎用性拡大および作出技術の高度化とその脳科学への応用 研究代表者 : 佐々木えり

細胞老化による発がん抑制作用を個体レベルで解明 ~ 細胞老化の仕組みを利用した新たながん治療法開発に向けて ~ 1. 発表者 : 山田泰広 ( 東京大学医科学研究所システム疾患モテ ル研究センター先進病態モテ ル研究分野教授 ) 河村真吾 ( 研究当時 : 京都大学 ips 細胞研究所 / 岐阜大学

生物の発生 分化 再生 平成 12 年度採択研究代表者 小林悟 ( 岡崎国立共同研究機構統合バイオサイエンスセンター教授 ) 生殖細胞の形成機構の解明とその哺乳動物への応用 1. 研究実施の概要本研究は ショウジョウバエおよびマウスの生殖細胞に関わる分子の同定および機能解析を行い 無脊椎 脊椎動物に

Untitled

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

科学6月独立Q_河本.indd

学報_台紙20まで

スライド 1

資料3-1_本多准教授提出資料

Untitled

icems ニュースリリース News Release 2009 年 12 月 11 日 京都大学物質 - 細胞統合システム拠点 ips 細胞研究を進めるための社会的課題と展望 - 国際幹細胞学会でのワークショップの議論を基に - 加藤和人京都大学物質 - 細胞統合システム拠点 (icems=アイセ

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

平成14年度研究報告

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

Microsoft Word - ~

報道発表資料 2001 年 12 月 29 日 独立行政法人理化学研究所 生きた細胞を詳細に観察できる新しい蛍光タンパク質を開発 - とらえられなかった細胞内現象を可視化 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 生きた細胞内における現象を詳細に観察することができる新しい蛍光タンパク質の開発に成

<4D F736F F D C668DDA94C5817A8AEE90B68CA45F927D946791E58BA493AF838A838A815B83585F8AB28DD79645>

Nature Digest News Feature

Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

Untitled

< 研究の背景 > 肉腫は骨や筋肉などの組織から発生するがんで 患者数が少ない稀少がんの代表格です その一方で 若い患者にしばしば発生すること 悪性度が高く難治性の症例が少なくないこと 早期発見が難しいことなど多くの問題を含んでいます ユーイング肉腫も小児や若年者に多く 発見が遅れると全身に転移する

ポイント 急性リンパ性白血病の免疫療法が更に進展! -CAR-T 細胞療法の安全性評価のための新システム開発と名大発の CAR-T 細胞療法の安全性評価 - 〇 CAR-T 細胞の安全性を評価する新たな方法として これまでの方法よりも短時間で正確に解 析ができる tagmentation-assis

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

この問題点の一つとして従来からの細胞培養法が挙げられます 長年行われている細胞培養法では 細胞培養フラスコやディッシュなどを使用していますが これらは実験者にとって操作しやすいものの 細胞自身に適したものでは決してありません それは 細胞が本来あるべき環境とは異なるからです 私たちの体において 細胞

研究成果報告書

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

Microsoft Word CREST中山(確定版)

気的な刺激により神経を興奮させ 体の動きを促すものです 脳深部刺 激療法(DBS 手術) しかし これも病気の進行を抑えるわけではなく 効果は次第に薄れてゆきます いずれの場合も 症状を一時的に緩和するような対症療法でしかな く パーキンソン病の根本的な治療法は未だありません 2. これまでのパーキ

資料110-4-1 核置換(ヒト胚核移植胚)に関する規制の状況について

遺伝子治療用ベクターの定義と適用範囲

論文の内容の要旨

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

科 学 技 術 動 向 2009 年 3 月号 細胞に関する研究動向 年 月号 科学技術動向 最終稿 概 要 ライフサイエンスユニット 客員 鷲見芳彦 本文は p.10 へ 細胞に関する研究動向と課題 ips 細胞に関する研究動向と課題 リライト ライフサイエンスユニット 客員研究官 鷲見芳彦 概要

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

<4D F736F F D F4390B388C4817A C A838A815B8358>

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

cover

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

-119-

RN201402_cs5_0122b.indd

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

Untitled

再生医療の可能性と倫理的限界 所属 : 医学 歯学 医療系 Ⅱ 2 年 7 組 39 番山中智裕 第 1 章はじめに 第 1 節主題設定の理由 2012 年に京都大学の山中伸弥教授が ips 細胞に関する論文によってノーベル医学 生理学賞を受賞したことを一つの契機に 現代の社会では世界規模で再生医学

Microsoft Word - 【広報課確認】 _プレス原稿(最終版)_東大医科研 河岡先生_miClear

平成21年度実績報告

Untitled

研究成果報告書(基金分)

<4D F736F F F696E74202D2095B68B9E8BE68E7396AF8CF68A4A8D758DC D18F4390B3816A2E B8CDD8AB B83685D>

Microsoft Word - 【プレスリリース・J】毛包再生非臨床 説明文 最終版.docx

体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見

コラーゲンを用いる細胞培養マニュアル

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

Transcription:

平成 19 年度実績報告 免疫難病 感染症等の先進医療技術 平成 15 年度採択研究代表者 山中伸弥 京都大学物質 - 細胞統合システム拠点 / 再生医科学研究所 教授 真に臨床応用できる多能性幹細胞の樹立 1. 研究実施の概要 胚性幹 (ES) 細胞は受精後間もない胚から樹立する幹細胞であり 様々な細胞へと分化する多能性を維持したまま 長期かつ大量に培養することが可能であることから 脊髄損傷 若年性糖尿病 心不全などに対する細胞移植療法の資源として期待されている しかし ヒト胚利用に関する倫理的問題や移植後の拒絶反応など 問題点も多い 私たちの研究目標は成体の細胞から ES 細胞と類似した多能性幹細胞を樹立し ES 細胞の持つ倫理的問題や拒絶反応を克服することである これまでに マウス線維芽細胞に 4つの転写因子 (Oct3/4 Sox2 Klf4 c-myc) をレトロウイルスで導入することにより ES 細胞に類似した多能性幹細胞を樹立することに成功し ips(induced pluripotent stem) 細胞と命名した 今後は 同技術をヒト細胞に適用するとともに レトロウイルスや c-myc の使用という安全性での課題を克服し 細胞移植療法に貢献することを目指す 2. 研究実施内容 私たちの研究目標は 体細胞や組織幹細胞から ES 細胞に類似した多能性幹細胞を樹立し 拒絶反応や倫理的問題のない 理想的な細胞移植療法を実現することである 平成 18 年度までの研究で 4 つの転写因子 (Oct3/4 Sox2 Klf4 および c-myc) をレトロウイルスベクターで導入し Fbx15 遺伝子の発現を指標に選択することにより マウス胎児線維芽細胞 (MEF) および成体尾部由来線維芽細胞 (TTF) から 多能性幹細胞 (ips 細胞 : induced pluripotent stem cell) を誘導することに成功した (Takahashi & Yamanaka, Cell, 2006) 本年度の研究においては ips 細胞樹立の分子機構の解明と より ES 細胞に近い ips 細胞の樹立を大目標として 具体的には次の各項目を目標 ( マイルストーン ) として設定し 研究

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細胞となるのは 1% 以下である これは レトロウイルス挿入による第 5 の因子の活性化が ips 細胞樹立に必要である可能性を示唆する そこで Inverted PCR 法などを用いて ips 細胞における共通のレトロウイルス挿入部位を探索するとともに ips 細胞樹立における役割を解析した その結果 マウス ips 細胞のゲノムにおける因子の挿入状況にクローン間で相同性はみとめられず ips 細胞の誘導に 染色体の特定位置への因子導入は不要であることが示唆された この結果得られた ips 細胞の由来や成立の機序における知見を 今後 ips 細胞の安全性向上に役立てていく 2.iPS 細胞の由来の探索及び 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導臨床応用を考える場合 成体に由来する細胞においても初期化を誘導することができるかが極めて重要な問題である これまでに成熟マウスの尾部に由来する線維芽細胞であっても 同じ因子の組み合わせで ips 細胞が樹立されることを示した 平成 19 年度においては 尾由来線維芽細胞に加えて 骨髄由来の間葉系幹細胞や 肝臓細胞 胃粘膜細胞などからの ips 細胞樹立を試みるとともに 由来の異なる ips 細胞の特性を比較した 具体的には マウス肝臓および胃の細胞から ips 細胞を誘導した 成体マウスの肝および胃の細胞に 繊維芽細胞と同じ因子を導入することにより ips 細胞を樹立することに成功した ips 細胞の樹立効率は上述のとおり低く その由来は線維芽細胞ではなく混在する組織幹細胞である可能性がある 肝細胞からの ips 細胞誘導時にあらかじめ表面抗原で分離した後 各分画の細胞に因子導入を行った 得られた ips 細胞の遺伝学的な解析により 肝細胞または肝前駆細胞が ips 細胞に変化したことを確認し ips 細胞は真に体細胞に由来することを明らかにした また 将来の臨床応用に向けて ヒト細胞から ips 細胞の樹立を試みた レトロウイルスによる 4 因子導入において 実験上の安全性を考慮しつつ ウイルスベクターの感染効率を上げる工夫することで ヒト成人皮膚由来の繊維芽細胞から ips 細胞を得た このヒト ips 細胞についても 形態や増殖能に加えて 遺伝子発現パターンもヒト ES 細胞と類

似していること 神経 心筋 軟骨 脂肪細胞 腸管様内胚葉組織などの細胞へと分化することを認め ES 細胞と同様の多能性を有していることを確認した 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立私達はこれまでに Fbx15 以外にも多くの ES 細胞特異的発現遺伝子にマーカー遺伝子をノックインしたマウスを作製している これらのマウスの体細胞から ips 細胞の樹立を行い 選択マーカーの違いによる ips 細胞の質の違いを解析した 具体的には ES 細胞特異的に発現する Nanog を指標として 4 因子を導入後 培養細胞から ips 細胞を選択した その結果 Nanog 遺伝子を指標として樹立した ips 細胞は 成体キメラマウスを経て全身が ips 細胞に由来するマウスを生むことを確認し ips 細胞は生殖系列へも分化できることが確認できた いわゆる Germline transmission が確認され ips 細胞の多能性を確認できた 一方で ただ これらのマウスの約 2 割において 甲状腺腫瘍の発生が観察された この腫瘍は 4 因子のひとつである c-myc のレトロウイルスに起因しているものと考えられた ips 細胞の腫瘍形成の課題を鑑み Myc 以外の 3 因子を用いた誘導法を検討した その結果 成体のマウスおよび成人皮膚細胞から ips 細胞の樹立に成功した Myc を用いて作製したマウス ips 細胞に由来するキメラマウス 37 匹中 6 匹のマウスは生後 100 日までに腫瘍の形成により死亡した 一方 Myc を用いずに作製した ips 細胞に由来するキメラマウス 26 匹には 生後 100 日までは腫瘍による死亡は認められなかったことから Myc を省略することにより安全性が向上することが明らかとなった また 私達はヒト皮膚細胞から Myc を用いずに ips 細胞を樹立することにも成功した 4 因子がいかに多能性を誘導するかを明らかにするため 各因子が結合する標的遺伝子を同定する アジレント社の Chip on Chip( クロマチン免疫沈降と DNA チップ技術を組み合わせたもの ) による網羅的な解析を進めた 本研究項目については 次年度に引き続き解析を行なう 4 因子にはそれぞれ複数のファミリー遺伝子が存在する これらの機能的に類似点と相違点の両者を有する どのファミリー遺伝子により ips 細胞の樹立が可能であるかを検討した 本研究項目については 次年度に引き続き解析を行う ips 細胞を創薬スクリーニングや移植治療へ応用するためには Fbx15 ノックインなどの遺伝子改変マウスからではなく 野生型マウスやラットから樹立できることが重要である

そこで 細胞播種密度の最適化や 分化細胞の増殖を抑制する薬剤の使用などにより マーカー選択を用いない ips 細胞樹立を試みた 本研究項目については 次年度に引き続き解析を行う 3. 研究実施体制 (1) 山中伸弥 グループ 1 研究者名 : 山中伸弥 ( 京都大学物質 - 細胞統合システム拠点 / 再生医科学研究所 教授 ) 2 研究項目 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 4. 研究成果の発表等 (1) 論文発表 ( 原著論文 ) 1. Aoi, T., Yae, K., Nakagawa, M., Ichisaka, T., Okita, K., Takahashi, K., Chiba, T., and Yamanaka, S. Generation of Pluripotent Stem Cells from Adult Mouse Liver and Stomach Cells. Science in press 2008. 2. Nakagawa, M., Koyanagi, M., Tanabe, K., Takahashi, K., Ichisaka, T., Aoi, T., Okita, K., Mochiduki, Y., Takizawa, N., and Yamanaka, S. Generation of induced pluripotent stem cells without Myc from mouse and human fibroblasts. Nat Biotechnol 26:101-106, 2007. 3. Takahashi, K., Okita, K., Nakagawa, M., and Yamanaka, S. Induction of Pluripotent Stem Cells from Fibroblast Cultures. Nat Protoc 2:3081-3089, 2007. 4. Takahashi, K., Tanabe, K., Ohnuki, M., Narita, M., Ichisaka, T., Tomoda, K., and Yamanaka, S. Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors. Cell 131:861-872, 2007. 5. Yoshikane, N., Nakamura, N., Ueda, R., Ueno, N., Yamanaka, S., and Nakamura, M. Drosophila NAT1, a homolog of the vertebrate translational regulator NAT1/DAP5/p97, is required for embryonic germband extension and metamorphosis. Dev Growth Differ

49:623-634, 2007. 6. Okita, K., Ichisaka, T., and Yamanaka, S. Generation of germline-competent induced pluripotent stem cells. Nature 448:313-317, 2007. (2) 特許出願平成 19 年度国内特許出願件数 : 0 件 (CREST 研究期間累積件数 : 6 件 )