2009 年 7 月 8 日マクロ経済中国 Global Research 人民銀行幹部が語る中国経済の成長とインフレ圧力 地元紙 中国金融 に掲載された人民銀行調査局の張建華局長発言の骨子 経済は V 字型回復が続くものの 来年以降加速度は低下し 今後 2 3 年の GDP( 国内総生産 ) 成長率は +8% 前後に 過剰生産能力の存在からインフレ圧力は相応に抑えられる 微調整は必要ながら 金融政策に大幅な変更の必要性はない 張建華人民銀行調査局長は 今週 地元紙 中国金融 で 中国の景気回復及びインフレリスクについて語った 以下はその発言骨子である 経済は回復下にある Qu Hongbin * Chief Economist The Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limited (HK) +852 2822 2025 hongbinqu@hsbc.com.hk Ma Xiaoping * Economist Associate *HSBC Securities (USA) Inc の非米国関連会社の従業員であり NYSE/NASD の RR ではありません 発行 :The Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limited ディスクレーマー / ディスクロージャー本レポートの末尾に記載されています 併せてお読みください 工業生産 (5 月は前年同月比 +8.9% 年率換算で前月比 +27.8%) や国内需要 (5 月の都市部固定資産投資は前年同月比 +38.7% 実質小売売上高は+17.4%) の力強い立ち直りを背景に 中国経済の回復傾向が鮮明となっている 一方 5 月の輸出は過去数ヶ月の大幅な減少を経て 前月比 +0.2% と増加した 09 年第 1 四半期のGDP 成長率に-4% の寄与度となった製造業の在庫調整も最終局面に近づいている 製造業の多くは 4 月及び 5 月には生産の減少幅が縮小 ないし回復に転じている さらに 新規プロジェクトの増加を背景に投資は急速に伸長 プロジェクトの多くは数年に亘るものであるため 投資も高い伸び率が維持される見込み また 政府は 家電下郷 汽車下郷 (= 農村部を対象とする政府による家電 自動車購入支援策 ) 等を実施 指定対象商品の購入に際し助成金を支給していることも引き続き消費を下支えすると見られる 政府が社会保障制度の整備拡充に取り組んでいることも 民間消費を下支えしている 銀行による人民元建新規貸出額は 1-5 月累計で 5 兆 8,000 億元に及んでおり 経済に十分な流動性を供給している これら全てのファクターから 第 2 四半期のGDP 成長率は前年同期比 +7%~+7.5% 超に 第 3 四半期は同 +8% 第 4 四半期は+9% 程度に達し 09 年全体で同 +8% に達すると見込んでいる
但し 2010 年以降は 成長率は+8% 前後にとどまると見る 2003-2007 年 輸出伸び率の平均は +25% であり 純輸出のGDP 成長への寄与度は 2.5% であった しかしながら 今後数年間 世界経済の成長率は金融危機以前に比べ低いレベルにとどまると見られ GDP 成長に対する外需の寄与度は 1% まで低下しよう 多くのセクターで生産能力が過剰となっており 中国も世界経済の減速による影響を受け 成長率は相対的に低い伸び率にとどまると見られる しかし 中国が引き続き世界で最も高い成長率を有する国のひとつであることに変わりはない デフレ圧力は緩和している 消費者物価指数 (CPI) と生産者物価指数 (PPI) は前年同月比でマイナスの伸び率が続いているが 物価水準はすでに底を打っている ベース効果を除けば CPI の前年比上昇率は 5 ヶ月連続でプラス PPI のマイナス幅は縮小しているためである 季節調整済 CPI は前月比で 3 ヶ月連続してプラス また 4 月以降の投入原材料価格の値上がり傾向を映し 季節調整済み PPI も前月比でプラスとなっている 国際商品価格が騰勢を強めていることは 3 月以降の輸入価格指数の押し上げ要因となっている 過去のデータから CPI インフレ率と需要及び生産の回復にはタイム ラグが存在することが検証されている 1997 年のアジア金融危機後 工業生産は 1998 年第 1 四半期に回復に転じたのに対し CPI の底打ちは 1999 年の第 3 四半期まで待たねばならなかった 資産価格が上昇し イールド カーブがスティープ化していることは デフレ懸念が遠のき むしろ 主要国の量的緩和策を背景に中期的にはインフレリスクが表れ始めていることを意味する 2009 年 3 月から 6 月中旬まで CRB 指数は 311 ポイントから 370 ポイントへと 18.8% 以上上昇した 尚 CRB 指数の上昇分に対するドル安の寄与率は 48.9% である 国際商品市況は 国内物価に重大な影響を及ぼしている 足下の国際商品市況が比較的高い水準にあることから 外的ショック の影響が強まっている 少なくとも近い将来 インフレ懸念はない 世界経済が安定的な回復期に入るまで 中国だけでなく世界的にインフレは穏やかなものにとどまろう 世界経済が持続可能な回復期入りした後も 世界の不均衡が再調整されることにより インフレリスクは低いままにとどまると見られる また 長期間に亘り インフレ抑制を行う金融当局にとっては 好ましい要因が幾つかある 1. 世界経済は引き続き縮小しており デフレリスクが依然存在する 中国の景気及び物価変動は国際市場の価格と正の相関関係がある 2. 先進国に比べ 中国の経済成長は投資と輸出への依存度が高い 経済に占める製造業のウェイトが高いこと 生産能力の過剰は深刻で 急速な経済成長を続けていた 2,3 年前でさえ設備稼働率は 80-90% であった そのため 過剰生産能力は物価抑制作用をもたらす 3. 当局はインフレ抑制に対して多くの経験を蓄積している 過去 30 年間 政府は 5 度インフレを抑えることに成功している さらに 高い貯蓄率と労働生産性 相対的に優位
な人件費 ( 人件費増加率 / 労働生産性増加率 ) は 物価に対して上昇よりも強い下方圧力をもたらす 金融政策に大幅な修正の必要なし 過去数ヶ月に亘る緩和的金融政策の実施は 成長を支え デフレ懸念を緩和し 資本市場を安定化させ 農業セクターと中小企業に信用を供給してきた 短期的には 政策方針に大幅な変更の必要はない 但し 金融当局は以下の潜在的なリスクに細心の注意を払う必要がある 1. 通貨供給量の増加と経済成長のギャップの拡大 通貨供給量 (M1) と工業生産の伸び率はともに歴史的な高水準にある 最近の経験から もし来期以降 M1 の増加率が 20% を超え続ける場合には 早ければ 2010 年前半にもインフレリスクが顕在化する 2. 資産価格の変動リスク 通貨供給量と実体経済に大幅なギャップが存在する場合 資産価格が急騰する可能性がある 一方 通貨供給量及び実体経済の減速が同時に発生する場合 資産価格の大幅な引き下げをもたらす可能性があることを意味する 3. 銀行の不良債権増加 及び地方政府の財政赤字の拡大 4. 中小企業の資金繰り難 景気刺激策による資金調達は大企業向けが中心であるため タイムリーで適切な調整は必要 緩和的金融政策は 今後数ヶ月に亘って維持すべきである 同時に タイムリーで適切な調整も必要である 政府は 安定的な景気回復を支える政策に焦点を当て 特に民間投資の市場へのアクセスを開放し 多方面から信用制度と資本市場の改善を加速させることが必要である
マクロ経済中国 2009 年 7 月 8 日 重要開示事項 本レポートはマクロ経済に関する情報提供を目的として作成されたものです 当レポートで使用しているグラフ 表等は参考データであり 将来の結果を保証するものではありません 本レポートの原文 ( 英語版 ) は HSBC グローバルリサーチに属するグローバルエマージングマーケット マクロ アンド ストラテジー チームによって 2009 年 7 月 8 日に発行されました 追加重要事項開示 : 以下 HSBC グローバルリサーチが発行するリサーチレポート アナリストレポートに関する重要事項を記述いたします アナリストの報酬は投資銀行部門を含む HSBC 全体の収益性を一部勘案して支払われます 本レポートを執筆したアナリストの証言 本レポートで述べられている個別企業や証券に関する見解はすべてアナリスト個人の見解を正確に反映したものであり アナリストの報酬は 直接 間接の別を問わず 本レポートで述べられている見解と一切関連がなく 今後もないことを証します HSBC は リサーチ業務に関連して起こる潜在的な利害の対立を適切に確認して 管理する手順を採用しています リサーチの作成と配布に従事している HSBC のアナリストとその他のスタッフは HSBC の投資銀行業務とは独立した管理報告ラインの下に業務を遂行しています 投資銀行業務とリサーチの間に適切なチャイニーズ ウォールを設置し 全ての機密および価格敏感情報が適切に取り扱われることを確実にしています 4
マクロ経済中国 2009 年 7 月 8 日 ディスクレーマー ( 当資料記載内容についてご留意いただきたい事項 ) 1. 当レポートは HSBC 投信株式会社 ( 以下 当社 ) が情報提供を目的として編集したものです したがって勧誘を意図したものではありません 2. 当レポートの内容は 当社が信頼に足ると判断する情報に基づき作成していますが その正確さを保証するものではありません 3. 掲載された企業につきましては あくまで直近のトピックとしてご紹介させていただいたものであり 個別銘柄の売買の推奨を意図したものではなく 当社が運用を行う投資信託への組入れを示唆するものでもありません HSBC 投信株式会社 金融商品取引業者関東財務局長 ( 金商 ) 第 308 号加入協会 /( 社 ) 投資信託協会 ( 社 ) 日本証券投資顧問業協会 103-0027 東京都中央区日本橋 3 丁目 11 番 1 号 HSBC ビルディング Tel:03-3548-5690 Fax:03-3548-5679 4. 当レポートにおける見解等は 作成時点のものであり 今後予告なしに変更される場合があります データ等は過去の実績を示したものであり 将来の成果を示唆するものではありません また 当社は 当資料に含まれている情報について更新する義務を一切負いません 2009 HSBC 投信株式会社無断転載を禁ず 4