もあるため 調理室内へは持ち込まないようにすることを理解させることが重要である その他 調理室内の網戸の破れによる不適が 26.8% の施設で見られた これは前年度とほぼ同値であり 改善が進んでいない 網戸の破れはハエなどの衛生害虫等の侵入経路になる可能性があるため 早急な補修が望まれる 一方 調理

Similar documents
目について以下の結果を得た 各社の加熱製品の自主基準は 衛生規範 と同じ一般生菌数 /g 以下 大腸菌 黄色ブドウ球菌はともに陰性 未加熱製品等の一般生菌数は /g 以下であった また 大腸菌群は大手スーパーの加熱製品については陰性 刺身などの未加熱製品については

1 施設設備の衛生管理 1-1 食品取扱室の清掃及び保守点検 < 認証基準 > 床 内壁 天井 窓 照明器具 換気扇 手洗い設備及び排水溝の清掃手順 保守点検方法が定められていること 床及び排水溝の清掃は1 日に1 回以上 その他の清掃はそれぞれ清掃の頻度の記載があること 保守点検頻度の記載があるこ

HACCP-tohu

PowerPoint プレゼンテーション


生活衛生営業 HACCP ガイダンス ( 旅館業用 ) 導入手引書 旅館業用衛生管理点検表 1 個人衛生管理点検記録個人衛生管理は 従事者の感染症対策を中心に基準条例 8 の従事者に係る衛生管理の項目を始業時点検として次の項目を確認する (1) 従事者は 下痢 嘔吐等の体調不良がないことを確認し 症

生活衛生営業 HACCP ガイダンス ( 食肉販売業用 ) 導入手引書 本ガイダンスでは まず メニュー調査表 と 調理工程表 によりそれぞれの施設の 危害要因分析 を行い 次にこの手引書の 衛生管理点検表 を HACCP の考え方を取り入れた 衛生管理計画 とし それを用いて モニタリング 記録の

食品衛生の窓

衛生管理マニュアル 記載例

衛生管理マニュアル 記載例

平成 30 年東京都食中毒発生状況 ( 速報値 ) 平成 30 年 8 月 31 日現在 8 月末までの都内の食中毒の発生状況が 東京都から公表されました 昨年と比較すると 件数では 30% 増 患者数では 46% 減となっています 最近 10 年間の平均と比較すると 患者数はほぼ同じですが発生件数

Ver.05 評価チェック表 (Ⅰ 製造環境の管理 ) 点 点 0 点 評価点数 A 施設設備機械器具の衛生管理 作業場内は 必要に応じて空調設備により温度管理を行っていますか温度管理している一部で温度管理されていない 温度管理していない ノロウイルス等の感染の原因とならないように トイレについて適

Microsoft PowerPoint - 資料3【厚労省】【1102差し替え】151117ノロウイルス【リスコミ名古屋,横浜】.pptx



-2 -

2. トイレの後には必ず手洗いをしましょう! 調査から 15.4% の方がトイレの後に手を洗わないことがあるという結果が得られました ( 小便後又は大便後に手を洗うのどちらかを選択しなかった方 どちらも選択しなかった方 トイレで手を洗わないを選択した方 の合計 ) Q10 特にこれからの季節に流行す

小金井市第三次基本構想後期基本計画策定委託プロポーザル実施要領

⑴ ⑵ ⑶

⑴ ⑵ ⑶

⑴ ⑵ ⑶

⑴ ⑵ ⑶

⑴ ⑵ ⑶


牛・豚処理工程の変更に伴う枝肉細菌汚染の変動について


⑴ ⑵ ⑶ ⑷ 1

食品衛生法施行条例等の一部を改正する条例



H18

滋賀県のHACCP推進の取組み

⑵ ⑶ ⑷ ⑸ ⑴ ⑵

1.9.1 管理基準の遵守状況を連続的又は相当の頻度で確認をするためのモニタリングの方法を設定し その文書を作成すること 十分なモニタリング頻度を設定することまた 設定した理由を整理しておくこと モニタリングに関する全ての文書と記録は モニタリングを行う担当者及び責任者による

Microsoft PowerPoint - 【別途配布1】食品衛生マニュアル

Microsoft PowerPoint - 食中毒って何?


Microsoft Word

<4D F736F F F696E74202D E392E33308D758F4B89EF288AB490F590AB88DD92B0898A29205B8CDD8AB B83685D>

Taro-入所マニュアル.jtd


<報道資料>

~ 目次 ~ 1. 手洗いマニュアル 2. 原材料の保管管理マニュアル 3. 加熱調理食品の中心温度及び加熱時間の記録マニュアル 4. 調理器具等の洗浄 殺菌マニュアル 5. 厨房設備等の衛生管理マニュアル

(案)

<4D F736F F F696E74202D20358FCD B68AC7979D C B8CDD8AB B83685D>


(1) 作成上の留意点 清潔で衛生的な食品の製造あるいは加工環境を確保するための要件を わが国では 一般的衛生管理プログラム と称しています このプログラムの内容は コーデックス委員会による 食品衛生の一般的原則 に示されたものと同じであり 安全で良い品質の食品を製造あるいは加工するための設備や器具

2 ( 178 9)

281


1 調達要求番号 : 7NMV1AY1002 標準仕様書 陸上自衛隊仕様書物品番号仕様書番号 3 承認作成平成 29 年 1 月 16 日食器洗浄及び清掃作業部外委託変更作成部隊名仙台駐屯地業務隊 1 総則 1.1 適用範囲この仕様書は 陸上自衛隊の仙台駐屯地食堂において実施する食器洗浄作業 食堂清

寝屋川市給食調理業務委託共通仕様書

管理の状況を日々安全確認できているかまた 学校給食調理員においては 衛生管理に対す学習を自身で行ったり 設置者の開催する学校給食に関する教育研修をしっかり受けているか またその研修会が開催されているかなどなど それぞれの立場に課せられた役割をしっかり実施して頂くことが 学校給食の安全を守り ひいては

平成 30 年更新時 目次 1. 作業区分 1-1) 作業の切替え ( 共通基準 1-4-1) 1-2) 調理従事者 2 2. 食品などの衛生的な取扱い 2-1) 食品添加物の使用 ( 共通基準 3-2) 2-2) 油脂の衛生管理 2 2-3) 加熱調理食品の冷却 3 2-4) 弁当の調整 4 2-

~ はじめに ( スプラウトを生産する方々へ )~ 食中毒が起きると 健康被害が出るだけでなく 原因と疑われる食品への信頼が失われ 消費が大きく減ることによって 経済的に大きな損失が出る可能性があります 多くのスプラウトは 加熱せずに生のまま食べられています このため スプラウトの生産 流通 販売

4. 加熱食肉製品 ( 乾燥食肉製品 非加熱食肉製品及び特定加熱食肉製品以外の食肉製品をいう 以下同じ ) のうち 容器包装に入れた後加熱殺菌したものは 次の規格に適合するものでなければならない a 大腸菌群陰性でなければならない b クロストリジウム属菌が 検体 1gにつき 1,000 以下でなけ

平成19年度 病院立入検査結果について

6/10~6/16 今週前週今週前週 インフルエンザ 2 10 ヘルパンギーナ RS ウイルス感染症 1 0 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 8 10 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目 )

⑥愛顔(えがお)つなぐえひめ国体・えひめ大会 食品衛生対策実施要領(案)【別紙2】.doc

2

従事者等の衛生管理点検表 氏名 下痢 嘔吐 発熱等 化膿創 服装 帽子 毛髪 履物 爪 指輪等 手洗い 点検項目 1 健康診断 検便検査の結果に異常はありませんか 2 下痢 嘔吐 発熱などの症状はありませんか 3 手指や顔面に化膿創がありませんか 4 着用する外衣 帽子は毎日専用で清潔のものに交換さ

<4D F736F F F696E74202D20834A D836F834E835E815B C E52967B81698E9696B18BC78F4390B3816A2E70707

障害者支援施設福寿荘給食業務委託仕様書 社会福祉法人平針福祉会 ( 以下 甲 いう ) が受託業者 ( 以下 乙 いう ) に委託する業務は 以下のとおりとする 1 委託業務実施場所 (1) 名称障害者支援施設福寿荘 (2) 所在地名古屋市天白区天白町大字平針字黒石 2878 番地 施設


⑴ ⑵ ⑶

<8AC7979D895E CC81698DC A2E786477>

スライド タイトルなし

 

Microsoft Word - Q&A(セット).docx

特別支援学校における介護職員等によるたんの吸引等(特定の者対象)研修テキスト

HACCP 自主点検リスト ( 一般食品 ) 別添 1-2 手順番号 1 HACCP チームの編成 項目 評価 ( ) HACCP チームは編成できましたか ( 従業員が少数の場合 チームは必ずしも複数名である必要はありません また 外部の人材を活用することもできます ) HACCP チームには製品

衛生管理要領項目 (1) 施設 設備等の衛生管理に関する事項 管理項目 内容 1. 施設内の衛生区分について ( ゾーニング 動線 物流線 ) 作業形態 ( または清浄度 ) で区画をし 各区画毎に衛生管理の基準を検討すること * 一般には 汚染区域には荷受 原料保管などの作業場 準清潔区域には下処

別記第 2 号様式 ( 第 3 関係 ) その 2 HACCP に基づく衛生管理導入の 評価調書 ( バックヤード編 ) ( 評価事業用 ) 評価施設名 評価の対象となった部門 実施年月日 平成年月日 評価実施者 申請にあたっては 評価の対象となった部門のチェックシートと HACCP 自主点検票を提

Microsoft Word - H19_04.doc

1 項目 内容事項 有 無配点得点有 無配点得点有 無配点得点有 無配点得点 1) 挨拶励行 気持良い挨拶励行の 1 実施 ) 疾病管理 健康診断 : 年 1 回 2 検便 : 年 2 回以上実施しているか ) 4) 5) 6) 製造室入室手洗い 消毒 製造室入室ローラー

(Microsoft PowerPoint - \220H\222\206\223\ \214\335\212\267\203\202\201[\203h)

表紙2

<4D F736F F D208E9197BF D488FEA90B68E5982B382EA82BD96EC8DD897DE82CC897190B68A EC091D492B28DB8817A>

Microsoft Word - QA通知0928.doc

第 1 票 学校給食施設等定期検査表 検査年月日年月日 ( ) 学校 ( 調理場 ) 名 給食従事者 : 栄養教諭等名 調理員名 定期点検票作成者 ( 職 氏名 ) 給食対象人員 給食調理室面積m2 建物の位置 使用区分 人 校長印 1 位置ア便所 ごみ集積場等からの位置は適切であるか A B C

スライド 1

( 参考資料 Ⅰ) 1 調理室等の汚染防止について大量調理施設衛生管理マニュアル ( 以下 マニュアル という )Ⅱ 3 (3) のとおり汚染作業区域 ( 検収場 原材料の保管場 下処理場 ) と非汚染作業区域 ( さらに準清潔作業区域 ( 調理場 ) と清潔作業区域 ( 放冷 調製場 製品の保菅場

スライド 1

平成29年度感染症対策研修会(基礎編)

品質管理初級者1

<95CA955C E94AD90B68FF38BB5816A2E786C7378>

PowerPoint プレゼンテーション

第 5 条保健所長は 必要に応じ 巡回指導を行い 営業施設の設置状況等の把握に努めるものとする 2 保健所長は 前項の調査の結果 別表に定める基準に適合しないと認めるときは 営業者等に対し 必要な措置を講ずるよう指導し 又は勧告するものとする 附則 この要綱は 平成 15 年 4 月 1 日から施行

youkou

文書番号


品質向上セミナー

FAX送付状

手洗いについて できてる? 手を洗う機会 ( 利用者 入所者 ) 来所時 食事前後 トイレ後 外出後 粘土など共有のリハビリ用品等を触った後 動物を触った後 手が汚れてしまった後 手を洗う機会 ( 看護 介護職員 ) 来所時 ( 通勤後 ) 調理時 配膳時 食事介助時 薬を扱う時 トイレの手伝い後

衛生法規に関する知識 問題 1 クリーニング業法に規定する営業者の衛生措置についての記述のうち 誤ってい るものはどれか 一つ選んでその番号を回答欄に記入しなさい 1 洗たく物の洗たくをするクリーニング所に 業務用の機械として 洗たく機 及び乾燥機をそれぞれ少くとも一台備えなければならない 2 クリ

第4章

<4D F736F F D D18E A778D5A8B8B B68AC7979D8AEE8F802E646F63>

Microsoft Word - 19 ‚¾Šz”©fi®”Ô.doc

(3) (1) (2) の報告後においても必要と認められる場合 県実行委員会および会場地実行委員会は追加して弁当調製施設を選定することができる その場合 県実行委員会および会場地実行委員会はそれぞれ (1) (2) の報告を速やかに行う (4) 医薬食品 衛生課は 報告のあった弁当調製施設が県外に所

日本トイレ協会メンテナンス研究会報告レポート〔第139回〕

Transcription:

[ 食品科学部 ] 保育所施設の衛生管理状況について 渡久地朝子 仲里尚子 當間千夏屋比久善昭 中川弘 1. はじめに有害微生物による健康被害としては 平成 8 年に発生した腸管出血性大腸菌 O157 による大型食中毒事件 1) また最近では県内をはじめ日本各地の学校あるいは保育所施設で発生したノロウイルスによる集団食中毒 2) が記憶に新しいが 近年の食中毒事件の大規模化傾向を踏まえ 大量調理施設をはじめ集団給食施設における衛生管理の徹底が求められている とりわけ抵抗力の弱い乳幼児が通う保育所施設では 喫食の対象となる年齢が低いことから 給食施設の衛生管理の徹底が重要な課題であることから 当センターでは市町村からの依頼により保育所施設における調理室及び保育室の衛生管理状況調査及び微生物検査を行い これら集団給食施設の衛生向上に寄与している 本調査研究では 前年度に引き続き保育所施設衛生管理調査及び微生物検査を整理し 保育所施設における食品衛生に係わる問題点と課題をまとめたので報告する 2. 調査方法 2-1 調査時期平成 17 年度 ( 平成 17 年 4 月 平成 18 年 3 月 ) 2-2 調査施設県内 28 市町村 82 施設の保育所 (4 月 7 月 :24 施設 8 月 11 月 :48 施設 12 月 3 月 :10 施設 ) 2-3 調査内容 保育所施設衛生管理状況調査は当センターの保育施設衛生管理状況調査票に従い 調理室においては環境衛生管理 施設 器具類の衛生管理 冷蔵庫等の衛生管理 食品の取り扱い 個人衛生等を 保育室では汚物処理 玩具等の衛生管理 保育室の衛生管理等の項目について目視及び聞き取りで調査を行った ( 保育施設衛生管理状況調査票の検査項目については別紙参照 ) 微生物検査は 調理室と保育室を対象とした 調理室では 調理作業中及び手洗後等の手指や調理器具等を 保育室では主に人の手によく触れる手洗場やお尻洗い場等の水道栓ガランや子供が直接口へ入れる可能性のある玩具等の拭き取り検査を行った 検査項目は一般生菌数 大腸菌群 黄色ブドウ球菌について実施した 3. 調査結果及び考察 3-1 調理施設の衛生管理 ⑴ 環境衛生管理環境衛生管理は 対象施設 82 ヶ所のうち 71 施設 (86.6%) に不適が認められた そのほとんどは調理室内に異物混入の原因となる鉛筆 ホッチキス マグネット等の持ち込みであり約半数の 45.1% の施設で見られたが 前年度より 14.4% 減少し改善が見られた また 調理室内に段ボール箱の持ち込みによる不適の施設も 22.0% 見られたが前年度と比べると 16.1% 減少し改善が見られた 段ボール箱は流通過程で汚染を受けている事が多く ゴキブリ等衛生害虫の巣になること 30

もあるため 調理室内へは持ち込まないようにすることを理解させることが重要である その他 調理室内の網戸の破れによる不適が 26.8% の施設で見られた これは前年度とほぼ同値であり 改善が進んでいない 網戸の破れはハエなどの衛生害虫等の侵入経路になる可能性があるため 早急な補修が望まれる 一方 調理室内の床面の状態については ドライ的に使用されている施設が多く認められた これは 学校給食施設と異なり 調理室の規模が小さく食数が少ないことによるものと思われる しかし 約 4 割の 22.0% の施設はまだ床面が濡れた状態なため今後もドライ運用を指導する必要がある ⑵ 施設 器具類の衛生管理施設 器具類の衛生管理は 82 ヶ所のうち 69 施設 (84.1%) に不適が認められた その中で最も頻度の高いものは 前年度と同様 手洗い設備の不備 によるものが 65.9% でその内訳は 手洗用水栓ガランが手動式 手洗い用水槽が小さい で 前年度より 5.5% の減少は見られたが まだ多くの施設において検討課題である ガランが手動式であれば 手指の洗浄 殺菌を行って水を止める際 手指を再汚染する可能性がある また 水槽が小さいと肘までの洗浄が困難なばかりでなく 周囲を手洗い時のハネ水で汚染する危険性があるため 手洗い場を自動式または足踏み式にして 水槽を肘まで洗浄可能な大きさに改善するように推進する必要がある また 手洗場の消毒液や爪ブラシ等備品類の不備が 15.9% の施設で認められた 正しい手洗い が励行できるよう備品類の完備を今後も指導する必要がある 一方 器具類の管理に関しては調理器具等の破損や劣化での指摘が多く見られ 前年度 に比べ 14.0% 増の 40.2% で不適が認められた 調理器具等の破損した部品が誤って食品に混入するといった異物混入の危険性があるため 早急な改善を促すよう指導する必要がある ⑶ 冷蔵庫等の衛生管理冷蔵庫等の衛生管理は 82 ヶ所のうち 42 施設 (51.2%) に不適が認められ 前年度より 22.6% も不適の施設に増加が見られた その殆どは冷蔵庫ドアパッキンの汚れによるものであった ドアパッキンは 1 回 / 週は清掃を行うよう指導する必要がある ⑷ 食品の取り扱い等食品の取り扱い等は 82 施設のうち 47 施設 (57.3%) に不適が認められた その内容としては 納入された冷蔵及び冷凍食材の温度測定を行い記録をとっていないが前年度は 46.4% であったが今年度は 25.6% 加熱調理時の中心温度の測定と記録に関して徹底されていない施設が 28.6% から 12.2% と 前年度に比べ約半数以上の施設で改善が見られた 大量調理施設衛生管理マニュアル では食材納入時に温度の測定を行い記録するよう求められていることから 今後も温度測定及び記録を徹底させるよう指導していきたい ⑸ 個人衛生個人衛生では 82 施設のうち 38 施設 (46.3%) に不適が認められた 主な指摘事項は 調理従事者が調理作業中にマスクを着用していないことによる不適が前年度は 39.3% であったが今年度は 20.7% と約半数の施設で改善された マスクの必要性が認識されたことによるものと考えられる 人の鼻や喉には黄色ブドウ球菌が存在し 咳やくしゃみと共に飛び散る可能性がある 万一食品を汚染すると事故につながる危険性があり 調理作業中は鼻までマスクを確実に 31

着用する必要がある 今後も指導する必要性を再認識させられた また 作業開始前の健康状態の確認記録がされていない施設も前年度の 35.7% から 11.0% と改善が認められた ノロウイルス感染の初期症状が風邪と酷似しており また県内の保育所施設でも集団発生したことから今後も 普段からの健康状態の確認記録を徹底するように指導する必要がある また 作業が替わる際や清潔な作業前等の手洗いが徹底されていない不適が前年度は 25.0% の施設で見られたが 今年度は 11.0% と減少し改善が認められた これからも どのような時に手洗いが必要なのかを考え 正しい手洗い を指導することを心掛けていきたい 3-2 保育施設の衛生管理 ⑴ 汚物処理汚物処理は 82 施設のうち 38 施設 (46.3%) に不適が認められた その大部分は前年同様 汚物処理後の水道栓ガランや水槽等の殺菌を行っていない ことで 40.2% であった 前年度より 8.5% の改善が見られたが まだ多くの施設において徹底されていないことが確認された トイレやおしり洗い場のガランなど人の手で触れるような場所は交差汚染の原因となることがあるため こまめに洗浄を行い 清潔に保つことが重要である ノロウイルスによる集団食中毒も増加傾向にあることから 今後も殺菌を徹底するように指導する必要がある 一方 汚物処理後の手指の洗浄 殺菌については 前年度 21.4% の不適から今年度は 7.3% とかなり改善が見られ 手洗いの必要性が認識されてきたことが伺えた 今後も手洗いの必要性を指導していきたい 今年度も 検査した全ての施設で 便で汚 れた衣類等を保育所内で洗う状況が確認された これは保育室内に便の臭気が残ったり 便の付いた衣類等をそのまま持ち帰らせると 保護者から苦情があるため 保育所で洗浄している 便などのついた衣類等を施設内で洗浄すると 食中毒や感染症等の病原菌を拡散する危険性があるためできるだけ施設内での洗浄は行わず密封し 保育室外の子供の生活に影響のない場所や位置で保管し 保護者に持ち帰ってもらうことが必要である 保育所施設及び保護者へ理解してもらえることが今後の課題である ⑵ 玩具等の衛生管理玩具等の衛生管理は 82 施設のうち 48 施設 (58.5%) に不適が認められた その主な内容は 使用後の洗浄 殺菌 での不適が 41.5% 使用済みと未使用の区別がされ保管 での不適が半数以上の 56.1% の施設で見られ 前年度より 8.2% 減少したが まだ玩具等の衛生管理の認識が不十分であると思われる 子供が直接口に入れる可能性のある玩具は使用後 洗浄 消毒を行い 専用の清潔な容器に保管するようにし 消毒済みと使用後の区別をする必要性を認識してもらえるよう今後も指導していきたい ⑶ 保育室の衛生管理保育室の衛生管理は 82 施設のうち 48 施設 (58.5%) に不適が認められた その多くは 保育室内天井に設置されている扇風機にホコリの付着が見られた ことでの指摘であり 前年度に比べると 16.8% 増の不適であった 高い場所にあるため 清掃が容易でないためと考えられるが定期的に清掃を行うことを推進する必要がある ⑷ その他その他の項目では 82 施設のうち 51 施 32

設 (62.2%) に不適が認められた その殆どは清掃用具の適切な管理での指摘が多く 30.5% の施設で不適であり 前年度とほぼ同値であった 清掃用具は乾燥するよう吊り下げて適切に保管することをこれからも指導する必要がある トイレの衛生管理では 殆どの施設で毎日清掃が行われているが 水洗レバーや便座の消毒まで行っている施設は 74.4% であり 残りの 25.6% の施設は消毒等が行われておらず 前年度とほぼ同値であった 近年 保育所施設においてもノロウイルス等の集団食中毒が増加傾向にある その主な原因として二次感染によることから 交差汚染を受けやすいガラン等は適宜洗浄 殺菌を行い 清潔に保ちノロウイルス等の予防に努めてもらうよう今後も指導する必要がある 砂場の管理が不適切の施設は前年度とほぼ同値の 28.0% であった 砂場においては犬 猫等による糞尿汚染を防ぐために 夜間は砂場にビニールカバーを掛けることが望ましい また 天気の良い日には砂の掘り起こしを行い太陽光による殺菌や乾燥による細菌の増殖を防ぐことも衛生管理上有効と思われる 大腸菌群の検出率は 33.4% から 20.0% へと減少し 改善が認められた 一方 離乳食等で使われるミキサーや洗浄のスポンジ等については 昨年 大腸菌群が検出された施設は 20.0% であったが 本年度は 37.5% と増加した この原因としては 洗浄方法や 洗浄後の殺菌 保管方法が徹底されていないことが考えられる 保育室では 昨年に比べ 調乳室の水道栓ガランについて微生物検査の結果が良好な施設が多く 改善が認められた 一方 沐浴場の水道栓ガランについては大腸菌群検出の施設が 6.2% から 22.9% へと大幅な増加が見られた 使用後のガラン等の洗浄 殺菌を徹底するよう今後も指導する必要がある 図 1 手指検査 ( 手洗い後 ) の一般生菌数年次比較 3-3 微生物検査の結果昨年 調理従事者の手洗い後の一般生菌数が 10 4 以上検出されたものは 10.8% であったが 本年度はすべて 10 4 未満であった ( 図 1) 一方 黄色ブドウ球菌の検出率は減少が見られたが 汚染指標菌である大腸菌群は前年度よりわずかに増加が認められた この原因としては 正しい手洗い方法 の励行や正しい手の殺菌方法 の認識が不十分であることが考えられる 調理器具等の検査結果では 昨年 冷凍冷蔵庫ドアパッキンの一般生菌数が 10 5 以上検出されたものが 55.6% であったが 本年度は 13.3% 4. まとめ今回の調査での 保育所施設の衛生管理の状況は以下の通りであった 4-1 調理施設で改善された内容は 納入食材の表面温度や加熱調理時の中心温度測定及び記録 調理作業前の健康状況の記録 調理作業中の正しい手洗い マスクの着用であった 4-2 保育施設では 汚物処理後の手指の洗浄 殺菌の実施に改善が認められた 4-3 調理施設での今後の改善点は 手洗い設備の充実 調理室内の網戸の補修 劣化した 33

器具類の補充など備品類の整備 異物混入の予防対策である 4-4 手洗いについては再度正しい手洗い方法 や正しい手の殺菌方法 について確認し 習慣づけることを指導する必要がある 4-5 保育施設での今後の改善点は 汚物処理後のガラン等の殺菌の徹底 玩具の使用済みと殺菌済みの区分け保管の実施 清掃用具の適切な保管である 当センターは 保育所施設や学校給食施設等の衛生管理状況の調査を行っているが 施設の形態は 生徒数 10 人 調理員 1 人という小規模校から食数が数千食といった大型センターまで多種多様である 小規模校については 沖縄本島から遠く離れた学校が多く 移動も苦労する 特に冬場は北風が強く 船の運航も危うい状況が多いが その中で私たちは 学校 保育所施設がある場所には必ず給食 が存在するので これからも小規模校から大型センターまで 衛生管理の重要性について指導 助言し 食中毒予防の一助となるよう取り組み さらには食の安全 安心に貢献していきたい また 明日を担う子供たちへ食 の大切さについても理解してもらえる一助となるよう努めていきたい 参考文献 1) 中川弘, 腸管出血性大腸菌 O157 感染症の予防とその検査法の現況, ジャパンフードサイエンス, 37 ⑷, 39-44, 1998. 2) 厚生労働省 : 平成 17 年食中毒発生状況 34

35

36