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Transcription:

資料 6 接着剤化学分析等調査 目的 アンカーボルトおよび覆工コンクリートコアから接着剤を採取しア, 各種化学分析等を行い, 接着剤の性状の変化を把握したもの 平成 25 年 3 月 27 日 ( 水 )

1 試験概要 (1) 接着剤採取による試験引抜き抵抗力試験実施箇所において 接着剤成分の劣化 変質 物性などに着目した化学分析を行う 実施機関 実施時期 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター 2013 年 ( 平成 25 年 )1 月 ~2013 年 ( 平成 25 年 )2 月 試験内容 赤外線分光分析 赤外線分光スペクトルにより接着剤の種類を判定し 引抜き抵抗 強さが良判定と不良判定の分析結果の比較により化学的変化 ( 劣化 ) の有無について確認する 熱重量測定 サンプル中の無機成分 ( セメント, 砂等 ) と有機成分 ( 樹脂等 ) の含有量を把握する 実施数量 調査箇所引抜き抵抗強さ赤外線分光分析熱重量測定 その他区間 12.2kN 以下 16 0 12.2kN 以上 3 2 1

接着剤採取箇所 ボルト試料 a. 表面 b. 内部 c. 孔内試料 引抜き後のボルトに付着した接着剤の表面から採取 引抜き後のボルトに付着した接着剤の内部から採取 アンカーボルト孔内に残存した接着剤を採取 3 2 a. 表面試料表面資料を切削する b. 内部試料 c. 孔内試料 2

(2) コア採取による試験引抜き抵抗力試験を実施していないアンカーボルトについて アンカーボルトを残したままて アンカボルトを残したままコア抜きを行い 接着剤の化学分析を行う 実施機関地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター (X 線 CT 分析 SEM/EPMA 分析 ) 独立行政法人土木研究所 ( 赤外線顕微鏡観察 ) 実施時期 2013 年 ( 平成 25 年 )1 月 ~2013 年 ( 平成 25 年 )2 月 試験内容 X 線 CT 分析 取得したコアについて アンカーボルトとコンクリート付着部分のアンカーボルトとコンクリート付着部分の 接着剤の様子の存在の有無を確認する ( 結果は資料 5.3に記載 ) 実施数量 赤外線顕微鏡観察 SEM/EMPA 分析 接着剤の化学劣化が起きている部位の劣化の範囲 深さなどを確認する SEM 画像により接着剤とアンカーボルト コンクリートとの界面や接着剤内部の 微細な亀裂の有無を調査する また EPMA ではナトリウム カルシウムなどの元素の分布を調べ 劣化状況を調査する 調査箇所打音試験結果 X 線 CT 分析赤外線顕微鏡観察 SEM/EPMA 天井板落下区間 - 2 1 1 その他区間 4-2 4-2 3

コア採取箇所 X 線 CT :2 個 SEM/EPMA:1 個 凡例 ボルトNo( 打音試験結果 : 試験項目 ) ---------------------------- 打音試験結果 : X 線 CT:X 線 CT 分析 SEM/EPMA:SEM/EPMA 分析 4

2 赤外線分光分析 接着剤の種類の判定 赤外線吸光スペクトル No.102 b-2 内部 29.8 21.6 不飽和ポリエステル樹脂の赤外線吸光スペクトル ( 例 ) 滝山榮一郎 ポリエステル樹脂ハンドブック ( 日刊工業新聞社 S63) より引用 代表試料の赤外線吸収スペクトル 1730cm 1 1 付近にエステル結合 (C=O O 収縮振動 ) によると思われる強い吸収ピーク 1270cm 1 付近にエステル結合 (C O 収縮振動 ) によると思われる強い吸収ピーク 不飽和ポリエステル樹脂の可能性が高い 5

2 赤外線分光分析 化学的変化の有無分析結果例 ( 引抜き抵抗強さ 32.3kN) No.102: No.102 b-2 内部 74.8 66.6 21.6 No.102 a-2 表面 31.0 6.1 22.7 赤外線吸収スペクトル 不飽和ポリエステルが加水分解すると 1570cm 1 付近 1400cm 1 付近の吸収ピークが増大し 1730cm 1 付近が減少する 本調査の結果では 1570cm 1 付近 1400cm 1 付近の吸収ピークがやや増大しているように見受けられるものの 1730cm 1 付近の吸収ピークは未だ大きい 不飽和ポリエステル樹脂の加水分解している可能性が考えられる ただし加水分解の程度は小さいものと推察される 6

2 赤外線分光分析 加水分解度合の定量分析方法 不飽和ポリエステル樹脂の劣化 ( 加水分解 ) による赤外線スペクトルの変化が特定できたことから これらを使った劣化の度合いの定量分析 ( 解析 ) が可能と考えられる 実施手順 11570cm 1 付近および1730cm 1 付近の吸収ピークそれぞれについて ベースラインからピークトップまでの高さを求める スペクトルは吸光度表示 21570cm 1 付近 /1730cm 1 付近の吸収ピーク高さの比を 当該スペクトルの加水分解度合の指標とする (1570cm 11 付近 /1730cm 11 比が大きいほど加水分解が進んでいることになる ) 7

2 赤外線分光分析 加水分解度合の定量分析方法 3 加水分解度合の定量分析結果 0.90 0.90 0.80 0.80 070 0.70 070 0.70 分析結果 1570/ /1730cm 1 比 0.60 0.50 0.40 0.30 1570/ /1730cm 1 比 0.60 0.50 0.40 0.30 a. ボルト表面試料 b. ボルト内部試料 c. 孔内試料 0.20 0.20 0.10 0.10 0.00 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 引抜荷重 (kn) 0.00 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 せん断引抜強さ付着強度 (N/mm2) (N/mm2) ボルトの引抜荷重と接着剤樹脂の赤外スペクトルにおける 1570/1730cm -1 吸光度比との関係 ボルトの付着強度と接着剤樹脂の赤外スペクトルにおける 1570/1730cm -1 吸光度比との関係 注 )1570/1730cm-1 比が大きいほど加水分解が進んでいる 加水分解度合の定量分析における考察 a 試料 ( ボルトに付着した樹脂表面から採取した試料 ) の分析によれば 付着強度が低いものでは加水分解の進行度が大きくなっている可能性が認められた a c 試料と b 試料のデータを比較すると 樹脂と覆工コンクリートの界面付近で樹脂の加水分解が進行していることがわかる 8

3 熱重量測定 資料 No. 1 赤外線分光分析による樹脂の劣化状況 TG/DTAチャート 表面試料 2 内部試料 3 表面試料 1では樹脂の劣化を示す 1727cm -1 付近の吸光度の減少 1570cm -1 付近の吸光度の増大が認められた 2, 3では樹脂の劣化は見られなかった 各資料共に樹脂に相当する常温から600 程度までの質量減少は 約 22%~34% セメント分に相当する温度領域 (450~500 及び500~800 ) で吸熱を伴う質量減少は見られなかった 9

3 熱重量測定のまとめ 分析したどの試料からも 有機成分 ( 樹脂など ) と無機成分 ( 骨材など ) の双方が検出された セメント成分は含まれていないものと推察される 有機 / 無機成分の含有率は接着剤樹脂の劣化の有無にかかわらずほぼ同じであったが 3 の試料のみ 他に比べて有機成分の含有率が高かった これは 3 のボルトを施工する際に 樹脂 / 骨材の撹拌が他に比べて不十分であったためと推察される 質量減少の開始 / 終了温度や分解 ( 燃焼 ) 温度を左右する因子は様々であり 今回のTG/DTAの結果と接着剤の劣化とを直接結びつけて議論することはできない 10

4 赤外線顕微鏡観察 分析結果例 (B45) 切り出し範囲 観察範囲と分析方法 分析箇所 分析方法 ボルトの横断方向の断面について分析 資料採取試料表面は研磨はせず 純水で軽く洗浄した後に分析に供した ボルト / 接着剤界面から接着剤 / コンクリート界面まで 接着剤部分をボルトの直径方向に 10 か所 ( ボルト近傍 1~3 中央 1~4 表面 1~3) の領域に区切り 領域ごとにそれぞれ15~30か所の測定ポイントについて顕微 ATR 法による赤外吸収スペクトルの測定 顕微 ATR( 減衰全反射 ) 法先の尖ったATRクリスタル (Geなど) と試料とを密着させ 赤外線をクリスタル / 試料界面で全反射させたときの反射スペクトルを測定する 11

4 赤外線顕微鏡観察 分析結果例 (B45) 試料表2 ボルト近傍 2 面の顕微鏡画像と各分析領域3 ボルト近傍 3 4 中央 1 における測定ポイン1 ボルト近傍 1 ト12

4 赤外線顕微鏡観察 分析結果例 (B45) 試料表面の顕微鏡画像と7 中央 4 8 表面 1 各分析領域における測定ポイン5 中央 2 6 中央 3 ト13

4 赤外線顕微鏡観察 分析結果例 (B45) 試料表面の顕微鏡画像と各分析領域における測定ポイン9 表面 2 10 表面 3 ト14

4 赤外線顕微鏡観察 分析結果例 (B45) 赤外線顕微鏡による接着剤断面の分析結果 分析結果 1 分析結果 2 ボルト近傍中央表面 各分析領域における吸光度比 同じ領域においても 吸光度比 ( すなわち加水分解の程度 ) に違いがあり ボルト近傍から接着剤表面に近づくにつれて徐々に大きくなっている 最表面では吸光度比が0.6となる測定ポイントがあるなど 接着剤の表面近傍で特に樹脂の加水分解が進んでいるものと考えられる 各領域における吸光度比の平均 それぞれの領域で得られたすべてのスペクトルにおける吸光度比の平均を求めた結果 ボルト近傍で0.18 中央で0.19 表面で0.22となり 接着剤の表面に近い領域 すなわちコンクリートと接する側の方が樹脂の加水分解がより進んでいることが示唆された 15

4 赤外線顕微鏡観察のまとめ 覆工コンクリートと接している接着剤表面の方が 樹脂の加水分解がより進んでいるものと思われる 接着剤表面からの距離が同程度であっても 樹脂の加水分解の進み具合に違いが見られる 16

5SEM( 走査型電子顕微鏡 )/EPMA (X 線マイクロアナライサ ) 分析 分析結果例 (B45) ボルト 接着剤 コンクリート 分析箇所 観察範囲 分析箇所 ボルトのネジ山 接着剤 / コンクリート界面 左図とほぼ同じ領域の SEM 像 ( 左 ) 光学顕微鏡 ( 右 ) 走査型電子顕微鏡 (SEM) 接着剤部分 17

5SEM( 走査型電子顕微鏡 )/EPMA (X 線マイクロアナライサ ) 分析 分析結果例 (B45) 図中の SEM 像は TN 内空側が上側 VFS = 1800000 count Si EDSによる接着剤近傍の元素分析結果 C O Zn Na Al Zn Fe Mg S K Ca Ca 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00 kev 試料表面は Si O C Ca Zn Na Al Fe K Mg S などの元素で構成されている特にSi Ca Oの含有量が多く 逆にK Mg Sの含有量は少ない Fe Fe Zn Zn 1SEM 像 ( 反射電子 ( 組成 ) 像 ) ボルトのネジ山 接着剤 / コンクリート界面 2 ケイ素のマッピング像 接着剤 / コンクリート界面 試料表面での濃度分布 (EPMA) Si K 接着剤部分 IMG1 ケイ素は鉱物の主要な構成元素であり 接着剤に含まれる骨材が砂や石などの成分だということがわかる 18

5SEM( 走査型電子顕微鏡 )/EPMA (X 線マイクロアナライサ ) 分析 分析結果例 (B45) 3 鉄のマッピング像 接着剤 / コンクリート界面 4 炭素のマッピング像 接着剤 / コンクリート界面 試料表面での濃度分布 (EPMA) Fe K C K 接着剤部分にも鉄元素が見られるが 施工時あるいは分析試料の加工時にボルト部分の鉄の破片が混入したものと考えられる 5カルシウムのマッピング像接着剤 / コンクリート界面 多くの炭素が検出され 有機物 ( すなわち樹脂 ) が多く存在していることが示唆される 6 カリウムのマッピング像 接着剤 / コンクリート界面 Ca K K K 濃度が比較的高い領域がカルシウム元素が検出された箇所コンクリート中の細孔溶液に含まれるカルシウムイオンが接着とほぼ一致しており 細孔溶液の接着剤部分への浸入が考え剤内部に浸入 ( 物質移動 ) してきた可能性が高いものと思わられる れる 19

5SEM( 走査型電子顕微鏡 )/EPMA (X 線マイクロアナライサ ) 分析 分析結果例 (4580) 図中の SEM 像は TN 内空側が上側 1 分析箇所 図中のSEM 像は TN 2SEM 像 ( 反射電子 ( 組成 ) 像 ) 内空側が上側接着剤/コンクリート界面分析箇所 ボルトのネジ山 試料表面での濃度分布 (EPMA) 3カルシウムのマッピング像コンクリート中の細孔溶液に含まれるカルシウムイオンが接着剤内部に浸入 ( 物質移動 ) してきた可能性が高いものと思われる 接着剤しているものと推察される /コンクリートトCa K 界面 ひび割れの発生が伺われる IMG1 4カリウムのマッピング像カルシウムと同様 コンクリートから接着剤へ細孔溶液が浸入 接着剤コンクリート中の細孔溶液に含まれるカルシウムイオンが接着/コンクリー界面20 K K

着剤/コンクリート界面 5SEM( 走査型電子顕微鏡 )/EPMA (X 線マイクロアナライサ ) 分析 分析結果例 (4580) 5 鉄のマッピング像接6 亜鉛のマッピング像 ボルトのネジ山 接着剤/コンク試料表面での濃度分布 (EPMA) Fe K リート界面Fe K Zn K 鉄 亜鉛 : ボルトに相当する部分から高濃度の鉄が検出され その外側 ( 接着剤側 ) に高濃度の亜鉛が検出されていることから 使用されているボルトは溶融亜鉛めっきボルトであるものと思われる 亜鉛めっき層の厚さは通常 100μm 程度であるが 亜鉛のマッピング像ではボルト表面から 1~2mm の領域にわたり 亜鉛の濃度が高くなっている これは めっき層から亜鉛が溶出していることを示唆しており ボルト周辺が湿潤環境であったことが伺える No. 4580 No. 4641 のボルト周辺でも 同様に広範囲にわたる亜鉛の溶出が認められた 21

5SEM( 走査型電子顕微鏡 )/EPMA (X 線マイクロアナライサ ) 分析 分析結果例 (4641) 1 分析箇所 図中の SEM 像は TN 内空側が上側 2SEM 像 ( 反射電子 ( 組成 ) 像 ) 接着剤 / コンクリート界面ボルトのネジ山 分析箇所 試料表面での濃度分布 (EPMA) 3カルシウムのマッピング像接着剤 / コンクリート界面 IMG1 ひび割れの発生が伺われる 4カリウムのマッピング像接着剤 / コンクリート界面 Ca K コンクリートのセメントに相当する部分により多くのカルシウムが含まれているおり コンクリート / 接着剤界面より 接着剤内部へも0.5~1.0mm 程度浸入している様子がわかる K K 試料から検出されたカリウム元素の絶対量が少なく カルシウムに比べて濃度分布の傾向は明確ではない 22

5SEM( 走査型電子顕微鏡 )/EPMA (X 線マイクロアナライサ ) 分析 分析結果例 (4847) 1 分析箇所 接着剤 / コンクリート界面 図中の SEM 像は TN 内空側が上側 2SEM 像 ( 反射電子 ( 組成 ) 像 ) 接着剤 / コンクリート界面ボルトのネジ山 分析箇所 試料表面での濃度分布 (EPMA) 3カルシウムのマッピング像接着剤 / コンクリート界面 IMG1 亀裂らしきものが生じている 4カリウムのマッピング像接着剤 / コンクリート界面 Ca K K K コンクリート / 接着剤界面より 接着剤内部へも1.0~1.5mm 程度浸入している様子がわかる コンクリート部分により多くのカリウムが含まれていることがわかるが 接着剤への浸入は明確ではない 23

5SEM( 走査型電子顕微鏡 )/EPMA (X 線マイクロアナライサ ) 分析 分析結果例 (4862) 図中の SEM 像は TN 内空側が上側 1 分析箇所 2SEM 像 ( 反射電子 ( 組成 ) 像 ) 接着剤 / コンクリート界面 ボルトのネジ山 分析箇所 試料表面での濃度分布 (EPMA) 3カルシウムのマッピング像接着剤 / コンクリート界面 IMG1 亀裂らしきものが生じている 4カリウムのマッピング像接着剤 / コンクリート界面 Ca K K K コンクリート / 接着剤界面より接着剤内部へ浸入したカルシウムは 接着剤部分のほぼ全域にわたって拡散し ボルトまで達カルシウムと同様 コンクリート / 接着剤界面より接着剤している様子がわかる 内部へ浸入している様子がうかがえる 24

5SEM( 走査型電子顕微鏡 )/EPMA (X 線マイクロアナライサ ) 分析 まとめ 光学顕微鏡および電子顕微鏡による観察の結果 No. 4580を除いて 観察した領域においてはボルト / 接着剤界面 接着剤 / コンクリート界面の密着性は良好であった No. 4580では ボルトの接着剤 / コンクリート界面は密着しておらず すき間が形成されていた 接着剤近傍の元素分析において 樹脂に相当する部分からカルシウム元素が検出された 素これは コンクリートの細孔溶液の成分である水酸化カルシウム等のアルカリ水溶液が コンクリート / 接着剤界面から接着剤内部へ浸入していることを示唆している No. 4862 では 接着剤にカルシウム成分が浸入している部分と 全く浸入していない部分とが混在していることがわかった 同一のボルトにおいても 周囲の水の影響を強く受けている箇所と そうでない箇所とがあり これがカルシウム成分の浸入状況の違いにつながっているものと推察される 元素の含有量が少ないカリウムのマッピング像は参考程度と捉えるべきである 25

6 接着剤分析結果のまとめ 試験結果 接着剤の種類は不飽和ポリエステル樹脂であることが確認された 赤外線分光分析 熱重量測定 赤外線顕微鏡観察 SEM( 走査型電子顕微鏡 ) /EPMA (X 線マイクロアナライサ ) 接着剤樹脂に加水分解が生じていることがわかった 覆工コンクリートに近い試料では 加水分解が進行しているほど付着強度が低くなる可能性が認められた ただし 加水分解の進行の度合は総じて大きいものではなかった た 接着剤に含まれる有機物 ( 樹脂 ) の成分は約 22~34% セメント成分は含まれていなかった 接着剤表面の方が 樹脂の加水分解がより進んでいるものと思われる 接着剤表面からの距離が同程度であっても 樹脂の加水分解の進み具合に違いが見られる 光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察したところ 一部のサンプルで接着剤にき裂らしきものが生じている可能性がある 接着剤近傍の元素分析において 樹脂と推定される部分からカルシウム カリウム元素が検出された これは コンクリートの細孔溶液の成分である水酸化カルシウムや水酸化カリウム等のアルカリ水溶液が接着剤へ浸入していることを示唆している 26