平成 25 年度化学入門講義スライド 第 3 回テーマ : 熱力学第一法則 平成 25 年 4 月 25 日 奥野恒久 よく出てくる用語 1 熱力学 (thermodynamcs) 系 (system) 我々が注意を集中したい世界の特定の一部分外界 (surroundngs) 系以外の部分 系 外界 系に比べてはるかに大きい温度 体積 圧力一定系の変化の影響を受けない よく出てくる用語 2 外界との間で開放系 エネルギーと物質の交換がある閉鎖系 物質の交換はないが エネルギーは交換できる孤立系 エネルギーも物質も交換できない よく出てくる用語 3 断熱過程 系と外界との熱交換のない過程 (adabatc process) 等温過程 系が一定温度で変化する過程 (sothermal process) 開放系 open system 閉鎖系 closed system 孤立系 solated system 透過的 dathermc 断熱的 adabatc よく出てくる用語 4 状態 圧力 (P) 温度(T) 成分のモル数 物理的状態 ( 液体 気体 固体など ) の特性状態関数 与えられた系の物理的状態の ( 状態変数 ) 決定に役立つ これらの値は (P, T, ) それまでの経歴によらない エネルギー 熱 Joule の実験 (1847 年 ) 糸を繋げたおもりを落下させることで水中においた羽車を回転させ 水温の温度変化を測定 水温の上昇 と熱とは等価 熱 エネルギーは相互変換される 1
w: 系が外界からされたを正に 系が外界にした : シリンダーで考えるとわかりやすい 外界の圧力は変化しない p ex = f 力 = 断面積 圧力 = 力 距離 = 圧力 体積変化 系が外界にした : P ex = 0 P ex P nt P ex > P nt -w = P この ( 微小の ) が最小になる が最大になる 自然膨張しない P の向き 系 ( 気体 ) が圧縮され ( 膨張し ) た場合 ( 等温過程 ) f p f p 理想気体を仮定する 系の圧力は変化する 気体の状態方程式 :P=nRT この面積部分がされたとなる w = f pd w = f pd nrt w = f f 1 d f w = nrt[ln ] nrt d nrt(ln f ln ) f nrt ln < 0 P f p f p ln : 自然対数 (log e ) ( f < ) 系はをされている 熱 熱容量 (heat capacty): q C = T q= C T 1 g 当たりの熱容量 : Cs ( 比熱容量 ) 1 mol 当たりの熱容量 : Cm( モル熱容量 ) 一定圧力 C p ( 定圧熱容量 ) 一定体積 C v ( 定容熱容量 ) 膨張時の熱流入 理想気体の等温膨張を考える 1 等温なので 理想気体分子の運動エネルギーの総和は変化しない 2 系 ( 気体 ) が外界にしたは何に変わったのか?( 系はエネルギーを失う ) 3 熱 (q) に変化した q= w q= nrt f ln 2
内部エネルギー (U) 系の持つエネルギーはどのように追跡したらよいのか? 構成粒子の運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの総和とする しかし U は測定することができない ( 電子や原子核を構成する全ての粒子の運動エネルギーやポテンシャルエネルギーが含まれているため ) 内部エネルギー : U 1 mol 当たりの内部エネルギー : Um 内部エネルギー変化 : U = U f U エネルギー保存則 熱力学第一法則 あらゆる変化においてエネルギーは生成消滅せず その総和は常に一定である ( あるいは ) 系と外界とのエネルギーの和は常に一定である U = q + w U: 内部エネルギー U: 内部エネルギー変化 q : 外界から系に加えられた熱量 w: 外界が系にした ( 系がされた ) と熱の方向 内部エネルギー U U = q + w エネルギー U も状態関数状態 1 から状態 2 へと変化した場合 U = U 2 U 1 w > 0 w < 0 q > 0 q < 0 熱量 熱量 熱容量 (heat capacty): U(T,, ) U(T) 従って 等温過程では 理想気体の場合 粒子の体積 粒子間相互作用は無視する U = 0 q = -w 熱容量 エンタルピー 一定体積ならば w = 0 U = q Cv = 一方 通常の反応などは定圧であることが多いので これを扱い易くする エンタルピー (enthalpy): H H = U + P U T 状態関数 一定圧力下での状態変化を考える 一定圧力下なので U = q p + w (P) = P -w = P H = U + (P) H = q p P + P H = q p 定圧条件ではエンタルピー H は熱量と等しい 3
一定圧力ならば 熱容量 Η = q p C p = H T Η = U+P C p = U/ T +P / T C p = C v +R 1 mol 当たり 理想気体では C p, m C v, m = R C v = 3R/2 第 2 章のポイント 熱 エネルギー 熱容量 ( 定圧 定容 ) 内部エネルギー 熱力学第一法則 エンタルピー 熱化学 定圧条件での反応は q p の代わりに H を用いる これによって体積変化を気にせずに扱える 高校までの熱化学方程式 H 2 (g) + 1/2O 2 (g) = H 2 O(g) + 242 kj/mol 発熱反応 これからの表記 H 2 (g) + 1/2O 2 (g) H 2 O(g) H = - 242 kj/mol 生成熱あるいは生成エンタルピー H 2 O(l) 熱化学 状態変化に伴うエンタルピー変化 : H が状態関数であることを用いる ヘスの法則 : 複数の過程からなる変化に伴うエネルギーの出入は 個々の過程における出入りの代数和に等しい ( 経路によらない ) Η = +283 kj/mol H 2 (g) + 1/2O 2 (g) Η = -242 kj/mol H 2 O(g) Η = +41 kj/mol 標準生成エンタルピー エンタルピーの 0 を何処にとるか? 元素の基準状態 : 水素 :H 2 酸素 :O 2 窒素 :N 2 フッ素 :F 2 塩素 :Cl 2 気体気体気体気体気体 普通の条件下で元素が最も安定に存在する形態 (298K) 水銀 :Hg 液体 臭素 :Br 2 液体 ヨウ素 :I 2 固体 炭素 :C 固体 ( グラファイト ) 硫黄 :S 固体 ( 斜方晶系 ) ナトリウム :Na 固体 標準生成エンタルピー 標準生成エンタルピー : H (25, 101.325 kpa) 単位 (kj/mol) 例 )25 の水素 ( 気体 ) と酸素 ( 気体 ) から 25 の気体の水蒸気ができる反応 H H 2 (g) + 1/2O 2 (g) H 2 O(g) 0 0-242 kj/mol H =-242 0 = - 242 kj/mol 4
標準生成エンタルピー (p. 485) 例 )25 の水蒸気から 25 の水 ( 液体 ) ができる ( 相転移 ) H f H f H 2 O(g) H 2 O(l) 液化 - 242-286 H =-286 + 242 = - 44 kj/mol H 2 O(l) H 2 O(g) 気化 - 286-242 H =-242 + 286= 44 kj/mol 吸熱 相転移のエンタルピー例 )0 の氷から0 の水 ( 液体 ) ができる H 2 O(s) H 2 O(l) 融解 ( 液化 ) fus H 273.15 K H = 6.01 kj/mol 吸熱 H 2 O(l) H 2 O(s) 凝固 ( 固化 ) freeze H H = -6.01 kj/mol 発熱 vap H con H 相転移のエンタルピー 例 )100 の水から100 の水蒸気ができる H 2 O(l) H 2 O(g) 蒸発 ( 気化 ) 373.2 K H = 40.7 kj/mol 吸熱 H 2 O(g) H 2 O(l) 凝縮 ( 液化 ) H = -40.7 kj/mol 発熱 相転移のエンタルピー 例 )0 の氷から 0 の水蒸気ができる ( 昇華 ) 通常 : 固体 液体 気体昇華 : 固体 気体 経路を考えることが重要 sub H = fus H + vap H 氷 (0 ) 水 (0 ) 水 (100 ) 水蒸気 (100 ) 水蒸気 (0 ) 水と水蒸気の熱容量が必要 C p H = T H 1 = 436 + 248.5 = 684.5 kj H 2 (g)+1/2o 2 (g) H o = -242 kj/mol エンタルピーダイアグラム ( 水 ) 2H(g) + O(g) H 2 O(g) H 2 =?? H = H 1 + H 2 H 2 = -242 684.5 = - 926.5 kj O-H 結合エネルギー 463.3 kj / mol H 2 O の O-H 結合エネルギー : 499 kj / mol OH の O-H 結合エネルギー : 428 kj/mol 結合エネルギー 例 ) メタン分子 CH 4 におけるC-H 結合の結合エネルギー C(g) + 4H(g) CH 4 (g) この過程で生成するエンタルピーの 1/4 を結合エネルギーと考える C(s) C(g) 2H 2 (g) 4H(g) C(g) + 4H(g) CH 4 (g) C(s) + 2H 2 (g) CH 4 (g) H 1 = 715 kj H 2 = 872 kj H 3 =?? H f = -74.9 kj 5
エンタルピーダイアグラム ( メタン ) C(g) + 2H 2 (g) C(s) + 2H 2 (g) H 1 = 715 kj C(g) + 4H(g) H 2 = 872 kj H 3 =?? H f = -74.9 kj CH 4 (g) H f = H 1 + H 2 + H 3 H 3 = -74.9-715 - 872 = - 1662 kj C-H 結合エネルギー 415.5 kj / mol U と H の差 問 )100 1 気圧で 2.00 モルの H 2 と 1.00 モルの O 2 が反応し 100 1 気圧で 2.00 モルの気体の水を生成したとき全体で 484.5 kj が放出された 1 モルの H 2 O(g) の生成に伴う (a) H と (b) U はいくらか 2H 2 (g) + O 2 (g) 2H 2 O(g) U と H の差 (p.479) 解 ) 一定圧力なので w = 0 従って q p = H = -484.5 / 2 = -242.3 kj mol -1 燃焼熱 ( メタン ) CH 4 + 2O 2 (g) CO 2 (g) + 2H 2 O(l) C(s) + 2H 2 (g) + 2O 2 (g) U = H - P だから U = H nrt U = H + RT ( n = -1) RT = 8.314 373 = 3.10 kj (2 mol 当たり ) 1.55 kj (1 mol 当たり ) U = -242.3 + 1.55 = -240.7 kj mol -1 H o = -74.8 kj/mol CH 4 (g) + 2O 2 (g) H = -890.3 kj/mol H 1 = -286x2-393.5 = -965.1 kj/mol CO 2 (g)+2h 2 O(l) キルヒホッフの法則 異なる温度での反応熱をどのようにして求めるか? H 2 (g) + 1/2O 2 (g) H 2 O(l) H 2 (g) + 1/2O 2 (g) (x K) r Η = -?? H 2 O(l) (x K) Η = C p,m ( 反応物 ) Τ Η = C p,m ( 生成物 ) Τ H 2 (g) + 1/2O 2 (g) (298 K) H 2 O(l) (298 K) r C p =ΣνC p,m ( 生成物 ) ΣνC p,m ( 反応物 ) 温度範囲が狭い場合のみこの方法が使える 自発変化とその方向 どのような反応が自発的に進行するのであろうか? これまでの知識 : 発熱反応は自発的に進行する例 ) 水素分子と酸素分子から水分子が生成する H 2 (g) + 1/2O 2 (g) H 2 O(g) H = - 242 kj/mol 発熱反応 6