平成14年1月20日

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平成14年1月20日

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日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

産業トピックス

第1章

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Microsoft Word R-Focus14-047原油価格下落の影響.docx

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

経済情報:日銀短観(2011年6月)の結果について.doc

現代資本主義論

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【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

エコノミスト便り

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物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

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スライド 1

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経済・物価情勢の展望(2016年10月)

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

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経済・物価情勢の展望(2018年1月)

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

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長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

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第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

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別紙2

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

4月CPI~物価は横ばいの推移 耐久財の特殊要因を背景に、市場予想を上回る3 ヶ月連続の上昇

29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

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利上げを躊躇させる英国家計債務の増大

今月の経済金融情勢2018年11月30日号

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

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2015 年 3 月 9 日 対外 対内証券投資の動向 (2015 年 2 月分 ) 投資信託委託会社等による対外証券投資が大幅増加 財務省の 対外及び対内証券売買契約等の状況 ( 指定報告機関ベース ) によると 2 月の対外証券投資は +2 兆 6,754 億円の取得超となり 前月の +2 兆

受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

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今月の経済金融情勢2018年12月25日号

12月CPI

資料1

原油高で消費者物価と家計のエネルギー負担額はどうなる?

第45回中期経済予測 要旨

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

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< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

経済見通し

第2章_プラントコストインデックス

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

円安の波及効果と企業収益に与える影響

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

2012 年 10 月 15 日号

ブラジル中国インド インドネシア ロシア 図表 新興国の消費者物価上昇率 ( 単位 :%)( 資料 :IMF 世界経済見通し ) 通常であれば 成長率が低下すれば 国内の需給バランスが緩和し むしろ物価は低下するのが自然である しかし 中国以外の カ国は逆に物価上

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

【ロシア最新経済金融週報】

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

金融政策決定会合における主な意見

Invesco Premia Plus Fund

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

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中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

インドネシア港(%) ラリア査対象とするが 一部の国については統計上の制約から部分的な言及にとどめている 2. 原油価格上昇の影響に関する理論的考察 (1) 油価上昇と交易条件 交易利得 / 損失本稿では 交易条件の変化により起こる国家間の所得移転を示す交易利得 / 損失を油価上昇の影響を測る手段と

PowerPoint プレゼンテーション

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

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2017年上半期の為替相場展望

関西経済レポート (2019 年 9 月 ) 令和元年 (2019 年 )9 月 30 日 ~ 輸出減少が継続 インバウンド消費はプラスの伸びを維持 ~ 足元の経済情勢と当面の見通し 関西経済は輸出 生産が斑模様であるが 内需が下支えとなり底堅く推移している 企業部門では 輸出は中国経済の減速等によ

月例経済報告

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果の平均は 残留が 44% 離脱が 40% と僅差ながら残留が離脱を上回っている ( 第 1 表 ) ただしここで 調査方法毎の平均をみると インターネットを通じたオンライン調査の結果 は 残留が 40% 離脱が 41% と拮抗状態にあるのに対し 電話調査では残留が 47% 離脱 が 38% と残留

○ユーロ

定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

グローバル株式市場を俯瞰する~2015年8月末データで見る市場動向~

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金融調査研究会報告書 新次元の金融政策のあり方

統計から見た三重県のスポーツ施設と県民のスポーツ行動

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

我が国中小企業の課題と対応策

Transcription:

平成 16 年 ( 年 )1 月 15 日 NO.-17 原油価格の高騰がわが国経済へ及ぼす影響を考える 高騰続く原油価格原油価格の高騰が続いている 注目度の高い米国 WTI 原油の先物価格は 先月末に 1 バレル 5 ドルの大台に達した後 足元でも過去最高となる同 5 ドル台前半程度で推移している こうしたなか 先般の G7 財務大臣 中央銀行総裁会議では 原油価格の上昇が世界経済のリスクであると警戒感が示されたほか わが国においても 日銀が金融経済月報で 原油価格の動向と その内外経済への影響については 引き続き留意する必要がある と指摘するなど 原油価格高騰に対する懸念が内外で急速に強まっている 今回の原油価格高騰の背景には まず 世界経済の急拡大に伴い 原油に対する需要がこれまでにない勢いで急増したことがある 国際通貨基金 (IMF) によれば 今年の世界経済の成長率は 5.% と 年の IT バブル時を超える高水準の伸びが予想されており とりわけ中国を中心とした新興市場諸国の成長ぶりは際立っている ( 第 1 図 ) こうしたなか 国際エネ 第 1 図 : 世界経済の成長率と原油価格の推移 ( ドル / バレル ) ( 前年比 %) 55 1 5 5 35 世界経済の成長率 ( 右目盛 ) 先進国の成長率 ( 右目盛 ) 新興市場諸国の成長率 ( 右目盛 ) 原油価格 ( 左目盛 ) 1 8 3 5 15 1 5 1996 1997 1998 1999 1 3 ( 注 )1. 原油価格は WTI 原油先物 直近値は 1 月 1 日 ~1 日の平均値. 成長率は実質 GDP ベース 直近値は 年第 1 四半期 ( 資料 )IMF World Economic Outlook September Bloomberg ( 年 ) 6 1

ルギー機関 (IEA) によれば 今年の原油需要は前年比 +3.% と 9 年代以降で最も高い伸びとなり このうち中国の寄与が約 3 割に及ぶと予想されている こうした需要要因に加えて 産油地域の政情不安や供給余力低下に対する懸念といった供給側の要因 さらには 投機資金の流入が 原油高に拍車をかけている 評価できる原油高に伴うコスト増への耐性問題は 原油価格高騰がわが国経済に及ぼす影響だが これには輸入代金の増加というコスト面からの直接的なルート ( 産油国への所得移転 ) と 海外経済を介した間接的なルートがある まず 直接的なルートについては わが国経済は過去と比べ 原油価格高騰に対して耐性を強めていることは見逃せない 第一に指摘できるのは 円高がクッションの役割を果たしている点である 第 1 表はこれまでの原油価格急騰局面における価格動向をドルと円ベースでみたものだが 今回局面においてドルベースでは直近ボトム比 +116% 上昇しているものの 円の対ドル相場が円高方向に推移していることで 円ベースでみれば同 +96% の上昇に抑えられている 197 年代の石油危機当時には 原油高がわが国貿易黒字の減少を招き それを受けた円安が円ベースの原油価格をさらに押し上げるという悪循環に陥りやすかった しかし 9 年代以降は 輸出競争力の向上もあって 原油高が貿易黒字の減少に繋がりにくくなっており 為替はむしろ円高気味に推移することで原油価格の上昇テンポを相殺する構図になっている 第 1 表 : 原油価格急騰局面の原油価格 ( ドル 円ベース ) の比較 第一次石油危機第二次石油危機湾岸危機前回局面今回局面 73 年 9 月 7 年 1 月 78 年 1 月 81 年 1 月 9 年 6 月 9 年 1 月 98 年 1 月 年 1 月 1 年 11 月 年 1 月 価格ドルベースの原油価格 11.7 ドル 38.3 ドル 3.3 ドル 3. ドル 37.9 ドル ( 変化率 ) (+79%) (+18%) (+18%) (+199%) (+116%) 円ベースの原油価格 3,89 円 8,857 円,196 円 3,75 円,193 円 ( 変化率 ) (+38%) (+3%) (+19%) (+175%) (+96%) 円ドル相場 1.8% の円安 17.9% の円安 15.6% の円高 7.8% の円高 9.5% の円高 ( 注 )1.1バレルあたり金額( 円換算額は公表円ドル相場による当室換算値 ). わが国が主に輸入する中東産原油を採用した ただし 統計の制約上 第一次 第二次石油危機はアラビアン ライト 湾岸危機以降の局面はドバイベース 3. ドルベースでみた直近ボトムとピーク時を比較 ( 資料 ) 日銀 Bloomberg 等

第二に わが国の原油に対する依存度がやや長い目でみて低下してきている これはわが国のエネルギー効率が向上してきたことが大きい 実際 実質 GDP 一単位を産出するのに必要な原油輸入量 (= 原油輸入量 実質 GDP) は オイル ショック当時の約半分程度の水準にまで低下しており ( 第 図 ) 欧米との比較でもわが国のエネルギー効率は高い ( 注 ) 1. 第 図 :GDP1 単位の生産に必要な原油量 1. 1..8.6.. 7 71 7 73 7 75 76 77 78 79 8 81 8 83 8 85 86 87 88 89 9 91 9 93 9 95 96 97 98 99 1 3 ( 注 ) 原油輸入量 ( 千キロリットル ) 実質 GDP(1 億円 ) として計算 ( 資料 ) 内閣府 国民経済計算 財務省 貿易統計 ( 年度 ) ( 注 ) 世銀 World Development Indicators によれば わが国におけるエネルギー効率指標 ( エネルギー消費 1 単位 あたり購買力平価ベース GDP) は 5.8 と 米国の. やドイツの 5.6 に比べて相対的に高い このようにわが国経済は 原油価格高騰に伴う直接的なコスト増に対して耐性を増しているわけだが 仮に原油価格が足元の 1 バレル 5 ドルで高止まった場合 ドル程度で推移していた場合と比べてどの程度の悪影響が生じるのか試算した 結果をみると ( 次頁第 表 ) 3 年度の原油輸入量を前提とすれば わが国全体では約 1 兆円弱のコスト負担増を余儀なくされ 実質 GDP は少なくとも約.% 下押される計算となる 部門別にみれば 家計については その影響が総じて軽微にとどまる一方 企業部門へより悪影響が及ぶことになる これは 家計については 個人消費に占める石油製品等の割合が.3% 程度 ( 年実績 ) と小さい一方 企業部門では小売段階での競争が激しいため 投入コスト増の最終財価格への転嫁が遅れ 収益を下押すとみられるためである 3

第 表 : 原油価格の高騰がわが国経済に及ぼす影響 ( 原油価格が足元並みの 1 バレル =5 ドルで推移した場合 ) (%) 企業部門 家計部門 合計 企業収益 可処分所得の減少幅 1.. - 実質設備投資 個人消費の減少幅.7.1 - 実質 GDP 成長率への影響.1.. ( 注 )1. 原油価格が今年度内 1バレル5ドル (1 月 1 日 ~1 日平均 ) で推移した場合 同 ドル程度で推移した場合と比べてどの程度の悪影響が生じるかをラフに試算した ( 価格上昇による直接的効果のみ試算. 波及効果は含まない ). 個人消費への影響 = 可処分所得への影響 ( 企業によるコスト増の人件費への転嫁分. なお 転嫁率は企業収益と人件費の相関関係からラフに1% と想定した ) 消費性向 (.9. 当室想定 ) + 石油製品価格の上昇によるデフレータ変化率 ( 価格転嫁率 1.3%. 当室推計 ) 3. 設備投資への影響 = 実質キャッシュフロー変化率 弾性値 (.91. 当室推計 ). 為替相場への影響は無いものと想定 ( 年度は前年比 1.8% の円高 ) ( 資料 ) 財務省 法人企業統計季報 内閣府 国民経済計算 総務省 消費者物価指数 等 警戒が必要な外需経由のインパクトただし より注意が必要なのは外需を通じた悪影響であろう 経験則として単に結果だけをみても 世界経済が原油価格高騰後に大幅な減速を余儀なくされてきている ( 次頁第 3 図 ) とりわけ 海外経済の中でも わが国輸出に占めるシェアが急上昇しているアジアへの悪影響が大きくでやすい点は懸念される 例えば国際エネルギー機関 (IEA) の試算でみても 原油価格が 1 ドル上昇した場合 アジア諸国のエネルギー効率は相対的に低く 実質 GDP への悪影響は OECD 諸国の約 倍に上るとされている なかでも 輸出先として急速に存在感を高めている中国について アジア開発銀行の試算をみると 原油価格が ドル程度上昇し高止まった場合 中国経済は 1.5% も下押しされる 価格の高騰が続くことで アジア経済を中心に海外経済が減速すれば 足元 原油高によるコスト増の悪影響を和らげている輸出数量の増加が期待しにくくなる 今回の景気回復局面においても 輸出の増加が企業の生産活動や収益 設備投資回復の起点となっており 輸出の変調は当然わが国経済全体へ波及する虞が強い

1 第 3 図 : 原油価格高騰前後の世界経済の動向 ( 前年比 %) ( 前年比 %) 1 8 6 世界経済の実質 GDP 成長率 ( 右目盛 ) 原油価格 ( 左目盛 ) 8 6-73 7 75 78 79 8 81 8 89 9 91 99 1 3 5 < 第一次石油危機 > < 第二次石油危機 > < 湾岸危機 > < 前回局面 > < 今回局面 > - ( 注 )1. 指標の注目度が高い欧米の原油価格を採用 統計の制約上 原油価格は第二次石油危機まではブレント 湾岸危機以降は WTI ベース. 年の成長率は IMF 見通し 原油価格は 9 月実績の前年比 ( 資料 )IMF ホームページ Bloomberg 等 なお 金融市場を通じた悪影響にも目配りが必要である 米国経済の回復力など そもそも世界経済の先行きに対する不透明感が強いなか とりわけ内外の株価は企業収益の圧迫要因である原油高に過敏になっている感は否めない 仮にわが国の株価が大幅な下落に転じた場合 マインドの改善に依存する格好で増加してきた個人消費への悪影響が懸念されるほか 企業が設備投資を控える一因として作用する虞もありそうだ こうしてみると わが国においては 円高や高いエネルギー効率など原油高のインパクトを緩和するプラスの材料があるのも事実だが 海外経済減速を通じた外需への波及を踏まえると 原油高の悪影響には警戒的な見方が必要ということになろう 今回の景気回復期間が戦後の平均に及ぶなど すでに成熟局面にあるだけに 原油価格の行方には細心の注意が欠かせない (H16.1.15 岩岡聰樹 ) 当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり 何らかの行動を勧誘するものではありません ご利用に関しては すべてお客様御自身でご判断下さいますよう 宜しくお願い申し上げます 当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが 当室はその正確性を保証するものではありません 内容は予告なしに変更することがありますので 予めご了承下さい また 当資料は著作物であり 著作権法により保護されております 全文または一部を転載する場合は出所を明記してください 発行 : 株式会社東京三菱銀行調査室 1-8388 東京都千代田区丸の内 -7-1 5