分野毎の検討における体制・検討フロー(案)

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分野毎の検討における体制・検討フロー(案)

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平成 28 年度第 1 回鳥取県道路メンテナンス会議出席者名簿 所属役職氏名出欠 たみや会長国土交通省中国地方整備局鳥取河川国道事務所長田宮 じんぐう副会長国土交通省中国地方整備局倉吉河川国道事務所長神宮 やまうち副会長鳥取県県土整備部道路企画課長山内 やまもと副会長西日本高速道路株式会社中国支社米

熊本地震の緊急調査報告

土木学会西部支部・調査報告

並柳橋 ( 鋼製支承損傷 ) 桑鶴大橋 ( 斜張橋の支承逸脱 ) 10 km 新幹線高架橋 ( 防音壁落下 ) 新幹線脱線 新幹線高架橋 ( 損傷 ) 神園跨道橋 ( 傾斜 ) 大切畑大橋 ( ゴム支承破断 ) 高速道路陥没 二俣橋 ( 石橋損傷 ) 秋津川橋 ( 鋼製支承破断 ) 扇の坂橋 ( ゴ

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国土技術政策総合研究所資料

【論文】

4 健全度の把握及び日常的な維持管理に関する基本的な方針 健全度の把握の基本的な方針橋梁の長寿命化を図るため 定期点検要領に基づき5 年に1 回の定期点検を実施していきます また 定期点検の結果に基づく診断結果 ( 健全度 ) を長寿命化修繕計画に反映させていきます 日常的な維持管理に関する基本的な

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スライド 1

21 されていた橋では 橋の機能回復が速やかにできたか は生じていない 写真 1 の 2 橋は 上部構造の幅 どうかという耐震性能の観点からは 損傷は限定的な 員や橋脚の寸法等に違いはあるが 構造形式は概ね同 ものであった 道路橋では 過去の震災経験を踏まえ 7 様であり 振動特性も近似していると推

1

資料 1 3 小規模附属物点検要領 ( 案 ) の制定について Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

津波被害(あなたの家は大丈夫か)

検討の背景 10Hz を超える地震動成分の扱いに関する日 - 米の相違 米国 OBE (SSE ) EXCEEDANCE CRITERIA 観測された地震動が設計基準地震動を超えたか否かの判定振動数範囲 : 1Hz - 10Hz (10Hz 以上は評価対象外 ) 地震ハザードのスクリーニング (Ne

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した 気象庁は その報告を受け 今後は余震確率の公表方法を改めることとしたという 2. 被害状況 被害要因等の分析 (1) 調査方針本委員会は 以下の調査方針で 被害調査と要因分析を行っている 1 極めて大きな地震動が作用し 多数かつ甚大な建築物被害が生じた益城町及びその周辺地域に着目して検討を進め

会を開かせていただきました ところで 先般の熊本地震ですが 高速道路も九州自動車道や大分自動車道でのり面や橋梁の損傷が発生し 一般道路の被災では ご案内のとおり 阿蘇大橋地区の国道 57 号や325 号が寸断 県道では橋梁やトンネルが連続的に損傷して 本震直後は約 200カ所で通行止が発生していると

に対する検証が必要である 石橋と熊本城跡の被害今回の熊本地震で震度7 が2 回発生した前震と本震により 熊本県内の多くの石橋や熊本城跡など多くの建造物の文化財が被災した 国重要文化財の通潤橋(1854年築造)をはじめとし 熊本県指定文化財である菊池市の永山橋(1878年)と立門橋 御船町の八や勢せ目

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1, H H17 4.2H17

地震発生後の九州地方整備局の活動 4 月 16 日の夜明け 本震の後に再度調査を実施しておりま す その際は 道路崩壊の調査 土砂崩壊の箇所の調査 被 災地に入るための安全ルートの確認等を実施しております 次に九州地方整備局の活動について紹介させていただき ます まず最初に地震発生後の初動体制につい

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資料 4 安全 安心の確保 ~ 道路の防災 震災対策 ~ Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

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○○○○○○○の実験

国土技術政策総合研究所資料

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Microsoft Word - 熊本地震現地調査速報(福島) rev.docx

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算回数活動開始からの経過日数積平成 28 年熊本地震の概要 ( 震度及び地震の頻度 ) 4 月 14 日 21 時 26 分に熊本地方で M6.5 の地震が発生 また 16 日 01 時 25 分にも M7.3 の地震が発生 これらの地震により熊本県で最大震度 7 を観測 このほか 4 月 14 日

道路橋の耐震設計における鉄筋コンクリート橋脚の水平力 - 水平変位関係の計算例 (H24 版対応 ) ( 社 ) 日本道路協会 橋梁委員会 耐震設計小委員会 平成 24 年 5 月

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平成28年熊本地震八次調査報告(HPアップ版v3)反映

8 章橋梁補修工 8.1 橋梁地覆補修工 ( 撤去 復旧 ) 8.2 支承取替工 8.3 沓座拡幅工 8.4 桁連結工 8.5 現場溶接鋼桁補強工 8.6 ひび割れ補修工 ( 充てん工法 ) 8.7 ひび割れ補修工 ( 低圧注入工法 ) 8.8 断面修復工 ( 左官工法 ) 8.9 表面被覆工 (

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合同委員会概要(サマリー)160929最終+0930修正反映

熊本地震橋梁被害調査報告書.indd

いても示すこととした 極めて大きな地震動が作用し 多数かつ甚大な建築物被害が生じた益城町及びその周辺地域に着目して被害調査と分析等の検討を進めることとした 規模の大きな鉄骨造や鉄筋コンクリート造 鉄骨鉄筋コンクリート造( 以下 鉄筋コンクリート造等 という ) の建築物については 熊本市内などの地域

9.4 道路橋の耐震設計における部分係数設計法に関する研究 表 1 橋梁の被害と復旧に要する一般的な時間の整理 陸上部の鉄筋コンクリート橋脚 単柱 の場合 ここでは 陸上部を想定して整理した結果を示している 現在の新設橋については 設計地震動に対して概ね被災 ランクはC相当に該当するところである 表

特集大規模自然災害からの復旧 復興 参考 警察が検視により確認している死者数 50 名 災害による負傷の悪化または避難生活等における身体的負担による死者数 106 名 6 月 日に発生した豪雨による被害のうち熊本地震と関連が認められた死者数 5 名建物被害全壊 8,360 棟, 半壊 3

図 維持管理の流れと診断の位置付け 1) 22 22

耐震等級 ( 構造躯体の倒壊等防止 ) について 改正の方向性を検討する 現在の評価方法基準では 1 仕様規定 2 構造計算 3 耐震診断のいずれの基準にも適合することを要件としていること また現況や図書による仕様確認が難しいことから 評価が難しい場合が多い なお 評価方法基準には上記のほか 耐震等

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177 箇所名 那珂市 -1 都道府県茨城県 市区町村那珂市 地区 瓜連, 鹿島 2/6 発生面積 中 地形分類自然堤防 氾濫平野 液状化発生履歴 なし 土地改変履歴 大正 4 年測量の地形図では 那珂川右岸の支流が直線化された以外は ほぼ現在の地形となっている 被害概要 瓜連では気象庁震度 6 強

東日本大震災 (H ) 地震時の情報収集や提供に関する課題 国 地方公共団体などが連携した被災者や物資輸送者への交通関係情報の提供 大震災直後は 各管理者から別々に通行止め情報等が提供されたため 被災地までの輸送ルートの選定が困難な状況 国が集約して提供を始めたのは10 日以上過ぎた3/

土木学会論文集の完全版下投稿用

「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の改訂に伴う島根原子力発電所3号機の耐震安全性評価結果中間報告書の提出について

鋼構造建築物の耐震診断と熊本地震

熊本地震災害調査レポート(速報)

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別紙 3 点検表記録様式 様式 1( その1) 橋梁名 所在地 管理者名等 橋梁名 路線名 所在地 起点側 緯度 経度 学園橋 ( フリガナ ) ガクエンバシ 町道上中下中線 鹿児島県熊毛郡南種子町中之下 管理者名 点検実施年月日 路下条件 代替路の有無 自専道

Microsoft Word - ...v.n.k...P.doc

A B) km 1 0 0km 50km 50km (A)(B) 2,600 13,100 11,800 2,600 13,100 11,800 ( 2,476) (12,476) (11,238) 9,190 8,260 7,3

大震災の時のような大都市ではなかったことが大きいと考えられる 地震発生時刻は夕食の準備をしている可能性の高い時間帯であったが 比較的火災も少なく済んでいる この地震でクローズアップされたのは震災関連死 というものであった 内閣府の防災情報に掲載されている死者の死因を見てみると 地震による家屋の倒壊な

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国土技術政策総合研究所 研究資料

1 首都直下地震の概要想定震度分布 (23 区を中心として震度 6 強の想定 ) 首都直下地震 想定震度分布 出典 : 中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループ 首都直下地震の被害想定と対策について ( 最終報告 ) ( 平成 25 年 12 月 ) 2

1 平成 28 年熊本地震の概要 発生日時 前震 平成 28 年 4 月 14 日 21 時 26 分 本震 平成 28 年 4 月 16 日 1 時 25 分 震央地名熊本県熊本地方同左 マグニチュード 震度 6 弱以上を観測した自治体 震度 7 益城町益城町 西原村 震度 6 強

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Microsoft Word - セッション1(表紙)

熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 について 熊本地震における建築物被害の原因を分析するため 国土交通省は建築研究所と連携して 熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 を設置 国土技術政策総合研究所 建築構造基準委員会 ( 委員長 : 久保哲夫東京大学名誉教授 ) と建築研究

残存耐力有無の閾値となる変形率に対象施設の桟橋高さを乗じることにより, 残留水平 変位に関する残存耐力評価指標を予め算出する. 算出した残存耐力評価指標と被災後の外 観調査で得られる施設天端の残留水平変位と比較することにより, 速やかに鋼部材の応力 状態の概要を把握することができる. dir = 残


1. 西部ガス熊本支社管内の観測 SI 値 西部ガスの地震計が観測した SI 値 供給停止判断基準の SI 値 60 カイン以上を広範にわたり観測 須屋 82.4 カイン 熊本工場 77.0 カイン 津久礼 49.6 カイン 菊陽第一 69.0 カイン 徳王 83.6 カイン 竜田 カイ

熊本地震に思うこと

様式 ( その2) 状況写真 ( 損傷状況 ) 部材単位の判定区分がⅡ Ⅲ 又はⅣの場合には 直接関連する不具合の写真を記載のこと 写真は 不具合の程度が分かるように添付すること 上部構造 ( 主桁 ) 判定区分: Ⅰ 写真 1 床版 01 上部構造 ( 横桁 ) 判定区分: Ⅲ 写真 2 竪壁 0

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スライド タイトルなし

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Microsoft PowerPoint 「平成28年熊本地震活動記録(第17報) 案-2.pptx

3.地震の揺れによる人間の行動と負傷の関係

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地震に強い道路橋設計講習会 2007 年 3 月 1 日 落橋防止構造設計ガイドライン ( 案 ) の概説落橋防止構造で想定する地震の影響と性能目標 落橋崩壊形を想定した落橋防止構造の設計への一提案 ガイドラインの位置付け 平成 14~16 年度 落橋防止構造に関する研究委員会 での検討成果 ( 行

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橋 梁 長 寿 命 化 修 繕 計 画

国土技術政策総合研究所 研究資料

9 箇所名 江戸川区 -1 都道府県東京都 市区町村江戸川区 地区 清新町, 臨海町 2/6 発生面積 中 地形分類 盛土地 液状化発生履歴 近傍では1855 安政江戸地震 1894 東京湾北部地震 1923 大正関東地震の際に履歴あり 土地改変履歴 国道 367 号より北側は昭和 46~5 年 南

ブレースの配置と耐力

3. 既設基礎の耐震診断フロー ( 案 ) 既設基礎の耐震補強の必要性の有無は 現行の耐震耐震設計法 1) および求める耐震性に応じて判断する必要がある 特に自治体などでは既設橋梁の耐震診断すらも遅れており 国土強靭化に向け早期の対応が求められている その際に 適正な耐震診断のためには当然土木技術者

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国土技術政策総合研究所 研究資料

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横浜市のマンション 耐震化補助制度について

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早期劣化橋梁に対するモニタリングの取組み MONITORING FOR CONCRETE BRIDGES WITH EARLY-AGED DETERIORATION 深田宰史 *, 宮下剛 **, 鈴木啓悟 ***, 浦修造 **** Saiji FUKADA, Takeshi MIYASHITA,

コンクリート工学年次論文集 Vol.28

Super Build/FA1出力サンプル

05

Transcription:

資料 4-1 課題 論点に対する今後の対応 ( 橋梁分野 ) Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

耐震補強の効果の検証 2 兵庫県南部地震を受けて 耐震設計基準の改訂 緊急輸送道路等について耐震補強などを進めてきた結果 一部の橋梁を除いて 地震の揺れによる落橋 倒壊などの致命的な被害は生じていない 兵庫県南部地震による被害との比較 表 -1 地震の揺れによる落橋 倒壊事例 兵庫県南部地震 熊本地震 発生年 平成 7 年 平成 28 年 最大震度 震度 7 震度 7 落橋数 11 橋 (47 径間 ) 2 橋 (6 径間 ) ふりょう 府領第一橋 ( 後述 ) 田中橋 ( 斜面崩壊等によるものを除く ) 写真 -1 県道小川嘉島線府領第一橋 土木学会会長特別調査団調査報告 (H28.4.30) 兵庫県南部地震などの過去の地震被害を教訓に 耐震設計基準の改定 耐震補強などを進めてきた 今回の地震被害を見ると この成果が着実に効果をあげていることが確認された 耐震補強の効果があった事例 ( 緊急輸送道路としての機能を速やかに回復した事例 ) 写真 -2 平田 小柳線田中橋 耐震補強が未実施で被害を受けた事例 桁 写真 -3 国道 3 号跨線部 国道 3 号の橋梁では 耐震補強の実施により 損傷は限定的であった あそぐち 写真 -4 阿蘇口大橋 ( 国道 57 号 ) 橋台 写真 -5 アンカーバーのイメージ 写真 -6 支承の破損の状況 支承が損傷したものの アンカーバーによる補強により 損傷は軽度であった ( ブロックのひび割れから アンカーバーに力が作用したことがわかる ) 写真 -7 段落し部の損傷ちゅうおうせんりっきょう市道 (1-3) 中央線 中央線陸橋

耐震補強の効果の検証 熊本県内 大分県内の震度 6 弱以上を観測した地域における緊急輸送道路において 速やかに機能を回復するという目標を達成できなかった橋が12 橋あり 緊急輸送等の大きな支障となった これまで取り組んできた耐震補強により 落橋しないための対策は完了 していたものの 速やかに機能を回復するための対策が十分でなかったこと等が原因と考えられる 今後 緊急輸送道路等の重要な橋について 被災後速やかに機能を回復できるよう耐震補強を加速化する必要がある 高速道路 直轄国道については 兵庫県南部地震と同程度の地震に対して 落橋 倒壊等の致命的被害を起こさないレベルの対策は完了 写真 -1 支承部の損傷及び橋脚の傾斜 きやまがわ ( 九州自動車道 木山川橋 ) 写真 -2 支承部の損傷に伴う桁端部の浮き上がり くわづる ( 県道熊本高森線 桑鶴大橋 ) 凡例 地図 : 国土地理院地図 被災なし 又は速やかに機能回復した橋速やかに機能回復できなかった橋 図 -1 緊急輸送道路の橋の耐震性能の発揮状況 ( 熊本県内で震度 6 弱以上を観測した主な地域 ) 3

ロッキング橋脚を有する橋梁の落橋 熊本県内の高速道路を跨ぐ跨道橋において 4 橋が被災し このうち 1 橋が落橋した 落橋した橋は 上下端がヒンジ構造の複数ので構成され 単独では自立せず 水平方向の上部構造慣性力を支持することができない特殊な橋脚 ( ロッキング橋脚 ) を有する橋であった 同橋は 耐震設計基準に準拠して橋台部に横変位拘束構造が追加設置されていたが 大きな地震力により横変位拘束構造が破壊され 上部構造の水平変位を制限することができなくなり さらに 上部構造の水平変位に伴い 中間支点の鉛直支持を失い落橋に至ったと考えられる 同様の構造は大地震時に落橋に至る可能性があるため 適切な補強又は撤去を行うことが必要 表 -1 被災した跨道橋 写真 -1 府領第一橋 ( 落橋前 ) 橋梁名管理者跨道橋下路線名主な被害の状況 ふりょう府領第一橋 ひとつばし一ツ橋側道橋 こうぞの神園橋 横変位拘束構造 ( 橋軸直角方向の変位を制限 ) 熊本県九州自動車道落橋 ( ロッキング橋脚 ) 熊本県九州自動車道鋼桁のずれ ( 支承損傷 段差発生 ) 熊本市九州自動車道橋脚傾斜 ( ロッキング橋脚 ) ひむき日向二号歩道橋熊本市九州自動車道橋脚損傷 ヒンジ構造 ロッキング橋脚 上下端にピボット支承が取り付けられた橋脚 ( 両端ヒンジ構造 ) ピボット支承は鉛直力支持機能と回転機能を有する構造 ( 水平力支持機能を有さない ) 平面図 横変位拘束構造の破壊 ヒンジ構造 横変位拘束構造の破壊 写真 -2 横変位拘束構造の破壊 落橋 ( 県道小川嘉島線 府領第一橋 ) 図 -1 府領第一橋の想定落橋メカニズム ピボット支承 図 -2 ロッキング橋脚 4

ロッキング橋脚の耐震補強の考え方 5 単独では自立できず 大規模地震による変位が生じると不安定となるロッキング橋脚を有する橋梁では 支承部の破壊により 落橋に至る可能性がある よって 部分的な破壊が落橋につながることを防ぎ 速やかな機能回復を可能とする構造系への転換が必要 ロッキング橋脚に必要な安定性 ( 自立性 : 水平 鉛直方向に対する抵抗力 ) の確保 支承破壊による落橋モードを想定した 落橋防止システムの装備 対策の考え方 ロッキング橋脚の安定性を確保するための構造とする 1 単独で自立可能な構造 ( 完全自立構造 ) を基本とする 剛結 すべり支承設置 ピボット支承存置 剛結 RC 巻き立てによる壁化 剛結 RC 巻き立てによる壁化 剛結 RC 巻き立てによる壁化 ピボット支承存置 対策前 ピボット支承には 逸脱防止構造を設置 2 施工上の制約がある場合等には 橋軸方向には単独で自立できないが 橋軸直角方向には自立する構造 ( 半自立構造 ) とする ピボット支承存置 RC 巻き立てによる壁化 ブレース材による連結 ピボット支承存置 ピボット支承には 逸脱防止構造を設置 橋軸方向の抵抗力は別途確保が必要 対策後 写真 -1 完全自立構造の施工例

地盤変状による被災 大規模な斜面崩壊による落橋事例 地盤変状による橋台の沈下等により供用性を喪失した事例も存在 必要に応じて 現行基準の配慮事項に地質 地盤調査 橋の構造形式 設置位置等の配慮事項を追記 参考 配慮事項の例 調査関連 斜面変状の発生の有無 規模 範囲を推定するための山地部における地盤調査に関する記載の充実 下部構造の設置位置 形式 形状 斜面変状の種類 範囲とそれに応じた下部構造の設置位置 形式 形状選定の考え方の具体例の記載 写真 -1 橋梁周辺での大規模な斜面崩壊 ( 上 ) A2 橋台側桁端部の損傷 ( 下 ) あそちょうよう ( 村道栃の木 ~ 立野線 阿蘇長陽大橋 ) 写真 -2 橋台周辺での地盤変状による橋台の沈下たわらやま ( 県道熊本高森線 俵山大橋 ) 6

設計の意図と異なる壊れ方をした橋の被害 7 兵庫県南部地震以降の基準で設計されていた橋の支承部において ゴム支承本体が設計と異なる挙動により破断したと思われる事例等が存在 また 耐震補強のために設置された制震ダンパーの取付部で損傷が生じ 制震ダンパーが機能しない事例も存在 これらを踏まえ 高い信頼性をもって全体の損傷形態を制御する設計手法を基準類に反映 地震後の点検がしやすく 復旧もしやすい部材に損傷を確実に誘導するための設計法を導入 橋脚に主たる塑性化 支承部は破壊させない ( 弾性範囲 ) 確率密度 橋脚の耐力 支承部の耐力基礎の耐力 基礎は塑性化させない ( 基礎として弾性範囲 ) 写真 -1 曲線橋のゴム支承等の破断おおきりはた ( 県道熊本高森線 大切畑大橋 ) 写真 -2 ダンパー取付部の損傷みなみあそ ( 国道 325 号 南阿蘇橋 ) 耐荷力 図 -1 各部材の設計上の耐荷力

その他 ( 設計地震動 地域別補正係数の妥当性 ) 最大応答加速度 [gal] 最大応答加速度 [gal] [gal] 熊本地震の地震動の中には 一部の周期帯でレベル2 地震動の設計スペクトルを超えている地域がある また 熊本は地震動を0.85 倍等に補正する地域である 一方で 今回 震度 6 弱以上を観測した地域において 兵庫県南部地震以降の基準を適用したと考えられる1,250 橋を調べたところ 99.7% の橋梁で 落橋 倒壊等の致命的な被害がないことはもちろん 緊急輸送道路等重要な橋については橋としての機能の回復が速やかに行い得る性能を発揮していることが分かった 設計地震動 地域別補正係数の妥当性については こうした状況等を踏まえ 引き続き検討 10000 レベル2 地震動 ( タイプⅡ) の地域別補正係数は 過去千数百年程度の地震発生履歴から作成された地震ハザードマップに基づいて設定 10000 1000 1000 100 10 レベル2 地震動 ( 標準値 ) レベル2 地震動 x0.85 益城町 4/16 本震 益城町 4/14 前震 0.1 1 10 固有周期 [s] 固有周期 [s] 図 -1 設計地震動との比較 100 今回の地震 ( 本震益城町 ) ) 平成 20 年岩手 宮城内陸地震 (KiK-net 一関西 ) 平成 19 年新潟県中越沖地震 (K-NET 柏崎 ) 平成 19 年能登半島地震 (K-NET 穴水 ) 平成 16 年新潟県中越地震 ( 川口町 ) 平成 12 年鳥取県西部地震 (KiK-net 日野 ) 平成 7 年兵庫県南部地震 ( 鷹取駅 ) 10 0.1 0.5 1.0 2.0 10.0 1 10 固有周期 [s] 固有周期 [s] 図 -2 近年の内陸直下型地震との比較 益城町での地震動は地震計が設置された場所 地盤条件での計測値であり 道路構造物の設置位置での地震動とは異なる 8

まとめ ( 橋梁 ) 9 1. 耐震補強の効果の検証 兵庫県南部地震を受けて 耐震設計基準の改訂 緊急輸送道路等について耐震補強などを進めてきた結果 一部の橋梁を除いて 地震の揺れによる落橋 倒壊などの致命的な被害は生じていない 熊本県内 大分県内の震度 6 弱以上を観測した地域における緊急輸送道路において 速やかに機能を回復するという目標を達成できなかった橋が12 橋あり 緊急輸送等の大きな支障となった 今後 緊急輸送道路等の重要な橋について 被災後速やかに機能を回復できるよう耐震補強を加速化する必要がある 2. ロッキング橋脚を有する橋梁の落橋等の原因と対策 ロッキング橋脚は 単独では自立できず 変位が生じると不安定状態となる特殊な構造であり 支承部や横変位拘束構造等の部分的な破壊が落橋 倒壊等の致命的な被害につながる可能性がある 部分的な破壊が落橋につながることを防ぎ 速やかな機能回復を可能とする構造系への転換が必要 3. 地盤変状による被災 現行基準の配慮事項に地質 地盤調査 橋の構造形式 設置位置等の配慮事項を追記 4. 設計の意図と異なる壊れ方をした橋の被害 全体の損傷形態を制御する設計手法を基準類に反映 5. その他 ( 設計地震動 地域別補正係数の妥当性 ) H8 以降の基準を適用したと考えられる1,250 橋を調べたところ 99.7% の橋梁で 落橋 倒壊等の致命的な被害がないことはもちろん 緊急輸送道路等重要な橋については橋としての機能の回復が速やかに行い得る性能を発揮していることが分かった 設計地震動 地域別補正係数の妥当性については こうした状況等を踏まえ 引き続き検討