1.DNA の構造, 半保存的複製 1.DNA の構造 ア.DNA の二重らせんモデル ( ワトソンとクリック,1953 年 ) 塩基 A: アデニン T: チミン G: グアニン C: シトシン U: ウラシル (RNA に含まれている塩基 DNA にはない ) イ. シャルガフの規則 二本鎖の DNA に含まれる A,T,G,C の割合は,A=T,G=C となる
2.DNA の半保存的複製 ア. 半保存的複製 1. もとの二本鎖 DNA が 1 本ずつに分かれる 2.DNA ポリメラーゼ (DNA 合成酵素 ) のはたらきにより, それぞれの DNA 鎖の塩基配列に相補的なヌクレオチドが次々と結合する 3. 新たに生じた2つの二本鎖 DNA のうち, 片方はもとの鎖 ( 半保存的 ) である イ. 真核細胞と原核細胞の複製 (a) 真核細胞
(b) 原核細胞 ( 例 : 大腸菌 ) ウ. メセルソンとスタールの実験 (1958 年 ) (a) 14 N を含む DNA 鎖 軽い 15 N を含む DNA 鎖 重い (b) 大腸菌の培養 15 N を含む二本鎖 DNA をもつ大腸菌を, 14 N( 14 NNH4Cl) を含む培地で何世代もの間, 培養する
(c) 密度勾配遠心法 半保存的複製が突き止められる以前には,DNA の複製方法は, 次の 3 つと考えられていた
1 DNA の構造核酸は, 生物の遺伝現象の中心的役割を果たす物質である 真核生物においては遺伝子を構成する核酸は細胞内の核に存在するが, ア細胞質内にも存在している 核酸は, 塩基 糖 リン酸が結合したヌクレオチドが多数連なってできている DNA の塩基には4 種類がある イあるウイルスとコムギから各々の DNA を抽出して塩基組成を調べたところ, 結果は次の表のようになった 塩基組成 ( 含まれている分子数の比,%) ウイルス コムギ アデニン 24 イ グアニン 26 ウ シトシン 19 23 ア 31 エ 問 1 核膜で囲まれた核を持たない生物を何と呼ぶか 問 2 下線部アについて, 遺伝子を構成する核酸が認められるものを次の中からすべて選べ (a) ミトコンドリア (b) ゴルジ体 (c) 葉緑体 (d) リボソーム問 3 表中のア~エにあてはまる適当な語句または数値を答えよ 問 4 下線部イについて ウイルスの DNA は, コムギの DNA と比べてどのような構造上の特徴を持つと考えられるか 10 字以内で述べよ
Hi-level 生物 II( 国公立二次私大対応 ) DNA 1.DNA の構造, 半保存的複製 2 DNA の半保存的複製 1953 年,( ア ) と ( イ ) により DNA が ( ウ ) 構造をとることが提案され, 世界中の注目を集めた この構造を導き出すに当たっては, ア DNA 中の塩基であるシトシンと ( エ ) の含有率が等しく, アデニンと ( オ ) の含有率が等しいという実験的な成果も参考にされた さらに, 彼らは ( ウ ) 構造から,DNA の複製がイ ( カ ) 複製であるという仮説を提唱した 1958 年, これを見事に証明したのが ( キ ) と ( ク ) である 彼らは, 大腸菌を窒素の同位体である 15 N で標識した NH4Cl を含む培地で 14 世代にわたって培養し, 全 DNA の塩基中に 15 N を組み込んだ その後, この大腸菌を通常の窒素である 14 N のみを含む培地で数世代にわたり培養した その間, 世代ごとに大腸菌から DNA を抽出した そして, 塩化セシウム溶液中で遠心分離することで DNA に勾配を作り, 抽出した DNA を, 14 N のみを含む DNA( 14 N + 14 N), 14 N と 15 N を両方含む DNA( 14 N + 15 N), 15 N のみを含む DNA( 15 N + 15 N) に分離し, その比率を比較した その結果, ウ DNA は ( カ ) に複製され, エ全保存的複製および非保存的複製ではないことを明らかにした この発見は, 偶然にも大腸菌の DNA がそろって複製するという幸運によって導き出された 問 1 文中の空欄にあてはまる適切な語句を答えよ 問 2 下線部アについて, ある二本鎖 DNA に含まれているアデニンの割合がほぼ 20% であった このとき, グアニンの含有量は何 % か 問 3 下線部イの複製様式を 80 字以内で説明せよ 問 4 下線部ウについて, 親の DNA を1 代目として,2 代目と4 代目の ( 14 N + 14 N):( 14 N + 15 N):( 15 N + 15 N) の分離比率を答えよ 問 5 下線部エについて, 親の DNA がそのまま残り, 新しい二本の鎖からなる DNA ができる複製様式を全保存的複製という 仮に,DNA の複製が, 全保存的複製であるとしたら,( 14 N + 14 N):( 14 N + 15 N):( 15 N + 15 N) の分離比率はどのようになると予想されるか, 親の DNA を1 代目として,2 代目と4 代目の分離比率を答えよ
解答 1 解答 問 1 原核生物 問 2 (a),(c) 問 3 アチミン イ 27 ウ 23 エ 27 問 4 1 本鎖である 解説 問 2 核の外部にある DNA の例として, 葉緑体 DNA とミトコンドリア DNA がある 問 3 二本鎖 DNA に含まれている各塩基の割合 (%) は,A=T,G=C である よって, コムギの場合, 表より C=G=23%,A=T=(100 23 2) 2 = 27(% ) となる 問 4 一本鎖 DNA に含まれている各塩基の割合 (%) は,A T G C である なお, 一部のウイルスには, 一本鎖 DNA をもつものがある 2 解答 問 1 ( ア ) ( イ ) ワトソン, クリック ( ウ ) 二重らせん ( エ ) グアニン ( オ ) チミン ( カ ) 半保存的 ( キ ) ( ク ) メセルソン, スタール 問 2 30% 問 3 2 本鎖 DNA が塩基の部分で分離して,1 本ずつに分れる DNA ポリメラーゼにより, それぞれの 鎖が鋳型となって相補的な塩基配列をもつ新しい鎖がつくられる 問 4 2 代目 ;0:1:0 4 代目 ;3:1:0 問 5 2 代目 ;1:0:1 4 代目 ;7:0:1 解説 問 1 核酸 (DNA や RNA) は, 多数のヌクレオチドが結合したポリヌクレオチドである 二本鎖の DNA では,2 本のポリヌクレオチド鎖の間で, アデニン (A) とチミン (T) が, シトシン (C) とグアニン (G) が相補的に水素結合している シャルガフは, 二本鎖の DNA に含まれる A と T,G と C の割合がそれぞれ等しいことを発見した ( シャ ルガフの規則 ) これが後のワトソンとクリックによる二重らせんモデルの提唱の1つの根拠となった 問 2 A=T=20% よって,G=C=30% 問 3 5 次のような複製様式を, それぞれ半保存的複製,( 全 ) 保存的複製という
メセルソンとスタールは, 15 N を含む DNA( 15 N+ 15 N) もつ大腸菌 (1 代目 ) を, 14 N を含む培地で培養した もしも半保存的複製ならば,2 代目には ( 15 N+ 14 N) をもつ大腸菌だけが現れ,( 全 ) 保存的複製が正しければ,2 代目には ( 15 N+ 15 N):( 15 N+ 14 N)= 1:1 で現れるはずである 実際には,( 15 N+ 14 N) をもつ大腸菌だけが現れた 他の世代についても同様の比較を行い, 半保存的複製であることが証明された