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Transcription:

Vol. 63, 4, 212 233 無電解 Ni めっきに共析する添加剤とはんだ接合性 土田徹勇起 a, 大久保利一 a, 狩野貴宏 b, 荘司郁夫 b a 凸版印刷 総合研究所 ( 345 858 埼玉県北葛飾郡杉戸町高野台南 4 2 3) b 群馬大学大学院工学研究科 ( 376 8515 群馬県桐生市天神町 1 5 1) The Influence of Additives in Electroless Nickel Plating Film on the Reliability of Solder Joint Tetsuyuki TSUCHIDA a, Toshikazu OKUBO a, Takahiro KANO b and Ikuo SHOHJI b a Technical Research Institute, TOPPAN PRINTING CO., LTD.(4-2-3, Takanodaiminami, Sugito-machi, Kitakatsushika-gun, Saitama 345-858) b Graduate School of Engineering, Gunma University(1-5-1, Tenjin-cho, Kiryu-shi, Gunma 376-8515) Keywords : Lead-free Solder Joint, Electroless Ni/Pd/Au Plating, Nickel Plating Additives 1. はじめに 皮膜は,P の共析量に応じて, 低 P(1 ~ 4 wt%), 中 P(5 ~ 1 wt%), 高 P(11 ~ 13 wt%) の 3 タイプに大別され, 磁性 電子部品の高密度化, 狭ピッチ化, 微細配線化にともない, や硬度, 耐食性が変化する 中でも, 最終表面処理用途では, BGA(Ball Grid Array) などの半導体パッケージ基板上での配 7 ~ 9 wt% の中 P タイプの無電解 Ni めっき皮膜が広く用い 線の引き回しが困難になり, 独立したパターンを有する基板 られている このように, 無電解 Ni めっき皮膜中には,Ni が広く普及するようになった このようなパターンの独立化 以外の不純物が共析するが,P 以外にも微量添加剤由来の成 により, 基板に対する実装前の最終表面処理として無電解 分が共析することは, あまり知られていない めっき処理の重要度が増している 最終表面処理には, 主に 2.2 微量添加剤の作用 はんだ実装信頼性やワイヤーボンディング接続信頼性が求め 微量添加剤は, 浴安定性の向上や無電解 Ni めっき皮膜中 られ, 特に, 複数回熱履歴がかかるような Flip-Chip(FC) 実 の P 含有率の調製を目的として添加される 微量添加剤は, 装の場合においては, 耐リフロー性が要求される 従来, 高 めっき浴中に 1/1 ~ 数 (ppm) 添加され, 共に, 無電解めっ いレベルではんだ実装信頼性が要求される場合においては, き浴中に生じた Ni 微粉に吸着して, 触媒活性を奪い, 浴分 無電解 Ni/Au めっきが採用されてきた しかし, はんだ実装 解反応を抑制する ここで微量添加剤は, 一般的に, 重金 材料が共晶はんだ (Sn-37 wt%pb) から Pb フリーはんだ (Sn- 属 (Pb 塩や Bi 塩など ) と硫黄系化合物 ( チオ尿素やチオ硫酸 3 wt%ag-.5 wt%cu) へと移行したことにより, 無電解 Ni/Au 塩, チオ炭酸塩など ) を併用して使用することが多い こ めっき処理のはんだ実装信頼性が低下することが明らかに れは, 硫黄系化合物が, 添加濃度によっては, めっき反応を なった このような中, 近年, より高いはんだ実装信頼性を 促進させる効果も有し, 無電解 Ni めっき析出速度を速く 示す無電解 Ni/Pd/Au めっき処理が注目を浴びている しかし, することで, 共析する P の含有率を調整する働きを併せ持 無電解 Ni/Pd/Au めっき処理のはんだ実装信頼性に対する影 つためである 響因子については, 報告例が少なく, 安定した品質を得るた 微量添加剤では, 無電解 Ni めっき浴中での濃度調整が重 めの管理ポイントは明らかではない 要である 重金属を添加しない場合は, めっき浴が不安定化 本稿では, 無電解 Ni めっき皮膜に着目し, 無電解 Ni めっ し浴分解が生じるが, 過剰に加えると部分的なめっき未着と き皮膜中の Pb, 硫黄などの共析物が及ぼす, 無電解 Ni/Pd/ なる カジリ が生じるようになる 硫黄系化合物について Au めっきのめっき諸特性への影響について紹介する は, 未添加時は, 配線間にめっきが析出してショートが起き 2. 無電解 Ni めっき浴中の微量添加剤 るが, 無電解 Ni めっき液中にわずか.5 ppm 添加するだけで選択析出性が発現する また, 山本らは, 硫黄系化合物を 2.1 めっき皮膜中の共析物 過剰に加えた場合, めっき / はんだ接合界面にボイド列を形 無電解 Ni めっき浴は,Ni 塩, 還元剤, 緩衝剤, 錯化剤, 成して, はんだ実装信頼性が低下することを示している 界面活性剤のほか, 微量添加剤によって構成されている 還 このような微量添加剤濃度によるめっき析出性, あるいは, 元剤には, 一般的に, 次亜リン酸ナトリウムが用いられ, 無 はんだ実装信頼性への影響は, めっき浴中でのわずか 1/1 電解 Ni めっき皮膜中には,P が共析する 無電解 Ni めっき ~ 1/1(ppm) の濃度の違いによって生じるものであり, 十 35

234 解 説 表面技術 分な濃度管理が必要と言える ただし, 濃度管理を適切に行った場合においても, 無電解 Ni めっき浴中の液流が速いと, パターン上への微量添加剤の供給が過剰になり, めっき未着などの不具合が生じるので, 撹拌速度, あるいは, 液流に対する基板の配置について配慮する必要がある なお, 微量添加剤濃度や液流が適性であっても, 添加剤の作用の仕方はパターン面積や形状によって変化するので注意が必要である 例えば,S. Zhang 等は, 露出したパターン面積の小さい方が, 面積あたりの微量添加剤の供給量がより多くなるとし, パターン面積の影響を示している また, van der Putten 等は, コーナー部で微量添加時の供給量が過剰になることを利用し,Pb 濃度のコントロールにより, 同一パターン内でめっき皮膜が異方成長することを示している 上記の通り, 無電解 Ni めっき処理を行う場合においては, 微量添加剤の作用機構を十分に理解しておく必要がある 2.3 環境規制動向 Pb の共析に関しては, 環境問題を考慮する必要がある 代表的な環境規制としては,RoHS(Restriction of Hazardous Substances) 規制や ELV(End-of Life Vehicles Directive) 指令が挙げられ, いずれも Pb の規制値を 1 ppm 未満としている P を含有した無電解 Ni めっきに限って言えば, めっき液メーカーは, めっき皮膜内の Pb 濃度が規制値内となるように設計しており, 現状で問題になることはない しかし, めっき液に対する Pb の意図的添加を禁止する JIG(Joint Industry Guideline) 規制に見られるように, 今後の環境規制動向は厳しくなる可能性が考えられる このような中,Pb 代替として Bi を浴安定剤に用いた Pb フリー無電解 Ni めっき液や, 硫黄系化合物のみを浴安定剤に用いた重金属フリー無電解 Ni めっき液も開発されている 2.4 めっき皮膜中への微量添加剤の共析表 1は, 種々の無電解 Ni めっき浴 (A ~ F) 中で作製した無電解 Ni めっき皮膜において, 微量添加剤に由来して共析した元素濃度を測定した結果である 浴 F は市販浴のため, 無電解 Ni めっき浴中の微量添加剤濃度は不明である 測定には,SUS 上に作製した無電解 Ni めっき箔 (2 mg 程度 ) を用い,Pb は ICP(Inductively Coupled Plasma) 質量分析, 硫黄は燃焼 - 電量法にて定量した 表 1より, 無電解 Ni めっき皮膜中に Pb と硫黄が, 数 1 ~ 数 1 ppm オーダーで共析していることが分かる 図 1は表 1を基に, 無電解 Ni めっき浴中の微量添加剤濃度比 ( 硫黄系化合物 /Pb) とめっき皮膜中の微量添加剤濃度比 ( 硫黄 /Pb) の関係を示したものであるが, 両者には高い相関 (R =.9997) が認められ, 各微量添加剤の共析量は, 互いに影響しあいながら変化していると言える 2.5 めっき浴中の微量添加剤濃度管理技術表 1の通り, 無電解 Ni めっき皮膜中には,Pb や硫黄が共析する また, めっき液の持ち出しや加熱下での自然消耗によって, 無電解 Ni めっき浴中の微量添加剤濃度は刻々と減少する 一方, 基板から無電解 Ni めっき浴中に硫黄成分が溶出するとの報告もあり, めっき浴中の硫黄濃度は被めっき基板の種類や処理数, ターン数によって増加する可能性も考えられる そこで,Pb, 硫黄濃度の管理が必要となる Pb は,ICP 質量分析や原子吸光測定, 硫黄系化合物は電気化学測定 による検討がなされ, また, ポーラログラフィーにより,Pb と硫黄系化合物の同時定量も試みられている しかし, リアルタイムに, かつ簡便に微量添加剤濃度を測定する技術は未だ確立されていない 生産現場において, 微量添加剤濃度は, 品質に関わる重要な管理項目でありながら, Ni 濃度の減少量に応じた見込み補給によって調整されているのが現状であり, 現場の使いこなし技術の習得が要求されている 3. 微量添加剤濃度が及ぼすめっき諸特性への影響 めっき液メーカーは, 優れためっき諸特性 ( 選択析出性やはんだ実装信頼性など ) を得るために, 最適な微量添加剤濃度を規定している しかし, 先述のとおり, 微量添加剤濃度は変化し続けるため, 時には生産者側にとって予期せぬ不具合が生じる 以下, 無電解 Ni めっき皮膜中の微量添加剤濃度変化が与える無電解 Ni/Au めっき, あるいは無電解 Ni/Pd/ Au めっき諸特性への影響について事例を示しながら, 解説する 3.1 無電解 Ni, 無電解 Pd, 置換 Au めっき析出速度への影響無電解 Ni めっき, 無電解 Pd めっき, 置換 Au めっきの膜厚管理は品質安定性の確保あるいはコスト低減の観点から重 皮膜中添加剤濃度比 ( 硫黄 / 鉛 ) 3 2 1 y =.74x -.71 R 2 =.9997 1 2 3 4 5 浴中添加剤濃度比 ( 硫黄系化合物 / 鉛 ) 図 1 無電解 Ni めっき皮膜と浴中添加剤濃度の関係 表 1 無電解 Ni めっき皮膜中の微量添加剤共析量 無電解 Ni めっき浴中濃度 (ppm) 無電解 Ni めっき皮膜中濃度 (ppm) 鉛硫黄系化合物鉛硫黄 A.25 142 B.25 1 14 29 C 1 1.5 413 43 D 1.5 368 E.5.5 263 19 F 不明 ( 市販浴 ) 27 5 36

Vol. 63, 4, 212 無電解 Ni めっきに共析する添加剤とはんだ接合性 235 要である 図 2の (a),(b) はそれぞれ, 表 1 中の浴 A, B, C, E を用いて作製した無電解 Ni めっき皮膜上の無電解 Pd めっき析出速度と, 無電解 Ni/Pd めっき皮膜上での置換 Au めっき析出速度を示したものである 図 2(a),(b) からは, 無電解 Ni めっき皮膜中に硫黄が共析することで, 無電解 Pd めっき, 置換 Au めっき析出速度が増加する傾向が認められている 相反して, 硫黄を含まない無電解 Ni めっき皮膜 ( 浴 A) を用いた場合は,Pd と Au の析出速度は低下する これは, 無電解 Ni めっき皮膜中の P 含有率が増加し, 耐食性が向上するためである 無電解 Pd めっきの析出速度が P 含有率の影響を受けるのは, 単に還元反応によって析出するのではなく, 無電解 Ni めっき皮膜を置換して Pd 核を形成した後に Pd が還元析出することに起因している 一方, 置換 Au めっ.8 Au めっき膜厚 (μm) Pd めっき膜厚 (μm).6.4.2 浴 A 浴 B 浴 C 浴 E 5 1 15 2 25 めっき時間 ( 分 ) (a) Ni 上のPdめっき析出速度.1.8.6.4.2 浴 A 浴 B 浴 C 浴 E 5 1 15 2 25 3 めっき時間 ( 分 ) (b) Ni/Pd 上のAuめっき析出速度 図 2 無電解めっき皮膜の析出速度 き析出速度が, 無電解 Ni めっき皮膜の影響を受けるのは, Au が Pd 置換と並行して Ni 置換によって析出するためである 特に, この影響が顕著であるのは,Pd よりも優先的に Ni を置換するためであり, 無電解 Ni めっき皮膜種により P 含有率, すなわち耐食性が異なる場合, 置換 Au めっき析出速度は変化する このような現象から,Pd めっき厚が.1 μm 程度の場合では, 無電解 Pd めっき皮膜は無電解 Ni めっき皮膜を完全に被覆していない状態にあると言える なお, Au が Pd よりも Ni を置換しやすいのは, イオン化傾向の順列 (Au > Pd > Ni) から説明される 本稿での説明は, 割愛したが, 無電解 Ni めっき浴中の微量添加剤濃度によって, 無電解 Ni めっき皮膜自身の析出速度も変化する 無電解 Ni めっき皮膜中の微量添加剤濃度は, Ni, Pd, Au の析出速度全てに影響を与えるため, 十分な管理が要求される 3.2 無電解 Ni めっき皮膜の形状と耐腐食性置換 Au めっき時, 無電解 Ni めっき皮膜中の Ni は溶出するが, 極端に溶出すると, 局所腐食が過剰に進行してしまう このような局所腐食部位では,Ni が酸化されているため, はんだ / めっき界面に不濡れが生じて, はんだ実装信頼性が低下する恐れがある そのため, 置換 Au めっき処理による下地金属の腐食を抑える必要がある 図 3は, 表 1 中の浴 A, C, F を用いて作製した無電解 Ni/Au めっき, 無電解 Ni/Pd/ Au めっき皮膜上の Au めっき皮膜を溶解剥離したときの SEM(Scanning Electron Microscope) 観察像である 図 3の結果は, 無電解 Ni めっき皮膜中の微量添加剤濃度が皮膜の結晶性, 耐腐食性に影響を与えていることを示す 結晶性については, 硫黄濃度が ppm の皮膜では, 結晶粒界が不明瞭となっており, 機械的な性質に影響を与える可能性がある 耐腐食性に関しては, 添加剤濃度による影響を受けるものの, その影響因子は定かではない 例えば, 無電解 Ni めっき皮膜中の硫黄濃度が 43 ppm( 浴 C) と 5 ppm( 浴 F) とで約 9 倍異なる場合でも, 腐食量に顕著な差は認められていない 腐食量は硫黄濃度に依存するとの報告もあるが, 硫黄濃度単独ではなく, 無電解 Ni めっき皮膜中の硫黄と Pb と P の共析バランスによって変化すると考えられる ところで, 無電解 Pd めっき層の導入により, 置換 Au めっき直下金属の腐食は抑えられている Pd は Au との電位差が小さいため, Ni と比較して極端な腐食はされない 表面処理種 A C F 無電解 Ni/Au めっき 無電解 Ni/Pd/Au めっき 図 3 置換 Au めっき皮膜剥離後の表面観察 37

236 解 説 表面技術 3.3 はんだ濡れ性への影響図 4は, 無電解 Ni/Au めっき, 無電解 Ni/Pd/Au めっき皮膜が施された幅 8 μm の配線上に,φ= 6 μm の Pb フリーはんだ (Sn-3 wt%ag-.5 wt%cu) をプレヒート温度 13, ピーク温度 24 にて実装後, フィレット幅からはんだ濡ればらつき (3σ) を評価した結果である 図 4では, 無電解 Ni/ Au めっき皮膜におけるはんだ濡ればらつき量が大きい傾向にある Ni は, はんだ中への溶解速度が遅いため, 腐食や形状などのわずかな表面状態の違いで濡れやすさが変化するものと考えられる 一方, 無電解 Ni/Pd/Au めっき皮膜においては,Pd 層が介在することで, 相対的にはんだ中への Ni 溶解量が低減する そのため, 無電解 Ni めっき皮膜の影響を受けにくくなり, はんだ濡れ性は安定化する 3.4 はんだ実装信頼性への影響図 5は,φ= 3 μm の銅パッド上に施した無電解 Ni/Au めっき, 無電解 Ni/Pd/Au めっき皮膜上に,1 回リフローにてφ= 35 μm の Pb フリーはんだを実装した際の高速シェア試験による実装信頼性評価結果である 図 5は, 無電解 Ni めっき皮膜種によらず無電解 Ni/Au めっき皮膜のはんだ実装信頼性が低いことを示している これは, はんだ実装時, Au めっき皮膜がはんだ中に溶解後,Ni がはんだ中に一方的に溶解することで, めっき / はんだ接合界面に P リッチ層が形成されることと,Ni が多く拡散することで相対的に 金属間化合物層 (Intermetalic compounds ; IMC) の厚みが増す影響, 更に IMC として, 硬く脆い Ni-Sn 系の合金層が形成されること などが原因と考えられる 一方, 無電解 Ni/Pd/ Au めっき皮膜では, 無電解 Ni めっき皮膜種に依存して, はんだ実装信頼性が変化し, 浴 E, F で高いはんだ実装信頼性を示す 無電解 Ni/Pd/Au めっきにおいて, 無電解 Ni めっき皮膜中の微量添加剤の影響を確認することができるのは,Pd と Au のはんだ中への溶解速度が速いために, 結果として, Ni / はんだ間での接合となるためである なお, 高いはんだ実装信頼性を示す無電解 Ni/Pd/Au めっき皮膜である浴 E と F においても, 無電解 Pd めっき層厚が.3 μm 程度に達すると, 繰り返しリフローを行った場合において, はんだ実装信頼性が低下するので,Pd 膜厚の管理には注意が必要である 3.5 IMC 組成 厚みへの影響無電解 Ni/Pd/Au めっきのめっき / はんだ接合界面には Pb フリーはんだ由来の Cu と Sn, めっき皮膜由来の Ni からなる (Cu, Ni) Sn が形成される この (Cu, Ni) Sn は,Ni の更なるはんだ中への溶解を防ぐバリア層として働き,P リッチ層の形成, あるいは,IMC 層の厚膜化を回避することができる そのため, 優れたはんだ実装信頼性を確保するため 1 15 はんだ濡ればらつき量 (mm) 1.5 1.2.9.6.3 無電解 Ni/Au 無電解 Ni/Pd/Au 破壊率 (%) 8 6 4 2 IMC はんだ +IMC はんだ強度 12 9 6 3 強度 (N) 無電解 Ni/Au めっき 無電解 Ni/Pd/Au めっき 図 4 はんだ濡れ性評価 図 5 はんだ実装信頼性評価 Ni Cu Pd Sn 浴 C 浴 E 図 6 はんだ接合断面図 (EPMA 解析 ) 38

Vol. 63, 4, 212 無電解 Ni めっきに共析する添加剤とはんだ接合性 237 15μm IMC 厚 =6μm IMC Ni Cu IMC 厚 =1.5μm (a) 浴 E (b) 浴 F 図 7 IMC 厚み比較 破壊モード (%) 1 8 IMC はんだ +IMC はんだ 強度 15 12 6 4 2 9 6 3 図 8 無電解 Ni/Pd/Au めっきのはんだ実装信頼性評価 (5 回リフロー ) には,(Cu, Ni) Sn からなる IMC 層を如何に緻密に形成するかが鍵となる 図 6は, はんだ実装信頼性が低かった浴 C と良好であった浴 E について, 無電解 Ni/Pd/Au めっき皮膜のはんだ接合断面組織を EPMA(Electron Probe X-ray Micro Analyzer) により元素マッピングしたものであるが, 浴 E の方が,Cu 濃度が高く,IMC の合金密度が緻密であることが分かる なお,IMC 層に関連し, はんだ実装信頼性に影響する因子として,IMC 層厚みも挙げられる IMC 層は厚みが増すと,IMC とめっき, あるいははんだとの熱膨張率や弾性率などの物性の差が大きくなり, 亀裂が生じやすくなる そのため,IMC 厚みを制御することも, また, はんだ実装信頼性を確保する上で重要となる 図 7の (a),(b) は, それぞれ無電解 Ni めっき皮膜中の Pb 濃度が同等で, 硫黄濃度が異なる浴 E と F を用いて作製した無電解 Ni/Pd/Au めっき皮膜と Pb フリーはんだの接合断面図である 無電解 Ni めっき皮膜中の硫黄濃度が低い浴 F で,IMC 層が薄く形成されていることから, 無電解 Ni めっき皮膜中の硫黄濃度が,Ni のはんだ中への溶解量, ひいては IMC 層厚みに影響していることが示唆される このような無電解 Ni めっき皮膜を用いた場合は, はんだ実装時に,P リッチ層の形成を抑制でき, はんだ実装信頼性が向上する 3.6 はんだ実装信頼性評価図 8は,φ= 3 μm の銅パッド上に施した無電解 Ni/Pd/ Au めっき皮膜上に,1 回リフローにてφ= 35 μm の Pb フリーはんだを実装後,4 回追加リフローした供試材について 強度 (N) 39 のはんだ実装信頼性評価結果である 1 回リフロー時の結果 ( 図 5) に対し, 浴 F のはんだ実装信頼性は低下しているものの, 依然として高い界面強度を維持していることが分かる これは, 実装信頼性に影響を与える IMC の組成が, 熱履歴によって, 徐々に変化したことが影響しているものと考えられる 4. まとめ無電解 Ni めっき皮膜中の共析物 (Pb, 硫黄 ) が及ぼす無電解 Ni/Pd/Au めっき皮膜の析出速度, 耐食性, はんだ濡れ性, はんだ実装信頼性への影響について事例を示した 無電解 Ni/Au めっきに対し, 無電解 Ni/Pd/Au めっきのはんだ実装信頼性は確かに優れており, 特に,FC 実装の分野において, 今後採用が加速するものと考えられる ただし, 無電解 Ni/Pd/Au めっき処理も万能ではなく, 無電解 Ni めっき皮膜中の微量添加剤 (Pb, 硫黄 ) 濃度によって, はんだ実装信頼性が変化するため, 量産化に向けては, 無電解 Ni めっき浴中の微量添加剤の濃度管理技術の構築が望まれる 本稿では, 無電解 Ni めっき皮膜中の微量添加剤がはんだ実装信頼性に及ぼすことを示したが, 共析した微量添加剤の影響機構は, 未だ調べられている事例は少なく更なる検討が必要である (Received February 6, 212) 文献 ₁ ) 林忠夫, 松岡政夫, 縄舟秀美 ; 無電解めっき- 基礎と応用 -, p.27( 日刊工業新聞社, 1994). ₂ ) 特許第 3479639 号 ₃ )H. Xu, J. Brito, O. A. Sadik ; J. Electrochem.Soc, 15,(11), C816 (23). ₄ )K. Yamamoto, H. Akahoshi, T. Kurashina, Y. Nozawa, R. Kimoto ; Proc. of MES24 of JIEP, 77(24)(in Japanese). ₅ ) 近藤和夫 ; 初歩から学ぶ微小めっき技術, p.175( 工業調査会, 26). ₆ )S. Zhang, J. De Bates, M. Vereeken, A. Vervaet, A. Van Calster ; J. Electrochem.Soc, 146,(8), 287(1999). ₇ )Andre M. T. van der Putten, Jan-Willem G. de Bakker ; J. Electrochem.Soc, 14, 2229(1993). ₈ )K. Hashizume, K. Naito, H. Oka, H. Okumura ; J. Surface Finish. Soc. Jpn., 58,(2), 87(27)(in Japanese). ₉ ) 特開 25-126734 1)K. Yamamoto, H. Akahoshi, T. Kato, T. Kawamura, R. Kimoto, R.

238 解 説 表面技術 Sato ; Proc. of Mate26 of JWS, 311(26)(in Japanese). 11)Y. Tsukahara, S. Watariguchi, K. Tajima, T. Yoshioka, H. Yanagimoto ; J. Surface Finish. Soc. Jpn., 62,(8), 411(211)(in Japanese). 12)S. Watariguchi, Y. Tsukahara, K. Tajima, K. Yoshida, K. Ichiba ; Proc. of the 25th Annual Conference of JIEP, 459(211)(in Japanese). 13) 菅沼克昭 ; はじめての鉛フリーはんだ付けの信頼性, p.35( 工業調査会, 27). 14)K. Tajima ; J. Surface Finish. Soc. Jpn., 62,(8), 387(211)(in Japanese). 15)Y. Chonan, T. Komiyama, J. Onuki ; J. Surface Finish. Soc. Jpn., 54, (2), 124(23)(in Japanese). 16) 竹本正, 佐藤了平 ; 高信頼度マイクロソルダリング技術, p.115 ( 工業調査会, 1991). 17)T. Tsuchida, T. Okubo, T. Kano, I. Shohji ; Proc. of MES21 of JIEP, 95(21)(in Japanese). 18)K. Uenishi ; Kinzoku, 79,(5), 396(29)(in Japanese). 19)T. Tsuchida, T. Okubo, T. Kano, I. Shohji ; Proc. of MES211 of JIEP, 145(211)(in Japanese). 4