第 1 章 第 1 章北海道の気候 1.1 気温本節では 北海道内の地上気象観測所およびアメダスで観測された気温の変化について述べる 最初に地上気象観測所で 100 年にわたって観測されてきた年平均気温の長期変化について示し 次に冬日 真冬日 夏日 真夏日の日数変化について示す 最後に アメダスで観測された 1980 年以降の年平均気温の年代ごとの分布状況や地方別の推移について示す 観測データの取り扱いについては付録 1 を参照されたい 年 1.1.1 北海道の気温の長期変化 世界の年平均気温は 様々な変動を繰り返しなが ら 長期的には 100 年あたりおよそ 0.7 の割合で 年 上昇している ( 図 1.1.1-1 上図 ) これは 地球温暖 図 1.1.1-1 世界の年平均気温 ( 上 ) と日本国内 17 地点 化の影響に 数年 ~ 数十年程度で繰り返される自然 で平均した年平均気温 ( 下 ) の平年差の推移 ( 単 変動が重なっていると考えられる ( 気象庁,2009) 位 : ) 日本国内の年平均気温の長期変化傾向は 観測データの均質性が長期間維持され かつ都市化などによる環境の変化が比較的少ない 17 地点 ( 付録 1 観測データの取り扱い 参照 ) を対象として解析されており 100 年あたりおよそ 1.1 の割合で上昇し 統計期間は上図 1890 年 ~2009 年 下図 1898 年 ~2009 年 棒グラフは各年の値 太線は 5 年移動平均 赤線は長期変化傾向を示す ( 気候変動監視レポート 2009 より ) 平年差 :1971 年 ~2000 年の 30 年平均値からの差 ている ( 図 1.1.1-1 下図 ) 1940 年代までは比較的 低温の期間が続いたが その後上昇に転じ 1960 年 年代前半にかけて低い状態が続き 1990 年頃以降高頃を中心とした高温の時期 それ以降 1980 年代半ばい年が多い 月ごとの長期変化傾向をみると 1~3 までのやや低温の時期を経て 1980 年代後半から急月や 5 月は上昇率が大きい ( 図 1.1.1-3) 7 8 9 月速に気温が上昇した 日本の気温が顕著な高温を記の変化傾向は統計的に有意ではない 録した年は おおむね 1990 年以降に集中している 表 1.1.1-1 に北海道平均 日本平均 各地点の年近年 日本で高温となる年が頻出している要因とし平均気温の長期変化傾向を示す 室蘭 広尾を除くては 地球温暖化の影響に 数年 ~ 数十年程度の時 20 地点で有意な上昇傾向がある 北海道平均では 間規模で繰り返される自然変動が重なっているもの 100 年間で 0.9 上昇しており 日本の平均の上昇率と考えられる ( 気象庁,2009) よりやや小さい 100 年以上のデータのある地点では北海道内では 上述の日本の平均気温の算出に網 100 年間で +0.6~+1.9 の範囲で上昇している 札幌走 根室 寿都の 3 地点が用いられている この 3 では 100 年間に +1.9 上昇しているが これは都市地点で平均した年平均気温は 100 年間でおよそ化の影響が大きいことが一因と考えられる ( コラム 0.9 の上昇傾向がある ( 図 1.1.1-2) 年ごとの値を ヒートアイランド現象と気候の変化 参照) 100 みると 1990 年頃に急激に上昇しており 1910 年代と年に満たない地点では 50 年間の変化傾向を示した 1940 年代後半にも大きく変動している 長期的な変これらの地点では 50 年間で +0.5~+1.0 の上昇傾向化傾向と比べ 1910 年前後や 1960 年代後半から 1980 1.1-1
第 1 章 がある 北海道平均は 1898 年からの変化傾向と 1951 年からの変化傾向を示したが 1951 年以降は 50 年で 0.8 上昇しており 1898 年からの変化傾向 (+0.9 /100 年 ) よりも上昇率が大きくなっている 図 1.1.1-4~6 に地点ごとの年平均気温の推移を示す 羽幌 旭川 帯広 釧路 函館は 移転による統計値の不均一があり 補正した値を用いている 1940 年代と 1990 年頃に大きな変化がみられる地点が多い 表 1.1.1-1 北海道平均 ( 網走 根室 寿都 ) 日本平均および各地点の年平均気温の長期変化傾向地点名統計期間長期変化傾向 /100 年 /50 年北海道平 1898-2009 +0.9 均 1951-2009 +0.8 日本平均 1898-2009 +1.1 ( 日本海側の地点 ) 稚内 1938-2009 +0.6 +2 +1 0-1 -2 図 1.1.1-2 北海道 3 地点 ( 網走 根室 寿都 ) で平均した年平均気温の平年差の推移 ( 単位 : ) 平年差は 1971 年 ~2000 年の 30 年平均値からの差 統計期間は 1898 年 ~2009 年 細線は各年の値 太線は 5 年移動平均 赤線は長期変化傾向を示す +2.0 +1.5 +1.0 +0.5 0 図 1.1.1-3 北海道 3 地点 ( 網走 根室 寿都 ) で平均した月平均気温平年差の長期変化傾向 ( 単位 : /100 年 ) ただし 7 月 8 月 9 月の変化傾向は有意ではない 統計期間は 1898 年 ~2009 年 : 有意な傾向がみられる : 傾向が有意でない 羽幌 1921-2009 +0.6 留萌 1943-2009 +0.7 旭川 1889-2009 +1.8 小樽 1943-2009 +0.5 札幌 1877-2009 +1.9 岩見沢 1947-2009 +0.8 寿都 1888-2009 +0.6 江差 1941-2009 +0.8 倶知安 1944-2009 +1.0 ( 太平洋側の地点 ) 帯広 1892-2009 +1.7 釧路 1910-2009 +1.3 根室 1886-2009 +0.7 室蘭 1923-2009 苫小牧 1943-2009 +1.0 浦河 1927-2009 +0.5 函館 1886-2009 +1.4 広尾 1958-2009 ( オホーツク海側の地点 ) 北見枝幸 1943-2009 +0.6 雄武 1943-2009 +0.6 網走 1890-2009 +1.0 紋別 1956-2009 +0.8 変化率は危険率 5% で有意の場合のみ示し 有意でない場合は と記した 1.1-2
第 1 章 図 1.1.1-4 日本海側の各地点の年平均気温の推移 ( 単位 : ) 統計期間は表 1.1.1-1 のとおり 黒細線は各年の値 黒実線は 5 年移動平均 赤線は長期変化傾向 ( 統計 的に有意な場合のみ ) 破線は 移転に伴い補正を行った時期を示す 1.1-3
第 1 章 図 1.1.1-5 太平洋側の各地点の年平均気温の推移 ( 単位 : ) 詳細は図 1.1.1-4 と同じ 1.1-4
第 1 章 図 1.1.1-6 オホーツク海側の各地点の年平均気温の推移 ( 単位 : ) 詳細は図 1.1.1-4 と同じ 1.1-5
第 1 章 1.1.2 冬日 真冬日 夏日 真夏日日数の変化夏日は日最高気温が 25 以上 真夏日は日最高気温が 30 以上 冬日は日最低気温が 0 未満 真冬日は日最高気温が 0 未満の日 として定義しており ここではそれぞれの年間日数の長期変化に着目した 統計開始年は 1931 年以降である 日最高気温 日最低気温については移転の影響を除去することが困難であるため 移転の影響を含まないデータで長期変化傾向を計算した 日本国内 15 地点 ( 付録 1 観測データの取り扱い 参照 ) の平均でみると ( 図 1.1.2-1) 真夏日の日数については 1931 年以降では有意な傾向はないが 1980 年代以降は増加傾向がある 冬日の日数は有意に減少している ( 気象庁,2009) 北海道内の網走 札幌 帯広 根室 寿都の 5 地点平均では 冬日 真冬日の日数の長期変化には有意な減少傾向があるが 夏日 真夏日については有意な傾向はみられず ( 図 1.1.2-2) 1980 年以降でも有意な傾向はみられない 地点ごとにみると 北海道内 5 地点平均と同様に 冬日 真冬日の日数の長期変化には有意な減少傾向があるが 夏日 真夏日については有意な傾向はみられない地点が多い 室蘭では夏日について有意な減少傾向がみられた ( 図 1.1.2-3~7) 図 1.1.2-1 日本国内 15 地点で平均した真夏日 ( 上 ) 冬日( 下 ) の日数の推移細いマーカー付きの線は各年の値 太線は 11 年移動平均を示す ( 気候変動監視レポート 2009 より ) 図 1.1.2-2 北海道内 5 地点で平均した冬日 真冬日 夏日 真夏日の日数の推移左図の黒線は冬日を 黄線は真冬日を示す 右図の黒線は夏日を 桃色線は真夏日を示す それぞれ 細線は各年の値 太線は 11 年移動平均を示す 長期変化傾向は 統計的に有意な場合のみ赤い直線で示す 統計期間は 1931 年 ~2009 年 1.1-6
第1章 図 1.1.2-3 日本海側の各地点で観測した冬日 真冬日 夏日 真夏日の日数の推移 左図の黒線は冬日を 黄線は真冬日を示す 右図の黒線は夏日を 桃色線は真夏日を示す 細線は各年の値 太線は 11 年移動平均 長期変化傾向は統計的に有意な場合のみ赤い直線で示す 破線は移転による統計切断の時期を示し 長期変化傾向は破線をまたがない期間で求めている 1.1-7
第1章 図 1.1.2-4 日本海側の各地点で観測した冬日 真冬日 夏日 真夏日の日数の推移 詳細は図 1.1.2-3 と同じ 1.1-8
第1章 図 1.1.2-5 太平洋側の各地点で観測した冬日 真冬日 夏日 真夏日の日数の推移 詳細は図 1.1.2-3 と同じ 1.1-9
第1章 図 1.1.2-6 太平洋側の各地点で観測した冬日 真冬日 夏日 真夏日の日数の推移 詳細は図 1.1.2-3 と同じ 1.1-10
第1章 図 1.1.2-7 オホーツク海側の各地点で観測した冬日 真冬日 夏日 真夏日の日数の推移 詳細は図 1.1.2-3 と同じ 1.1-11
第1章 1990 年代になると 全道的に気温は上昇しており 1.1.3 アメダスでみる気温の変化 渡島半島では 10 を超える地点もみられる また アメダスは 1970 年代後半から観測を始め 気温は オホーツク海側から太平洋側東部の内陸に広がって 現在北海道内 173 地点で観測を行っている アメダ いた 5 以下の地域は縮小し 太平洋側東部の内陸の スのデータは地上気象観測所に比べると観測期間が 一部のみとなっている 短く統計的に長期変化を語るのは難しいが 空間的 2000 年代は 1990 年代とほぼ同じ分布である には密度の高いデータが利用できることから 地域 図 1.1.3-2 に 1980 年 2009 年の年平均気温の地域 ごとの特徴について注目してみた 平均平年差(観測開始 2000 年の平均値との差)の推 ここでは 1980 年から気温の観測を継続している 移を示す すべての地方で 1980 年代と比べて 1990 140 地点のデータを用いて 1980 年 2009 年までを 年代以降は高温となっている 年ごとの値では 1990 10 年ごとの 3 つの年代に分け それぞれの年代別に 年が最も高く次いで 2004 年が高い 一方 1980 年代 平均を求めて比較を行った 半ばまでは低い 図 1.1.3-1 に年平均気温の年代ごとの平均値の分 布を示す 1980 年代の分布をみると オホーツク海側から太 平洋側東部の内陸部の地域では年平均気温は 5 以 下となっている 一方で渡島半島の日本海側では 9 を超える地点もみられる ( ) ( ) 図 1.1.3-1 アメダス地点の年平均気温の 10 年平均値の分布(単位 ) 上段 左から 1980 年代 1990 年代 2000 年代の 10 年間平均値 下段 左 1990 年代と 1980 年代の差 中 2000 年代と 1990 年代の差 右 2000 年代と 1980 年代の差 1.1-12
第1章 図 1.1.3-2 アメダス地点における年平均気温の地域平均平年差の推移 統計期間は 1980 年 2009 年 青線は 1980 年代 1990 年代 2000 年代の平均を表す 1.1-13
第1章 1.1-14