Taro-40-11[15号p86-84]気候変動

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気候変化レポート2015 -関東甲信・北陸・東海地方- 第1章第4節

(c) (d) (e) 図 及び付表地域別の平均気温の変化 ( 将来気候の現在気候との差 ) 棒グラフが現在気候との差 縦棒は年々変動の標準偏差 ( 左 : 現在気候 右 : 将来気候 ) を示す : 年間 : 春 (3~5 月 ) (c): 夏 (6~8 月 ) (d): 秋 (9~1

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1. 天候の特徴 2013 年の夏は 全国で暑夏となりました 特に 西日本の夏平均気温平年差は +1.2 となり 統計を開始した 1946 年以降で最も高くなりました ( 表 1) 8 月上旬後半 ~ 中旬前半の高温ピーク時には 東 西日本太平洋側を中心に気温が著しく高くなりました ( 図 1) 特

( 第 1 章 はじめに ) などの総称 ) の信頼性自体は現在気候の再現性を評価することで確認できるが 将来気候における 数年から数十年周期の自然変動の影響に伴う不確実性は定量的に評価することができなかった こ の不確実性は 降水量の将来変化において特に顕著である ( 詳細は 1.4 節を参照 )

資料6 (気象庁提出資料)

Taro-40-09[15号p77-81]PM25高濃

<4D F736F F D F193B994AD955C8E9197BF816A89C482A982E78F4882C982A982AF82C482CC92AA88CA2E646F63>

はじめに 東京の観測値 として使われる気温などは 千代田区大手町 ( 気象庁本庁の構内 ) で観測 気象庁本庁の移転計画に伴い 今年 12 月に露場 ( 観測施設 ) を北の丸公園へ移転予定 天気予報で目にする 東京 の気温などの傾 向が変わるため 利 者へ 分な解説が必要 北の丸公園露場 大手町露

佐賀県気象月報 平成 29 年 (2017 年 )6 月 佐賀地方気象台

2

平成 30 年 2 月の気象概況 2 月は 中旬まで冬型の気圧配置が多く 強い寒気の影響を受け雪や雨の日があった 下旬は短い周期で天気が変化した 県内アメタ スの月降水量は 18.5~88.5 ミリ ( 平年比 29~106%) で 大分 佐賀関 臼杵 竹田 県南部で平年並の他は少ないかかなり少なか

日本の海氷 降雪 積雪と温暖化 高野清治 気象庁地球環境 海洋部 気候情報課

第 41 巻 21 号 大分県農業気象速報令和元年 7 月下旬 大分県大分地方気象台令和元年 8 月 1 日

2 気象 地震 10 概 況 平 均 気 温 降 水 量 横浜地方気象台主要気象状況 横浜地方気象台月別降水量 日照時間変化図 平均気温 降水量分布図 横浜地方気象台月別累年順位更新表 横浜地方気象台冬日 夏日 真夏

2.1 の気温の長期変化 の 6 地点の 1890~2010 年の 121 年間における年平均気温平年 差の推移を図 2.1-2に示す の年平均気温は 100 年あたり1. 2 ( 統計期間 1890~2010 年 ) の割合で 統計的に有意に上昇している 長期変化傾向を除くと 1900 年代後半と

2 気象 地震 10 概 況 平 均 気 温 降 水 量 横浜地方気象台主要気象状況 横浜地方気象台月別降水量 日照時間変化図 平均気温 降水量分布図 平成 21 年 (2009 年 ) の月別累年順位更新表 ( 横浜 ) 23

2018 年 12 月の天候 ( 福島県 ) 月の特徴 4 日の最高気温が記録的に高い 下旬後半の会津と中通り北部の大雪 平成 31 年 1 月 8 日福島地方気象台 1 天候経過 概況この期間 会津では低気圧や寒気の影響で曇りや雪または雨の日が多かった 中通りと浜通りでは天気は数日の周期で変わった

過去約 130 年の年平均気温の変化傾向 (1891~2017 年 ) 図 緯度経度 5 度の格子ごとに見た年平均気温の長期変化傾向 (1891~2017 年 ) 図中の丸印は 5 5 格子で平均した 1891~2017 年の長期変化傾向 (10 年あたりの変化量 ) を示す 灰色は長期

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本州の南岸沿いに梅雨前線が停滞するようにな ると梅雨の季節である 急激に日照時間が少なく なり ぐずついた天気が続く 梅雨の前半は 冷 たく湿った東寄りの風 ( ヤマセ ) が吹き 浜通り を中心に低温になることがあるが 会津ではその 影響は小さい 梅雨が明けると気温は上昇し ま た日照時間も急激に

石川県白山自然保護センター研究報告第27集

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2. エルニーニョ / ラニーニャ現象の日本への影響前記 1. で触れたように エルニーニョ / ラニーニャ現象は周辺の海洋 大気場と密接な関わりを持つ大規模な現象です そのため エルニーニョ / ラニーニャ現象は周辺の海流や大気の流れを通じたテレコネクション ( キーワード ) を経て日本へも影響

黄砂消散係数 (/Km) 黄砂消散係数 (/Km) 黄砂消散係数 (/Km) 黄砂消散係数 (/Km) 日数 8~ 年度において長崎 松江 富山で観測された気象台黄砂日は合計で延べ 53 日である これらの日におけるの頻度分布を図 6- に示している が.4 以下は全体の約 5% であり.6 以上の

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廃棄物再生利用における環境影響評価について

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三重県の気象概況 ( 平成 30 年 9 月 ) 表紙 目次気象概況 1P 旬別気象表 2P 気象経過図 5P 気象分布図 8P 資料の説明 9P 情報の閲覧 検索のご案内 10P 津地方気象台 2018 年本資料は津地方気象台ホームページ利用規約 (

電気使用量集計 年 月 kw 平均気温冷暖平均 基準比 基準比半期集計年間集計 , , ,

周期時系列の統計解析 (3) 移動平均とフーリエ変換 nino 2017 年 12 月 18 日 移動平均は, 周期時系列における特定の周期成分の消去や不規則変動 ( ノイズ ) の低減に汎用されている統計手法である. ここでは, 周期時系列をコサイン関数で近似し, その移動平均により周期成分の振幅

長野県農業気象速報(旬報) 平成27年9月上旬

2.1 の気温の長期変化 の年平均気温平年差の推 移を図 に示す の年平均気温は 100 年あ たり 1.3 の割合で上昇している 長 期変化傾向を除くと 1900 年代後半 と 1920 年代半ばから 1940 年代半ば までは低温の時期が続いた 1960 年 頃に高温の時期があり 1

平成10年度 ヒートアイランド現象に関する対策手法検討調査報告書


地域気象観測

り注ぐ頃 苗の揺れる田に雪を頂いた山々が映る 木々の緑が濃くなると梅雨の走りの雨が草木を濡 らす しばしば海から吹く冷たく湿った東寄りの 風 ( ヤマセ ) が低温をもたらし 農家は水田の管 理に忙しい 6 月半ばに梅雨入りし ぐずついた天 気がしばらく続くが 7 月下旬 ヒグラシの鳴き声 が夜明け

委員会報告書「気候変動への賢い適応」

山間部では気温が低いことがわかる また,1 月と 8 月を比較すると,8 月には気温の高い地域, 例えば上から 2 番目の階級である 25.0 以上の地域が広範囲に及び, 平野部から中山間部まで広く高温になることがわかる 反対に,1 月は 2 番目の階級である 5.5 以上の地域は沿岸部及び京都盆地

第 41 巻 13 号 大分県農業気象速報令和元年 5 月上旬 大分県大分地方気象台令和元年 5 月 1 3 日

2. 背景わが国では気候変動による様々な影響に対し 政府全体として整合のとれた取組を総合的かつ計画的に推進するため 2015 年 11 月 27 日に 気候変動の影響への適応計画 が閣議決定されました また 同年 12 月の国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議で取りまとめられた 新たな国際的な

より高い平均気温であったが,2 月に入ってからは降雪等の影響により平年よりも気温が低い日が続き, 飛散開始が遅れたと推測された 29 年の飛散開始日は過去 18 年間 (1988 年 ~27 年 ) の中で 3 番目に早く, 気温が平年よりも高かったことが影響し, 予測よりも早まったと思われた 予測

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武蔵 狭山台工業団地周辺大気 環境調査結果について 埼玉県環境科学国際センター 化学物質担当 1

IPCC 第 5 次報告書における排出ガスの抑制シナリオ 最新の IPCC 第 5 次報告書 (AR5) では 温室効果ガス濃度の推移の違いによる 4 つの RCP シナリオが用意されている パリ協定における将来の気温上昇を 2 以下に抑えるという目標に相当する排出量の最も低い RCP2.6 や最大

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気象官署気象月表 ( 鹿児島地方気象台 名瀬測候所 阿久根 枕崎 屋久島 種子島及び沖永良部特別地域気象観測所 ) 日 界 24 時 ( 日本標準時 ) 平均気圧 (hpa) 現地観測地点の高さにおける気圧毎正時 24 回の平均値海面東京湾平均海面の高度に換算した気圧毎正時 24 回の平均値 平均

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大 阪 福 岡 鹿 児 島 各 都 市 における 年 平 均 した 平 均 気 温 日 最 高 気 温 日 最 低 気 温 の 長 期 変 化 傾 向 ( 続 き) 28

2019 年 5 月の青森県の天候 ( 速報 ) 特徴 高温〇少雨〇多照 令和元年 6 月 5 日青森地方気象台 1 天候経過全般この期間は高気圧に覆われ晴れる日が多かった 2 日と 8 日は気圧の傾きが大きくなり 暴風となった また 25 日から 27 日にかけて 最高気温が 30 以上の真夏日と

宇都宮と日光 ( 中宮祠 ) の気象表 要素平均気温 ( ) 降水量 (mm) 日照時間 (h) 地点平年差階級平年比階級平年比階級旬実況値平年値実況値平年値実況値平年値 ( ) 区分 (%) 区分 (%) 区分上旬 かなり高い かなり多い 5

平成26年度第2回高等学校卒業程度認定試験問題(地理B)

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講義:アジアモンスーン

災害時気象資料平成 30 年 7 月豪雨 ~ 平成 30 年 7 月 5 日から 8 日にかけての鹿児島県の大雨について ~ 概要 天気図および気象衛星画像 ~3 気象レーダー画像 ~7


2.2.5 月の統計月の統計は 当該月の 1 日から末日までの 1 か月間について行う か月の統計 3 か月の統計は 前々月から当該月までの任意の 3 か月間について行う なお 各四季の統計は 3~5 月 6~8 月 9~11 月及び 12~2 月の各 3 か月間を それぞれ春 夏

日本の気候変化の展望 2012 論 文 大河内 * 康正 ** 伊藤美樹 *** 源友樹 Climate Perspective in Japan at 2012 Yasumasa Okochi *, Miki Ito **, Yuhki Minamoto *** In this investiga


1


NO2/NOx(%)

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参考資料

平成28年4月 地震・火山月報(防災編)

9 月号平成 27 年 (2015 年 ) ご利用の前にかんくうじまウェザートピックス関空島 WEATHER TOPICSEAの内容には 航空気象で利用する用語や 観測で使用する機器及びその設置場所等の略語がでてきます これらの解説を巻末に掲載していますので適宜ご利用ください 関空島の 8 月の気象

1 資料 久慈市の位置 市庁 ( 本庁 ) の位置地名経緯度 久慈市川崎町 1 番 1 号 東経 北緯 国土交通省国土地理院 " " 方位東端西端南端北端距離 久慈市の位置 経度 緯度 " " "

平成16年6月25日の大雨(気象速報)

(1) 継続的な観測 監視 研究調査の推進及び情報や知見の集積〇気候変動の進行状況の継続的な監視体制 気象庁では WMO の枠組みの中で 気象要素と各種大気質の観測を行っている 1 現場で観測をしっかりと行っている 2 データの標準化をしっかりと行っている 3 データは公開 提供している 気象庁気象

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目次 1 降雨時に土砂災害の危険性を知りたい 土砂災害危険度メッシュ図を見る 5 スネークライン図を見る 6 土砂災害危険度判定図を見る 7 雨量解析値を見る 8 土砂災害警戒情報の発表状況を見る 9 2 土砂災害のおそれが高い地域 ( 土砂災害危険箇所 ) を調べたい 土砂災害危険箇所情報を見る

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IPCC 第1作業部会 第5次評価報告書 政策決定者のためのサマリー

第 12 章環境影響評価の結果 12.1 調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果

横浜市環境科学研究所

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布 ) の提供を開始するとともに 国民に対し分かりやすい説明を行い普及に努めること 図った 複数地震の同時発生時においても緊急地震速報の精度を維持するための手法を導入するとともに 緊急地震速報の迅速化を進める 特に 日本海溝沿いで発生する地震については 緊急地震速報 ( 予報 ) の第 1 報を発表

(/9) 07 年に発生した地震の概要. 佐賀県の地震活動 07 年に佐賀県で震度 以上を観測した地震は 9 回 (06 年は 85 回 ) でした ( 表 図 3) このうち 震度 3 以上を観測した地震はありませんでした (06 年は 9 回 ) 表 07 年に佐賀県内で震度 以上を観測した地震

保たれた近隣の観測地点を参照先として補正を行っている. 例えば, 米国大気海洋庁 (NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration) の国立気候データセンター (NCDC: National Climatic Data Center) が公


5 月の気象概況 上旬と下旬は 前線を伴った低気圧や気圧の谷等の影響で曇りや雨の日が多く 日降水量が 10mm を超える大雨となった所があった 中旬は 高気圧に覆われて概ね晴れの日が続き 暖かい空気の影響で平年よりも気温が高く推移した また 九州南部 ( 宮崎県を含む ) は26 日ごろ梅雨入り (

(00)顕著速報(表紙).xls

資料 1 平成 30 年 7 月豪雨 に関する大気循環場の特徴 平成 30 年 8 月 10 日 気象庁気候情報課 1

4

要旨 昨秋 日本に多大な被害を与えた台風 15 号は静岡県浜松市に上陸し 東海大学海洋学部 8 号館気象台では過去 3 年間での最高値に相当する 1 分平均風速 25 m/s を記録した また 西日本から北日本の広範囲に暴風や記録的な大雨をもたらし 東京都江戸川区で最大風速 31 m/s を記録する

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資料4 検討対象水域の水質予測結果について

佐賀県の地震活動概況 (2018 年 12 月 ) ( 1 / 10) 平成 31 年 1 月 15 日佐賀地方気象台 12 月の地震活動概況 12 月に佐賀県内で震度 1 以上を観測した地震は1 回でした (11 月はなし ) 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 図 1 震央分布図 (2018 年 1

地球温暖化に関する知識

2/ タケは日本人の生活に密接に結びつき人里に植えられてきたという歴史がある 日本の竹林面積は約 11 万 ha ( 農林水産省統計情報部 1994 ) 99% 以上はモウソウチクとマダケ ( その面

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15 表 1 平成 7 野菜の 1a 当たり収量 及び ( 全国 ) 計 品目 1 a 当たり収量 対前比 1 a 当たり収量 474,7 1,654, 11,66, 99 nc nc 根 菜 類 164,7 5,11, 4,49, nc だ い こ ん,9 4,6 1

8 月の気象概況 上旬と下旬は 高気圧に覆われ概ね晴れの日が多く 強い日射の影響も加わって気温が上がり 日最高気温が 35 以上の猛暑日となる日があった 中旬は 湿った空気の影響で曇りや雨の日が多かった また 台風第 12 号 第 15 号 第 19 号 第 20 号が宮崎県に上陸又は接近し 大雨や

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資 料 鹿児島県における気候変動に関する考察 1 福田哲也仮屋園広幸肥後さより東小薗卓志四元聡美満留裕己 1 はじめに近年地球上では気候変動, とりわけ気温上昇が多くの地域で観測されている その現象は我が国においても例外ではなく, 具体的に取りまとめたレポートとして, 文部科学省 気象庁 環境省が, 日本における地球温暖化の影響について現在までの観測結果や将来予測を2013 年に, 日本の気候変動とその影響 として報告している 1) また, 本県を含めた九州の気候変動については 九州 山口県の気候変動監視レポート において報告されている 2) が, 本県に特化した詳細な報告はされていないのが現状である そこで本報では, 本県の地域特性等を明らかにすることを目的とし, 鹿児島地方気象台が県内の各気象観測所で観測している気温及び降水量のデータを解析し取りまとめたので報告する 2 解析方法 2.1 解析対象観測所県全体の長期的な気候変化を見るため, 気象庁の気象データの統計期間が50 年以上である鹿児島地方気象台 ( 以下 鹿児島 という ), 名瀬測候所 ( 以下 名瀬 という ), 阿久根特別地域気象観測所 ( 以下 阿久根 という ) 及び枕崎特別地域気象観測所 ( 以下 枕崎 という ) を解析対象とした 各測定地点の位置を図 1に示す なお, 大隅地方については, 長期的なデータが不足していたことから解析対象としなかった 2.2 解析項目各測定地点において観測されている気温及び降水量を解析項目とし, 測定値を元に当所にて表及びグラフの作成を行った 3) なお, 鹿児島の観測地点は, 解析対象期間中,1915 年 7 月と1994 年 2 月に移転している そのため, 平均気温, 日最高気温, 日最低気温の3 項目につい 図 1 測定地点ては, 移転の影響を取り除く補正を行っており, 公開されている観測データとは値が異なる 補正後の値を鹿児島地方気象台から提供していただき, グラフの作成を行った 表 1の平均気温については, 枕崎以外のデータは九州 山口県 沖縄の気候変動監視レポート 2) で用いられている値を使用した また, 枕崎のデータについては, 観測所の測定値を元に当所にて解析を実施し, 表及びグラフの作成を行った 3 結果 3.1 気温 3.1.1 平均気温平均気温の長期変化傾向を表 1に, 年平均気温の経年変化を図 2に示す 1 鹿児島県姶良 伊佐地域振興局保健福祉環境部 899-5112 鹿児島県霧島市隼人町松永 3320-16 - 86 -

鹿児島県環境保健センター所報第 15 号 (2014) 表 1 観測所単位年 平均気温の長期変化傾向 春夏秋冬統計期間 (3~5) (6~8) (9~11) (12~2) ( 年 ) 鹿児島 2.00 2.14 1.89 2.38 1.74 1898~2011 /100 年名瀬 0.95 0.84 1.15 1.11 0.72 1898~2011 阿久根 0.79 0.73 0.75 0.92 0.80 1940~2011 /50 年枕崎 0.80 0.81 0.69 0.95 0.70 1924~2011 統計期間に移転があったため, 鹿児島では移転の影響を取り除く補正を行っている (1) 経年変化表 1において年平均気温は各測定地点で上昇傾向が見られた 特に鹿児島の平均気温の上昇率は約 2.00 /100 年で,4 地点の中で最も高くなっていた また, 図 2の各地点において,1980 年以降には長期変化傾向に対して5 年移動平均の高い時期が多く見られた (2) 季節別の変化鹿児島, 阿久根, 枕崎では秋, 名瀬では夏の上昇率が最も高かった 3.1.2 日最高気温日最高気温の長期変化傾向を表 2に, 平均値の経年変化を図 3に示す 表 2 日最高気温の長期変化傾向 ( 注 ) 観測地点移転の補正後の値を使用 観測所単位年 春夏秋冬統計期間 (3~5) (6~8) (9~11) (12~2) ( 年 ) 鹿児島 1.33 1.39 1.86 1.38 0.74 1898~2011 /100 年名瀬 0.47 0.39 0.72 0.52 0.25 1898~2011 阿久根 0.93 0.86 0.87 0.98 0.95 1940~2011 /50 年枕崎 0.47 0.50 0.42 0.47 0.49 1924~2011 統計期間に移転があったため, 鹿児島では移転の影響を取り除く補正を行っている ( 注 ) 観測地点移転の補正後の値を使用 細線 : 平均気温, 太線 :5 年移動平均, 直線 : 長期変化傾向 図 2 平均気温の経年変化 細線 : 日最高気温の平均, 太線 :5 年移動平均, 直線 : 長期変化傾向 図 3 日最高気温の経年変化 ( その 1) - 87 -

表 3 日最低気温の長期変化傾向 観測所単位年 春夏秋冬統計期間 (3~5) (6~8) (9~11) (12~2) ( 年 ) 鹿児島 2.86 3.25 2.76 2.97 2.67 1898~2011 /100 年名瀬 1.30 1.08 1.57 1.55 1.06 1898~2011 阿久根 0.63 0.45 0.57 0.79 0.67 1940~2011 /50 年枕崎 1.02 1.04 0.92 1.23 0.93 1924~2011 統計期間に移転があったため, 鹿児島では移転の影響を取り除く補正を行っている 細線 : 日最高気温の平均, 太線 :5 年移動平均, 直線 : 長期変化傾向 図 3 日最高気温の経年変化 ( その 2) ( 注 ) 観測地点移転の補正後の値を使用 (1) 経年変化表 2において日最高気温は各測定地点で上昇傾向が見られた 特に鹿児島においては日最高気温の上昇率が最も高く, 約 1.33 /100 年であった また, 図 3の各地点において,1980 年代には長期変化傾向に対して5 年移動平均の低い時期が見られたが,2000 年以降では高い時期が多く見られた (2) 季節別の変化鹿児島, 名瀬では夏, 阿久根では秋, 枕崎では春の上昇率が最も高かった 3.1.3 日最低気温日最低気温の長期変化傾向を表 3に, 経年変化を図 4に示す (1) 経年変化表 3において日最低気温は各測定地点で上昇傾向が見られた 特に鹿児島においては, 日最低気温の上昇率が約 2.86 /100 年であり, 他の3 地点と比較して高かった また, 図 4の各測定地点において,1970 年代には長期変化傾向に対して5 年移動平均の低い時期が見られたが,2000 年以降では高い時期が多く見られた (2) 季節別の変化鹿児島では春, 名瀬では夏, 阿久根と枕崎では秋の上昇率が最も高かった 細線 : 日最低気温の平均, 太線 :5 年移動平均, 直線 : 長期変化傾向 図 4 日最低気温の経年変化 - 88 -

鹿児島県環境保健センター所報第 15 号 (2014) 3.1.4 真夏日, 猛暑日, 熱帯夜, 冬日真夏日 ( 日最高気温が30 以上の日 ), 猛暑日 ( 日最高気温が35 以上の日 ), 熱帯夜 ( 厳密には夜間の最低気温が25 以上の日であるが, ここでは日最低気温が25 以上の日を便宜的に 熱帯夜 と呼ぶ ) 及び冬日 ( 日最低気温が0 未満の日 ) の20 年ごとの年平均日数をそれぞれ表 4-1~4-4に示す また, 経年変化を図 5-1~5-4 に示す 表 4-1 及び図 5-1において,1971~1990 年の20 年間と比較して1991~2010 年の20 年間は各測定地点における真夏日の平均日数が増加していた 表 4-2 及び図 5-2において, 名瀬, 阿久根及び枕崎では猛暑日日数に大きな変化が見られなかった 鹿児島においては参考値ではあるが1990 年代以降猛暑日日数が増加していた 表 4-3 及び図 5-3において, 熱帯夜日数が近年増加傾向にあることは各測定地点で概ね一致しており, 真夏日の傾向と同様であった 表 4-4 及び図 5-4において名瀬を除く3 地点で冬日の減少が見られた 特に鹿児島では参考値ではあるが, 近年の熱帯夜日数が以前と比較して大きく増加しており, 冬日日数については大きく減少していた 表 4-1 真夏日の平均日数 鹿児島 66.0 71.7 69.9 (78.5) 名 瀬 94.0 85.4 92.3 阿久根 37.5 40.2 52.3 枕 崎 43.6 47.9 58.2 観測所移転の影響を補正できないため, 括弧内の数値は参考値とする 図 5-1 真夏日日数の経年変化 - 89 -

表 4-2 猛暑日の平均日数 期間 1951~1970 年 1971~1990 年 1991~2010 年観測所 鹿児島 1.1 (5.0) 名瀬 2.5 0.2 1.3 阿久根 0 0.5 枕崎 0.1 0.1 観測所移転の影響を補正できないため, 括弧内の数値は参考値とする 表 4-3 熱帯夜の平均日数 鹿児島 11.1 18.4 29.8 (54.7) 名 瀬 47.0 58.9 70.7 阿久根 17.2 12.8 21.1 枕 崎 21.6 22.1 31.0 観測所移転の影響を補正できないため, 括弧内の数値は参考値とする 図 5-2 猛暑日日数の経年変化 図 5-3 熱帯夜日数の経年変化 - 90 -

鹿児島県環境保健センター所報第 15 号 (2014) 表 4-4 冬日の平均日数 鹿児島 32.9 22.7 12.7 (2.4) 名 瀬 0 0 0 阿久根 5.6 5.3 1.9 枕 崎 6.2 5.2 2.2 観測所移転の影響を補正できないため, 括弧内の数値は参考値とする 図 5-4 冬日日数の経年変化 図 6 年間降水量の経年変化 3.2 降水量 3.2.1 年間降水量年間降水量の経年変化を図 6に示す 図 6において,5 年移動平均による長期的な傾向については名瀬においてわずかな減少傾向にあったが, その他の地点では長期的な変化は認められなかった 3.2.2 日降水量日降水量 50mm 以上の年平均日数を表 5-1,100mm 以上の年平均日数を表 5-2に示す また, 経年変化を図 7-1, 7-2に示す 各測定地点において50mm 以上,100mm 以上ともに年平均日数の大きな変動は認められなかった また, 地点間による日数を比較した結果, いずれの年代においても 50mm 以上,100mm 以上ともに名瀬が最多の年平均日数を記録していた - 91 -

表 5-1 日降水量 50mm 以上の年平均日数 期間 1911~ 1931~ 1951~ 1971~ 1991~ 観測所 1930 年 1950 年 1970 年 1990 年 2010 年 鹿児島 (10.0) 10.9 12.0 10.3 (11.7) 名 瀬 12.9 12.4 13.3 13.0 13.1 阿久根 10.2 8.8 10.2 枕 崎 10.1 9.6 10.6 観測所移転の影響を補正できないため, 括弧内の数値は参考値とする 表 5-2 日降水量 100mm 以上の年平均日数 期間 1911~ 1931~ 1951~ 1971~ 1991~ 観測所 1930 年 1950 年 1970 年 1990 年 2010 年 鹿児島 (1.8) 2.3 2.8 2.3 (3.4) 名 瀬 3.9 3.5 4.1 3.1 3.9 阿久根 2.6 2.4 2.6 枕 崎 1.8 2.1 3.3 観測所移転の影響を補正できないため, 括弧内の数値は参考値とする 図 7-1 日降水量 50mm 以上の日数 図 7-2 日降水量 100mm 以上の日数 - 92 -

鹿児島県環境保健センター所報第 15 号 (2014) 3.2.3 時間最大雨量短時間強雨の傾向を見るために時間最大雨量 30mm 以上の年平均日数を表 6-1,50mm 以上の年平均日数を表 6-2に示す また, 経年変化を図 8-1,8-2に示す 時間最大雨量 30mm 以上の日数では名瀬以外の測定地点では増加傾向にあったのに対し, 名瀬ではわずかに減少傾向にあった また,50mm 以上の日数は各地点において有意な傾向は見られなかった 図 8-1 時間最大雨量 30mm 以上の日 ( その 2) 表 6-1 時間最大雨量 30mm 以上の年平均日数 鹿児島 2.8 3.3 4.1 (4.5) 名 瀬 5.8 5.3 5.0 阿久根 4.2 4.7 4.8 枕 崎 3.4 4.0 5.2 観測所移転の影響を補正できないため, 括弧内の数値は参考値とする 表 6-2 時間最大雨量 50mm 以上の年平均日数 鹿児島 0.5 0.5 0.7 (1.0) 名 瀬 1.2 1.1 1.3 阿久根 0.9 1.4 0.9 枕 崎 0.8 0.7 1.4 観測所移転の影響を補正できないため, 括弧内の数値は参考値とする 図 8-1 時間最大雨量 30mm 以上の日 ( その 1) 図 8-2 時間最大雨量 50mm 以上の日数 ( その 1) - 93 -

参考文献 図 8-2 時間最大雨量 50mm 以上の日数 ( その2) 4 考察 まとめ鹿児島県における気候変動を把握するため, 県内における様々な気象データの解析を実施した その結果, 以下のことが分かった 1) 年平均気温は過去 50~100 年の間に各測定地点において広域的に上昇していることが確認された これは地球温暖化による昇温に加え, 特に鹿児島においては都市化の影響が大きく寄与しているものと思われた 2) 日最高気温, 日最低気温は各測定地点で上昇していることが確認された これも地球温暖化による昇温に加え, 特に鹿児島においては都市化の影響が大きく寄与しているものと思われた また, 阿久根以外の3 地点では日最高気温と比較して日最低気温の上昇温度が高いことが確認され, このことから日最低気温の上昇が年平均気温の上昇に大きく寄与しているものと思われた 3) 真夏日と熱帯夜は各測定地点で増加傾向にあり, 猛暑日は鹿児島において顕著な増加が見られた また, 冬日については観測されなかった名瀬を除く測定地点において減少傾向であった 4) 降水量については大きな経年変化は確認されなかったものの, 名瀬においては年間降水量と時間最大降雨量においてわずかな減少が見られた 1) 文部科学省 気象庁 環境省 ; 気候変動の観測 予測及び影響評価統合レポート 日本の気候変動とその影響 (2012 年度版 ),(2013) 2) 福岡管区気象台 沖縄気象台 長崎海洋気象台 ; 九州 山口県 沖縄の気候変動監視レポート2012, (2012) 3) 鹿児島地方気象台 ; 過去の気象データ http://www.jma-net.go.jp/kagoshima/ 5 謝辞気象データの提供をいただきました鹿児島地方気象台の方々に深く感謝いたします - 94 -