2016 29 1 9 17 Burns Grodinsky Holyoke Levitt Levitt fascia superficial cervical fascia SCF deep cervical fascia DCF DCF superficial layer of DCF SLDCF middle layer of DCF MLDCF deep layer of DCF DLDCF SCF SCF SMAS superficial muscular aponeurotic system SLDCF SMAS SLDCF SLDCF SCF 9
口 咽 科 29 1 渡辺 哲生 み その前縁からは再び合して正中に到達する 図2 SLDCF に囲まれる組織 器官は Rules of twos と C 一部は顎二腹筋前腹 顎舌骨筋を覆い 顎下間隙 いわれ 2つの腺組織 耳下腺と顎下腺 2つの筋肉 底部を形成する一部は下顎骨下縁より耳下腺を取り囲 胸鎖乳突筋 僧帽筋 2つの間隙 Burns の胸骨上間 み 咬筋筋膜へ移行する 図2A B 範囲は 前方は舌骨に付着し 上方は下顎骨下縁 乳 様突起 上項線 外後頭隆起に付着し 下方は鎖骨 肩 峰 肩甲骨棘に付着する 図3 図3 図1 図2 浅頸筋膜 SCF 矢状断での深頸筋膜 DCF SLDCF を黄線 MLDCF 青線 DLDCF を 赤線で示す 水平断での深頸筋膜 DCF SLDCF を黄線 MLDCF 青線 DLDCF を赤線で示すDはCの枠線内の拡大 10
解剖と深頸部膿瘍 図4 口 咽 科 29 1 頸動脈鞘 SLDCF を黄線 MLDCF 青線 DLDCF を赤線で示す 下段は上段の枠内の拡大 隙 後頸間隙 が含まれるBurns の胸骨上間隙は図3 ある翼状筋膜は第7頸椎から第2胸椎の高さであるの に示される部位である に対して椎前筋膜は尾骨まで及ぶ 図3 脊椎 傍脊 3 深頸筋膜中葉 MLDCF 椎筋 頸長筋 頭長筋 斜角筋 肩甲挙筋 腕神経叢 MLDCF は内臓筋膜とも呼ばれ 前頸筋 胸骨舌骨筋 横隔神経 頸神経叢 椎骨動静脈 交感神経幹を取り囲 肩甲舌骨筋 胸骨甲状筋 甲状舌骨筋 を取り囲む筋肉 む 葉と咽頭 喉頭 気管 食道 甲状腺を取り囲む内臓葉 5 頸動脈鞘 carotid sheath 図4 に区分することが多い 図2C 頬咽頭筋膜は内臓葉 以上の DCF3葉で形成される筋膜として頸動脈鞘が の一部とされ 咽頭の後方部で上咽頭収縮筋を包み 側 ある後方は深葉 内側は中葉 前方は浅葉および中葉 方にのびて頬筋の外側を包む上方は鉤状突起 翼突下 で形成される頭側は頭蓋底から尾側は大動脈弓に及 顎縫線に付着する 図2A なお 筋肉葉 は SLDCF ぶ内部は頸動脈間隙となり 内 総頸動脈 内頸静 に分類する意見もある 脈 Ⅸから!脳神経が存在する 筋肉葉の範囲は 上方は舌骨 甲状軟骨で 下方は胸 上中咽頭部では 傍咽頭間隙茎突後区として取り扱わ 骨 鎖骨 肩甲骨となる内臓葉の範囲は 前上方は舌 れることもあるまた 縦隔まで連続しているため 感 骨 甲状軟骨で 後上方は頭蓋底に及び 下方は心膜に 染症や悪性腫瘍の縦隔への波及経路となり降下性縦隔炎 連続するこの後上方の部分が頬咽頭筋膜になる 図2 の要因となるため Lincoln Highway と表現されること C がある 4 深頸筋膜深葉 DLDCF 3 間隙 space DLDCF は頸椎棘突起と項靭帯に始まり 浅葉と癒着 間隙は筋膜間の潜在性間隙のことを意味するその内 しながら項筋の外面を覆った後に浅葉と離れ 僧帽筋の 容は疎性結合組織あるいは実質臓器であるGuidera, et 内側を通り 斜角筋を覆い 頸椎横突起に付着した後 al.は本来 space というのは何もない部位であるので区画 椎前筋を覆う横突起より前方では2層に分離し 前が compartment という用語を用いた方がよいという指摘を 翼状筋膜 後ろが椎前筋膜となる 図2C している3間隙の中には 固有の筋膜に包まれ 筋や その範囲であるが 翼状筋膜と椎前筋膜とも上方は頭 腺が構成要素の主になるものと 複数の他の間隙を包む 蓋底となる外方は 翼状筋膜は頸動脈鞘 椎前筋膜と 筋膜により受動的に作られ 脂肪が構成要素の主になる 癒合し 椎前筋膜は腋窩鞘 胸腔上膜 Sibson 膜 に ものがある臨床的には 炎症の進展する道筋になるこ 連続する胸腔上膜は第7頸椎横突起から第1肋骨内側 とから重要視される間隙の分類は Levitt が提唱した舌 縁に広がる膜で胸腔天蓋を形成する重要なのは下端で 2 骨を基準とした分類が広く用いられている 表1 11
29 1 1 5 parapharyngeal space 12
口 咽 科 29 1 解剖と深頸部膿瘍 図7 扁桃周囲間隙 文献4 より改変 水色の部分が扁桃周囲間隙 外側の筋層が口蓋扁桃から傍咽頭間隙への炎症波及の障 壁となるが 大塚らは日本人解剖体83体を用いて検討し たところ咽頭収縮筋が扁桃床を広く裏打ちしているのは 1/4に過ぎず 筋層を欠く場合が多いことを報告して いる5また Licameli, et al.によれば口蓋扁桃は口蓋咽 頭筋の線維で上2/3と下1/3に分かれ 下方に生じ 図6 舌骨上間隙 舌骨下間隙 緑色の部分が茎突前区 燈色の部分が茎突後区 黄緑 色が咽頭後間隙 水色が危険間隙 赤色が椎周囲間隙 黄色が耳下腺間隙 灰色が咀嚼筋間隙 紫色が咽頭粘 膜間隙 青色が内臓間隙を示す た炎症は下方に進展しやすく 早期からの症状や喉頭浮 腫が出現しやすくなるとしている6 ③ 咽頭粘膜間隙 pharyngeal mucosal space 咽頭粘膜間隙は耳鼻咽喉科領域では取り上げられるこ とが少ないが MLDCF の気道側の組織で 頭蓋底から 輪状軟骨の範囲に存在する後外方が傍咽頭間隙 後方 に区分する考え方もあった茎突前区は本来の傍咽頭間 が咽頭後間隙となるこの間隙内にはワルダイエル咽頭 隙で茎状突起から口蓋帆張筋の範囲となり 茎突後区 輪も含まれる耳鼻科 外科領域では扁桃周囲間隙は独 は頸動脈間隙そのものであり 縦隔に直通し て い る 立した間隙として取り扱われることが多いが 解剖学的 図6 には扁桃周囲間隙は咽頭粘膜間隙に含まれる 図6 傍咽頭間隙は多くの他の深頸部間隙と接している下 ④ 舌下間隙 sublingual space 図8 方は顎下間隙 後内方は咽頭後間隙 前内方は扁桃周囲 舌下間隙は口腔内に存在する間隙で筋膜による境界が 間隙 前外方は咀嚼筋間隙 外方は耳下腺間隙 内方は ない左右が舌小帯深部で交通している顎舌骨筋より 内臓間隙と接している顎下間隙 咽頭後間隙とは交通 も上方が舌下間隙 下方が顎下間隙になるが 両者は顎 しているという意見が多く 耳下腺間隙との間に境界が 舌骨筋後縁で交通しているため 臨床的に一つの間隙 ないという意見もある 図5 6 顎下間隙として取り扱う考え方もある ② 扁桃周囲間隙 peritonsillar space 舌下間隙の上方は口腔底粘膜 前方は下顎骨 下外方 上咽頭収縮筋と口蓋扁桃被膜の間の疎性結合織の層が は顎舌骨筋 内方は頤舌筋 頤舌骨筋となっている 扁桃周囲間隙である 顎舌骨筋が下顎骨に付着する顎舌骨筋線は第2大臼歯 前方は前口蓋弓 後方は後口蓋弓 下方は舌根 内方 の歯尖部に一致するため 第2大臼歯よりも前方の歯が は口蓋扁桃被膜 外方は上咽頭収縮筋により境界され 舌下間隙病変の原因となることが多い る上咽頭収縮筋 頬咽頭筋膜を隔てた外側が傍咽頭間 ⑤ 隙になる 図7 顎下間隙 submandibular space 図8 顎下間隙は顎舌骨筋の外側に存在する間隙で SLDCF 口蓋扁桃が存在する部位は扁桃床と呼ばれる扁桃床 により囲まれる上方は口腔底で顎舌骨筋 下方は舌骨 13
29 1 8 SLDCF masticator space SLDCF SLDCF Meckel parotid space SLDCF visceral space MLDCF 9 SLDCF MLDCF DLDCF retropharyngeal space MLDCF DLDCF 14
29 1 10 Vieira, et al. danger space perivertebral space DLDCF DLDCF carotid space Weber CT CT 15
29 1 Chiari Thompson CT ring enhancement CT MRI T2 CT ring enhancement Ludwig s angina Ludwig Grodinsky CT MRI 16
29 1 Grodinsky M Holyoke E The fascia and fascial spaces of the head and neck and adjacent regions Am J Anat 1938 63 367 407 Levitt GW Cervical fascia and deep neck infection Laryngoscope 1970 80 409 435 Guidera AK Dawes PJD Fong A et al Head and neck fascia and compartments No space for spaces Head Neck 2014 36 1058 1068 p 174 177 tonsillar bed Licameli GR Grillone GA Inferior pole peritonsillar abscess Otolaryngol Head Neck Surg 1998 118 95 99 Vieira F Allen SM Stocks RMS et al Deep neck infection Otolaryngol Clin N Am 2008 41 459 483 JOHNS 2009 25 1589 1594 Herzon FS Peritonsillar abscess incidence current management practices and a proposal for treatment guidelines Laryngoscope 1995 105 Suppl 74 1 17 Skoulakis CE Papadakis CE Bzakis JG et al Abscess of the pharyngeal mucosal space An unusual location J Otolaryngol 2003 32 121 124 Grodinsky M Ludwig s angina ananatomical and clinical study with review of the literature Surgery 5 678 696 Anatomy of deep neck spaces and deep neck infection Tetsuo Watanabe Oita University Faculty of Medicine Department of Otolaryngology Head & Neck Surgery Key words : deep neck, fascia, space, abscess 17