地域ねこ守り隊事業実行委員会 NPO 法人地元再生機構福岡市保健福祉局生活衛生部生活衛生課 地域猫活動とは? 周辺住民の理解を得た上で, ボランティアグループなどが, 野外で生活する飼い主のいない猫に不妊 去勢手術を施し, トイレやエサやりの時間を決めて世話をするなど, 一定のルールに従い, 猫を一代限りで飼育することで問題解決を図っていく活動
平成 23 年度 ~ 平成 25 年度地域ねこ守り隊事業 地域ねこ守り隊事業実行委員会 事業の概要 福岡市は, 平成 21 年 10 月に, 飼い主のいない猫 ( いわゆるのら猫 ) 問題に対応するため, のら猫の不妊 去勢手術を無償実施するなど, 問題の解決手法のひとつである地域猫活動の推進を始めた 本事業は, この活動を円滑に進めるため, 地域コミュニティの重要性に着目し, 福岡市と NPO が共働して取り組む モデル地区 を設定するとともに, 様々な手法を取り入れることで, コミュニティの活性化を図りながら, 活動の有効性を, 事業実施地区だけでなく全市的に広め, 地域猫活動に取り組む地域を拡大するものである 事業実施地区 ( 当仁校区 ) 周辺図 教育施設 平成 23 年度モデル地区 事業実施地区の課題 問題点 恒常的な猫問題の存在のら猫の糞害 ゴミ箱あさり等の被害大濠公園 西公園での捨て猫猫への置きエサ, 無責任なエサやり等 地域コミュニティの希薄 事業実施地区の特徴 大濠公園 西公園に挟まれた街区 集合住宅と一軒家が混在 複数の教育施設が点在
共働のきっかけ 必要性 課題解決の事業手法として NPO と市との 共働 の必要性 地域の猫問題は, 従来から行われてきたのら猫の処分だけでは根本解決が困難なほど多方面にまたがる複雑性がある 問題解決に向けて地域住民の自発性を促す必要があり, そのために NPO と行政が 共働 して地域を後押しすることで, ひいては, 地域コミュニティの活性化につながる NPO の事業提案理由 (NPO 法人地元再生機構 ) 地元地域の様々な問題を解決することを目的とする NPO であり, そのひとつとして, のら猫問題の解決を通して地域コミュニティの活性化を促すための事業として提案した 市担当課の事業への取組み理由 ( 福岡市保健福祉局生活衛生部生活衛生課 ) のら猫問題解決の手法のひとつである地域猫活動を全市に広めるため, 本事業の実施地区を モデル地区 として PR する目的で取り組むこととした 事業の目的 猫問題の解決と地域コミュニティの活性化 地域住民が地域猫活動を通して ヒトとしての責任ある行動とはどんなものか 本当のやさしさとは何か などを共に考え, 次世代へつなぐ町づくりを目指す 地域猫活動のモデル地区として, その有効性を全市的に周知する 事業実施機関 平成 23 年度 ~ 平成 25 年度 3 年間 事業の目標 地域猫活動の拡大 ( 捨て猫行為を根絶 ) 当仁校区内に地域猫活動地区を拡大のら猫に不妊去勢手術を実施し, 地域猫化する 地域猫化後も, 可能な限り飼い主さがしを行う 動物関係団体との協力体制の構築 地域コミュニティ活性化の促進地域猫活動に学生や子供達を参画させることで, 地域コミュニティの活性化を促進 実践教育の場の形成 ( 小 中学生を対象 ) 無償の愛 や 本当のやさしさ を育くむ教育の場の提供 モデル地区として地域猫活動の全市的な周知 平成 25 年度からのモデル地区 ( 荒戸 3 丁目 1 区 ) 平成 25 年度からのモデル地区 ( 西公園 3 区 ) 平成 24 年度からのモデル地区 ( 大濠公園地区 ) 平成 23 年度からのモデル地区 ( 荒戸 2 丁目 1~4 区 )
NPOと市の役割分担 ( その他の団体等の協力 ) 地域猫活動 エサやり ( 置きエサ禁止 ) トイレ管理 のら猫調査 捕獲 搬送 不妊去勢手術 回収 見回り ( 捨て猫防止 ) 清掃活動等 共働 連携 [ 福岡市 ] 専門的な問題への助言 資料提供 講習会 授業等への講師派遣 地元 活動者 関係団体 学校への説明 その他市の関係部署との連絡調整 のら猫の不妊 去勢手術 広報活動 地域ねこ守り隊事業実行委員会 [NPO 法人地元再生機構 ] 地元 活動者 関係団体 学校との連絡 調整 地域猫活動の実施 主に, のら猫の調査, 捕獲 搬送 回収 講習会等の企画 実施 実行委員会の運営 相談窓口の設置 猫の飼い主さがし 広報活動 他の地域への協力 役割 役割 [ 地元の活動者 ] 地域猫活動への協力 主に, エサやり, トイレ管理, のら猫の捕獲 搬送 回収 協力 [ 動物関係団体 ] 講習会等への協力 地元 活動者 学校への説明補助 地域猫活動への協力 主に, のら猫の調査, 捕獲 搬送 回収 協力 目標 地域コミュニティー活性化の促進 動物関係団体との協力体制構築 地域猫活動の拡大 協力 実践教育の場の形成 地域猫活動の有効性の周知 [ 専門学校 大学 高校 ] 地域猫活動への参画 主に, のら猫調査, 見回り 協力 ~ 役割 [ 地域猫活動地区 町内会 ] 地域猫活動の実施 主にのら猫の調査, 捕獲 搬送 回収 協力 [ 小 中学校 ] 実践教育の場の提供猫問題を通した授業 地域猫活動への参画 主に, のら猫調査 地域ねこ守り隊 を結成学生が主体となって, のら猫調査等を実施 共働するうえで苦労した点 工夫した点 NPO 市ともに, 本活動以外の仕事や業務を有していることから, お互いの意思確認が疎かになりがちであるため, 十分な意思疎通を図るよう取り組んだ 定例会の開催毎月第 2 水曜日の10 時から, 定例会を開催し, 活動の報告や今後の取組み予定について確認するとともに, 新たな事案についても協議を行った 電子メールを利用した確認定例会の風景緊急性を要する事案等については, その都度, 電子メールでの確認を行った 事務所等の訪問 協議定例会以外の協議の場を設定する際は, お互いの事務所や執務室を利用した
事業実績 [ 地域猫活動の拡大 ] 平成 23~25 年度 地域猫活動スタート荒戸 2 丁目 1 2 3 4 区大濠公園区西公園 3 区荒戸 3 丁目 1 区 のら猫へ不妊 去勢手術実施 108 頭を地域猫化 地域猫化後の譲渡 5 頭の猫を新しい飼い主へ譲渡 複数の活動者の協力 地域猫の不妊去勢手術 右オス 左メス 猫の捕獲 猫の運搬 地域猫 エサとトイレの管理 [ 耳のカットが目印 ] エサ場とトイレ エサやり ( 置きエサ禁止 ) [ 動物関係団体との協力体制の構築 ] ライフリレーネットワーク公園における, のら猫の捕獲作業を中心とする協力体制を構築 大濠公園 西公園で活動 平成 24~25 年度 地域ねこネットワーク地域猫活動を進める地域への説明を補助するなど協力体制を構築 荒戸 3 丁目 1 区にアプローチ平成 25 年度
事業実績 [ 地域コミュニティ活性化の促進 ] [ 実践教育の場の形成 ( 小 中学生を対象 )] 地元の小中学校における道徳の授業や総合学習に参加 講師やゲストティーチャーとして, 地域の猫問題などについて講話 福岡市立当仁中学校 1 年生平成 23~25 年度 福岡教育大附属福岡中学校 2 年生平成 24 年度 福岡教育大附属福岡小学校 4 年生平成 25 年度 地域ねこ守り隊 結成にむけた体験等 平成 25 年度 学生 生徒を主体とした, のら猫調査や地域の見回りなどの活動の実現を目指し, 地元の小学生が様々な活動を体験 地域猫活動を体験 ( 西公園 ) 地域猫活動について呼びかけ ( 大濠公園 )
事業実績 [ モデル地区として地域猫活動の全市的な周知 ] 広報誌 No.1 ~ No.3 地域猫活動に関する広報誌を作製し, 町内 校区住民や動物関係団体 市民へ配布 広報誌 No.1 平成 23 年度地域猫活動の紹介等 広報誌 No.2 平成 24 年度他の地域の活動紹介等 広報誌 No.3 平成 25 年度福岡地域猫連絡協議会の立ち上げ等 ホームページの開設 シンポジウムの開催 どうぶつ愛護フェスティバル in ふくおかへの参加 ホームページ シンポジウムの開催やイベントへの参加を通して, 地域猫活動に関する情報を発信 ホームページ平成 24 年 3 月開設 http://zimotosaisei.or.jp/communitycat 地域猫活動を中心に情報を発信 シンポジウム平成 24 年 3 月開催 共働事業と地域猫活動について討論 どうぶつ愛護フェスティバル in ふくおかへの参加平成 24 25 年度約 4,000 人の来場があるフェスティバルへ参加し地域猫活動を PR
事業実績 [ その他の活動 ] 他都市の活動へゲストとして参加 地域ねこサポート会ちくしの第 2 回地域ねこセミナー参加 大阪市第 2 回地域ねこについて考えるセミナー参加 日本大学文理学部社会学科地域猫活動を研究しているゼミの講師 学生と交流 熊本市の地域猫関係 NPO 設立に向けた説明会へ参加 大阪市セミナー平成 24 年 12 月 2 日開催地域猫活動において, 先駆的な取り組みを行っている自治体の担当者をパネリストとして討論 日本大学文理学部社会学科交流会平成 25 年 9 月開催福岡市の地域猫活動と関東の同活動に関する取組みについて比較 検証 地域猫活動地域間の連携強化 意見交換会の開催 福岡地域猫連絡協議会設立 発 地域猫活動支援指定地区関係者による意見交換会を開催平成 24~25 年度 展 意見交換会への参加地区の活動者をベースに協議会を設立平成 25 年 8 月 ~ 地域猫活動に関する相談窓口地域猫活動を始めようとしている地域などからの相談等へアドバイスする窓口を,NPO の事務所に設置し対応
成果 ( 事業実施地区 ) 地域猫活動地域数当仁校区 28 町内区のうち, 7 町内区に, 地域猫活動を拡大 公園の猫問題への着手大濠公園の隣接地域と西公園における地域猫活動をスタート 成果 ( 福岡市全域 ) 地域猫活動地域数と不妊 去勢手術頭数 ( 福岡市の支援地域 ) 平成 23 年 3 月末時点 9 地域オス 64 頭メス 66 頭計 130 頭が, 平成 26 年 3 月末時点 47 地域オス 504 頭メス 473 頭計 977 頭に, 3 年間で 38 地域が増加し,847 頭を手術 効果 メリット 地域猫活動について, 地元の理解を得る地道なやり方など, 行政だけでは説明困難だった事案などに,NPO の経験を生かした相談窓口を設置 地域猫活動地域間の連携において橋渡しを行うなど, 活動地域間のつながりが深まり, 効果的な取り組みに発展 他都市の地域猫活動者 行政 有識者等との交流などで, 地域猫活動以外の猫問題解決に向けた取組みの調査 研究が可能となった 効果的な地域猫活動を行うために導き出した工夫 [ 活動地域の理解を深める効果的な方法 ] 地元の教育施設など, 様々な方面に対して説明 活動者だけでなく, 行政や他の活動地域 動物関係団体からも話をするなど, 多方面からのアプローチ チラシ リーフレットの配布やシンポジウムの開催など, 様々なツールを使った広報活動を頻繁に行うことで, 活動に関する情報を発信
効果的な地域猫活動を行うために導き出した工夫 [ 活動地域の効果的な拡大方法 ] 未活動地域から未手術ののら猫の流入を防ぐため, 隣り合う地域へ活動地域を広げていくことが望ましい 活動地域間の連携を強化することで, お互いの効果的な取り組みに発展する 地元の声 居住形態の違いによりのら猫への関心は大きく異なり, さらに, 地域の猫問題は, 猫の好き 嫌いの感情によって左右される傾向が強い この 3 年間で, 特に公園において子猫を見かけることが少なくなった 地域猫活動の難しさの原因としては, 地域における活動全般に対する, 住民の無関心さが挙げられる 短時間での解決は困難であるため, これからも, 根気よく丁寧に地域のリーダー等に, 地域猫活動の趣旨を伝え, 地元の理解と応分の負担を求めていく努力が必要だと思われる 総括 地域の猫問題解決のためには, 地元のコミュニティを活性化させることが, 効果的な手法であると考えられた 活動において最も重要な, 地域の理解を得るためには, 地元の教育施設など様々なところへの, 地道なアプローチが不可欠と考えられた そのためには, 地域に対する行政の支援だけでなく, 今回, 共働した NPO や, さらには, 動物関係団体などの協力が全市的に得られる体制づくりが望まれる 今後の展望 [NPO] 今回の事業で培った様々な方法を, 他の地域へ伝えることで事業実施地区における地域猫活動を拡大するとともに, 地域コミュニティの活性化に努める [ 福岡市 ] 地域猫活動の趣旨を, 全市的に正しく伝えていくための広報事業を充実させるとともに, のら猫だけでない地域の猫問題を解決できるような仕組みづくりへ取り組んでいく