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蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

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骨髄線維症 1. 概要造血幹細胞の異常により骨髄に広汎に線維化をきたす疾患 骨髄の線維化に伴い 造血不全や髄外造血 脾腫を呈する 骨髄増殖性腫瘍のひとつである 2. 疫学本邦での全国調査では 患者数は全国で約 700 人と推定されている 発症年齢の中央値は 66 歳である 男女比は 2:1 と男性に

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に 真菌の菌体成分を検出する血清診断法が利用されます 血清 βグルカン検査は 真菌の細胞壁の構成成分である 1,3-β-D-グルカンを検出する検査です ( 図 1) カンジダ属やアスペルギルス属 ニューモシスチスの細胞壁にはβグルカンが豊富に含まれており 血液検査でそれらの真菌症をスクリーニングする

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一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

学会名 : 日本免疫不全症研究会 アンケート 1 1. アンケート 2 に回答する疾患名 (1) X 連鎖無 γ グロブリン血症 (2) 慢性肉芽腫症 2. 移行期医療に取り組むしくみあり :1 年に1 回の幹事会で 毎年 discussion している また 地区ごとの地方会で 内科の先生方にいか

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平成14年度研究報告

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

なくて 脳以外の場所で起きている感染が 例えばサイトカインやケモカイン 酸化ストレスなどによって間接的に脳の障害を起こすもの これにはインフルエンザ脳症やH HV-6による脳症などが含まれます 三つ目には 例えば感染の後 自己免疫によって起きてくる 感染後の自己免疫性の脳症 脳炎がありますが これは

の場合は特徴的なものを挙げることは困難である 肝障害のタイプからみた所見の特徴肝細胞障害型 胆汁うっ滞型 混合型に特徴的な所見を挙げることは困難である なお肝不全に至った場合 播種性血管内凝固症候群 (DIC) を併発すれば血小板減少 出血傾向に伴う貧血を認め 感染を併発すれば白血球増多や血液像で核

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り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの


がん登録実務について


家族性樹状細胞欠損症 1. 概要樹状細胞を完全に欠損する免疫不全症 2. 疫学国内で 28 症例が確認されているが 診断されていない症例が多く存在する 3. 原因一部は転写因子 GATA2 遺伝子の変異によることが 2011 年に解明された 他の多くの樹状細胞欠損症の原因遺伝子は解明されていない 4

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

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( 平成 22 年 12 月 17 日ヒト ES 委員会説明資料 ) 幹細胞から臓器を作成する 動物性集合胚作成の必要性について 中内啓光 東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO 型研究研究プロジェクト名 : 中内幹細胞制御プロジェクト 1


免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

Transcription:

血球貪食症候群 (130221) 完全に知識から抜けているので基本的なところを勉強しておく HPS(hemophagocytic syndrome) はリンパ球とマクロファージの過剰な活性化が持続し 制御不能なサイトカイン過剰産生に陥る高サイトカイン血症が共通病態である 活性化した組織球は血球を貧食し 臓器に浸潤する 1) 血球貧食症候群は元来病原体や障害を受けた血球等を貪食する機能を持つ組織球がサイトカインの影響を受け制御機能を失い無秩序に異常増殖および活性化することにより引き起こされる一連の症候群である 2) 血球貧食症候群 (hemophagocytic syndrome:hps) はさまざまな原因により正常な免疫反応が破綻し 過剰に産生されたサイトカインによって 発熱 血球減少 肝機能異常 凝固異常などを呈し 骨髄 肝 脾でのマクロファージの増殖と血球貧食像を特徴とする 3) 血球貧食症候群 (HPS) は 単一遺伝子病として また感染症 膠原病や悪性腫瘍の合併症として発症する 1) HPS を 基礎疾患と誘因から 原発性 遺伝性 と 続発性 後天性 に分類する 小児では EB ウイルス関連 成人ではリンパ腫関連が多い 1) 成人発症 FHL も見つかり EBV-HLH 成人例の報告も増加している (FHL: 家族性血球貪食症候群 familial hemophagocytic lymphohistiocytosis HLH: 血球貪食性リンパ組織球症 hemophagocytic lymphohistiocytosis)1) 続発性には 脂肪製剤 抗痙攣薬などによる薬剤性のものがある 3) EBV とリンパ腫が日本の HPS における主な背景因子である 3) 感染症関連血球貪食症候群 (infection-associated-hps/hlh:iahs): あらゆる病原微生物が IAHS の発症原因となり得るが ウイルスが圧倒的に多くウイルス関連血球面食症候群 (virus-associated hemophagocytic syndrome:vahs) はよく知られるところである 2) EBV-HPS/HLH は最も頻度が高く 重症化し急激な経過をたどる疾患である 2) リンパ腫関連血球貪食症候群 (lymphoma-associated hemophagocytic syndrome:lahs): Ishii らの全国調査によると LAHS の疾患別頻度は 19% と IAHS に次いで高く 15 歳以上の症例では 192 例中 84 例と最も高頻度に認める 2) 自己免疫関連血球貧食症候群 (autoimmune assoeiated hemophagocytic syndrome): 全国調査では 9.3% の症例に認めている 基礎疾患として全身性エリテマトーデス (systemic erythematosus:sle) 成人発症型スティル病(adult onset Still s disease:aosd) が代表的であるが 関節リウマチ 若年性特発性関節炎 混合性結合組織病 強皮症等でも報告されている 2)

( 参考文献 1 より引用 ) ( 参考文献 3 より引用 ) 抗菌薬に不応の高熱が持続し 血球減少 播種性血管内凝固および肝脾腫がみられたら 血球貧食症候群を疑う 1) 高熱と血球減少がみられる場合には HPS を念頭におき 早期診断 早期治療に心掛けることが重要である 3)

HPS/HLH は進行性で診断の遅れにより重症化することがしばしば認められ 迅速に診断することが重要である 診断の根拠として 17 日以上の発熱 22 系統以上の血球減少 3 骨髄 リンパ節 肝臓 脾臓や脊髄液における組織球の増殖と血球貧食像が挙げられる 高熱が持続して血球減少を認める場合はまず本症を疑うところから診断が始まる 2) 小児においては遺伝性 / 一次性 HPS/HLH を念頭に 病歴 ( 先行感染の有無 ) や診察所見 ( 白皮症や奇形等 ) を取得することが重要である 2) 一次性 HPS はまれであり 遺伝性で乳幼児期に発症し 致死的経過をとる 3) 基礎疾患が不明であることも少なくない 3) HPS のほとんどは二次性で 小児では感染症に起因するものが多く そのなかでも Epstein-Barr virus(ebv) 感染関連のものが多い 一方 成人では悪性疾患関連 HPS (MAHS) が半数を占め 骨髄球性白血病や固形腫瘍関連 HPS の報告もあるが 大半は悪性リンパ腫関連 HPS(Lymphoma associated HPS:LAHS) である 3) 臨床的特徴としては高熱 肝脾腫 高 LDH 血症 高フェリチン血症 播種性血管内凝固症候群 (DIC) 血球減少と網内系組織での組織球増殖と貧食像を呈する また しばしば急激に進行し多臓器不全に陥りやすいことも本疾患の特徴であり 的確な診断と早期治療介入を行うことは極めて重要である 2) 発熱と DIC の進行が病勢を反映する HPS を疑ったら 診断項目をよく検討し 原発性か続発性か 何による続発性かを考える 鑑別すべき疾患が多いため 可能な検査を早急に進めながら血液専門医へ紹介する 感染症関連では無治療軽快例もあるが EBV-HLH は重症化することが多い 1) 血清フェリチン高値の特異性は高い sll-2r IFNγなどが血中に増加する 高トリグリセリドかつ低コレステロール血症がみられる IFNγ 産生を示す血中および尿中のβ2-ミクログロブリン ネオプテリンもマーカーとなる 血清リゾチーム アンギオテンシン転換酵素なども組織球活性化の指標である 空包化した成熟組織球と血球貧食組織球が骨髄 脾 リンパ節 末梢血や脳脊髄液に出現する 1) 肝機能上昇 (AST>ALT LDH) 高フェリチン血症 高トリグリセリド血症 低フィブリノーゲン血症 FDP 上昇 尿中 β2 マイクログロブリンは重要である 小児においては NK 活性低下の有無が FHL 診断に重要とされている 骨髄検査は血球貧食細胞や悪性リンパ腫細胞の検出に有用であり HPS/HLHの診断には必須であるが 一次性 / 遺伝性 HPS/HLH においては二次性 HPS/HLH に比較して血球貧食細胞の検出率が低いとの報告があり注意を要する 骨髄で検出できない場合は肝臓や脾臓の組織診を行うが 生検の際に血小板や凝固因子の補充を必要とする 2) 成人においては LAHS: リンパ腫関連血球貪食症候群が HPS/HLH の大半を占めるため 悪性リンパ腫を念頭に診断を進める 2) (LAHS は ) とにかくリンパ腫細胞を病理組織学的に見つける努力をすることである 腫瘤があれば 可能な限り腫瘤の生検を実施する 3)

感染症は培養 ウイルス抗体価遺伝子検査などから評価する EBV-HLH の診断に EBV DNA 定量が有用である 1) IAHS の代表格である EBV-HPS/HLH の診断には EBV 感染の証明が必要となるが 従来の血清学的診断法では定型的な抗体反応を示さないことがあり Real-time PCR 法による血中 EBV-DNA 定量が必要とされている 2) 組織 細胞学的な確認が重要であり 画像診断にあまり時間をかけすぎると生検の機会を失い 診断がつかないことになる 3) ( 参考文献 1 より引用 ) ( 参考文献 2 より引用 )

( 参考文献 3 より引用 ) HPS/HLH 治療の基本概念は T 細胞とマクロファージの異常活性化の抑制を図ることにある 初期治療としてシクロスポリン デキサメサゾンを中心とした 免疫化学療法を行い その後基礎疾患 重症度により治療法を選択する 2) 早期診断 早期治療が何より重要である HPS の治療は 1 高サイトカイン血症の是正と活性化された T リンパ球やマクロファージの制御 2その原因となった疾患に対する治療である 3) 急性期の出血と臓器不全に注意し 適切な免疫化学療法を行う 膠原病関連にはシクロスポリンが有効である 感染が否定できない場合は大量 γグロブリンから開始する 大量ステロイド療法はリンパ腫の有無を確認して使用したい 不応な場合は速やかにエトポシドを開始する HLH-2004 プロトコールに反応すれば 8 週以内に治療を中止する 1) 原発性には同種造血細胞移植を計画するが 造血細胞移植が必要な EBV-HLH はきわめてまれである 1) 遺伝性のものは同種造血幹細胞移植が適応となるので ドナー検索を速やかに実施し 移植時期を逃さないようにする 3) 一次性 / 遺伝性 HPS/HLH は原則として同種造血幹細胞移植の適応となるが 二次性

HPS/HLH に対して Kawa は重症度による段階的な治療戦略を提唱している 2) 二次性 / 反応性 HPS は基礎疾患の治療を行うとともに 表 4 の治療を実施していく ただこ れらの治療を実施することで感染症が悪化する危険性を認識する 3) ( 参考文献 2 より引用 ) ( 参考文献 3 より引用 )

何が起こっているのかを想像するときには マクロな視点だけでなく ミクロの視点も合わせ持っ た方がより良いと思う 何が起こっているのか 何を考えているのか 想像力だけが頼りだ 参考文献 1. 大賀正一. 血球貪食症候群. 治療 92(10): 2401-2406, 2010. 2. 今村豊, 岡村孝. 血球貧食症候群. 医学と薬学 63(2): 151-162, 2010. 3. 鈴木恵子, 鈴宮淳司. 血球貪食症候群.87( 増刊 ): 1205-1208, 2005.