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結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

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ス化した さらに 正常から上皮性異形成 上皮性異形成から浸潤癌への変化に伴い有意に発現が変化する 15 遺伝子を同定し 報告した [Int J Cancer. 132(3) (2013)] 本研究では 上記データベースから 特に異形成から浸潤癌への移行で重要な役割を果たす可能性がある

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a murine model of rheumatoid arthritis ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 関節リウマチ (RA) において 増多した滑膜線維芽細胞と炎症細胞がパンヌスと呼ばれる増生滑膜組織を形成することは病理組織学的な特徴である その増多した滑膜線維芽細胞は RA の炎症や骨破壊に重要な役割を果たす しかし 滑膜線維芽細胞の増多の機序はよくわかっていない 本研究は RA の動物モデルにおいて 滑膜線維芽細胞の増多が 局所での増殖に因るのか 関節外部由来細胞の滑膜組織への流入に因るのかを 明らかにすることを目的とした まず Ⅰ 型コラーゲンを発現する細胞において GFP を発現するレポーターマウス (Col1a2-GFP マウス ) に対して抗 ΙΙ 型コラーゲン抗体誘導関節炎 (CAIA) を誘導し 増多した滑膜線維芽細胞を GFP 陽性細胞として同定した 次に Col1a2-GFP マウスから野生型マウスへ骨髄移植を行い CAIA を誘導した また Col11a2-GFP マウスと野生型マウスにて併体結合を行い CAIA を誘導した 骨髄移植を受けたマウスと併体結合したマウスの増生滑膜組織に GFP 陽性細胞を認めなかった また CAIA を誘導した Col1a2-GFP マウスの滑膜組織において GFP 陽性細胞のうち Ki67( 細胞増殖マーカー ) を発現している滑膜線維芽細胞が 正常マウスと比して有意に高かった (34% 対 0.40%) 細胞周期の S/G2/M 期に Azami-Green を発現する遺伝子改変マウス (Fucci マウス ) に CAIA を誘導すると Vimentin( 線維芽細胞マーカー ) 陽性細胞のうち Azami-Green を発現している滑膜線維芽細胞が正常マウスと比して有意に高かった (19% 対 0.26%) これらの結果から RA のマウスモデルにおいて 滑膜線維芽細胞の増多が 関節外由来細胞の滑膜組織への流入に因らず 局所での増殖に因ることを示した 滑膜線維芽細胞の増殖は RA の有望な治療標的となりうる < 緒言 > RA において 増多した滑膜線維芽細胞と炎症細胞がパンヌスと呼ばれる増生滑膜組織を形成することは病理組織学的な特徴である その増多した滑膜線維芽細胞は RA やその動物モデル たとえばⅡ 型コラーゲン抗体誘導性関節炎 (CAIA) やコラーゲン誘導性関節炎 (CIA) の炎症や骨破壊に重要な役割を果たすことが知られてきた しかし 滑膜線維芽細胞の増多の機序はいまだによくわかっていない - 1 -

その機序には 元々局所に存在する滑膜線維芽細胞が増殖すると考えられていた 一方 近年 RA の動物モデルにおいて 関節外からの細胞が流入する説も提唱されてきた また 皮膚や腎の線維症の動物モデルにおいて 骨髄移植や併体結合の方法を用いて 増多した線維芽細胞が外部からの流入による機序もあることが示されてきた 本研究では RA の動物モデルを用いて 滑膜線維芽細胞の増多の機序が局所増殖や関節外からの細胞流入に因るのかを明らかにすることを目的とした < 方法 > Ι 型コラーゲン陽性細胞に GFP を発現する遺伝子改変マウス (Col1a2-GFP マウス,) を用いた 野生型マウスに CD45.2 もしくは CD45.1 マウス ( コンジェニックマウス ) を用いた なお 全ての動物実験は動物実験委員会の承認を得た まず Col1a2-GFP マウスに対して RA の動物モデルである CAIA を誘導した 次に 致死的放射線を受けた野生型マウスに Col1a2-GFP マウスの骨髄細胞を移植した また 野生型マウスと Col1a2-GFP マウスを併体結合した 骨髄移植や併体結合したマウスに CAIA を誘導し 増生滑膜組織における GFP 陽性細胞を 共焦点顕微鏡を用いて組織学的に フローサイトメトリーを用いて定量的に評価した キメリズムは 既報に従い 末梢血の細胞をサンプルとして 内在性コントロールである GAPDH 遺伝子でノーマライズされた GFP 遺伝子をリアルタイム PCR にて相対定量 もしくは CD45.1 と CD45.2 の発現をフローサイトメトリーで評価した さらに CAIA を誘導した群と誘導しない群を比較し Col1a2-GFP マウスの滑膜組織においては細胞増殖マーカーである Ki67 の発現 細胞周期の S/G2/M 期に Azami-Green を発現するレポーターマウス (Fucci マウス ) の滑膜組織においては線維芽細胞マーカーである Vimentin の発現を組織学的に評価した 増殖細胞の割合は 対応のない t 検定を用いて統計学的に解析した < 結果 > 線維症モデルの既報で線維芽細胞の同定に用いられてきた Col1a2-GFP マウスに CAIA を誘導し 免疫組織染色を用いて滑膜線維芽細胞を同定できるか調べた CAIA を誘導したマウスの増生滑膜組織において 正常マウスと比して増多した GFP 陽性細胞は 線維芽細胞マーカーである vimentin や hsp47 が陽性であった これらの結果から Col1a2-GFP マウスの滑膜組織における GFP 陽性細胞は滑膜線維芽細胞として同定された 次に 滑膜線維芽細胞の増多が骨髄由来細胞の流入に因るかを明らかにするために 骨髄移植を行った Col1a2-GFP マウスの骨髄細胞を 野生型マウスに移植した 2 か月後のレシピエントマウスの末梢血のキメリズムは 87% 以上であり 骨髄の再構築を確認した CAIA を誘導後 十分な滑膜腫脹を認めた滑膜組織を組織学的に またフローサイトメトリーを用いて解析した レシピエントマウスの増生した滑膜組織に GFP 陽性細胞を全く認めなかった この結果から 滑膜線維芽細胞の増多は骨髄由来細胞の流入に因らないことを示した 骨髄移植モデルは in vivo で骨髄由来細胞を追跡する標準的な方法であるが 全身への放射線照射によって滑膜の微小環境が変化する可能性や 全ての間葉系の前駆細胞が置換されない可能性が考えられた また 免疫不全マウスの皮下に移植した RA の滑膜線維芽細胞は 関節に流入 - 2 -

したという既報があるため 関節炎の発症中においても血流を交流できる併体結合モデルの実験も行った 結合した 2 か月後の野生型マウスの末梢血のキメリズムは 41-59% であり 末梢血の交流を確認した 十分腫脹した滑膜組織を組織学的に またフローサイトメトリーを用いて解析した 野生型マウスの増生した滑膜組織に GFP 陽性細胞を全く認めなかった この結果からも 滑膜線維芽細胞の増多は 関節外からの流入に因らないことがわかった 滑膜線維芽細胞の増多が関節外からの流入に因らないならば 局所増殖に因ると考えた 滑膜線維芽細胞の増殖を調べるために 細胞周期の G0 期 ( 静止期 ) に発現せず 増殖期の G1/S/G2/M 期に発現する Ki67 による免疫組織染色を行った Col1a2-GFP マウスに関節炎を誘導した滑膜組織では 誘導しない滑膜組織と比べて GFP 陽性細胞のうちの Ki67 陽性細胞の割合が有意に高かった (34% 対 0.40%, P < 0.05) 次に 滑膜線維芽細胞の増殖は Fucci マウスの解析を行った Fucci マウスに関節炎を誘導した滑膜組織では 誘導しない滑膜組織と比べて 滑膜線維芽細胞のマーカーである vimentin 陽性細胞のうちの細胞周期の S/G2/M 期に発現する Azami-Green 陽性細胞の割合が有意に高かった (19% 対 0.26%, P < 0.05) これらの結果は 滑膜線維芽細胞の増多は局所増殖に因る仮説に合致していた < 考察 > 我々は 滑膜線維芽細胞の増多の機序が関節外からの流入に因らず 局所の線維芽細胞の増殖に因ることを示した 近年 培養した骨髄由来の間葉系細胞 単離した血中の線維細胞 培養した線維芽細胞を全身投与もしくは皮下移植することで 関節にその細胞が流入することが RA の動物モデルにて報告されてきた これは 我々の結果と異なる これらの研究では 細胞の培養や単離により 間葉系細胞の接着因子や細胞運動性に変化を与え ひいては細胞の遊走能に変化を生じ 人工的な結果が生じたのかもしれない また 我々と似た手法を用いて骨髄由来細胞が関節へ流入すると示した一つの報告がある ユビキタスに GFP を発現するマウスの骨髄を野生型マウスに移植し 骨髄再構築後に関節炎が誘導された 腫脹した関節組織全体が採取され ex vivo にて培養すると GFP 陽性細胞が認められていた GFP 陽性細胞の解析はなされておらず 骨髄細胞のコンタミネーションの可能性も否定できなかったが 我々の実験系ではこの可能性を除外できるように行った 本研究において RA マウスモデルにおいて 滑膜線維芽細胞の増多は 局所の線維芽細胞の増殖に因ることを示した RA においても 細胞増殖マーカーを発現する滑膜線維芽細胞は 変形性関節症患者よりも有意に多いことが報告されている そのため RA においても 滑膜線維芽細胞の増多は 局所の線維芽細胞の増殖に因ると考えられた 現行の炎症細胞や炎症性サイトカインを標的とした RA の治療法は 効果的であるものの なお不十分である また 免疫抑制による重篤な感染症の危険性が高いことが問題であり 炎症以外を標的とした治療標的の同定が求められている そのため 線維芽細胞の増殖は RA の有望な治療標的となりうると考える - 3 -

< 結論 > 滑膜線維芽細胞の増多は 関節外からの流入に因らず 局所の滑膜線維芽細胞の増殖に因る 滑膜線維芽細胞の増殖を標的とすることは RA の有望な治療戦略となりうる - 4 -

論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4914 号松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 ( 論文審査の要旨 ) 1. 論文内容関節リウマチは未だ原因が不明の難病であるが その病態において関節局所の滑膜線維芽細胞の増多が重要な役割を果たしていることが知られている しかし その由来については十分な検討がされていなかった 本研究においては 複数の遺伝子改変マウスに関節炎を誘導し 分子生物学的に詳細な解析を行うことで 滑膜線維芽細胞の増多が 関節外由来細胞の滑膜組織への流入に因らず 局所での増殖に因ることを示した 2. 論文審査 1) 研究目的の先駆性 独創性関節リウマチにおいて 増多する滑膜線維芽細胞の由来を解析することは 重要なテーマであるが 十分に明らかにされていなかった 結論を得るためには 複数の遺伝子改変マウス および研究手法を用いた解析が必要となるが 本研究ではこれらの研究を完遂することで 滑膜線維芽細胞の増多は局所での増殖によるものであるという 重要な結論を得るに至っており 先駆性 独創性ともに高いものである 2) 社会的意義関節リウマチの新しい治療法の開発において 本研究の成果は重要な知見であり これを基にした治療開発が期待される 3) 研究方法 倫理観本研究では 複数の遺伝子改変マウスおよびマウスモデルを適格に利用している点が評価される まず Ⅰ 型コラーゲンを発現する細胞において GFP を発現するレポーターマウス (Col1a2-GFP マウス ) に対して抗 ΙΙ 型コラーゲン抗体誘導性関節炎 (CAIA) を誘導した実験 次に Col1a2-GFP マウスから野生型マウスへ骨髄移植を行い CAIA を誘導した実験を行った また Col11a2-GFP マウスと野生型マウスにて併体結合を行い CAIA を誘導し 併体結合した野生型マウスで増生滑膜組織を解析した さらに 細胞周期の S/G2/M 期に Azami-Green を発現する遺伝子改変マウス (Fucci マウス ) に CAIA を誘導し 細胞周期の観点からも検討を行っている これら研究は動物実験委員会で認められた適切な実験動物計画に基づいて行われている 3. 考察 今後の発展性申請者は 本研究の結果から 滑膜線維芽細胞の増殖を治療標的とした関節リウマチの新しい治療開発を議論しており 今後の発展が期待される また 基礎医学的にも 滑膜細胞の起源という重要な課題を提示するものであり 申請者の博士研究者としての更なる活躍に繋がるものである 4. その他特になし 5. 審査結果以上を踏まえ 本論文は博士 ( 医学 ) の学位を申請するのに十分な価値があるものと認められ ( 1 )

た ( 2 )