非薬理学的な介入で睡眠とせん妄は改善するのか? m 1/12
はじめに ICU の光や音は睡眠不足の原因である Li SY, Wang TJ, Vivienne Wu SF, Liang SY, Tung HH. Efficacy of controlling night-time noise and activities to improve patients sleep quality in a surgical intensive care unit. Journal of Clini- cal Nursing 2011; 20: 396 407. Weinhouse GL, Schwab RJ. Sleep in the critically ill patient. Sleep 2006; 29: 707 16. 睡眠不足はせん妄を誘発する可能性がある Boyko Y, Ording H, Jennum P. Sleep disturbances in critically ill patients in ICU: how much do we know? Acta Anaesthesiolog- ica Scandinavica 2012; 56: 950 8. しかし 騒音 光 夜間のケアなどの個別の要因の排除だけでは睡眠不足の改善とならない Weinhouse GL, Schwab RJ. Sleep in the critically ill patient. Sleep 2006; 29: 707 16. Hardin KA. Sleep in the ICU: potential mechanisms and clinical implications. Chest 2009; 136: 284 94. 2/12
はじめに 先行研究でみられる複数の非薬理学介的な介入を組み合わせることで睡眠不足 せん妄が改善するのでは? 今回の論文 外科 内科系 ICU での集学的な介入の睡眠とせん妄への効果 3/12
方法 場所 : イギリスの 24 床の ICU デザイン : コホート研究 前後比較介入研究 観察 : 睡眠データ 環境データ せん妄データ 4/12
方法 患者特徴 : 一泊以上 ICU で過ごした 18 以上の患者 総患者数 : 介入前 167 人 介入後 171 人 睡眠アンケート実施患者数 : 介入前 30 人 介入後 29 人 睡眠アンケート除外基準睡眠症状の既往, 重度の視覚 聴覚能の低下, アルコール中毒 薬物乱用 認知機能の低下 ( 認知症の既往, 外傷性脳損傷, 脳卒中, 肝性脳症 ) この ICU に入院したことがある患者 脳神経外科患者 研究期間中にせん妄であった患者 24 時間以内に鎮静薬を投与された患者 4/12
方法 介入内容と達成率 介入内容 noise 達成率 全てのドアを閉める 96% 23 時から 7 時の間のモニターを夜間モードに替える 23 時から 7 時の間の電話の音を下げる 患者のベットサイドで臨床内容以外の話をしない スタッフと訪問者は静かに話す RASS-4 以上の患者全てに耳栓を提供した 96% 96% 92% 96% 介入内容 light 23 7 時の間 ICU の明かりを薄暗くした 患者ケアの時はベットサイドの照明を使用した RASS-4 以上の患者全てにアイマスクを提供した :% は 26 夜中の何夜で全てのスタッフがプロトコールに従っていたかの割合 達成率 96% 介入内容 patient care 達成率 可能であれば複数でケアを行う 88% 23 時までにはすべてのケアを終わらせる 可能であれば次の日の 8 時にケアを開始する 8 時間毎に時間 場所 日付を患者に示す 患者が眠れない場合や CAM-ICU 陽性の場合は 24 時間以内に薬を見直す 一日一回 適切な鎮静目標を設定する 一日一回全ての人工呼吸器患者は鎮静中断 SBT が実施可能か評価する 時間ごとに疼痛スコアを評価し 鎮痛が最適化するために迅速に対応する 適切で可能な合は早期離床を行う 92% 96% 88% 5/12
患者の特徴 結果 介入前後での患者の特徴の差はなかった There was no difference between the two cohorts regarding median (IQR [range]) sleep quality before hospital admission, 8 (7 9 [5 10]) vs 8 (8 9 [5 10]), p = 0.107. 介入前後で睡眠の質の差はなかった 6/12
環境 結果 介入前後の騒音 光 夜間ケア介入に差がみられた 介入前介入後 p 値 夜間の騒音 (db) 68.8 (4.2) 61.8 (9.1) p = 0.002 明るさ (lux) 594 (88.2) 301 (53.5) p = 0.003 夜間の看護師の介入数 33.6 (4.3) 23.4 (6.6) p = 0.045 ケアによる患者の覚醒 11.0 (1.1) 9.0 (1.2) p = 0.003 (SD) 7/12
結果 睡眠 1 Richards-Campbell Sleep Questionnaire 質問の平均点 mean questionnaire score 睡眠の質 sleep quality 夜間過ごしていた時間 Time spent awake overnight 覚醒回数 NO.of awakenings 患者に睡眠の質 夜間過ごしていた時間 覚醒回数 入眠までの時間 睡眠の深さの 5 つの項目をアンケートした 全ての項目に介入前後で差がみられた 入眠までの時間 sleep latency 睡眠の深さ sleep depth 全ての質問は 100-0 で表されている 値が 100 に近いほど良い 白が介入前 グレーが介入後の値を示す *p < 0.05. 8/12
睡眠 2 結果 Sleep in Intensive Care Questionnaire. 睡眠の阻害になった要因を患者に質問した 騒音 光 ケア介入に介入前後で差がみられてた 全ての質問は 10 段階で表されている 値が 10 に近いほど悪い 白が介入前 グレーが介入後の値を示す *p < 0.05. 9/12
睡眠 3 せん妄 結果 看護師の観察による睡眠時間の延長が確認された 介入前介入後 p 値 睡眠時間 6.6 h (55%) 8.6 h (72%) p < 0.001 介入前後でのせん妄の発生率 期間に差が見られた 介入前介入後 p 値 せん妄発生率 55/167 人 (33%) 24/171 人 (14%) p < 0.001 せん妄期間 ( 日 ) 3.4(1.4) 1.2(0.9) p = 0.021 (SD) 10/12
結論 本実験の介入でアンケート調査 看護師の観察による 睡眠の改善は確認された 睡眠ポリグラフは使用して いないため睡眠の構造に変化を与えたかは不明 今回の介入による睡眠の改善はせん妄の発生率 せん 妄期間の低下と関連している 一施設による介入でありこと 対象者をランダム化で きていないため 結果に選択的バイアスがかかってい る可能性がある 11/12
私見など 睡眠ポリグラフがないため脳波上で睡眠時間が延長したかは不明 しかし ICU の患者の睡眠は覚醒しやすいという報告があり 外部からの刺激が減ることで睡眠時間は延長しそう 非薬理学的な介入で効果がでたことが重要 看護的な介入は一つ 一つで結果に繋げるのは難しそうだが まとめて介入することで睡眠 せん妄に有効な介入になりそう せん妄の発生率だけでなく期間にも影響している せん妄治療のためにも光や音 ケア介入の配慮は必要なのかもしれない 茨城県厚生連総合病院水戸協同病院救急部 集中治療部阿部智一先生監修 12/12