ソナラのエンボリ検出アルゴリズム 頭蓋内エンボリは通常固体若しくはガスで 血管内を移動するものです 移動しているエンボリはドプラスペクトル上に特徴的な軌跡を残します TCD によるマイクロエンボリ検出に関するコンセンサス委員会は以下の特定基準に合意しています 1) 一方向性 ( ゼロラインの一方のみに現れる ) 2) 背景となるドプラスペクトルに比べ 短時間の一時的なドプラ強度の増強 3) TCD 機種やエンボリの種類に応じて 特徴的な音を伴う ピポ ボソ. ソナラのエンボリ検出アルゴリズムは上記の定義に基づいてマイクロエンボリの特定を行っています 即ち 一方向性に移動するもので 短い時間の 主スペクトル中の瞬間的なドプラエネルギーの増加があり 明確な速度成分を持っているものです 他方 アーティファクトはエンボリと同様の特徴を持ちながら しかし 通常 本来の速度成分を持たないものとなります ソナラのアルゴリズムでは以下の様なステップのエンボリ検出法になります 背景エネルギーの決定 瞬間的な高輝度信号の同定 速度成分を持っているかどうかを判別 一方向性のものかどうかの判定 以上の条件に合致するものはエンボリと決定され 一方 合致しないものはアーティ ファクトとされます 背景エネルギーここでの計算は主ゲイト ( 深さ ) で発生した事象に対してのみ行われるもので ダブルゲートやマルチゲートでは計算されません 主ゲイトスペクトルの時間解像度は8 ミリ秒であり 背景エネルギーの計算値の更新も 8 ミリ秒ごとに行われます 背景エネルギーはその事象が発生する前の特性ドプラエネルギーレベルに相当します 各 FFT コラムに対して アルゴリズムは FFT セル中のどれよりも大きいエネルギーであると想定します 背景エネルギーの平均は連続的に計算されており 指数計算に基づいてアプデートされており 新しく加えられる点の背景エネルギーは平均に対して 1% 程度の影響力を持ちます 直近の8ミリ秒のエネルギーレベルが定義されている閾値の 1.5x 平均背景エネルギーを超えると この点は平均背景エネルギーの計算から除外され 背景エネルギー平均は更新されません
背景エネルギー計算は以下の状況が発生するとリセット ( 初めから計算を始める ) されます 連続して 60 回以上のエネルギーポイントが平均背景エネルギー計算の更新から除外された場合 例えば 連続してエネルギー値がそれまでの平均背景エネルギー値の 1.5 倍より大きく 4 倍より小さい場合 ( 次のセクション参照 ) 深さの設定が変更された場合 パワーセッティングが変更された場合 サンプルボリュームの設定が変更された場合 スケール(PRF) が変更された場合 ゲインの設定が変更された場合 高輝度遷移信号 (HITS) HITS 事象は直近の8ミリ秒のエネルギーレベルが定義済みの平均背景エネルギーの閾値 (x4) を超えた場合にトリガーされます HITS 事象の終わりは直近の事象のエネルギーレベルが平均背景エネルギーのx2.5 を下回った時と定義されています HITS 事象のトリガーは最低 100 回分の 有効な エネルギーポイントが平均背景エネルギーレベルの計算に取り込まれた後に始まります つまり HITS 検出は背景エネルギーがリセットされた後はおよそ 800 ミリ秒後からしかアクティブになりません 例えばゲイン ( またはパワー 深さ サンプルボリューム スケール ) の設定を変えた場合 800 ミリ秒後からエンボリの検出が可能になります HITS の継続時間は8ミリ秒 (1FFT コラム ) 程度の場合もあります また 最長 320 ミリ秒までに限定されています 加えて 個別のエンボラスを区別するには連続する HITS の間に最低 8ミリ秒の間隔が必要になります 8ミリ秒以上の時間差がない場合は ひとつの HITS とカウントされます 事象の速度 受信したドプラデータは I( 同一位相 ) と Q( 直行位相 ) シグナルで構成されています Q は I シグナルに対して90 度固定位相シフトで受信したドプラシグナルです この位相のシフトはドプラ機器で速度の方向 ( プローブ方向か逆か ) を決めるために良く使用されるものです 特徴的な血流のスペクトルは血流中の無数の粒子 ( 赤血球 ) の流れによるドプラ位相シフ トを象徴するものです 対照的に エンボラスは通常 血流中を移動する個別の反射体 ( 固
体若しくはガス ) です インピーダンスやサイズを考慮すると 通常 エンボラスはドプラスペクトル中では 個別で独自の速度成分を持つ 相対的に強いエネルギーとして 同定されます この速度は 明確な周波数として I と Q 両方の信号に現れます それに対して その信号が無数の赤血球粒子の重なりを反映する時や 明確な動きがない ( 雑音によるような ) 場合 I と Q のどちらにも明確な周波数は現れません 各同定された HITS 事象において アルゴリズムは I と Q 信号の相関を計算し 2つの最終的な選択 ( 相関の有無 ) を提供します 相関は I と Q を90 度シフトした後 I と完全に同一位相になるかで 周波数の類似性を計ります 相関関係プロセスは以下の様に開始されます 1) 事象の継続時間を確定し 計算はその範囲で実行される 2) I と Q 信号のゼロクロス点を同定する 3) 各 3つのゼロクロス点によりひと周期が同定されます 4) 各周期における正の最大点と負の最大点 ( 端点 ) を同定する I と Q の相関基準は以下の要件を含む : I と Q の周期の類似性 一方の信号で 端点 となっている時 もう一方はゼロクロス点となっている (Q で最大の時 I ではゼロクロス点となっている ) 時間軸上での端点の位置と相対するゼロクロス点の位置の類似性 良い相関は事象の継続時間中 最低でもひとサイクルはすべての相関基準を満たす時と考えられています これは HITS が良い相関で同定された場合 I と Q の明確な周波数が結果として実際の速度成分であるということを保証します ( エンボリの移動 )
一方向性 エンボラスは血管内を血流速度と同程度の速度で移動します 血液及びエンボラスは常にプローブに向かう方向か去る方向のどちらかを向いて流れています 従って アルゴリズムは HITS が一方向性であることを要求します ゼロラインの上部か下部か プローブに向かってくるエンボリの検出では I が Q に先行します プローブから遠ざかるエンボリでは Q が I に先行します この要件で一方向性が保証されます 最後に 以上の HITS 事象の基準に当てはまらないものすべてはアーティファクトとマー クされます ユーザーインターフェイス ソナラでは検出アルゴリズムを更に解析し 評価するための機能やツールが提供されてい ます 色分けされた矢印アルゴリズムで検出された HITS はスペクトルウインドウに明確に表示されます 黄色がエンボリ 雑音が青に色分けされた矢印で 事象の発生の経時的な位置を示します 右上のイベントリストからイベントを選択すると そのイベントの矢印がスペクトルウインドウの中央に表示されます イベントリストフィルター機能付き HITS 事象はすべて個別にマークされ 発生時間 ( モニタリング開始からの ) を記録し 右上隅にリスト表示します このリストには他のイベントもリスとされます 長さは無制限です また 興味あるイベントのみ選択表示することも出来ます 履歴ウインドウメインスペクトルウインドウの下に位置し HITS と切換表示できるようになっています HITS 表示では Y 軸は各イベントのエネルギーレベル (db 単位でバー表示 ) をしています この表示でエンボリの区別 ( ガス or 固体 ) をするためのおおよそのエネルギー範囲を概観でき また 時間帯を確認できます 表示内容はイベントリストの表示の設定と同じになります エンボリの全検出件数 ( 黄色 ) 及びアーチファクト ( 青 ) の全検出件数がこのウインドウの右上に表示されます
エネルギー分布右下角の小さいウインドウで数種の表示オプションが選択できます エネルギー分布表示では Y 軸がイベント数 X 軸がエネルギー (db) を表し 各イベントの数を色分け表示します 記録中のエネルギー強度毎の分布を概観できます 時間分布 Y 軸がイベント数 X 軸が記録時間 ( 分 ) を表示しています 処置中のイベントの分布を概観できます エネルギー 選択された特定のイベントのエネルギーレベルをイベント継続 時間に基づいて表示します 複素数 選択された特定のイベントの I と Q 信号をイベント継続時間に 基づいて表示します 実数選択された特定のイベントの I 信号のみをイベント継続時間に基づいて表示します 方向性の設定セットアップ モニタリング HITS の画面で HITS 検出アルゴリズムの方向をプローブ向かってくるものと遠ざかるものの選択が出来ます