5. がん患者さんの在宅医療 介護等の基礎知識 財団法人名古屋市療養サービス事業団名古屋市西区訪問看護ステーション所長訪問看護認定看護師村井満美子 講義の狙い がん患者さんの在宅医療と在宅医療 療養を支える資源について学ぶ 訪問看護の利用の仕方について学ぶ 事例を通してより良い在宅医療のあり方を学ぶ

Similar documents
基本料金明細 金額 基本利用料 ( 利用者負担金 ) 訪問看護基本療養費 (Ⅰ) 週 3 日まで (1 日 1 回につき ) 週 4 日目以降緩和 褥瘡ケアの専門看護師 ( 同一日に共同の訪問看護 ) 1 割負担 2 割負担 3 割負担 5, ,110 1,665 6,

複数名訪問看護加算 (1 人以上の看護職員等と同 2 人以上による訪問看護を行う場合 行 ) 看護師等と訪問 看護師等と訪問 4,500 円 30 分未満 254 単位 准看護師と訪問 3,800 円 30 分以上 402 単位 看護補助者と訪問 ( 別に厚生労働省が定める場合 看護補助者と訪問 を


高齢化率が上昇する中 認定看護師は患者への直接的な看護だけでなく看護職への指導 看護体制づくりなどのさまざまな場面におけるキーパーソンとして 今後もさらなる活躍が期待されます 高齢者の生活を支える主な分野と所属状況は 以下の通りです 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 脳卒中発症直後から 患者の

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

加算 栄養改善加算 ( 月 2 回を限度 ) 栄養スクリーニング加算 口腔機能向上加算 ( 月 2 回を限度 ) 5 円 重度療養管理加算 要介護 であって 別に厚生労働大が定める状態である者に対して 医学的管理のもと 通所リハビリテーションを行った場合 100 円 中重度者ケア体制加算

問題です 訪問看護って? 指示があるまで開けないでね!

佐久医師会ニュース連載意外と知られていない訪問看護の基礎知識 佐久総合病院地域ケア科小松裕和 意外と知られていない訪問看護の基礎知識 1 意外と知られていない訪問看護の基礎知識 2 私たち在宅医にとって 訪問看護が存在しない在宅医療は考えられません 訪問看護は医療面はもちろん 生活面も含めて関わって

スライド 1

Q1 訪問看護の導入時期は どのように判断すればよいでしょうか? A 医療処置や医療機器の管理などが必要な場合は比較的早期に訪問看護の依頼がありますが ADLの維持 向上などの予防的ケアや病気の悪化予防の目的での訪問看護についても できるだけ早期の導入が理想的です また ターミナル時期の利用者の場合

第1回 障害者グループホームと医療との連携体制構築のための検討会

17★ 訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて(平成十二年三月三十日 老企 厚生労働省老人保健福祉局企画課長通知)

< F2D89FC82DF82E993FC8D6594C C192E C394EF816A>

訪問リハビリテーションに関する調査の概要

介護支援専門員 ( 回答数 件 ) 介護支援専門員の基礎資格 介護支援専門員の基礎資格 n= 複数回答 0 基礎資格について 介護福祉士 が 件 ( 0.%) と最も多かった 介護支援専門員が担当する利用者 (H 年 月 ). 要介護別利用者の割合 要介護 0% 要介護

<4D F736F F D C605F937393B9957B8CA781418E7392AC91BA81418AD68C CC816A C95DB8C9289DB2E646F63>

各論第 3 章介護保険 保健福祉サービスの充実

<4D F736F F D DC58F4994C581458A C5817A AA94F68E EE8CEC944692E88ED28EC091D492B28DB895F18D908F918A C52E646F63>

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

【最終版】医療経営学会議配付資料 pptx

000-はじめに.indd

豊川市民病院 バースセンターのご案内 バースセンターとは 豊川市民病院にあるバースセンターとは 医療設備のある病院内でのお産と 助産所のような自然なお産という 両方の良さを兼ね備えたお産のシステムです 部屋は バストイレ付きの畳敷きの部屋で 産後はご家族で過ごすことができます 正常経過の妊婦さんを対

まちの新しい介護保険について 1. 制度のしくみについて 東温市 ( 保険者 ) 制度を運営し 介護サービスを整備します 要介護認定を行います 保険料を徴収し 保険証を交付します 東温市地域包括支援センター ( 東温市社会福祉協議会内 ) ~ 高齢者への総合的な支援 ( 包括的支援事業 )~ 介護予

Microsoft PowerPoint - 9-2桜川市(2)

小児_各論1の2_x1a形式

Microsoft PowerPoint - 01_居宅訪問型児童発達支援

< F2D817995CA8D90817A8A4F B C5E>

Microsoft Word - Q&A(訪問リハ).doc

Microsoft PowerPoint - 参考資料

PowerPoint プレゼンテーション

認知症医療従事者等向け研修事業要領

第28回介護福祉士国家試験 試験問題「社会の理解」

PowerPoint プレゼンテーション

脳卒中に関する留意事項 以下は 脳卒中等の脳血管疾患に罹患した労働者に対して治療と職業生活の両立支援を行うにあ たって ガイドラインの内容に加えて 特に留意すべき事項をまとめたものである 1. 脳卒中に関する基礎情報 (1) 脳卒中の発症状況と回復状況脳卒中とは脳の血管に障害がおきることで生じる疾患

スライド 1

スライド 1

介護における尊厳の保持 自立支援 9 時間 介護職が 利用者の尊厳のある暮らしを支える専門職であることを自覚し 自立支援 介 護予防という介護 福祉サービスを提供するにあたっての基本的視点及びやってはいけ ない行動例を理解している 1 人権と尊厳を支える介護 人権と尊厳の保持 ICF QOL ノーマ

平成17年度社会福祉法人多花楽会事業計画(案)

医療的ケア児について

正誤表 正誤箇所 誤 正 医科 - 基本診療料 -35/47 注 3 診療に係る費用 ( 注 2 及び注 4に規定する加算 注 3 診療に係る費用 ( 注 2 及び注 4に規定する加算 注の見直し 当該患者に対して行った第 2 章第 1 部医学管理等の 当該患者に対して行った第 2 章第 1 部医学

Clinical Indicator 2016 FUNABASHI MUNICIPAL REHABILITATION HOSPITAL

私たちの人生 病気やケガのリスクと 経済的影響は? 50 ( 千人 ) 1, 通院入院 ( 歳 )

届出状況 介護報酬点検項目点検事項点検結果確認書類の解釈頁通院困難な利用者 該当青 P208 通院困難な利用者 主治の医師の指示 ( 訪問看護ステーション ) 主治の医師の指示 ( 医療機関 ) 通院の可否にかかわらず 療養生活を送る上での居宅での支援が不可欠な者 該当対象なし 利用者に関する記録

資料 1( 調査票 ) 在宅介護実態調査調査票 被保険者番号 A 票の聞き取りを行った相手の方は どなたですか ( 複数選択可 ) 1. 調査対象者本人 2. 主な介護者となっている家族 親族 3. 主な介護者以外の家族 親族 4. 調査対象者のケアマネジャー 5. その他 A 票 認定調査員が 概

<4D F736F F F696E74202D208EFC926D C E B93C782DD8EE682E890EA97705D>

< 集計分析結果 > ( 単純集計版 ) 在宅介護実態調査の集計結果 ~ 第 7 期介護保険事業計画の策定に向けて ~ 平成 29 年 9 月 <5 万人以上 10 万人未満 >

Microsoft PowerPoint - (HP掲載用)270820定期巡回.pptx

Microsoft Word - 02-頭紙.doc

体制強化加算の施設基準にて 社会福祉士については 退院調整に関する 3 年以上の経験を有する者 であること とあるが この経験は 一般病棟等での退院調整の経験でもよいのか ( 疑義解釈その 1 問 49: 平成 26 年 3 月 31 日 ) ( 答 ) よい 体制強化加算の施設基準にて 当該病棟に

<4D F736F F D208B8F91EE E838A E398C8E82DC82C >

看護職員が看護補助者との同行訪問により訪問看護を実施する場合 利用者の身体的理由においても算定可能になりました 算定対象 1 別表第七に掲げる者 ( 厚生労働大臣が定める疾病等 2 表第八に掲げる者 ( 特別管理加算の対象者 ) 3 特別訪問看護指示書による訪問看護を受けている者 4 暴力行為 著し

居宅介護支援事業者向け説明会

( 別添様式 2) 喀痰吸引等業務 ( 特定行為業務 ) の提供に係る同意書 下記の内容について十分な説明を受け内容を理解したので 喀痰吸引等業務 ( 特定行為業務 ) の実施に同意いたします 喀痰吸引等 ( 特定行為 ) の種別 口腔内の喀痰吸引該当する ( 実地研修を実施する行為 ) にチェック

2. 平成 9 年遠隔診療通知の 別表 に掲げられている遠隔診療の対象及び内 容は 平成 9 年遠隔診療通知の 2 留意事項 (3) イ に示しているとお り 例示であること 3. 平成 9 年遠隔診療通知の 1 基本的考え方 において 診療は 医師又は歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本

介護老人保健施設 契約書

佐久総合病院 H24年度在宅医療連携拠点事業 活動報告

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

untitled

Microsoft Word - 体裁修正 【登録後修正版】説明資料(案)

Q3 妊娠や出産でかかった費用も対象になりますか? A3 対象になります 妊娠と診断されてから定期的に受ける妊婦検診 検査費用や出産の為の入院代は医療費控除の対象になります ただし 自治体からもらった検診費用の補助金や 健康保険組合等からもらった出産育児一時金などの金額は差し引いて考えてください Q

計画の今後の方向性

為化比較試験の結果が出ています ただ この Disease management というのは その国の医療事情にかなり依存したプログラム構成をしなくてはいけないということから わが国でも独自の Disease management プログラムの開発が必要ではないかということで 今回開発を試みました

<4D F736F F D20CADFCCDEBAD D9595B68E9A816A8AEC91BD95FB8E735F5F91E682558AFA89EE8CEC95DB8CAF8E968BC68C7689E >

<8B8F91EE8AC7979D8E7793B B B C2E786C73>

はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

PowerPoint プレゼンテーション

サービス担当者会議で検討し 介護支援専門員が判断 決定するものとする 通所系サービス 栄養改善加算について問 31 対象となる 栄養ケア ステーション の範囲はどのようなものか 公益社団法人日本栄養士会又は都道府県栄養士会が設置 運営する 栄養士会栄養ケア ステーション に限るものとする 通所介護

Ⅰ 通所リハビリテーション業務基準 通所リハビリテーションのリハビリ部門に関わる介護報酬 1. 基本報酬 ( 通所リハビリテーション費 ) 別紙コード表参照 個別リハビリテーションに関して平成 27 年度の介護報酬改定において 個別リハビリテーション実施加算が本体報酬に包括化された趣旨を踏まえ 利用

PowerPoint プレゼンテーション

軽度者に対する対象外種目の 福祉用具貸与取扱いの手引き 平成 25 年 4 月 綾瀬市福祉部高齢介護課

【1117修正原稿】説明会資料

SBOs- 3: がん診断期の患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 4: がん治療期 ; 化学療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 5: がん治療期 ; 放射線療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 6: がん治療期

医療法人高幡会大西病院 日本慢性期医療協会統計 2016 年度

医科診療報酬点数表関係 別添 1 在宅患者支援療養病床初期加算 在宅患者支援病床初期加算 問 1 療養病棟入院基本料の注 6の在宅患者支援療養病床初期加算及び地域包括ケア病棟入院料の注 5の在宅患者支援病床初期加算の算定要件に 人生の最終段階における医療 ケアの決定プロセスに関するガイドライン 等の

Microsoft Word - 01介護報酬請求の留意点

PowerPoint プレゼンテーション


( 利用の申請 ) 第 6 条事業を利用しようとする者は 板橋区重症心身障がい児 ( 者 ) 等在宅レスパイト事業利用申請書 ( 別記第 2 号様式 以下 申請書 という ) を区長に提出しなければならない 2 区長は 被介護者の身体状況及び必要となる医療的なケアを確認するため 必要に応じて第 2

通所リハビリテーションとは 介護保険で認定を受けられた要支援 要介護の方を対象に機能訓練 歩行訓練や日常生活訓練 脳への刺激で認知症予防などを目的に リハビリテーション ( 以下 リハビリ ) を行う通いのサービスです 通所リハビリテーション ( 以下 通所リハビリ ) は 利用者様が可能な限り自宅

<4D F736F F F696E74202D2088A295948D DC58F4994C E956C8FBC814091E F193FB82AA82F18E7396AF8CF68A4A8D758DC0>

精神疾患・精神障害のある方に特化した訪問看護の利用

【資料1】結核対策について

平成20年度春の家居宅介護支援事業所事業計画


KK293連載丹野氏本文.indd

要支援 介護保険負担額 (1 割月額 ) 介護保険負担額 (2 割月額 ) 要支援 1 1,843 円 要支援 1 3,686 円 要支援 2 3,779 円 要支援 2 7,557 円 サービス加算について (2 割負担の方は約 2 倍の料金となります ) 項目金額単位適用 内容 運動機能向上加算

出時に必要な援助を行うことに関する知識及び技術を習得することを目的として行われる研修であって 別表第四又は別表第五に定める内容以上のものをいう 以下同じ ) の課程を修了し 当該研修の事業を行った者から当該研修の課程を修了した旨の証明書の交付を受けた者五行動援護従業者養成研修 ( 知的障害又は精神障

調査実施の背景 目的 超高齢社会である我が国では 65 歳以上の高齢者の総人口に占める割合は 24.1% 1 で 3,000 万人を超過 2 しました また 要介護 ' 要支援 ( 認定者数も増加し 直近の実績では 万人となっています 今後 益々介護を必要とされる方が増えることも予想され

Microsoft PowerPoint 訪問サービス事業所向け研修会資料

平成 27 年 1 月から難病医療費助成制度が変わりました! (H26 年 12 月末までに旧制度の医療費助成を受けている人は 3 年間の経過措置 を受けられます ) 分かり難い場合は協会又は自治体の窓口へお問い合わせください H27 年 1 月からの新制度 1. 難病医療費助成の対象は ALS 重

医師等の確保対策に関する行政評価・監視結果報告書 第4-1

一般会計負担の考え方

障害厚生年金 厚生年金に加入している間に初診日 ( 障害のもととなった病気やけがで初めて医者にかかった日 ) がある病気やけがによって 65 歳になるまでの間に 厚生年金保険法で定める障害の状態になったときに 受給要件を満たしていれば支給される年金です なお 障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害

在宅テスト 第3回勉強会

患者学講座第1講「医療と社会」

<4D F736F F D2089EE8CEC95F18F5682CC89FC92E882C982C282A282C A836E A816A8F4390B394C52E646F63>

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

2. 経口移行 ( 経口維持 ) 加算 経口移行 ( 経口維持 ) 計画に相当する内容を各サービスにおけるサービス計画の中に記載する場合は その記載をもって経口移行 ( 経口維持 ) 計画の作成に代えることができる 従来どおり経口移行 ( 経口維持 ) 計画を別に作成してよい 口腔機能向上加算 口腔

医療

Transcription:

5. がん患者さんの在宅医療 介護等の基礎知識 財団法人名古屋市療養サービス事業団名古屋市西区訪問看護ステーション所長訪問看護認定看護師村井満美子 講義の狙い がん患者さんの在宅医療と在宅医療 療養を支える資源について学ぶ 訪問看護の利用の仕方について学ぶ 事例を通してより良い在宅医療のあり方を学ぶ がん患者さんの在宅医療について 在宅医療とは 医療を受ける者の居宅等において 提供される医療であり 外来 通院医療 入院医療に 次ぐ 第 3 の医療 と位置づけられます このうち 訪問診療 とは 通院困難な患者さんに対して 患者さんの同意を得て 計画的な医学管理の下に定期的な訪問 ( 月に最低 2 回 ) をして診療を行うことです また 訪問看護 は 疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者に対し その者の居宅において看護師等が行う療養上の世話又は必要な診療の補助を言います 在宅ではどんな治療が受けられるの? 在宅療養と入院療養の違いを右の図に示します 病院では 入院および通院治療を主体としており 医療者がすぐ近くにいる安心感があります しかし 入院中の生活は基本には病院の規則を守ることが求め られるため その人らしい暮らしは難しい部分があり ます 一方 在宅の場合は 患者さんやご家族の意向 に沿った治療やケアが提供され ご家族の生活が中心 になりますが その一方でご家族の負担が大きく 常 に医療者がそばにいるわけではないので不安感がある という側面もあります 現在 在宅では以下のような治療を受けることができます 手術など一部の治療を除き ほとんどは在宅で行うことができます 1 点滴 注射 2 酸素療法 3 腹水穿刺 4 痛みのコントロール麻薬などの投与 内服 座薬 貼用剤持続点滴 持続皮下注射など

5 膀胱留置カテーテル ( 尿の管 ) 挿入 交換 6 その他 留置されている管類のケア気管カニューレ 胃ろう 腸ろう 胆汁などを出す管など 7 痰の吸引人工呼吸器など点滴ポンプなど在宅向けの医療器具は コンパクトで家族が操作しやすく 使う人のことを考えた改良 工夫がされています 訪問看護ステーションの利用者背景 訪問看護の利用者背景について説明します 年齢別 疾患別内訳 小児から高齢者まですべての年齢の方が対象になります 様々な疾患を持つ方が対象になります がんの方の利用率も多くなっています また 高齢者の方は がん だけという方は少なく 認知症 糖尿病や慢性心不全などの慢性疾患 何等かの疾患を合わせもつかたが多いです 介護度別内訳 要介護度は 病気の重症度で決定するのではなく 人の援助をどれだけ必要としているかが尺度になっています がん患者さんの場合は その方の日常生活動作の状況にもよりますが 比較的軽い介護度 ( 要支援 要介護 1 2など ) になっていることが多いです 介護の状況 近年 独居世帯や高齢者世帯の方が増加しています 介護者の方も何等かの疾患を持っている例があります また 認認介護 ( 認知症の人が認知症の人を介護 ) するといった例もあります 在宅医療 療養を支える社会資源 在宅療養を開始する際の相談の窓口として まず 病院内では 医師 看護師 医療ソーシャルワーカーなどがいます また 地域の窓口として 地域包括支援センター 市町村窓口 ( 介護保険課など ) かかりつけ医 訪問看護ステーション ケアマネジャー ( 居宅介護支援事業所 ) などがあります 利用できる制度には 1 介護保険制度 2 障害者総合支援法などがあります 1 介護保険制度 65 歳以上の方 : 要支援 要介護認定を受けた方 40 歳以上 65 歳未満の方 16 特定疾病の対象者で要支援 要介護認定を受けた方 16 特定疾病 がん末期 関節リウマチ ALS パーキンソン病 脳血管疾患など 2 障害者総合支援法 身体 精神 知的障がいがあり障害認定区分を受けた方居宅介護 ( ヘルパー ) や短期入所などのサービス利用ができます ただし 介護保険認定を受けている方は 介護保険サービスが優先されます なお 12 の制度利用に該当しない方でも お体の状態によっては介護保険と同じようなサービスを利用できることもあります 市町村によって利用できるサービスに違いがあるので 病院や地域の窓口に相談して下さい

在宅医療 療養を支える医療 生活面の支援と支援チーム在宅医療 療養においては 患者さん本人やご家族を様々な職種がチームで支えます 医師 看護師 ケアマネジャーの他 薬局薬剤師は薬の飲み間違いがないように 一包化 をしたり 訪問歯科による口腔ケアなどの支援もあります また 市町村によっては 配食サービスや乳酸菌飲料などを戸別に配布して安否確認をする独自のサービスを行っているところもあります 在宅療養を決定するときに 在宅療養を決定する時に覚えておいていただきたいことがあります 1ご本人とご家族の間で 治療や療養の場所などについて意向のズレがないか確認します ご自宅でどのように過ごしたいか? 痛みや苦痛を伴う症状が出現した時 病状悪化時に入院するのか? そのまま在宅療養を希望するのか? など経過と共に希望や状況が変わってくるので そのつど確認をすることが必要です 2お一人暮らしでも在宅療養は可能です ( ただし 重度の認知症を患っている場合など困難なケースもあると思われるので 介護力や環境の査定は必要です ) サポートするケアマネジャーを始め在宅医 訪問看護の他に 訪問介護などの利用をお勧めします ご本人の希望する在宅療養を支援してくれる在宅医や訪問看護などを選択することも重要であり 事前に どのような状態になったら入院をするのか 在宅でできる限界 などを話し合っておくことが重要です 訪問看護について 訪問看護について皆さんはどのようなイメージをお持ちですか? 多くの方は次のような疑問をお持ちではないでしょうか どんなことをしてもらえるんだろう? 重症な人しか利用できないのかしら? 訪問介護と何が違うの? 訪問看護とは 介護保険法第 8 条 によると 居宅要介護者 ( 主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令に定める基準に適していると認めたものに限る ) について その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定めるものにより行われる療養上の世話又は 必要診療の補助を言う とされています 訪問看護を提供する事業所には 2 種類あります

1 訪問看護ステーション ( 都道府県知事の指定を受け 訪問看護を行う事業所 ) 2 医療機関 ( 病院 診療所 ) みなし指定 ( 病院や診療所内に 訪問看護部門 を設け 退院時に在宅療養が必要な方 病院や診療所に通院したり 訪問診療 往診を受ける方に訪問看護を行う ) また 訪問看護を実施するスタッフは 訪問看護ステーションの場合は 職員として在籍している保健師 助産師 看護師 准看護師の他に 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士がいます 一方 病院 診療所の場合 看護職員のみとなります 訪問看護の内容右図のように かかりつけ医の指示に基づく医療処置 在宅でのリハビリテーション 床ずれ予防や処置 療養上のお世話 低栄養や運動機能低下を防ぐアドバイス ご家族への介護支援 相談 ターミナルケア など幅広く 24 時間 365 日 患者さんやご家族の安心をサポートしています 訪問看護師の役割 1 問診や身体状況の観察 計測などから心身がどのような状態か判断します 2 病気がその方の生活にどのような影響を及ぼしているのか考えます そのことをご本人やご家族に分かりやすく伝えます 3 医師に身体や生活の状況などを報告します 必要時 臨時の診察 治療を依頼します 4ケアマネジャー ヘルパーなどに病気の状況や必要な介護ケアなどを分かりやすく説明します 5ご本人 ご家族 医師 その他ケアチームメンバーそれぞれの意向や考えを確認したり 橋渡し役となります 訪問看護と訪問介護 ( 介護職員 ) の違い 1ヘルパーの支援内容は 家事援助 身体介護 ( 保清援助 排泄や移動援助など ) です 痰吸引や経管栄養を実施できるヘルパーもいます ( ただし 特定の研修を受けた者に限る ) 2ヘルパーは 医療処置や医学的な判断はできません また 看護師は家事援助 ( 掃除 買い物など ) をすることはできません

がん患者さんの在宅医療事例紹介 事例 1 Aさん < 年齢 性別 > 80 歳代女性 < 主病名 > 悪性リンパ腫 < 既往症 > 高血圧 くも膜下出血 < 要介護度 > 要介護 4 左上下肢麻痺あるが何とか歩行や身の回りのことは出来る < 家族構成 > 長男との二人暮らし長女は他県在住 ( 月 1 回程度訪問 ) 長男は長距離トラックの運転手 家を空けることが多く Aさんは独居に近い状態 < 在宅医療導入までの経過 > 病院ケースワーカーからケアマネジャー 在宅医に相談 病気の治療が一段落した 現在 病状は安定しているが 治療の副作用で感染症などを起こす可能性がある 年齢や既往歴を考慮すると継続的に経過観察が必要 外来通院ができれば良いが 体調や麻痺の具合 家族状況を考えると困難な状況 本人の希望 : 通院は一人では難しいと感じている でも別の病院に転院するくらいなら自宅で過ごしたい

事例 2 Bさん < 年齢 性別 > 70 歳代男性 < 主病名 > 大腸がん < 既往症 > 高血圧 < 要介護度 > 申請中腰部に痛みはあるが何とか歩行や身の回りのことはできる < 家族構成 > 妻 長男と3 人暮らし自営業を家族で営む < 在宅医療導入までの経過 > ご家族 病棟看護師から訪問看護ステーションに相談 病気の治療が一段落した 現在 痛みのコントロール中 24 時間持続の栄養点滴が必要な状態 年齢や既往歴を考慮すると継続的に経過観察が必要 今後も外来通院治療の予定である ご本人 まだ病院にいたい ご家族 仕事の加減や毎日病院に面会に来るのも大変 早く退院させたい 何とか家族で介護できる 相談日の翌日に退院が決定していました そこで以下の 2 点を調整し 退院しました 1 疼痛コントロールや 24 時間持続点滴の管理などはご家族だけでは困難 医療者の目が必要と判断 在宅医 訪問看護導入の必要性を説明し同意を得ました 2 介護ベッドなどの福祉用具の必要性も判断 社会資源や介護保険制度の説明をしました 在宅医療支援チームによる支援を行いましたが 退院 2 週間後には再入院することになりました 在宅療養が困難であった原因には下記のような点が考えられました 1 退院後も 本人はとにかく病院に戻りたいと希望 病院主治医への信頼が強く 何があっても 先生にみてもらいたい 色々な人が家に出入りするのも好ましくない 2ご家族とご本人の意向がずれていた 3 十分な調整をしないまま在宅療養開始された まとめ 1. 在宅医療はどなたでも受けることができます ( 現在の状態や環境と在宅療養の条件が合うか確認したり 在宅医療 療養が可能か査定や調整は必要 ) 2. ご本人 ご家族それぞれの意向に大きなずれがないか確認しましょう 3. 色々な社会資源を活用しましょう 4. 医師や看護師 ケアマネジャーなどには気軽に何でも相談しましょう 財団法人名古屋市療養サービス事業団 名古屋市西区訪問看護ステーション所長 訪問看護認定看護師村井満美子