石綿含有建材分析マニュアル第4章

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実験手順 1 試料の精秤 2 定容試料を 5%HPO3 酸で1ml に定容し 試料溶液とする この時 アスコルビン酸濃度は1~4mg/1ml の範囲がよい 3 酸化試験管を試料の (a) 総ビタミン C 定量用 (b)daa( 酸化型ビタミン C) 定量用 (d) 空試験用の3 本 (c) 各標準液

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31608 要旨 ルミノール発光 3513 後藤唯花 3612 熊﨑なつみ 3617 新野彩乃 3619 鈴木梨那 私たちは ルミノール反応で起こる化学発光が強い光で長時間続く条件について興味をもち 研究を行った まず触媒の濃度に着目し 1~9% の値で実験を行ったところ触媒濃度が低いほど強い光で長

を加え,0.05 mol/l チオ硫酸ナトリウム液で滴定 2.50 する.0.05 mol/l チオ硫酸ナトリウム液の消費量は 0.2 ml 以下である ( 過酸化水素として 170 ppm 以下 ). (4) アルデヒド (ⅰ) ホルムアルデヒド標準液ホルムアルデヒド メタノール液のホルムアルデヒ

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日本食品成分表分析マニュアル第4章

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3

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より良い結果を得るために! 蛍光 X 線法の原理と弱点を知ることが大切 蛍光 X 線の試料条件十分な面積と厚み均一 平面 補正で補う面積補正厚み補正材質補正形状補正 装置の日常チェック 測定 作業の制約 最終判断は人間 スペクトルの重なり 試料の情報均一? メッキ? 判断 蛍光 X 線の知識 ばらつ

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一例として 樹脂材料についてEN71-3に規定されている溶出試験手順を示す 1 測定試料を 100 mg 以上採取する 2 測定試料をその 50 倍の質量で 温度が (37±2) の 0.07mol/L 塩酸水溶液と混合する 3 混合物には光が当たらないように留意し (37 ±2) で 1 時間 連

1 Q A 82% 89% 88% 82% 88% 82%

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本手順書は, 消費者庁衛新 13 号 栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について ( 通知法 ) にもとづいた 塩試料を分析するための操作手順である. 塩の性質を考慮し, 通知法を一 部変更している. << 目次 >> 1. たんぱく質 1 2. 脂質 3 3. 炭水化物 5 4. 熱量 7

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A 通 則 1. 添加物の適否は, 別に規定するもののほか, 通則, 一般試験法, 成分規格 保存基準各条等の規定によって判定する ただし, 性状の項目の形状は, 参考に供したもので, 適否の判定基準を示すものではない 2. 物質名の前後に を付けたものは, 成分規格 保存基準各条に規定する添加物を

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練馬清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

資料 3 平成 26 年度ボタン形電池の組込製品に関する試行的試買調査 ( 中間報告 ) 1. 調査の目的と概要水銀に関する水俣条約 ( 以下 条約という ) により規制対象とされる水銀使用製品のうち 他の製品に組み込まれた状態で我が国に輸入されるものについては 組み込まれている製品の範囲 輸入量

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4,4’‐ジアミノジフェニルメタン

4. 加熱食肉製品 ( 乾燥食肉製品 非加熱食肉製品及び特定加熱食肉製品以外の食肉製品をいう 以下同じ ) のうち 容器包装に入れた後加熱殺菌したものは 次の規格に適合するものでなければならない a 大腸菌群陰性でなければならない b クロストリジウム属菌が 検体 1gにつき 1,000 以下でなけ

足立清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

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2.2 分析対象の石綿の定義 平成 18 年 8 11 の厚 労働省通達 ( 基発第 号 ) では 綿とは, 繊維状を呈しているアクチノライト, アモサイト, アンソフィライト, クリソタイル, クロシドライト及びトレモライトをいうこと と定義されており, 分析対象の 綿は, 岩 を

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有明清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

世田谷清掃工場 平成 27 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 不燃物 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) スラグ ( ガス化溶融 )( 含

第3類危険物の物質別詳細 練習問題

(f) メスシリンダー :JIS R 3505 に規定する呼び容量 20 ml 100 ml 200 ml 250 ml 及び 1 L のもので 体積の許容誤差の区分がクラス A のもの又はこれと同等のもの (g) ねじ口瓶 : 容量 100 ml 500 ml 及び 1 L のもの または同等の保

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イオン化傾向 イオン化傾向 1 金属の単体はいずれも酸化されて陽イオンになりうる 金属のイオンのなりやすさを表したものをイオン化傾向という イオン化傾向 K Ca Na Mg Al Zn Fe Ni Sn Pb (H) Cu Hg Ag Pt Au e- を出してイオンになりやすい酸化されやすい イ

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目 次 1. はじめに 1 2. 組成および性状 2 3. 効能 効果 2 4. 特徴 2 5. 使用方法 2 6. 即時効果 持続効果および累積効果 3 7. 抗菌スペクトル 5 サラヤ株式会社スクラビイン S4% 液製品情報 2/ PDF

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( 別添 ) ヒラメからの Kudoa septempunctata 検査法 ( 暫定 ) 1. 検体採取方法食後数時間程度で一過性の嘔吐や下痢を呈し, 軽症で終わる有症事例で, 既知の病因物質が不検出, あるいは検出した病因物質と症状が合致せず, 原因不明として処理された事例のヒラメを対象とする

キレート滴定2014

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第 4 章.JIS A 1481-3 の分析に係る留意点 4.1.JIS A 1481-3 による建材製品中の石綿の定量分析方法の概要この方法は JIS A 1481-1 及びJAS A 1481-2 において石綿含有と判定された試料について X 線回折分析方法によって 石綿含有率 ( 質量分率 )( 以下 石綿含有率 というを定量する方法である 石綿含有建材等の石綿含有率の定量分析は図 4.1 の手順に従って実施する 但し 石綿が不純物として含有するおそれのある天然鉱物及びそれを原料としてできた製品については 適用されない 留意点 : 石綿が不純物として含有するおそれのある天然鉱物中の石綿含有率の具体的 な分析方法として 天然鉱物中の石綿含有率の分析方法の検討結果報告書 ( 平成 18 年 12 月 ( 社 ) 日本作業環境測定協会 ) がある 4.2. 定量用二次分析試料及び定量用三次分析試料の作製方法 4.2.1. 定量用二次分析試料の作製方法定量用二次分析試料の作製に用いる直径 25 mm のふっ素樹脂バインダグラスファイバーフィルタ ( 以下, フィルタ という ) の質量及びフィルタを装着した状態で基底標準板 ( 亜鉛又はアルミニウム ) の主回折強度を計測しておく 一次分析試料を 100 mg(m 1 : 一次分析試料の秤量値 ) 精秤して, コニカルビーカーに入れ,20 % のぎ酸を 20 ml, 無じん水を 40 ml 加えて, 超音波洗浄器を用いて 1 分間分散する 30±1 に設定した恒温槽内に入れ,12 分間連続して振とうする フィルタを装着した直径 25 mm のガラスフィルタベースの吸引ろ過装置で吸引ろ過する 乾燥後, フィルタ上に捕集された試料の質量 (M 2 : 定量用二次分析試料の秤量値 ) を求め, 定量用二次分析試料とする また, 定量用二次分析試料の作製に当たっては,1 試料当たり三つの定量用二次分析試料を作製する ガラスフィルタベースをもつ吸引ろ過装置及びフィルタの直径は,X 線回折分析装置の試料台と同一のものを使用する なお, 定量用二次分析試料の作製で, 残さ ( 渣 ) 率 (M 2 /M 1 ) が 0.15 を超えた場合は, 4.2.2によって, 定量用三次分析試料を作製する - 69 -

JIS A 1481-1 又は 2 で 石綿の含有が認められた場合 含有率が 5% を超える ことが予想される場合 含有率が 5% 未満であることが予想される場合 二次分析試料 定量用二次分析試料の調製 基底標準吸収補正法を用いた X 線回折分析法による定量分析実施 アスベスト含有率算出 残渣率が 0.15 を超える場合 定量用二次分析試料から必要量採取 残渣率が 0.15 未満の場合 定量用三次分析試料の調製 基底標準吸収補正法を用いた X 線回折分析法による定量分析実施 基底標準吸収補正法を用いた X 線回折分析法による定量分析実施 アスベスト含有率算出 アスベスト含有率算出 図 4.1. 建材製品中の石綿含有率定量分析手順 4.2.2. 定量用三次分析試料の作製方法 定量用三次分析試料の調製は 4.2.1 で作製した定量用二次分析試料から 5~10mg を 分取して 無じん水中に分散後 基底標準板の X 線回折強度を計測し 秤量済みのフィル タに吸引ろ過を行い乾燥させて秤量し 試料の質量 ((M 3 : 定量用三次分析試料の秤量値 ) を求め 定量用三次分析試料とする - 70 -

留意点 1: 一次分析試料を 3.3.1.1.(2) に規定する加熱条件によって, 改めて加熱処理することによって減量が期待できる無機成分試料の場合は, 加熱後の一次分析試料から定量用二次分析試料を調製してもよい 留意点 2: 定量用二次分析試料の量が定量用三次分析試料量の作製に不足する場合は, 再度, 定量用二次分析試料作製方法と同じ条件で一次分析試料から定量用二次分析試料を作製し, これを定量用三次分析試料の作製に使用してもよい 4.2.3. けい酸カルシウム保温材の前処理方法石綿含有率の分析対象試料のうち残渣率が 0.15を超える可能性のある けい酸カルシウムを主体とした試料については 以下に示す前処理法により 残渣率が 0.15 以下にすることが可能となったので 試料の定量操作を行うための試料調製手順を記載する この方法は 一次分析試料の X 線回折分析法による定性分析の結果 けい酸カルシウム ( トバモライト ゾノトライト等 ) が主体の試料であることが判明した場合に適用する なお けい酸カルシウムを主体とした試料でも その試料の使用過程で 約 1000 程度の温度にさらされていたもの等 残渣率が 0.15 以下にならないものについては 2.6.1.2. に基づき 定量用三次分析試料を作製すること けい酸カルシウムを主体とした試料の定量操作を行うための試料の作製は以下に示す1 ~ 7の手順により行う 1 一次分析試料を100mg精秤し 100mlのコニカルビーカーに入れる 2 100mlのコニカルビーカーに 20% 水酸化ナトリウム溶液 60ml を加える 3 次いで 電熱器等を利用して 上記 2の 20% 水酸化ナトリウム溶液が約 50ml なるまで濃縮する 4 その後 常温になるまで 放冷する 5 放冷後 基底標準板の X 線回折強度を計測し 秤量済みのフィルタに吸引ろ過を行う この時に コニカルビーカーに付着している残渣物及びフィルタ上の残渣物に対して 20 % のぎ酸で洗浄する 6 吸引ろ過装置を停止した後 フィルタ上の残渣物に 20 % のぎ酸 20ml, 無じん水を40 mlを加えて 12 分間放置する 7 その後 無じん水で洗浄しながら 吸引ろ過装置で吸引ろ過した後 乾燥し フィルタ上に捕集された試料の質量を求め けい酸カルシウムを主体とした定量二次分析試料とする なお, この分析試料の作製に当たっては,1 試料当たり三つの分析試料を作製する ガラスフィルタベースをもつ吸引ろ過装置及びフィルタの直径は,X 線回折分析装置 の試料台同一のものを使用する - 71 -

4.3. 基底標準吸収補正法による X 線回折定量分析方法 4.3.1. 検量線の作成検量線は 検量線 Ⅰ 法又は検量線 Ⅱ 法のいずれかにより作成する 検量線 Ⅰ 法及び検量線 Ⅱ 法は共に相関関係数 (R) が 0.99 以上 ( 又は決定係数 (R 2 ) が 0.98 以上 ) とする 検量線 Ⅰ 法は石綿含有率が1% を超えて含有する場合に 検量線 Ⅱ 法は1% 未満の場合に使用することが望ましい (1) 検量線 Ⅰ 法検量線の作製に使用する 直径 25mmのフィルタの質量およびフィルタを装着した状態で基底標準板 ( 亜鉛又はアルミニウム ) の主回折強度を計測しておく 分析対象の石綿標準試料を 0.1mg 0.5mg 1.0mg 3.0mg 5.0mgを目安に精秤し 秤量別に五個のコニカルビーカーに入れ それぞれ 20% のぎ酸を 0.02ml 0.1ml 0.2ml 0.6ml 1.0ml 無じん水を 0.04ml 0.2ml 0.4ml 1.2ml 2.0ml 加えて超音波洗浄器で 1 分間分散する その後 30 ±1 に設定した恒温槽内に入れ 12 分間連続して振蕩する フィルタを装着した直径 25mmのガラスフィルタベース付の吸引ろ過装で吸引ろ過を行い 無じん水にて数回洗浄する ろ過後のフィルタを取り出し 乾燥後 フィルタ上に捕集された試料の質量を求め 検量線 Ⅰ 法用試料とする 作製したそれぞれの検量線試料を X 線回折分析装置の試料台に固定して 基底標準板と分析対象の石綿の X 線回折強度を 表 4.1に示す分析条件で計測し 基底標準吸収補正法によって検量線を作成する (2) 検量線 Ⅱ 法 検量線の作製に使用する 直径 25mm のフィルタの質量およびフィルタを装着した状態 で基底標準板 ( 亜鉛又はアルミニウム ) の主回折強度を計測しておく 分析対象の石綿標準試料 10mg を精秤して 500ml のビーカーに入れ イソプロピルア ルコール 100~150ml 中でよく攪拌した後 超音波洗浄器を用いて十分に分散させる 調製した石綿標準試料溶液を 1000ml のメスフラスコに移してイソプロピルアルコール を追加して 1000ml に定容し 母液とする ( 母液 1ml あたり 0.01mg に相当する ) 次に 母液から 5ml 10ml 30ml 50ml 及び 100ml の懸濁液を それぞれ 3 点ピペッ トで分取してコニカルビーカーに入れ 各溶液にそれぞれ 0.01ml 0.02ml 0.06ml 0,1ml 及び 0.2ml のぎ酸を加えて 1 分間よく攪拌させる その後 30±1 に設定した恒温槽内に入れ 12 分間連続して振蕩する フィルタを装着した直径 25mm のガラスフィルタベース付の吸引ろ過装で吸引ろ過を行 い 無じん水にて数回洗浄し 検量線 Ⅱ 法用試料とする 作製したそれぞれの検量線試料を X 線回折分析装置の試料台に固定して 基底標準板 - 72 -

と分析対象の石綿の X 線回折強度を表 4.1 に示した分析条件で計測し 基底標準吸収補 正法によって検量線を作成する 留意点 1: 長い時間静置した母液は, 分散石綿が沈降している可能性があるので, 使用前によく振とうするなどして, 目視で均一に分散していることを確認するように注意する 留意点 2: 分取時には母液の入った全量フラスコをよく振り, すぐにピペットで吸引する 留意点 3:10 ml 未満の少量の溶液には,10 ml 以上になるようにイソプロピルアルコールを追加する 4.3.2. 定量分析手順 4.3.1で作製した定量用二次分析試料又は定量用三次分析試料を,X 線回折装置の回転試料台に固定する 検量線作成と同一の条件で, 三つの定量用二次分析試料又は定量用三次分析試料について 基底標準板及び石綿の回折 X 線強度を計測し, 基底標準吸収補正法によって X 線回折分析を行う 4.3.1で作成した検量線から当該石綿の質量を算出し, 石綿の含有率を求める 留意点 : 煙突用の断熱材はアスベストの含有率が80% 以上と高いにもかかわらず 実際の分析ではアモサイト含有率が低値を示す場合があるが これは 重油等の燃焼により発生した SOxガスと煙突内の建材に由来するカルシウムやナトリウム等が反応して生成した硫酸ナトリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩の蓄積により 見かけ上低くなることが原因であり X 線回折分析法の定性分析で硫酸塩が確認された場合には 分析結果報告書に除去対象のアスベスト含有率は分析値よりも高い可能性があることを記載し 当該作業者に注意喚起する事が重要である 表 4.1. X 線回折装置の定量分析条件 設定項目 測定条件 X 線対陰極 銅 (Cu) 管電圧 (kv) 40 管電流 (ma) 30~40 単色化 (K 線の除去 ) Niフィルタ又はグラファイトモノクロメータ 時定数 (s) 1 走査速度 ( /min) 連続スキャニング ( 1/8~1/16 /min) ステップスキャニング 0.02 10 秒 ~0.02 20 秒 発散スリット ( ) 1 散乱スリット ( ) 1 受光スリット (mm) 0.3 走査範囲 (,2 ) 定量回折線を含む前後 2~3 程度 - 73 -

留意点 1: 定量分析は, 表 4.1. によって実施し, 回転試料台を用いて定量物質の X 線回折積分強度 ( 積分値 ) が 2 000 カウント以上とする 留意点 2: ただし, 表 4.1. に示した X 線回折装置の定量分析条件は必要最低の条件であり, この条件又はこれ以上の検出精度を確保できる条件で分析すること 4.3.3. 石綿含有率の算出 (1) 定量用二次分析試料からのアスベスト含有率の算出一つの定量用二次分析試料からの石綿含有率は, 式 1によって, また, 建材製品中の石綿含有率は, 式 2によって算出する なお,3.3.1.1.(2) に規定する 有機成分試料の一次分析試料作製方法によって定量用二次分析試料を作製した場合は, 減量率 rで補正する Ci = As2/M 1 r 100 C = (C 1 +C 2 +C 3 )/3 2 1 ここに Ci:1つの定量分析用試料の石綿含有率 (%) C: 建材製品中の石綿含有率 (%) As2: 検量線から読み取った定量用二次分析試料中の石綿質量 (mg) M 1 : 一次分析試料の秤量値 (mg) r: 減量率 但し加熱処理をしない場合はr=1とする (2) 定量用三次分析試料からのアスベスト含有率の算出一つの定量用三次分析試料からの石綿含有率は, 式 3によって, また, 建材製品中のアスベスト含有率は, 式 4によって算出する なお, 一次分析試料を 3.3.1.1.(2) に示す加熱条件によって減量して作製した定量用二次分析試料または定量用三次分析試料の場合は, 減量率 r で補正する As3 (M 2 / M 3 ) Ci= r 100 3 M 1 C = (C 1 +C 2 +C 3 )/3 4 ここに Ci:1 つの定量分析用試料の石綿含有率 (%) C: 建材製品中の石綿含有率 (%) As3: 検量線から読み取った定量用三次分析試料中の石綿質量 (mg) - 74 -

M 1 : 一次分析試料の秤量値 (mg) M 2 : 定量用二次分析試料の秤量値 (mg) M 3 : 定量用三次分析試料の秤量値 (mg) r: 減量率 但し加熱処理をしない場合はr=1とする 4.3.4. 検量線の検出下限及び定量下限検量線作成時に調製した最小標準試料 (0.01~0.1 mg/cm 2 ) を X 線回折分析装置の試料台に固定して 検量線作成と同一の条件で基底標準板と分析対象の石綿の X 線回折強度を繰り返して 10 回計測し 積分 X 線強度の標準偏差 (σ) を求める 検量線の検出下限は 式 5により 定量下限は 式 6によって算出する Ck= (σ/a) /M 1 100 Ct= (3σ/a) /M 1 100 5 6 ここに Ck: 検出下限 (%) Ct: 定量下限 (%) σ:10 回計測の積分 X 線強度の標準偏差 a : 検量線の傾き M 1 : 一次分析試料の秤量値 (100mg) 留意点 1 : 定量用二次分析試料又は定量用三次分析試料を作製し 基底標準吸収補正法による X 線回折定量分析方法 により定量分析を行う場合において 石綿回折線のピークが確認できないことがあり得るが その場合においては 一般に 石綿含有率は検量線から求めた定量下限以下とされていることから 定量下限が 0.1% 以下であるときには 石綿がその重量の 0.1% を超えて含有しないものとして取り扱う 留意点 2 : 定量用二次分析試料又は定量用三次分析試料を作製し 基底標準吸収補正法による X 線回折定量分析方法 により定量分析を行う場合において 検量線から求めた定量下限が 0.1% を超える場合 又は不純物による影響等のため 石綿回折線のピークの有無の判断が困難な場合については 石綿がその重量の0.1% を超えて含有しているものとして取り扱う - 75 -