[ 2Pf012 ] 溶液ラジカル重合における末端変性アクリル系ポリマーの合成 Synthesis of terminal-modified acrylic polymers by the solution polymerization with radical initiators. ( 株 )DNP ファインケミカル 西馬千恵 清水圭世 竹岡知美 有富充利
顔料分散体 インクジェットインクやカラーフィルタ用レジストなどの顔料分散体が優れた性能を発揮するためには 構成成分の相溶性制御が重要相溶性制御が重要である 顔料 分散剤 バインダーポリマー 凝集体 溶媒 構成成分の相溶性悪化により インキ物性 レオロジーへの影響 ( インキ高粘度化など ) 塗膜物性 光学特性への影響 ( 発色性 透明性など ) 11 1
構成成分の相溶性制御 疎水性のバインダー用ポリマーは 親水性の高いグリコール系溶媒に対する相溶性に劣り その向上が求められている < 相溶性不良 > ポリマー < 相溶性良好 > ポリマー 凝集体 顔料 溶媒 溶媒 従来のポリマー 溶媒由来構造導入ポリマー 相溶性付与部位 ( 溶媒由来構造 ) 疎水部位 ポリマーの優れた物性を損なうことなく相溶性を向上させる手法 従来 : 相溶性付与部位を有するモノマーの共重合法本研究 : ポリマー末端への溶媒由来成分の導入 22 2
相溶性向上手法 構造イメージ 相溶性 塗膜強度 合成方法 疎水性アクリルポリマー モノマー種変更 ( 親水性モノマー導入 ) ( 親水性モノマー導入 ) 低分子量化 樹脂側鎖変性 X X 樹脂末端変性? ポリマーの物性を損なうことなく 相溶性を向上させる手法として 末端変性の重合方法を検討した 3
末端変性手法 具体例 相溶性 合成方法 1 開始剤由来成分導入アゾビス ( シアノプロパノール ) アゾビス ( シアノ吉草酸 ) アゾビス ( シアノプロパノール ) アゾビス ( シアノ吉草酸 ) 2 連鎖移動剤由来成分導入 メルカプトエタノール メルカプトプロピオン酸 3 末端修飾 末端水酸基導入 + イソシアネートエチルメタクリレート末端水酸基導入 + カルボン酸無水物 末端水酸基導入 + カルボン酸無水物 4 溶媒由来成分導入 -? 1~3 は 溶媒種により相溶性が異なる また 特殊な化合物 工程を必要とする ポリマー末端への溶媒由来成分の導入を検討した 溶媒由来構造導入ポリマー 相溶性付与部位 ( 溶媒由来構造 ) 疎水部位 4
重合方法検討 溶液ラジカル重合による 溶媒残基のポリマー末端構造の導入 溶媒 グリコール系溶媒 開始剤 有機過酸化物 アゾ系開始剤 アクリルモノマー (40wt%) 重合開始剤 アクリルモノマー アルキルメタクリレート 溶媒 (60wt%) 100-110 構造解析 GPC NMR IR MALDI-TF-MS 5
MALDI-TFMS による末端解析例 MALDI-TF-MS( マトリックス支援レーザー脱離イオン化 飛行時間型質量分析法 ) 高分子の正確な質量測定が可能 100 100 90 90 80 80 70 60 70 60 M M M M 50 50 40 40 30 20 30 20 M M M M 10 10 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 1[c].C2 0 1000 1050 1100 1150 1200 1250 1300 1350 1400 1450 1500 1[c].C2 分子量 = モノマー単位の分子量 (M) n + 末端の分子量 + イオン化助剤の分子量 (Na+) 固定? 固定 (23) モノマー単位の分子量を周期とするシグナル群の解析により末端を推定シグナル強度をモル存在比の目安とする 6
末端解析例その 1 モノマー : メチルメタクリレート (MMA) 溶媒 : ジエチレングリコールジエチルエーテル (DEDG) 開始剤 : アゾビスイソブチロニトリル (AIBN:I 1 ) 100 90 80 70 (A1) 1092 (A1) 1192 (A1) 1292 (A1) 1392 (A1) I 1 MMA H n 68+( +(100 100 n)+1+ )+1+23 Na+ 60 50 40 30 20 10 (A2) 1159 (A2) 1259 (A2) 1359 (A2) 1459 (A2) I 1 MMA n I 1 68+( +(100 100 n)+ )+68 68+23 Na+ 0 1000 1050 1100 1150 1200 1250 1300 1350 1400 1450 1500 1[c].C2 I 1 = 開始剤由来構造 I 1 ( 質量数 68) 開始剤の分解成分 MMA MA( 質量数 100) メチルメタクリレート H( 質量数 1) 水素原子 Na+ ( 質量数 23) C CN C C 開始剤由来構造のみ検出される 77 7
末端解析例その 2 モノマー :MMA 溶媒 :DEDG 開始剤 :t- ブチルパーオキシ -2- エチルヘキサノエート (I 2 ) 100 90 80 I 2 MMA H n Na+ 70 60 50 40 30 20 1023 1085 1123 1185 1223 1285 1323 1385 1423 1485 99+( +(100 100 n)+1+ )+1+23 Solvent MMA H n 161+( +(100 100 n)+ )+1+23 Na+ 10 0 1000 1050 1100 1150 1200 1250 1300 1350 1400 1450 1500 1[c].B2 I 2 = 開始剤由来構造 Solvent = 溶媒由来構造 I 2 ( 質量数 99) 開始剤の分解成分 MMA MA( 質量数 100) メチルメタクリレート Solvent( 質量数 161) 溶剤由来成分 CH C C CH CH3 開始剤由来構造に加え 溶媒由来構造導入ポリマーが観察溶媒由来構造導入ポリマーが観察された ( 約 50%) 88 8
推定反応機構 開始剤の分解 I - I ( 重合開始剤 ) I + I 従来の反応機構 M ( モノマー ) nm I I-M H I (M) n M I (M) n+1 H 生成物 : 開始剤付加 本研究の反応機構 I Solvent-H Solvent 溶媒からの水素引き抜き M ( モノマー ) Solvent Solvent M nm Solvent (M) n M H Solvent (M) n+1 H 生成物 : 溶媒付加 99 9
反応率一覧 Table1 開始剤種変更 有機過酸化物 アゾ系開始剤 開始剤種 ジベンゾイルパーオキサイド t- ブチルパーオキシ - イソプロピルモノカーボネート t- ブチルパーオキシ - 2- エチルヘキサノエート t- ヘキシルパーオキシ - 2- エチルヘキサノエート アゾビスイソブチロニトリル C N N C CN CN MMA DEDG 85% 77% 50% 8% 0% 開始剤 有機過酸化物を用いた場合 反応が進行 開始剤種により反応率変化 Table2 溶媒種変更 ポリアルキレングリコール類 ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類 エーテルエステル類 溶媒種 テトラエチレングリコールトリプロピレングリコール DEDG DEDG H H H H ジプロピレングリコールジメチルエーテル プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート MMA t- ブチルパーオキシ - 2- エチルヘキサノエート 72% 55% 50% 56% 20% 50% 溶媒種 グリコールエーテル系溶媒で特に反応が進行しやすい傾向 10
反応率一覧 2 Table3 モノマー種変更 アルキルメタクリレート ビニルモノマー MMA BMA BzMA St モノマー種 t- ブチルパーオキシ - 2- エチルヘキサノエート DEDG 50% 55% 49% 41% モノマー種 アルキルメタクリレート ビニルモノマーで同様に溶剤末端導入可能 11
相溶性調査 3 成分系ヘイズ測定 ( 溶媒 / ポリマー / 分散剤 = 75/28/7) 開始剤由来構造 29.4 分散剤 A 分散剤 B 分散剤 C 29.4 9.4 8.2 分散剤 A: アクリル系分散剤分散剤 B: 脂肪族アミン系分散剤分散剤 C: 脂肪族アミン系分散剤 溶剤末端変性 (50%) 17.9 減少率 (%) 39% 17.9 6.7 6.0 39% 29% 27% < 測定条件 > PETフィルム (75µm 厚 ) 上にアプリケーターで塗布した後 80 1h 乾燥して10µmの塗膜を形成 溶媒末端変性ポリマーは 相溶化剤としての機能を有する相溶化剤としての機能を有することが確認された 顔料分散体のバインダー用樹脂として用いることにより 光学特性 レオロジー特性向上 当社において高機能印刷用インクのベースポリマーとして実用化を達成 12
まとめ 1) グリコール系溶媒中でアクリルモノマーのラジカル重合を行うことにより ポリマー末端に溶媒由来の構造を持つ新規なポリマーを開発した ( 特許第 5175098 号 ) 2) MALDI-TF-MS 測定による解析手法が ポリマー末端構造及びラジカル重合機構についての知見を得る上で有効であることを示した示した 3) 得られた溶媒末端変性ポリマーは 相溶化剤としての機能を有することが確認された 4) 光学特性 レオロジー特性の向上が可能であったことから 当社において高機能印刷用インキのベースポリマーとして実用化を達成した < 今後の展望 > 溶媒末端変性ポリマーの開発により これまでポリマーの導入が困難であった組成物へのポリマー導入が可能となり インキの新しい機能の発現が期待される 本手法ではポリマー末端に溶媒を導入したが 他の化合物を末端に導入することにより より多くの物質との相溶化が期待される < 適用分野 > 印刷インキ 顔料分散レジスト 塗料 コーティング材 接着剤 化粧品 13 13