みずほインサイト 政策 2013 年 12 月 19 日 減反廃止 の実情を読み解く農業の構造再編 競争力強化への効果には懸念も 政策調査部主任研究員堀千珠 政府は 2013 年 11 月に 1 いわゆる 減反廃止 2

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14 現行のナラシ対策では 集落営農が加入するには 法人化計画 (5 年以内の法人化 ) が必須であるが 意欲があっても法人化に時間を要するものもある 法人化はさせたいが 現在の法人化計画は実態に合っていないのではないか 15 平成 27 年度からの経営所得安定対策では 集落営農の法人化等については

2. 機構の基本構想と骨格案のポイント以下では 政府がこれまでに示してきた機構の基本構想と 2013 年 10 月 4 日に公表した機構制度の骨格案におけるポイントを整理する ( 図表 2) (1) 機構の基本構想機構の基本的な役割は 耕作者がいない農地の所有者などから農地を借り集め 当該農地を管理

大分県農業共済組合 大分県農業共済組合作成 収入保険と既存制度の掛金及び補てん金の比較 ( 大分県 ) 品目 : 米 平均収入 100 万円作付面積 83a 単収 504kg/10a シナリオ 1 販売価格が 地域平均で シナリオ 2 販売価格が 個人のみで シナリオ 3 自然災害により 地域全体が

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はじめに 政府は 23 年度からの戸別所得補償制度に対して 8 月 31 日に概算要求案として 農業者戸別所得補償制度概算要求の骨子 を示した 国家戦略である新たな基本計画が大きな柱として位置づけた戸別所得補償制度は 農業者の経営安定と国内生産力の確保を図るための重要な政策であり 生産者の期待は大き

1.% で ともに 年連続の上昇となった 農業所得の増加や農業利益率の上昇に至った背景には 多くの農産物において価格が上昇したことがある ( 頁の参考図表 1 参照 ) 高齢農業者のリタイア増加を背景とする国産農産物の需給引き締まりや 新興国の経済発展を受けた輸入農産物の価格上昇といった近年の傾向は

米の生産調整見直しをめぐる課題

みずほインサイト 政策 2013 年 3 月 14 日 農政に求められる基本姿勢最低限の保護策と担い手重視の競争力強化策 政策調査部主任研究員堀千珠 農業の再生に向けては 農業の保護策と競争力強化策の双方が必要であるが

2 作物ごとの取組方針 (1) 主食用米本県産米は 県産 ヒノヒカリ が 平成 22 年から平成 27 年まで 米の食味ランキングで6 年連続特 Aの評価を獲得するなど 高品質米をアピールするブランド化を図りながら 生産数量目標に沿った作付けの推進を図る また 平成 30 年からの米政策改革の着実な

唐津市農業委員会 農地等の利用の最適化の推進に関する指針 平成 2 9 年 11 月 8 日 唐津市農業委員会 第 1 基本的な考え方農業委員会等に関する法律 ( 昭和 26 年法律第 88 号 以下 法 といいます ) の改正法が平成 28 年 4 月 1 日に施行され 農業委員会においては 農地

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石川県水田フル活用ビジョン 1 地域の作物作付の現状 地域が抱える課題 水稲作付面積については 昭和 60 年の 37,700ha から 平成 25 年では 26,900ha と作付 面積で約 10,000ha 作付率で約 30% と大きく減少したものの 本県の耕地面積に占める水稲作 付面積の割合は

経営所得安定対策の見直し

長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) 骨子 ( 案 ) に関する参考資料 1 骨子 ( 案 ) の項目と種子の生産供給の仕組み 主要農作物種子法 ( 以下 種子法 という ) で規定されていた項目については 長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) の骨子 ( 案 ) において すべて盛り込むこ

はじめに 戸別所得補償制度は 食料自給率の向上を図るとともに 農業と地域を再生させ 農山漁村に暮らす人々が将来に向けて明るい展望を持って生きていける環境を作り上げていくための施策です 同時に 環境の保全や美しい景観などの農業 農村の多面的機能を維持し 我が国の資産として維持していくためのものです 昨

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経営所得安定対策の確立及び日本型直接支払制度の法制化

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資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

27 年産以降のゲタ ナラシ対策の交付対象者 ゲタ ナラシ対策の交付対象者は 27 年産から認定農業者 集落営農に認定新規就農者を加えるとともに 規模要件は廃止しました また 交付対象となる集落営農の要件も 2 要件に緩和します 担い手の方が幅広く参加できるようになります また ナラシ移行の円滑化対

資料 4 農地情報公開システムの概要 ( 通称 : 全国農地ナビ ) 平成 2 7 年 5 月

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農業委員会法改正の全体像 農業委員会が その主たる使命である 農地利用の最適化 ( 担い手への集積 集約化 耕作放棄地の発生防止 解消 新規参入の促進 ) をより良く果たせるようにする 農業委員会 都道府県農業会議 全国農業会議所 農業委員会業務の重点化 農業委員会の業務の重点は 農地利用の最適化の

農地中間管理機構 ( 仮称 ) の制度の骨格 ( 案 ) 資料 農地中間管理機構の指定都道府県のコントロールの下に適切に構造改革 生産コスト引下げを推進するため 都道府県段階に設置する 1 都道府県知事は 農地中間管理事業を公平かつ適正に行うことができる法人 ( 地方公共団体の第 3セク

私立幼稚園の新制度への円滑移行について

2. 協定数 交付金を交付した協定数は1,424 協定で 平成 21 年度の1,411 協定から新 たに13 協定増えています 県別では 岐阜県 887 協定 ( 管内の62%) 愛知県 328 協定 ( 同 23%) 三重県 209 協定 ( 同 15%) となっています うち 体制 整備単価に取

【千葉県事業計画】別記様式第3号別添

米及び畑作物の直接支払交付金を受ける方は 対象作物ごとに生産数量目標を必ず記入してください 経営所得安定対策の交付金に係る営農計画書 主食用水稲の生産数量目標 主食用水稲は 生産調整方針作成者等から通知された 生産数量目標 単収 作付面積 ( 換算値 ) を記入してください 単収 が通知されていない

3. 経営所得安定対策及び日本型直接支払制度の確立 (1) 経営所得安定対策の平成 26 年度以降のあり方の検討に当たっては 真に農業者の経営安定に資する制度とするために 地域の特性や実情を反映し 農業者及び都市自治体の意見を十分に尊重すること また 農業者等が安心して農業に取り組むことができるよう

年社会 経済のうごき食料 農業 農村の動向と主要な施策の流れ 食料 農業 農村基本計画 の策定 00 中山間地域等直接支払制度導入 00 農地法改正 ( 農業生産法人の一形態として株式会社を位置付け ) 国際化の進展と食料 農業 農村基本法の制定 米穀同時多発テロ発生 0

めに必要な情報を提供するとともに 2 関係者一体となった契約栽培等の需要と直結した生産を推進していく また 生産者の収益性向上につながる地域の気候風土を活かした特色ある野菜等園芸作物への作付を促進し 産地づくりを進めていくため 生産者への作付誘導のインセンティブとなる産地交付金を戦略的に活用していく

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このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

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企業中小企(2) 所得拡大促進税制の見直し ( 案 ) 大大企業については 前年度比 以上の賃上げを行う企業に支援を重点化した上で 給与支給総額の前年度からの増加額への支援を拡充します ( 現行制度とあわせて 1) 中小企業については 現行制度を維持しつつ 前年度比 以上の賃上げを行う企業について

みずほインサイト 政策 2018 年 10 月 18 日 ideco 加入者数が 100 万人超え加入率引き上げへさらなる制度見直しを 政策調査部上席主任研究員堀江奈保子 naoko. ideco( 個人型確定拠出年金 ) の加入

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☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

1 国際的な穀物需給がタイトな状況の中で、食料の多くを海外からの輸入に依存している我が国においては、農地を最大限活用し、

以上かつ5ヘクタール以上の変動が生じた場合には 変更後の高収益作物転換計画を計画主体に提出するものとする 第 6 事業達成状況の報告 1 事業実施主体は 別記様式第 1 号により 高収益作物転換促進計画の目標年度 ( 事業完了予定年度の3 年後までのいずれかの年度とすることを原則とし 対象事業の進捗

水田活用の直接支払交付金実施要領 農林水産省生産局長通知 制定平成 26 年 4 月 1 日付け 25 生産第 3561 号 第 1 趣旨 水田活用の直接支払交付金の実施については 経営所得安定対策等実施要綱 ( 平成 23 年 4 月 1 日付け22 経営第 7133 号農林水産省事務次官依命通知

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別紙2

ウ WCS 用稲本市は県内最大の酪農地帯であるため 需要に応じた生産確保に努め 多収品種の推進 病害虫防除や雑草管理など適切な圃場管理を行う また についても実施する エ加工用米実需者の要望に対応できるよう 産地交付金を活用して複数年契約を進めることにより安 定的な供給を目指し 担い手の作付維持 (

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2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

図りにくい状態にあるほか 耕作放棄地の拡大によって農地の収益機会ロスが顕著となっている これらの問題を克服するうえで 農地集積は極めて重要であるといえる 日本農業における最大の弱点は 農地利用の小口分散化である 日本では 第二次世界大戦後 1947 ~1950 年の農地改革によって 北海道を除いた都

資料 1 30 年産 生産の目安 の基本的な考え方に対する申し入れ事項 平成 29 年 9 月 15 日北海道農協米対策本部 1. 基本的な考え方 30 年産以降 急激な需給変動が発生した場合においても 生産者の経営安定と手取りの確保を図っていくことが重要であるが 一方で産地としての供給責任を果たし

( 問 2) 担い手確保 経営強化支援事業は 補助率が 2 分の 1 以内となっていますが 融資額と補助金はどのような関係となっていますか 本事業では 農業者の融資を活用した主体的な経営発展の取組を支援することから 融資の活用を要件としており 融資を主体とするいわゆる融資主体型補助事業としていること

女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針について

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社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

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加賀市農業委員会農地等の利用の最適化の推進に関する指針 平成 30 年 1 月 26 日制定 加賀市農業委員会 第 1 指針の目的 農業委員会等に関する法律 ( 昭和 26 年法律第 88 号 以下 法 という ) の一部改正法が平成 28 年 4 月 1 日に施行され 農業委員会においては 農地等

規制 制度改革に関する閣議決定事項に係るフォローアップ調査の結果 ( 抜粋 ) 規制 制度改革に係る追加方針 ( 抜粋 ) 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 番号 規制 制度改革に係る追加方針 ( 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 ) における決定内容 規制 制度改革事項 規制 制度

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

H30年産そば方針

各委員提出資料

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これは 平成 27 年 12 月現在の清掃一組の清掃工場等の施設配置図です 建替え中の杉並清掃工場を除く 20 工場でごみ焼却による熱エネルギーを利用した発電を行っています 施設全体の焼却能力の規模としては 1 日当たり 11,700 トンとなります また 全工場の発電能力規模の合計は約 28 万キ

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平成20年2月

資料1 第3回災害救助に関する実務検討会における意見に対する回答

金のみの場合は年収 28 万円以上 1 年金収入以外の所得がある場合は合計所得金額 2 16 万円以上が対象となる ただし 合計所得金額が16 万円以上であっても 同一世帯の介護保険の第 1 号被保険者 (65 歳以上 ) の年金収入やその他の合計所得が単身世帯で28 万円 2 人以上世帯で346

( 別記 ) 大玉村地域農業再生協議会水田フル活用ビジョン ( 案 ) 1 地域の作物作付の現状 地域が抱える課題 当該地域は 水田面積に占める主食用水稲の割合が 69% で 転作作物に占める割合としては飼料作物が多く 次にそば 野菜がある しかしながら 主食用米の需要が減少する中で さらに他の転作

2. 食料自給率の推移 食料自給率の推移 我が国の食料自給率 ( 総合食料自給率 ) は 長期的に低下傾向で推移してきましたが 近年は横ばい傾向で推移しています (%) (H5 ) 43 7

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本日の説明内容 1. グリーン購入法の概要 2. プレミアム基準策定ガイドライン

市街化調整区域の土地利用方針の施策体系 神奈川県 平塚市 神奈川県総合計画 神奈川県国土利用計画 平塚市総合計画 かながわ都市マスタープラン 同地域別計画 平塚市都市マスタープラン ( 都市計画に関する基本方針 ) 平塚都市計画都市計画区域の 整備 開発及び保全の方針 神奈川県土地利用方針 神奈川県

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国営農地再編整備事業 ニセコ地区 事業の概要あぶたぐん本事業は 北海道南西部に位置する虻田郡ニセコ町の畑地帯において 区画整理を行い 生産性の高い基盤の形成を通じて農業の振興と耕作放棄地の解消 発生防止を図るものである 事業の目的 必要性本地区の農地は 基盤整備が遅れているため 小区画や急傾斜であり

資料 1 平成 27 年人事院勧告の概要

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注 : 平成 年度募集研究種目 国際的に評価の高い研究の推進 研究費の規模 / 研究の発展 H には 新たに基盤研究 (B) 若手研究 (A) の 種目に基金化を導入 若手研究 9 歳以下 ~ 年 (A) 500~,000 万円 (B) ~500 万円 研究活動スタート支援 年以内年間 50 万円以

江府町地域協議会活用明細

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資料2 紙類の判断の基準等の設定に係る検討経緯について

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2 麦類 ( 子実用 ) (1) 4 麦計平成 24 4 麦の作付面積 ( 子実用 ) は26 万 9,5haで 前に比べて2,2ha(1%) 減少した ( 表 8) 麦種別には 二条大麦は前に比べて7ha(2%) 増加したものの 小麦 六条大麦及びはだか麦は前に比べてそれぞれ2,3ha(1%) 3

目 次 Ⅰ 集落営農数 Ⅱ 集落営農数 ( 詳細 ) 1 組織形態別集落営農数 2 農業経営を営む法人となる画の策定状況別集落営農数 3 設立年次別集落営農数 4 経営所得安定対策への加入状況別集落営農数 5 人 農地プランにおける位置づけ状況別集落営農数 (1) 中心経営体として位置づけの有無別

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国産粗飼料増産対策事業実施要綱 16 生畜第 4388 号平成 17 年 4 月 1 日農林水産事務次官依命通知 改正 平成 18 年 4 月 5 日 17 生畜第 3156 号 改正 平成 20 年 4 月 1 日 19 生畜第 2447 号 改正 平成 21 年 4 月 1 日 20 生畜第 1

新規前年度継続 ( 変更あり ) 前年度継続 加工用米助成 ( 基幹作物 ) 豊郷町農業再生協議会整理番号 2 加工用米 ( 基幹作物 ) 1,079 円 /10a 参考となる 3 1,300 円 /10a 豊郷町では加工用米を地域振興作物に位置付けている 一定品質を確保するために 種子更新を行って

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図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

1. 口座管理機関 ( 証券会社 ) の意見概要 A 案 ( 部会資料 23: 配当金参考案ベース ) と B 案 ( 部会資料 23: 共通番号参考案ベース ) のいずれが望ましいか 口座管理機 関 ( 証券会社 ) で構成される日証協の WG で意見照会したところ 次頁のとおり各観点において様々

はじめに 経営所得安定対策では 担い手農家の経営の安定に資するよう 諸外国との生産条件の格差から生ずる不利を補正する交付金 ( ゲタ対策 ) と 農業者の拠出を前提とした農業経営のセーフティネット対策 ( ナラシ対策 ) を実施しています また 食料自給率 自給力の向上を図るため 飼料用米 麦 大豆

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29 宇農委第 227 号 平成 29 年 12 月 5 日 宇治市農業委員会 農地等の利用の最適化の推進に関する指針 宇治市農業委員会 農業委員会等に関する法律 ( 昭和 26 年法律第 88 号 以下 法 という ) 第 7 条第 1 項の規定に基づき 宇治市農業委員会にかかる標記指針を下記のと

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みずほインサイト 政策 2013 年 12 月 19 日 減反廃止 の実情を読み解く農業の構造再編 競争力強化への効果には懸念も 政策調査部主任研究員堀千珠 03-3591-1304 chizu.hori@mizuho-ri.co.jp 政府は 2013 年 11 月に 1 いわゆる 減反廃止 2 転作支援の強化 3 重点的な支援対象者の明確化 4 日本型直接支払制度の創設 などを主な内容とする農業の施策見直しを正式決定した 一連の見直しは 農業者への保護を抑制する施策と強化する施策とが混在しており これだけで日本農業の構造再編 競争力強化が加速するとは見込みにくい 政府には今後 日本農業の牽引役である認定農業者などの経営環境を改善したり 農業者への保護を抑制したりする形で 施策の詳細を調整していくことが求められる 1. はじめに 2013 年 10 月下旬から11 月にかけて 多くのメディアが政府による 減反廃止 の検討を報じ 農政が大きな転換点を迎えていることを強調した これを受けて 大規模な農業者や高付加価値戦略に長けた農業者などへの生産集中 ( 以下 構造再編 ) や日本農業の競争力強化が進むとの期待が高まった しかし 政府が2013 年 11 月 26 日に正式決定した 米の生産調整 ( 通称 減反 ) や農業者の所得安定などに関する各種施策の見直しを全体的にとらえると 上記のような期待を抱くにはやや早計との感がある なぜなら今般の見直しでは 農業者保護を抑制する施策と農業者に対する保護を強化する施策が組み合わされており 後者が前者の効果を削ぐおそれがあるためである こうした状態では 構造再編や競争力強化のスピードも自ずと緩やかにならざるを得ない 本稿では 断片的に報じられているケースが多い今般の施策見直しの実情をより的確に伝えるべく 全体像および主なポイントを示したうえで その評価や課題を論じることとしたい 2. 米の生産調整や農業者の所得安定などに関する施策見直しの主なポイント今般の施策見直しは 生産調整 経営所得安定対策 多面的機能などに対する直接支払い 共済 保険の4 分野にわたる その全体像は図表 1( 次頁 ) のとおりで これを整理すると 1いわゆる 減反廃止 2 転作支援の強化 3 重点的な支援対象者の明確化 4 日本型直接支払制度の創設 の4 点が主なポイントとして浮かび上がる まずは これらのポイントについて概要を説明するとともに 筆者の評価をまとめてみよう 1

(1) いわゆる 減反廃止 a. 概要 1970 年以降 政府は米価を維持するための生産調整を実施しており 現在は生産数量目標を設定し これを各都道府県に配分する形で主食用米の過剰生産を抑制している ( ただし 各農業者は生産調整に参加しないことも選択可能 ) 政府は 2018 年度をめどにこれを見直し 行政による生産数量目標の配分に頼らずとも ( 中略 ) 円滑に需要に応じた生産が行える状況 1 を実現する 1 いわゆる 減反廃止 2 制度上 リンク 図表 1 米の生産調整や農業者の所得安定などに関する施策見直しの全体像 現在の政策 (1) 生産調整 ( 通称 減反 ) [ 生産調整 ] 過剰生産を抑制する観点から 政府が都道府県別に米 の生産目標数量を設定し これに基づいて都道府県 市町村 各農業者と数量を配分 ( 農業者は生産調整への参加 不参加を選択可能 ) 見直しの方針 2018 年度をめどに 政府による生産数量目標の配分に頼らない状況の実現をめざす 国は 米の需給 在庫 価格などについて よりきめ細かな情報を提供 (2) 経営所得安定対策 ( 旧 戸別所得補償制度など ) [ 米の直接支払交付金 ] 2014~2017 年度は10a 当たり7,500 円を交付生産調整の参加者に限って 10アール ( 以下 10a[=1,000 2018 年度に廃止m2 ]) 当たり15,000 円を交付 保護の方向性 [ 米価変動補填交付金 ] 前年度に米の直接支払交付金を受け取った者に限って 2014 年度に廃止 前年度の販売価格が 政府の定める価格を下回った場合に その差額分を10a 当たり単価で交付 2013 年度予算 ( 億円 ) 政策開始年 関連支出 : 米の直 接支払交付金および米価変動補 1970 填交付金 1,613 84 前年度の高米価を受けて 支出には至らず 2010 の転強作化支援 3 重点的明な確支化援対象者の [ 水田活用の直接支払交付金 ] 水田で麦 大豆 飼料用米 米粉用米を生産する農業者 飼料用米 米粉用米について10a 当たり生産数量にに対して 品目 面積に応じた金額を交付 ( 例 : 飼料用米 応じて最大 105,000 円を交付米粉用米は10a 当たり80,000 円 ) [ 産地資金 ] 地域の実情に即した転作への取り組みを支援 [ 畑作物の直接支払交付金 ( 通称 ゲタ対策 )] 対象作物 ( 麦 大豆など ) を生産する農業者に対し 面積と出荷数量に応じて交付 地域の判断で振興したい作物に助成できる 産地交付金 に改め 自治体による 水田フル活用ビジョン の策定を条件に交付 2014 年度は現行通り 2015 年度からは 認定農業者 集落営農 認定就農者へと対象を絞り込む 2014 年度は現行通り [ 収入減少影響緩和対策 ( 通称 ナラシ対策 )] また 2014 年度に限り 米の直接支払交付金の加入一定の経営規模を有する認定農業者 集落営農に限って者のうち 対策の非加入者にも約 3 割を補填上記対策への加入を認め 米 麦 大豆などの収入額が 2015 年度からは 認定農業者 集落営農に加え 認過去の平均的収入額を下回った場合に その差額の9 割定就農者を対象とし 規模要件を廃止 (= 対象拡大 ) を加入者に補填 ( 補填の原資は 加入者と国が1 対 3の割 中期的に 収入保険制度( 下記 ) との統廃合を視野に合で負担 ) 入れる 2,517 2010 転作を助成する制度は 197 8 年に開始 2004 2,123 2007 724 2007 4 日制本度型の直創接設支払 統廃合を視野に入れて検討 (3) 多面的機能などに対する直接支払い ー 組み替え [ 日本型直接支払制度 ( 多面的機能支払 )] 2014 年度に制度を創設し 2015 年度から法制化する 集落などが多面的機能を維持 管理するための共同活動を支援する農地維持支払交付金 (10a 当たり最大 3,000 円 ) と 既存の農地 水保全管理支払交付金 ( 下記 ) を組み替えた資源向上支払交付金 ( 同 2,400 円 ) を支給 - 2014 ( 予定 ) [ 農地 水保全管理支払交付金 ] 集落などが共同で実施する農地 農業用水の保全管理 日本型直接支払制度の資源向上支払に組み替え 282 2007 活動を支援 [ 中山間地域等直接支払交付金 ] 農業生産条件の不利を補正する観点から 田畑の別お 実施を継続 285 2000 よび農地の傾斜に応じた金額を交付 [ 環境保全型農業直接支払交付金 ] 地球温暖化防止や生物多様性に効果の高い営農活動を 実施を継続 26 2011 支援 (4) 共済 保険 [ 収入保険制度 ] ー 発展 農業災害補償( 下記 ) の仕組みを発展させ 全ての作物を対象とし かつ自然災害に加えて価格下落にも対応しうる収入保険の創設を中期的に検討する - 未定 [ 農業災害補償 ( 農業共済 )] 農業者が出し合った共済掛金および国の助成 ( 約 2 分の 1) を原資として 自然災害に遭った農業者に共済金を支払う ( 品目別に 5 つの共済を整備 ) 収入保険制度へと発展させるべく 検討 892 1947 ( 注 ) 保護の方向性は が抑制 が強化 が維持を指す ( 資料 ) 政府の農林水産業 地域の活力創造本部で配布された農林水産省資料などより みずほ総合研究所作成 2

ことを目指す また 政府は 生産調整の参加者に参加するメリット措置として講じられている米の直接支払交付金 米価変動補填交付金の制度を2018 年度までに撤廃する 米の直接支払交付金は 2014~ 2017 年度を通じて 10アール ( 以下 10a[=1,000m2 ]) 当たり支給金額を現状の15,000 円から7,500 円に半減したのち 2018 年度に支給を取り止める また 高米価を受けて2012 2013 年度に支給が実施されなかった米価変動補填交付金については 2014 年度に制度を廃止する b. 評価民主党政権が2010 年度に創設した戸別所得補償制度の一環として導入された米の直接支払交付金 米価変動補填交付金の制度は 経営規模や面積当たり生産量 ( 以下 単収 ) を問わず平等に支給される性質から 農業者へのバラまき であるとの批判が多かった その廃止は日本農業の構造再編を促す動きとして評価できる 一方 政府が生産数量目標の設定 配分の取り止めを示唆したことについては 40 年以上続いてきた生産調整の終焉を意味する歴史的変化 ( いわゆる 減反廃止 ) としてメディアに報じられているものの 現時点で構造再編 競争力強化の進展に大きな効果があると評価するのは早計である この理由としては 今般の見直しにおいて 転作支援の強化という別の方法で主食用米の過剰生産を抑制し 米価の維持を図る方針が示されていることや ( 後述 ) 政府が配分の取り止めを明言した訳ではないため 施策の先行きに不透明性が高いこと 2 などが挙げられる (2) 転作支援の強化 a. 概要政府は現在 水田で麦 大豆 飼料用米 米粉用米などを生産する農業者に対し 品目 面積に応じて 水田活用の直接支払交付金を支給することで 主食用米の供給過多による米価の下落を防いでいる このうち 飼料用米 米粉用米の生産については 10a 当たり80,000 円の一律支給から単収に応じて支給金額を引き上げる仕組みへと移行し 上限を同 105,000 円まで引き上げる b. 評価飼料用米 米粉用米の生産に対する支援の強化は 農業者の所得維持に貢献するとみられる反面 2つの大きな問題点がある 第 1に 米価の低下を抑制し 日本産米の国際的なコスト競争力強化や国内外での需要拡大を妨げるおそれがある 転作支援の強化は実質的に (1) のいわゆる 減反廃止 に代わる主食用米の生産抑制策として位置づけられており 市場原理に基づく米の価格形成を阻む要因となることが懸念される 第 2に 転作作物としての飼料用米 米粉用米の需要拡大には 限界があるとみられる 飼料用穀物としては 価格の安さ 調達可能な数量の大きさ 流通ルートの整備といった点において輸入トウモロコシが圧倒的に優位な状況にある 水田活用の直接支払交付金によって価格の格差を多少縮めたとしても 飼料用米の需要を拡大するのは容易でないと予想される また 米粉用米についても需要が育っておらず こうした状況で生産拡大を促すことは 飼料用米 米粉用米が大量に売れ残り 交付金を支給する意義を問われる状況を招きかねない 3

(3) 重点的な支援対象者の明確化 a. 概要政府は現在 麦 大豆 デンプン原料用ばれいしょ てんさい 3 そば なたねの生産拡大を促すために 販売目的でこれらの品目を生産する農業者に対し 畑作物の直接支払交付金を支給している また 上記品目のうち そば なたね以外に関しては 価格下落による農業者の所得減少を補う観点から 収入減少影響緩和対策が実施されている 具体的には 対象品目の収入額が過去の平均的収入額を下回った場合 差額の9 割を補填する仕組みとなっている ( 原資は 対策加入者と国による1:3 の拠出 ) 畑作物の直接支払交付金の交付の対象者が 対象作物の生産数量目標に従って販売目的で生産 ( 耕作 ) する販売農家 集落営農 4 と 幅広く設定されているのに対し 収入減少影響緩和対策の加入対象者は 4ヘクタール ( 以下 ha =10,000m2 ) 以上の経営規模を有する認定農業者 5 と20ha 以上の経営規模を有する集落営農に限られている 今般の見直しでは 畑作物の直接支払交付金の支給と収入減少影響緩和対策への加入について 対象者を2015 年度から認定農業者 集落営農 認定就農者 6 に統一するとの方針が示された この結果 畑作物の直接支払交付金の支給対象者は大幅に絞り込まれる一方 収入減少影響緩和対策の加入対象者には 経営規模の小さい認定農業者 集落営農や認定就農者が加わることになる なお 政府は中長期的に 現在の農業災害補償の仕組みを発展させた収入保険制度を創設し これを収入減少影響緩和対策と統廃合することを視野に入れているが 同制度の加入対象者や各種制度設計については これから具体的に検討する予定である b. 評価畑作物の直接支払交付金については 対象者の絞り込みによって 構造再編を促したり 財政負担を抑制したりする効果が期待できる点において 評価できる また 畑作物の直接支払交付金と収入減少影響緩和対策の対象者を揃えたことは 今後の農政において重点的に支援していくべき対象者を明確化した点で 妥当とみられる 7 ただし 同対策との統廃合が検討される予定の収入保険制度についても対象者を揃えるかどうか不透明な点は 懸念材料といえる (4) 日本型直接支払制度の創設 a. 概要政府は 農業の多面的機能 8 に対する支援を強化するために 2014 年度から日本型直接支払制度を創設し 集落などが上記機能を維持 管理する目的で実施する共同活動を支給対象とする農地維持支払交付金と 既存の農地 水保全管理支払交付金を組み替えた資源向上支払交付金を設ける ( 同年度は予算措置 2015 年度以降は法律に基づく措置として実施する予定 ) 2つの交付金の支給単価は 地域 ( 北海道 その他 ) と地目 ( 田 畑 草地 ) に応じて設定され 最大金額となる北海道以外での田の場合 農地維持支払交付金が10a 当たり3,000 円 資源向上支払交付金が同 2,400 円となる b. 評価農地が地域共有の財産であり かつ これを維持するためには地域内の関係者の協力が必要で 4

あることを考えると 日本型直接支払制度を創設する意義は理解できる ただし 同制度に基づく交付金が過度に広範囲の対象者に手厚く支給され 農業者に対する所得補填の効果が強まってしまうと 構造再編を遅らせたり 財政負担が著しく増加したりする事態を招くおそれがある このため 支給対象となる活動の実施状況や交付金の予算規模などを今後 注視する必要がある 3. 認定農業者などの経営環境改善や農業保護の抑制に向けた取り組みを 2. でみた4つのポイントをまとめると 政府は いわゆる 減反廃止 や重点的な支援対象者の明確化によって日本農業の構造再編 競争力強化や財政負担の抑制に取り組む一方 転作支援の強化や日本型直接支払制度の創設を通して農業者を保護し 米価や農業者所得の維持を図ろうとしている ( 図表 2) しかし 転作支援の強化や日本型直接支払制度の創設は 構造再編や競争力強化を妨げる要因となる懸念が払拭できず 現時点では 今般の一連の見直しによって日本農業の構造再編 競争力強化が加速するとは見込みにくい 農業者の高齢化や耕作放棄地の拡大といった問題が深刻化するなかで 今般の見直しを通して日本農業の構造再編 競争力強化を加速させることは極めて重要な課題であると考えられる 政府としては今後 日本農業の牽引役を担っている認定農業者などにとっての経営環境を改善したり 農業者への保護を抑制したりする観点から施策の詳細を調整することで 構造再編 競争力強化への明確な道筋をつける必要があろう 詳細を調整すべき事項について 先述した4つのポイント別に具体的な例を挙げると 12017 年度末までに 米の生産数量目標の削減幅を段階的に縮小することで 認定農業者などに対し 生産自由化に向けた計画的な生産態勢の見直しを促す 9 2 中長期的に 飼料用米への転作支援を単収が一定規模以上の農業者に絞り込むとともに 交付金の水準を引き下げる 3 収入減少影響緩和対策と同様に 収入保険制度についても支援対象者を認定農業者 集落営農 認定就農者に限る 4 日本型直接支払制度の支給対象となる役務について 農地を維持するために必要最低限なものに限定し その実施状況を正確に把握する などがある ( 図表 3 次頁) 図表 2 今般の施策見直しにおける 4 つのポイントの整理 構造再編 競争力強化や財政負担の抑制を図る見直し 農業者への保護を強化する見直し いわゆる 減反廃止 米の直接支払交付金 米価変動補填交付金の一律的な支給を終了 効果 零細農業者による交付金に依存した生産の縮小 財政負担の抑制 転作支援の強化 飼料用米 米粉用米の生産に対する 水田活用の直接支払交付金の支給上限引き上げ 効果 主食用米価の下落防止 主食用米の国際的なコスト競争力強化を抑制 財政負担の増加 重点的な支援対象者の明確化 畑作物の直接支払交付金の支給および収入減少影響緩和対策への加入の対象者を統一 効果 対象者の絞り込みにより 構造再編を促すとともに 畑作物の直接支払交付金の支給額を削減 日本型直接支払制度の創設 集落などが共同で実施する農業関連の活動に対する支援を強化 効果 農地の維持や農業者の所得補填 構造再編の遅滞や財政負担の増加 ( 資料 ) みずほ総合研究所作成 5

< 関連するポイント > いわゆる 減反廃止 転作支援の強化 重点的な支援対象者の明確化 日本型直接支払制度の創設 < 検討すべき事項 ( 例 )> < 米の生産数量目標を段階的に見直す > 2017 年度末までに 上記目標の削減幅を段階的に縮小 2018 年度の生産自由化に向けて 認定農業者などによる計画的な生産態勢の見直しを促す < 飼料用米への転作支援の縮小を視野に入れる > 中長期的に 単収が一定規模以上の農業者に対象を絞り込み 交付金の水準を引き下げる 全般的な農業者保護 財政負担を抑制し 生産集約を促進 < 収入保険制度の対象者を絞り込む > 同制度の対象者を収入減少影響緩和対策と同じく 認定農業者 集落営農 認定就農者に限る 収入影響減少緩和対策から同制度への移行に伴う支援対象者の拡大を防止 < 日本型直接支払制度による支援を最低限に絞り込む > 支給対象となる役務について 農地を維持するために最低限必要なものに限定し その実施状況を正確に把握する 農業者に対する保護 財政負担の抑制 4. おわりに政府が2013 年 4 月に示した 農地集積 10 を促進するための新たな方針 ( 例 : 農地中間管理機構の新設 ) を農政改革プランの第 1 弾とするならば 農業者の所得安定 米の生産調整などに関する今般の施策見直しは 農政改革の第 2 弾として位置づけられる 2014 年 6 月までには第 3 弾として 政府が農業委員会 農業協同組合 農業生産法人に関する規制改革の方向性を明らかにする予定であり これによって現政権下での農政改革プランが一通り出揃うことになる 日本農業の構造再編や競争力強化が喫緊の課題となっているなかで 政府には今後 こうした課題の克服にできるだけ早く かつ大きな成果をあげる観点から 第 1 弾 第 2 弾のプランの具体化に伴う施策の調整や 第 3 弾のプランにおける抜本策の導入を進めていくことを求めたい 図表 3 施策の詳細を調整する際に検討すべき事項 ( 例 ) 構造再編 競争力強化の加速 ( 資料 ) みずほ総合研究所作成 1 農林水産省 (2013) 攻めの農林水産業 のための農政の改革方向( 案 ) (2013 年 11 月 ) 2 政府は 2007 年に 農業者や農業者団体が主体で米の需給を調整する仕組みに移行するとの方針を打ち出したにもかかわらず その後の米価下落を受けて実質的に方針を撤回した経緯がある 3 サトウキビと並ぶ糖料作物で 国内では主に北海道で生産されている 砂糖大根やビートとも呼ばれる 4 農林水産省 (2013) 経営所得安定対策の概要 (2013 年 4 月 ) 5 自らの創意工夫に基づき 経営の改善を進めようとする計画を策定し この計画について市町村から認定を受けた農業者 6 新たに就農するために就農計画を策定し この計画について都道府県から認定を受けた農業者 7 なお 財政面では 加入条件の緩和によって収入減少影響緩和対策の費用が増加するが これは畑作物の直接支払交付金の費用減少に比べると小さいと予想される 8 農林水産省は 農業 農村には 農産物を生産する機能以外に 国土の保全 水源の涵養 自然環境の保全 良好な景観の形成 文化の伝承等 の多面的機能があるとしている 9 実際には 2014 年度の削減幅は 現行の制度となった 2004 年度以降で最大の前年度比 3.3% 減となる予定であり 施策見直しの方向性と矛盾している 10 農業者が経営面積を拡大したり 隣接する農地区画をまとめて利用したりすること 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり 商品の勧誘を目的としたものではありません 本資料は 当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが その正確性 確実性を保証するものではありません また 本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります 6