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採択演題一覧

がん登録実務について

平成 29 年度九段坂病院病院指標 年齢階級別退院患者数 年代 10 代未満 10 代 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 代 80 代 90 代以上 総計 平成 29 年度 ,034 平成 28 年度 -

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33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or


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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

130724放射線治療説明書.pptx

ID: 02053(090603) イヌで後肢のふらつきが認められた症例

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要望

監修 作成作成ご協力者 氏名 尾﨑敏文 所属 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科生体機能再生 再建学講座整形外科教授

手足のしびれ 脱力感 手指の使いにくさ ( ボタンがかけにくい 字を書きにくいなど : 巧緻運動障害という ) 歩きにくさが典型例での症状となる 進行例では四肢麻痺がより重症化し 膀胱障害 ( おしっこができらない 回数が多い 残尿感 失禁 ) や便秘が出現する 2) 臨床症状は 脊髄への圧迫の程度

頸椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)

実地医家のための 甲状腺エコー検査マスター講座

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70% の患者は 20 歳未満で 30 歳以上の患者はまれです 症状は 病巣部位の間欠的な痛みや腫れが特徴です 間欠的な痛みの場合や 骨盤などに発症し かなり大きくならないと触れにくい場合は 診断が遅れることがあります 時に発熱を伴うこともあります 胸部に発症するとがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する

Case  A 50 Year Old Man with Back Pain,Fatigue,Weight Loss,and Knee Sweling

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表面から腫れがわかりにくいため 診断がつくまでに大きくなっていたり 麻痺が出るまで気付かれなかったりすることも少なくありません したがって 痛みがずっと続く場合には要注意です 2. 診断診断にはレントゲン撮影がもっとも役立ちます 骨肉腫では 膝や肩の関節に近い部分の骨が虫に食べられたように壊されてい


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外来在宅化学療法の実際

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脊椎損傷の急性期治療

2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

治療 : 神経根症状であれば数週 数ヶ月の保存加療で多くは対応可能ですが 疼痛が強く麻痺などの合併がある場合や保存加療に特に抵抗性のあるものに関しては手術を行います 特に 巧緻運動障害 ( 箸 書字 ボタン掛けが困難 ) 歩行障害がある場合は手術を考慮します 頚椎症性脊髄症病態 : 脊髄が圧迫され脊

6. 重症度分類 modified Rankin Scale(mRS) 食事 栄養 呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて いずれかが 3 以上 を対象とする 情報提供元 神経変性疾患領域における基盤的調査研究班 研究代表者国立病院機構松江医療センター院長中島健二

1)表紙14年v0

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ことから過剰診断が問題視され 2003 年には厚生労働省の決 定で休止となりました 2. 診断 (1) 臨床症状 : 早期に腫瘤を触知することはまれです ただし 1 歳までの赤ちゃんにみられる病期 4S という腫瘍では 皮下への転移 肝腫大による腹部膨満や呼吸障害がみられます 幼児では転移のある進行

背骨の病気

原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

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を優先する場合もあります レントゲン検査や細胞診は 麻酔をかけずに実施でき 検査結果も当日わかりますので 初診時に実施しますが 組織生検は麻酔が必要なことと 検査結果が出るまで数日を要すること 骨腫瘍の場合には正確性に欠けることなどから 治療方針の決定に必要がない場合には省略されることも多い検査です

脳卒中に関する留意事項 以下は 脳卒中等の脳血管疾患に罹患した労働者に対して治療と職業生活の両立支援を行うにあ たって ガイドラインの内容に加えて 特に留意すべき事項をまとめたものである 1. 脳卒中に関する基礎情報 (1) 脳卒中の発症状況と回復状況脳卒中とは脳の血管に障害がおきることで生じる疾患

色細胞腫 悪性末梢神経鞘腫瘍 学習障害 注意欠陥多動症などがみられる 2 神経線維腫症 II 型の発症年齢は様々であるが 10~20 代の発症が多い 両側聴神経鞘腫と多数の神経系腫瘍が生じる 最も多い症状は 聴神経鞘腫による難聴 ふらつきで 脊髄神経鞘腫による手足のしびれ 知覚低下 脱力もおこる そ

北海道医療大学歯学部シラバス

cm 以上の腫瘍では悪性化していることも考慮する必要があります ただし 良性腫瘍でも長期間放置すれば大きくなりますので サイズが大きいからと言って悪性とは限りません 成長速度: 悪性度の高い腫瘍では 大きくなるスピードが速くなります 腫瘍がいつからあったか 最近はどのくらいのスピードで大きくなってき


乳癌かな?!と思ったら

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診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

094 小細胞肺がんとはどのような肺がんですか んの 1 つです 小細胞肺がんは, 肺がんの約 15% を占めていて, 肺がんの組 織型のなかでは 3 番目に多いものです たばことの関係が強いが 小細胞肺がんは, ほかの組織型と比べて進行が速く転移しやすいため, 手術 可能な時期に発見されることは少

せき時 痛みやしびれは, 咳やくしゃみで強くなります 2. 痛みやしびれに伴い, 足の感覚が鈍くなったり, 足の力が弱く なり, 歩く時などに不都合を感じる時 げきつう 3. 足の激痛や強いしびれに伴い, 尿が出づらくなった時 ぼうこう特に,3. の場合には, 膀胱へつながる神経障害の可能性があり

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P01-16

01

54 埼玉医科大学雑誌第 35 巻第 1 号平成 20 年 12 月 学内グラント終了時報告書 平成 18 年度学内グラント報告書 脳腫瘍摘出における術中蛍光診断の応用 研究代表者三島一彦 ( 埼玉医科大学脳神経外科 ) * 分担研究者西川亮 緒言 神経膠芽腫を代表とする悪性脳腫瘍の治療成績は, 近

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32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

33 小児がんの治療 1化学療法に先んじて行う場合腫瘍を摘出する際 隣接する正常組織や臓器を切除することなく比較的容易に操作できると考えられる場合には 治療の最初の段階で手術を行い その後必要に応じて化学療法などを追加することが一般的です サイズが小さく周辺の組織へ広がっていない(浸しん潤じゆんして

医療関係者 Version 2.0 多発性内分泌腫瘍症 2 型と RET 遺伝子 Ⅰ. 臨床病変 エムイーエヌ 多発性内分泌腫瘍症 2 型 (multiple endocrine neoplasia type 2 : MEN2) は甲状腺髄様癌 褐色細胞腫 副甲状腺機能亢進症を発生する常染色体優性遺

日本職業・災害医学会会誌第58巻第2号

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2013 年 4 月 8 日 ver 改訂 JCOG 効果 安全性評価委員会承認 4 月 8 日発効 2013 年 8 月 2 日 ver 改訂 JCOG 効果 安全性評価委員会承認 8 月 2 日発効 2014 年 8 月 13 日 ver. 1.1 改訂 JCOG 効果

公益ざい

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ポプスカイン0.75% 注シリンジ 75mg /10 院 Popscaine 75mg /10 院 / 筒 丸石 薬価 円 / 筒 効 硬膜外麻酔 用 ( 注 )1 回 150mg ( 本剤として20 院 ) までを硬膜外腔に投与 禁 大量出血やショック状態, 注射部位またはその周辺に

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岸和田徳洲会病院 当院では以下の研究に協力し情報を提供しております この研究は 国が定めた指針に基づき 対象となる患者さまのお一人ずつから直接同意を得るかわりに 研究の目的を含む研究の実施についての情報を公開しています 研究結果は学会等で発表されることがありますが その際も個人を特定する情報は公表し

審査結果 平成 23 年 4 月 11 日 [ 販 売 名 ] ミオ MIBG-I123 注射液 [ 一 般 名 ] 3-ヨードベンジルグアニジン ( 123 I) 注射液 [ 申請者名 ] 富士フイルム RI ファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 22 年 11 月 11 日 [ 審査結果

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

日本皮膚科学会雑誌第118巻第9号

ER・ICU 100のdon'ts−明日からやめる医療ケア

7. 脊髄腫瘍 : 専門とするがん : グループ指定により対応しているがん : 診療を実施していないがん 別紙 に入力したが反映されています 治療の実施 ( : 実施可 / : 実施不可 ) / 昨年の ( / ) 集学的治療 標準的治療の提供体制 : : グループ指定により対応 ( 地域がん診療病

研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性

小児がん中央機関からの報告 1 情報提供 ( 院内がん登録 ) 国立がん研究センターがん対策情報センター センター長若尾文彦 1

34 神経線維腫症 概要 1. 概要神経線維腫症 Ⅰ 型 (NF1 レックリングハウゼン病) はカフェ オ レ斑と神経線維腫を主徴とし そのほか骨 眼 神経系 ( 副腎 消化管 ) などに多彩な症候を呈する母斑症であり 常染色体性優性の遺伝性疾患である 神経線維腫症 Ⅱ 型 (NF2 neurofi

がんとどう向き合うか こどものがん

1 正常な腰 ( 腰椎 ) のしくみはどうなっていますか? せぼねせきちゅう 背骨 は身体を支える軸として大事な器管ですが, これを脊柱 ついこつと呼びます ( 図 1) 脊柱は椎骨と呼ばれる骨が一個ずつつながって ついたいと できています 椎骨の前方にあり, 大きな部分を占めるのが椎体 図 1 人

もくじ 腰痛 1 腰の背骨 ( 腰椎 ) の仕組み 2 脊柱管には脊髄から伸びる馬尾が入っています腰部脊柱管狭窄症 3 脊柱管が狭窄すると 4 間欠跛行が特徴 6 治療の基本は保存療法 8 薬物療法 9 ブロック療法理学療法手術療法 10 よい治療をうけるために先生に伝えておきたいこと日常生活の中で


限局性前立腺がんとは がんが前立腺内にのみ存在するものをいい 周辺組織やリンパ節への局所進展あるいは骨や肺などに遠隔転移があるものは当てはまりません がんの治療において 放射線療法は治療選択肢の1つですが 従来から行われてきた放射線外部照射では周辺臓器への障害を考えると がんを根治する ( 手術と同

Ø Ø Ø

cstage,, CQ1-5 cstage a CQ2-1,9 CQ4-1 cstage b CQ5-1 CQ4-2~6 CQ5-2~4 CQ2-2~9 CQ3-1~4 CQ6-1~4 CQ4-7 cstage JPS 6 図 2 膵癌治療アルゴリズム 表 1 勧告の強さの分類 A B C1 C2

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

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本文/開催および演題募集のお知らせ

性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

対象 :7 例 ( 性 6 例 女性 1 例 ) 年齢 : 平均 47.1 歳 (30~76 歳 ) 受傷機転 運転中の交通外傷 4 例 不自然な格好で転倒 2 例 車に轢かれた 1 例 全例後方脱臼 : 可及的早期に整復

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

患者さんへ

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10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 の相対生存率は 1998 年以降やや向上した 日本で

柴田, 鈴木, 木村 図 1. 腹部 CT 検査所見 : 骨盤内の右側に境界明瞭 単房性で石灰化を伴う 50mm 大の腫瘤を認めた ( 矢印 ) 図 2. 腹部 MRI 検査所見 a) 骨盤内右側に境界明瞭 単房性 T1 強調像で低信号の 50mm 大の嚢胞性腫瘤を認めた ( 矢印 ) b)t2 強

5 月 22 日 2 手関節の疾患と外傷 GIO: 手関節の疾患と外傷について学ぶ SBO: 1. 手関節の診察法を説明できる 手関節の機能解剖を説明できる 前腕遠位部骨折について説明できる 4. 手根管症候群について説明できる 5 月 29 日 2 肘関節の疾患と外傷 GIO: 肘関節の構成と外側

骨軟部腫瘍 はじめに 九州大学病院では 整形外科が中心となり骨や軟部組織に発生した腫瘍 ( 骨軟部腫瘍 ) の治療を行っており 血液腫瘍内科 放射線科 外科 小児科 小児外科 皮膚科などの協力を得て集学的治療による悪性骨軟部腫瘍患者さんの生命予後の改善と 整容性と機能性に優れた患肢温存治療の実践に大

Transcription:

1. 脊椎および脊髄について脊柱は 7 個の頚椎 12 個の胸椎 5 個の腰椎 5 個の仙椎が一体となった仙骨 および 3~5 個の尾椎により構成されています 脊柱は頭部および体幹を支える支持組織であり また可動性のある運動組織でもあります さらに 脊柱のほぼ中心に中枢神経である脊髄を納め これを保護しています 脊髄は脳とともに中枢神経系に属する神経組織です 全体の長さは約 40~45cm あり 断面は直径が約 1cm の楕円形をしています 頚髄 胸隋 腰髄 仙髄 尾髄に大別されており それぞれ 8 12 5 5 1 髄節を有し 各髄節から左右 1 対ずつの脊髄神経がでています 脊髄は外側より丈夫な結合組織である硬膜 薄い半透明なくも膜および軟膜と呼ばれる 3 層の膜に包まれています くも膜下腔は脳脊髄液で満たされています 2. 脊髄腫瘍について脊柱を構成する椎骨 脊髄を保護している膜組織 脊髄実質や脊髄神経から発生した腫瘍を 脊椎 脊髄腫瘍と総称しています 脊椎 脊髄腫瘍の発生頻度は 毎年人口 10 万人に対し 1~2 人程度と推定されています 同じ中枢神経系の腫瘍である脳腫瘍の 1/10~15 程度の頻度です 脊椎 脊髄腫瘍は発生した場所により 硬膜外腫瘍 ( 硬膜の外側に発生した腫瘍 ) 硬膜内髄外腫瘍( 硬膜の内側で 脊髄実質外に発生した腫瘍 ) 髄内腫瘍( 脊髄実質内に発生した腫瘍 ) に大別されます おおざっぱに言って 硬膜外腫瘍が約半数 残りの 70% が硬膜内髄外腫瘍 30% が髄内腫瘍といわれています 腫瘍の発生場所により腫瘍の種類や治療方針が異なります 多くの患者さまは 腫瘍の発生した脊髄の場所に一致した 様々な強さ 性質の頚部痛 背部痛 腰痛で発症します 脊髄神経に一致した痛み ( 根性疼痛 ) やしびれ感などで発症することもあります 比較的良性の腫瘍では数ヶ月 ~ 数年の経過で 悪性腫瘍では数週間 ~2 ヶ月ほどの経過で 歩行障害 上肢の巧緻運動障害 知覚障害など脊髄症状が出現してきます 悪性度の高い腫瘍や腫瘍内に出血した時などは 症状が急速に進行することがあります MRI が診断の決め手になりますが 腫瘍の種類まで鑑別することは必ずしも容易ではありません 術前の神経症状が進行した場合 手術も困難になり術後回復も思わしくないため 早期診断 治療が望ましいと考えています

3. 硬膜内髄外腫瘍硬膜内で脊髄の外に存在する腫瘍をいいます 脊髄や神経根を圧迫して症状を発現します 組織学的には 神経鞘腫が最も多く 次に髄膜腫が続きます この他 稀ですが 類皮腫 類上皮腫 転移性腫瘍なども発生します 神経鞘腫 神経線維腫について神経鞘腫は 全脊髄腫瘍の約 30% を占め 最も頻度の高い腫瘍です 神経根より発生する腫瘍で 多くは後根由来です 良性の腫瘍ですが 神経根由来の痛みや 脊髄を圧迫して手足の麻痺を起こします 神経根に沿って発育するため 硬膜の内外や 硬膜外に存在することもあります 稀には 脊髄内に発育する場合もあります 腫瘍はゆっくりと発育するため 脊椎管や椎間孔の拡大がみられる場合があります ( 図 1) 神経線維腫も 神経鞘腫と同様に神経根から発生する良性の腫瘍ですが 画像診断では神経鞘腫との鑑別は困難です 髄膜腫について全脊髄腫瘍の約 20% を占め 2 番目に多い脊髄腫瘍です 硬膜から発生します 中高年の女性に多く 胸椎レベルに発生頻度の高い腫瘍です 脊髄を圧迫して 歩行障害などの脊髄症状を示します 診断硬膜内髄外腫瘍の診断には 神経学的診察と画像診断が行われます MRI は最も良く腫瘍を描出します CT では 腫瘍の石灰化や 脊椎骨の圧迫による変化が診断されます 脊椎管の内外に存在する亜鈴型神経鞘腫では 椎間孔の拡大がレントゲン撮影で描出されることもあります ( 図 1) 確定診断には 腫瘍の病理組織診断が必要になります 図 1 治療腫瘍の性質によって治療方針は異なってきます 頻度の高い神経鞘腫や髄膜腫では 症状が明瞭な場合には 手術によって腫瘍の摘出を行います 手術は通常 後方からアプローチをし 椎弓切除 ( あるいは椎弓形成 ) を行い 硬膜を切開して腫瘍を摘出します 腫

瘍と脊髄との位置関係や 脊椎のレベル 腫瘍のサイズ等で 手術方法は変わります 症状は軽度でも 診断を確定するために手術が行われる場合もあります 症状がなく 画像診断で発見された小さな腫瘍は 経過観察のみが行われる場合もあります 4. 髄内腫瘍脊髄の中に存在する腫瘍です 脊髄は中枢神経であり 脳に発生する腫瘍の殆どは脊髄にも発生します 脊髄の中から脊髄外に発育することも珍しくありません 組織学的には 神経膠腫が最も多くみられます この他 血管芽腫 脂肪腫 髄内神経鞘腫 海綿状血管腫 脊髄内転移性腫瘍などがあります 神経膠腫について神経膠腫には多くのタイプがあります 組織型によって腫瘍の進行や悪性度は異なります このうち 上衣腫が成人では最も多い髄内腫瘍です 脊髄内の中央に存在しますが 脊髄円錐部ではしばしば髄外への発育を示します 腫瘍の周囲には 脊髄内の空洞 ( 嚢胞 ) をしばしば伴います 腫瘍の圧迫によって脊髄症状 ( 手足のしびれや脱力 ) を示しますが 症状の進行はゆっくりとしたものです 上衣腫は 腫瘍内や周囲へ出血を示すことがあり その場合は症状が急速に進行することがあります 次に多い髄内腫瘍は 星細胞腫です 腫瘍は周囲の脊髄組織に浸潤性に発育することが多く その悪性度は 4 段階 ( グレード 1 から 4) に分けられています 診断画像診断は MRI が行われます 造影剤 ( ガドリニウム ) による腫瘍の増強像は 脊髄内での腫瘍の存在診断と その性質の判断に有用です 脊髄は腫瘍によって腫大し 時に嚢胞を伴います しかし 脊髄が腫大する病変は髄内腫瘍以外にも多くの疾患があり 神

経症状とその進行の程度 経過を併せて総合的に診断します 確定診断は 腫瘍の病理組織診断が必要です 治療腫瘍の組織によって治療は異なります 脊髄内に発生する腫瘍は 腫瘍の摘出が可能なものと困難なものがあります 例えば 上衣腫は マイクロサージャリー下に脊髄の後正中切開を行い 全摘出あるいは亜全摘が可能です 部分摘出例には 術後に放射線治療が行われる場合もありますが 多くは手術のみで腫瘍のコントロールが可能です 星細胞腫では 正常脊髄組織との境界が不明瞭のことが多く マイクロサージャリー下でも全摘出は困難です その場合 腫瘍の可及的摘出が行われます 腫瘍の摘出度と病理組織診断によって 術後の治療方針を決めます グレード1および2では 腫瘍の摘出度が高い場合は経過観察のみとすることもありますが 摘出度が低い場合は 放射線療法や化学療法を併用することがあります グレード 3 および 4 では 診断が確定次第 放射線治療や化学療法が行われます この他 血管芽腫は マイクロサージャリーによる摘出術が可能です 脊髄の海綿状血管腫は 髄内の出血による症状を示している場合 摘出術を行います 転移性髄内腫瘍では 経過から診断が明らかな場合 放射線治療をはじめから行うこともあります 手術方法神経症状の進行を予防する目的で 手術用顕微鏡を用いた腫瘍摘出術を行います 腫瘍と正常組織の境界が明瞭な腫瘍では全摘出が可能ですが 浸潤性に発育した腫瘍では腫瘍を摘出することにより神経症状が悪化する可能性が高く 部分摘出にとどめざるを得ないこともあります 手術の安全を期すために SEP( 感覚誘発電位 ) や MEP( 運動誘発電位 ) をモニターしながら手術を行います また手術所見だけではなく 術中病理診断により腫瘍の摘出範囲などを判断します 脊髄を縦切開し腫瘍摘出を行いますので 術後足の麻痺や感覚障害が悪化する あるいは新たに出現する可能性があります 部分摘出に終わった場合や 悪性の脊髄腫瘍に対しては 術後放射線治療や化学療法が選択されます 1) 体位 : 全気管内挿管をし 腹臥位 ( はらばい ) で手術を行います レントゲン透視下に腫瘍の存在する椎体レベルを確認します 2) 皮膚切開および椎弓切除範囲 : 術前に MRI および CT スキャンより決定します 3) 腫瘍摘出 : 硬膜を縦切開し さらに脊髄を切開して腫瘍の摘出を行います 腫瘍と正常組織の境界が明瞭な腫瘍では全摘出が可能ですが 浸潤性に発育した腫瘍では腫瘍を摘出することにより神経症状が悪化する可能性が高く 部分摘出にとどめざるを得ないこともあります 手術の安全を期すために SEP( 感覚誘発電位 ) や MEP( 運動誘発電位 ) をモニターしながら手術を行います また手術所見だけではなく 術中病理診断に

より腫瘍の摘出範囲などを判断します 4) 閉創 : 止血を確認し 術野をよく洗浄します 硬膜 皮下組織 皮膚を縫合して手術を終了します