035アナリシス_舩木(0811修正).indd

Similar documents
主要格付け会社によるベネズエラの格付けも相次いで引き下げられている 2014 年 9 月には Standard & Poor's が同国の債券を B-から CCC+ に格下げした 同年 12 月には Fitch が 原油安を理由に同国の長期発行体格付けを B から CCC に 2 段階引き下げた そ

Petrobrasの汚職問題がブラジルの探鉱・開発に与える影響

アルゼンチン YPF再国有化後のシェール開発動向

Microsoft Word _out_l_co_heavy_oil.doc

Microsoft PowerPoint _舩木_ブラジル.ppt [互換モード]

政権交代によるアルゼンチンシェール開発への影響

アルゼンチン:経済状況悪化によるVacaMuertaシェール開発への影響

Microsoft Word _out_l_br_ogx.doc

ブラジル:Temer政権下で探鉱・開発回復の兆し

Microsoft Word _out_l_ve_orinoco.doc

ブラジル:IOC参入増加でプレソルトの探鉱・開発に変化の兆し

シェール開発で石油・ガス輸出国に返り咲くアルゼンチン沖合鉱区入札も活況を呈す

ベネズエラ:最近の探鉱・開発状況

ガイアナ:深海Liza油田、発見から2年で最終投資決定(短報)

ブラジル :Petrobras は 5 カ年計画 ( 年分 ) をどの程度達成できたのか? 1. Petrobras は 2012 年 2013 年のブラジル国内の石油生産目標を 2011 年の生産量 202 万 1,700b/d の ±2% と定めた 石油生産実績は 2012 年が

Microsoft Word _out_l_br_presalt.doc

原稿メモ

原稿メモ

ベネズエラ 石油産業をめぐる最近の動向

Microsoft Word _out_l_sr-gy-gf_exploration.doc

<4D F736F F F696E74202D B7B967B836C C668DDA2E B93C782DD8EE682E890EA97705D205B8CDD8AB B83685D>

ブラジル:対照的な石油・ガス関連政策を打ち出す大統領候補 ―今後の政策変更の可能性から、プレソルト入札にIOCが積極的に参加―

Microsoft PowerPoint 猪原UAE配布資料.ppt

現代資本主義論

<4D F736F F F696E74202D F91E58AD15F B C D83582E B8CDD8AB B83685D>

Microsoft Word _out_l_co_heavy_oil.doc

Microsoft PowerPoint - 811_B04_londonAIM_miyamoto.ppt

トの資機材を利用せざるを得なくなった 石油産業の発展に伴ってブラジルの経済や産業を発展させようとしたのに 周辺産業が石油産業進展の足かせとなってしまったのだ Petrobrasの負担は増大し 同社は生産目標を達成できず 信用を失っていった さらに 地方の産業を活性化させることを企図して 石油の生産地

更新日 :2013/9/3 探鉱進展が期待されるウルグアイ パラグアイ 調査部 : 舩木弥和子 年に Chevron が掘削を行って以来停滞していたウルグアイ沖合での探鉱が 2008 年の第 1 次入札 2011 年の第 2 次入札以後活発に行われつつある ウルグアイ政府は沖合について

原稿メモ

最近の油価下落による欧州石油業界への影響と見通し

Microsoft PowerPoint - Itoh_IEEJ(150410)_rev

RW ppt

ベネズエラ経済 (2013 年 2 月 ) 1 経済概要 (1) 政府の各種政策 統計 企画財務省は, チャベス大統領の指示の下, 現行の為替レートである1ドル=4.3ボリバル (BS) を1ドル=6.3BSへ切下げる旨発表した ベネズエラ中央銀行 (BCV) によると,1 月のインフレ率は, 昨年

Microsoft Word - 20_2

メジャー企業5社の2018年度決算動向

原稿メモ

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

米国における石油企業の開発動向

(2) 主要シェール オイル鉱床シェール オイルの 3 大産地 ( テキサス州のパーミアン地域とイーグル フォード地域 ノース ダコタ州のバッケン地域 ) での生産量は 全体の約 50% を占めている 広い鉱床を有し 生産性 経済性に優れるテキサス州中西部パーミアン堆積盆地に開発が集中している 20

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

原稿メモ

2007年12月10日 初稿

原稿メモ

スライド 1

1

Microsoft PowerPoint - 3rdQuarterPresentations2013_J03.ppt

おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

Microsoft PowerPoint 齊藤ペルーボリビア.ppt

ピクテ・インカム・コレクション・ファンド(毎月分配型)

原稿メモ

Microsoft PowerPoint - 15kiso-macro10.pptx

需要国へと変貌する東南アジアの需要国へと変貌する東南アジアの

Microsoft Word - 18_2

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

( 無断転用禁止 ) BRICs 経済研究所レポート 中長期で上昇が期待されるブラジル株 ~2030 年のボベスパ指数は 2005 年実績の 8.4 倍まで上昇する見込み ~ ~ 要 旨 ~ 2006 年 9 月 2 日 ( 土 ) BRI Cs 経済研究所代表門倉貴史 postbr

[000]目次.indd

目次 年度第 3 四半期決算 (1) 概要 (2) セグメント別情報 年度業績予想 (1) 概要 (2) セグメント別情報 3. 参考資料 1

P _トピックス坂本.indd

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

作成日 : 2010/12/9 石油企画調査部 : 伊原賢 公開可 石油開発における研究開発投資の傾向と国営石油会社 NOC の台頭 (JOGMEC 石油企画調査部 世界石油工学者協会 SPE 資料 ) 近年 石油開発をめぐる環境の変化には 油価の高値変動 イージーオイル ( 在来型油田 ) の減退

Microsoft Word - ギリシャ概況(2019年7月号)

【No

ecuador

<4D F736F F D E937890AC96F18EC090D195F18D C A E646F63>

cover_a

【ロシア最新経済金融週報】

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

3 流動比率 (%) 流動資産流動負債 短期的な債務に対する支払能力を表す指標である 平成 26 年度からは 会計制度の見直しに伴い 流動負債に 1 年以内に償還される企業債や賞与引当金等が計上されることとなったため それ以前と比べ 比率は下がっている 分析にあたっての一般的な考え方 当該指標は 1

見されたことは 同じく地中海であるアドリア海周辺地域における期待を呼び寄せることとなり アドリア海 周辺国が洋上探鉱に向けての動きを見せ始めている ( 出所 :JOGMEC 作成 ) 図 1 アドリア海周辺図 ( 出所 :Università degli Studi di Pavia Centro

モーリタニア・セネガル沖開発へメジャーズ参入

仮訳 日本と ASEAN 各国との二国間金融協力について 2013 年 5 月 3 日 ( 於 : インド デリー ) 日本は ASEAN+3 財務大臣 中央銀行総裁プロセスの下 チェンマイ イニシアティブやアジア債券市場育成イニシアティブ等の地域金融協力を推進してきました また 日本は中国や韓国を

Slide 1

Microsoft PowerPoint - 決算説明資料2(日).ppt

Microsoft Word - 5_‚æ3ŁÒ.doc

めることになった なかでも Total/ BP/Petrobrasが 落 札 したアマゾン 川 河 口 Foz do Amazonas のFZA-M-5 7 鉱 区 のサインボーナスは3 億 4,5 9 5 万 レアル と 過 去 最 高 額 を 記 録 した Total/BP/ Petrobras

目次 レポート 3. 概要 4. 主要なインサイト 5. 地域ごとの SEM 業界の支出増加率 6. 検索エンジンごとの SEM 業界の支出増加率 7. SEM 支出のシェア 8. Google の検索ビジネス売上予測 9. 世界全体での業界セクターごと SEM 支出増加 10. 世界全体でのディス

Microsoft Word - アルパーゲイタス_ALPA4_

政治的混乱や領海紛争がガイアナ沖合の探鉱・開発を阻害する恐れ

日本基準基礎講座 資本会計

本日の説明内容 総括 2019 年 3 月期第 1 四半期実績 2019 年 3 月期通期見通し 主要施策の進捗 1

はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

2016 年 3 月期第 2 四半期 (4-9 月 ) 決算補足説明資料 2015 年 11 月 6 日 石油資源開発株式会社

(2) 源泉分離課税制度源泉分離課税制度とは 他の所得と全く分離して 所得を支払う者 ( 銀行 証券会社等 ) がその所得の支払の際に 一定の税率で所得税を源泉徴収し それだけで所得税の納税が完結するものです 1 対象となる所得代表的なものとして 預金等の利子所得 定期積金の給付補てん金等があります

目次 ドイツにおける貸金業等の状況 2 フランスにおける貸金業等の状況 4 米国における貸金業等の状況 6 英国における貸金業等の状況 8 韓国における貸金業等の状況 9 ( 注 1) 本レポートは 金融庁信用制度参事官室において 外国当局 調査会社 研究者等からのヒアリング結果等に基づいて作成した

「個人投資家の証券投資に関する意識調査」の結果について

IFRS基礎講座 IAS第11号/18号 収益

タイトル

第6章 ベネズエラの石油産業

Microsoft PowerPoint _竹原_中国.ppt [互換モード]

[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

【42】今日から使える「債券・金利」_1704.indd

42

untitled

P _アナリシス佐藤・船木.indd

(Microsoft Word \224N\203\215\203V\203A\213\311\223\214\223\212\216\221.doc)

有価証券管理規程 第 1 章総則 ( 目的 ) 第 1 条この規程は 株式会社 ( 以下 会社 という ) の有価証券の運用および管理を適正に行うため 会社の保有する有価証券に関する管理基準および管理手続を定めるとともに 余裕資金の有効運用ならびに経営効率の向上を図ることを目的とする ( 有価証券の

5 仙台市債権管理条例 ( 中間案 ) の内容 (1) 目的 市の債権管理に関する事務処理について必要な事項を定めることにより その管理の適正化を図ることを目的とします 債権が発生してから消滅するまでの一連の事務処理について整理し 債権管理に必要 な事項を定めることにより その適正化を図ることを目的

目次 要旨 1 Ⅰ. 通信 放送業界 3 1. 放送業界の歩み (1) 年表 3 (2) これまでの主なケーブルテレビの制度に関する改正状況 4 2. 通信 放送業界における環境変化とケーブルテレビの位置づけ (1) コンテンツ視聴環境の多様化 5 (2) 通信 放送業界の業績動向 6 (3) 国民

Transcription:

JOGMEC 調査部 舩木弥和子 南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- はじめに 2014 年半ばから原油価格が大きく下落した ベネズエラ エクアドル コロンビア等南米で生産される原油は重質油が多い また ブラジルでは 超大水深のプレソルトで油田開発が進められている 膨大な埋蔵量があるアルゼンチンのシェール開発は端緒が開けたばかりである 原油価格が100ドル / bblを超える状態であれば問題はないのかもしれないが 油価が大幅に下落してしまった状況下で これらの探鉱 開発を続けることは可能なのだろうか 油価下落前から探鉱 開発が停滞していたベネズエラ 油価下落以上にPetrobrasの汚職問題が探鉱 開発の進展に影響を与える恐れのあるブラジル 埋蔵量のポテンシャルが小さいため生産減退の可能性が出てきたコロンビア 油価下落にもかかわらず粛々と探鉱 開発が続くアルゼンチン 油価下落により これらの国の状況は悪化しているのだろうか 逆に 油価下落が状況を好転させるきっかけになってはいないのだろうか 本稿では 南米の石油生産量の 8 8 % ガス生産量の55% を占めるベネズエラ ブラジル コロンビア アルゼンチンの4カ国を取り上げ 各国の概況 主要なプロジェクトの状況 油価下落の影響 それに対処するためにどのような政策が採られているのかについて 分析した ベネズエラ 36% その他中南米 2% アルゼンチン 8% ブラジル 31% トリニダード トバゴ 2% ペルー 1% エクアドル 7% コロンビア 13% 出所 :BP Stastical Review of World Energy June 2014 図 1 中南米国別石油生産量内訳 (2014 年 ) ベネズエラ 16% その他中南米 2% アルゼンチン 20% ボリビア 12% トリニダード トバゴ 24% ペルー 7% コロンビア 7% 出所 :BP Stastical Review of World Energy June 2014 ブラジル 12% 図 2 中南米国別天然ガス生産量内訳 (2014 年 ) 35 石油 天然ガスレビュー

1. ベネズエラ (1) 概況ベネズエラでは Chávez 前大統領政権下で資源ナショナリズム政策が採られてきた 2001 年には新炭化水素法が制定され 全ての石油プロジェクトの過半を国営石油会社 PDVSA(Petroleos de Venezuela S.A.) が所有し ロイヤルティが 33.33% に引き上げられることになった 2005 ~ 2006 年には法人税率が引き上げられ 2008 年には Windfall Tax が導入された PDVSA 上層部は刷新され 同社職員の大量解雇やエネルギー石油相が PDVSA 総裁を兼務することで同社への政府関与が強化された 対外的には 経済合理性を度外視し 中国 ロシア 中南米諸国などに石油を割安価格で提供 これらの国の国営石油会社を中心に探鉱 開発を推進することが計画された 2013 年 4 月に実施された Chávez 氏死去に伴う大統領選挙で当選を果たした Maduro 氏は この Chávez 氏の政策を引き継いだ その結果 Chávez 前政権下で停滞したベネズエラの 探鉱 開発は Maduro 政権下でも停滞を続けている BP 統計によると 石油生産量は 1998 年の 348 万 b/d から 2002 年末からの反 Chávez 派のゼネストにより 2003 年には 287 万 b/d まで減少 2006 年に 334 万 b/d まで回復したが その後再度減少し 2014 年は 271 万 9,000b/d となっている *1 天然ガス生産量も 2007 年に 361 億m3と過去最高を記録した後減少し 2010 年以降は横ばいの状況で 2014 年は 286 億m3となった 石油確認埋蔵量は 2008 年以降オリノコベルトの超重質油がしの算入されたことで急増し サウジアラビアを凌いで世界第 1 位となったが 2010 年以降は 天然ガス確認埋蔵量とともに 横ばいを続けている 2014 年末の確認埋蔵量は石油が 2,983 億 bbl 天然ガスが 5.6 兆m3であった Maduro 大統領は石油政策と同様に 生産目標も Chávez 氏から引き継ぎ 2019 年までに石油生産量を 600 万 b/d に引き上げる計画である この生産増の中心となるのがオリノコベルトの超重質油プロジェクトとさ 350 bbl 300 250 200 150 100 50 0 年 4,000 b/d 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 1965 1967 1969 1971 1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 年 図 3 ベネズエラ石油確認埋蔵量 図 4 ベネズエラ石油生産量 消費量 6 5 4 3 2 1 0 1980 1982 1984 1986 1988 1990 図 5 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 ベネズエラ天然ガス確認埋蔵量 2014 年 40 35 30 25 20 15 10 5 0 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 図 6 ス ス ベネズエラ天然ガス生産量 消費量 年 2015.7 Vol.49 No.4 36

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- れ 政府は 2014 年 3 月に オリノコベルトの超重質油新規プロジェクトの生産量を 6 年間で 200 万 b/d 増加させる計画を発表している ベネズエラの石油輸出量は 石油生産量の減少と消費量の増加により減少傾向にある 2014 年の輸出量は 235 万 7,000b/d( 原油 189 万 7,000b/d 石油製品 46 万 b/d) で 2013 年の 242 万 5,000 万 b/d より減少した 石油輸出は 輸送距離が短いことや米国メキシコ湾岸に重質油を処理可能な製油所が操業していること等から 従来 米国向けが多くを占めていた しかし Chávez 前大統領が 対米輸出依存度を低下させようと 中国等への輸出拡大を目指したこともあり 米国向け輸出量が減少 中国 インド向けが増加する傾向にある ただ 2014 年は米国向け 中国向けともに減少した (2) 主要プロジェクトの状況 1オリノコベルト超重質油プロジェクトオリノコベルトはベネズエラ東部に帯状に広がる超重質油の賦存エリアで 総面積は 6 万 3,000km2に及ぶ 原始埋蔵量が 1 兆 2,000 億 bbl そのうち将来的に開発可能なものが 2,600 億 ~ 2,700 億 bbl とされている このうち これまでに生産されたのは 143 億 7,000 万 bbl となっている オリノコベルトでは 1980 年代から生産が開始され 1990 年代後半以降は 超重質油を開発 生産 軽質化 ( 改質 ) する戦略的提携プロジェクト 4 件 Sincor Petrozuata Hamaca Cerro Negro が立ち上げられ 生産量は増加した 2007 年には Chávez 前政権により PDVSA とのジョイントベンチャープロジェクト化が進められたが これを嫌って ExxonMobil が Cerro b/d 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 年 出所 :PDVSA Informe de Gestión Anual 2014 より作成 図 7 ベネズエラの石油 石油製品輸出量 表 1 地域別石油輸出量 千 b/d 2013 年 2014 年 原油 石油製品 合計 原油 石油製品 合計 北米 773 72 845 761 76 837 うち米国 768 70 838 761 75 836 中南米 497 115 612 460 111 571 欧州 87 20 107 109 22 131 アジア 726 289 1,0 1 5 694 260 954 うち中国 293 77 369 244 79 323 うちインド 403 0 403 415 0 415 その他 0 22 22 0 17 17 出所 :PDVSA Informe de Gestión Anual 2014 より作成 37 石油 天然ガスレビュー

Negro ConocoPhillips が Hamaca と Petrozuata から撤退した しかし その後も生産は以前と変わらず続けられている 一方で 同政権は 2005 年より Magna Reserva プロジェクトを開始 オリノコベルトを 4 地域 28 鉱区に分割し 中南米や中国 ロシア インド ベトナム等の国営石油会社にこれらの鉱区の埋蔵量評価を実施させることとした しかし これらの新規プロジェクトのうち early production に移行したのは Junin-2 鉱区 Junin-5 鉱区 Junin-6 鉱区 Carabobo プロジェクト 1 等 一部のみである しかも これらのプロジェクトにも遅延や 生産量の伸び悩みが見られる ベネズエラの公式発表では 2014 年のオリノコベルトの生産量は 2013 年の 123 万 b/d から 125 万 b/d に微増した 2015 年に入っても オリノコベルトの生産量は増加しており 現在 130 万 b/d 強が生産されているようである オリノコベルトの生産量は ベネズエラの石油生産量の約半分を占めていることになる オリノコベルトで生産される超重質油の多くが 旧戦略的提携 4 プロジェクトと Petrolera Sinovensa の合計 5 プロジェクトで生産されている 政府 PDVSA は 新規プロジェクトの生産増に期待を寄せている 政府は 2019 年までにオリノコベルトの生産量を 400 万 b/d( うち新規プロジェクトの生産量を 200 万 b/d) まで引き上げる計画で 改質装置 パイプライン 製油所 ターミナルの建設を含め 1,440 億ドル (2019 年までにこのうち約 1,050 億 ~ 1,080 億ドル ) が投じられるという *2 PDVSA も 2015 年の投資額 220 億 ~ 230 億ドルのうちオリノコベルトには 150 億ドルを投じるとしている *3 しかし 生産増を実現するためには 解決すべき課題がある とりわけ 最大の課題が資金調達である PDVSA は パートナー企業や中国からの融資に頼らざるを得ない状況だが 油価下落で多くの外資企業は投資増に積極的でなく ベネズエラにとっては中国の重要性が増している 後述するとおり 2015 年に入ってからも 1 月に中国から 200 億ドル超の投資を受け入れることで合意したとされ 4 月には開発プロジェクト向けの 50 億ドルの融資 大西洋 Margarita トリニダード トバゴ コロンビア ベネズエラ ガイアナ ブラジル Yucal Placer Petronas Repsol Belarusneft ONGC Indian Oil ENARSA Oil India Lukoil Eni ANCAP Rosneft Petroanzoátegui Boyacá Norte 6 Cupet 12 1 2 1 5 7 2 8 5 1 3 1 3 ENAP 5 3 4 2 4 2 4 Petroecuador Chevron CNOOC 6 7 13 8 11 6 10 9 3 Petropars Suelpetrol PetroSA 7 8 ONGC Petrolerasinovensa Galp Petrovietnam CNPC Rosneft CNPC Repsol Reliance Boyacá Petrocedeño Petropiar Petromonagas Junin Ayacucho Carabobo オリノコベルト 出所 : 各種資料より作成 図 8 オリノコベルト主要鉱区図 2015.7 Vol.49 No.4 38

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- 表 2 オリノコベルト主要鉱区の開発 生産状況 プロジェクト Petrocedeño 旧名称鉱区名プロジェクト名 Sincor Petroanzoátegui Petrozuata パートナー 注 Total 30.3 % Statoil 9.7 % Petropiar Hamaca Chevron 30% Petromonagas Cerro Negro Rosneft 16.66% 開発 生産状況等 2 0 0 0 年 1 2 月 超重質油生産開始 2 0 0 2 年 3 月 合成原油生産開始 2 0 0 7 年 PDVSA の権益比率を 3 8 % から引き上げ Total Statoil の権益比率を 4 7 % 1 5 % から引き下げ 超重質油生産能力 2 0 万 b/d 合成原油生産能力 1 8 万 b/d 1998 年 8 月 超重質油生産開始 2001 年 4 月 合成原油生産開始 2007 年 ConocoPhillips 撤退 超重質油生産能力 12 万 b/d 合成原油生産量 10 万 7,000b/d 2 0 0 1 年 1 1 月 超重質油生産開始 2 0 0 4 年 1 0 月 合成原油生産開始 2 0 0 7 年 ConocoPhillips 撤退 超重質油生産能力 1 9 万 b/d 合成原油生産量 1 9 万 b/d 1 9 9 9 年 1 0 月 超重質油生産開始 2 0 0 1 年 8 月 合成原油生産開始 2 0 0 7 年 ExxonMobil 撤退 2011 年 TNK-BP が BP のベネズエラ上流資産を取得 2013 年 Rosneft が TNK-BP のベネズエラ資産を取得 2 0 1 5 年末までに改質装置の能力を拡張する計画 超重質油生産能力 1 8 万 b/d 合成原油生産量 1 3 万 b/d Petrolera Sinovensa Bitor CNPC3 5.7 5 % 2 0 1 7 年までに生産量を 3 3 万 b/d に倍増させる計画 PetroMacareo Junin-2 Petrovietnam4 0 % 2 0 1 2 年 9 月 early production 開始 2 0 1 6 年までに生産量を 5 万 b/d とする計画 PetroUrica Junin-4 CNPC4 0 % early production 中 PetroJunin Junin-5 Eni4 0 % Petromiranda PetroCarabobo PetroIndependencia Junin-6 Carabobo プロジェクト 1 Carabobo プロジェクト 3 注 : 残りの権益は PDVSA が所有 出所 : 各種資料より作成 RNOC( ロシアコンソーシアム )4 0 % Repsol1 1 % ONGC1 1 % Oil India3.5 % Indian Oil3.5 % Chevron 34% 日本カラボボ石油 5 % Suelopetrol 1 % 2 0 1 3 年 3 月 early production 開始 プラトー生産 (7 万 5,000b/d) を 2 0 1 5 年に先送り 2 0 1 2 年 9 月 early production 開始 生産量は early production の目標 5 万 b/d に対し 2 0 1 3 年中ごろに 3,0 0 0b/d 2 0 1 5 年 5 月に 7,3 3 0b/d 2 0 1 3 年に Surgutneftegaz と TNK-BP 2 0 1 4 年 1 0 月に Lukoil が撤退を表明 2 0 1 2 年末 early production 開始 2 0 1 3 年 9 月 Petronas が撤退を表明 開発計画策定に向け調整中 を受けることが明らかになった 技術力のある従業員が不足していることも問題となっている Chávez 前政権下では 2002 ~ 2003 年のストライキに参加したことを理由に PDVSA 従業員の約 40% にあたる 1 万 8,000 人が解雇された その後 同社は従業員数を 2003 年の 2 万 9,000 人から 2014 年末には 15 万人超まで増やしたが 新たに雇用した従業員に技術力をつけることには失敗し その技術力レベルは全体として低下しているとされる その上 給与が低く抑えられ 治安が悪いこともあって 技術力のある従業員がベネズエラから流出することも非常に多いという これも技術力不足からなのか 原油流出や製油所等での爆発等事故も頻発している *4 また オリノコベルトは遠隔の地にあるために 資機材の確保が難しく 港湾やパイプライン等インフラストラクチャーの整備が必須となる さらに 坑井の生産性が低く 成熟油田の減退率が高いという問題も抱えている PDVSA は掘削技術の向上により生産性の向上を図る等対処しているという 上記のように多くの課題を抱え 生産の遅延や伸び悩みが見られることから 2013 年以降は Surgutneftegaz TNK-BP Lukoil Petronas がプロジェクトからの撤退 を表明している Junin 2 鉱区で活動中の Petrovietnam も ベネズエラのインフレ率の高さや通貨管理システムの不備を理由に 保有権益 40% の売却を検討していると伝えられる PDVSA の Eulogio Del Pino 総裁は 2015 年 2016 年にオリノコベルトの生産量は 10 万 b/d ずつ増加する見通し としている この増産ペースでは 2019 年までにオリノコベルトの生産量を 400 万 b/d まで引き上げるという政府の計画達成は難しいと考えられる 政府内にもそうした考えがあるのかもしれない なお オリノコベルトに関しては 生産増に向けて 処理能力 20 万 b/d のアップグレーダーの FEED(Front End Engineering Design) が PetroUrica PetroMiranda PetroCarabobo の各プロジェクトで進みつつあるとの情報がある *5 一方で 軽質原油を輸入し これとオリノコベルトで生産される超重質油をブレンドした原油の輸出量を増加させようとしている *6 ともされる これは 新たなアップグレーダーの建設の遅れ 国内の軽質 中質原油の生産量減少 希釈剤として使用してきたナフサの値上がりから PDVSA が軽質原油を輸入し 超重質油とブレンドして輸出することを計画しているというものだ 39 石油 天然ガスレビュー

出所 : 各種資料より作成 図 9 ベネズエラ湾主要鉱区図 PDVSA は 2014 年 10 月以降 割安なアルジェリアの軽質原油サハラブレンド 200 万 bbl を輸入 その後 11 月からは ロシアからウラル原油の輸入も開始した しかし 2015 年 1 月に 同社は価格で合意できないことから アルジェリア軽質原油の輸入を取りやめると発表した また 3 月には ベネズエラは超重質油と輸入原油を混合した新ブレンド油の輸出を促進していたが 成果は限定的だったとの報道があった しかし 4 月末には Sonatrach と PDVSA が両国の原油のブレンドを米国市場等に販売するためジョイントベンチャーを設立することで協議を続けると報じられた ウラル原油の輸入は継続されており Lagomar 原油や Mesa 原油の不足分を補う形で Curacao 島 Isla 製油所 ( 精製能力 33 万 5,000b/d) で利用されている 2 Perla ガス田 Eni と Repsol YPF( 当時 ) は 2005 年に実施された Rafael Urdaneta ライセンスラウンドでベネズエラ湾 Cardón IV 鉱区の権益を取得 2009 年 9 月に Perla 井を掘削 ( 水深 60m 掘削長 3,147m) 出ガスに成功した 2012 年 8 月には Perla ガス田の確認埋蔵量は 9.51Bcf で商業生産が可能であるとの発表があった 同ガス田は当初 2012 年末に生産量 80MM ~ 100MMcf/d で生産を開始 2013 年末までに約 300MMcf/d とし 2019 年よりプラトー生産 1.2Bcf/d を実施する計画とされていた しかし 同ガス田の生産開始は延期され 2015 年 4 月にようやく PP1 プラットフォームを設置 7 月中旬に生産が開始される計画で 生産量は 150 MMcf/d とされる なお 2012 年に PDVSA が同鉱区の権益の 35% を取得 Eni と Repsol が権益の 32.5% ずつを保有している (3) 油価下落の影響ベネズエラの経済は 2014 年中頃に原油価格が下落し始める以前から悪化していた Maduro 大統領には Chávez 前大統領ほどのカリスマ性はなく 政治 経済は混乱を来たし 2013 年の実質 GDP 成長率は 1.3% に 2015.7 Vol.49 No.4 40

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- 低下 インフレ率は 56% となった 2014 年 1 月の外貨準備高は約 210 億ドルまで減少し その大半は金等の流動性の低いものとなっている 牛乳やトイレットペーパーといった生活必需品が欠乏 治安が悪化し 2014 年前半には Maduro 大統領の辞任を求める反政府デモが頻発していた そうしたなか 原油価格が下落を始めた ベネズエラは GDP に占める石油 ガス産業の割合が 12% 財政に占める石油 ガス収入の割合が 45% 輸出収入に占める石油輸出の割合が 96% と 石油収入に大きく依存した経済構造となっている 石油生産コストは 10 ~ 20 ドル /bbl と高くはないが このように石油収入のみに大きく依存した経済構造であるため ドイツ銀行によると 財政を均衡させるために必要な油価は 117.50 ドル / bbl となっている 原油価格を回復させようと 同国は 2014 年 11 月 27 日の第 166 回 OPEC 総会に際して 減産をするよう強く訴えたと伝えられる しかし OPEC は生産目標を現行の 3,000 万 b/d に据え置くことを決め その結果 油価はさらに下落 2014 年の GDP 成長率は -3% と落ち込み インフレ率は 64% に達した 国債の格付けも 原油価格の下落が財政に悪影響を与え デフォルトのリスクが高まっているとして 相次いで引き下げられた 低油価に加え社会状況も悪化し 政治的安定性を維持するのが困難になってきているとの見方もある ベネズエラでは 探鉱 開発を進めるための資金調達が極めて困難で かつ国内の探鉱 開発に携わる企業は 投資や事業計画などに関する決定を行うのが難しい状態だという こうしたことから 生産量を増加させるのは容易ではないとの見方がなされている 高官を含む公務員の給与削減を行うことで 2015 年予算を削減するとしたが 貧困層対策のための社会プロジェクトには手を付けず 逆に増額するとした 政府は Chávez 時代から貧困層救済のための社会プロジェクトを実施しており 本来であれば 探鉱 開発に投じられるべき資金が社会プロジェクトにつぎ込まれている 社会プロジェクトへは年間約 100 億ドルが投じられているという 10 月には国連の仲裁機関 ICSID( 国際投資紛争解決センター ) がベネズエラ政府に 2007 年の資産接収の賠償として ExxonMobil に 16 億ドルを支払うようにとの仲裁判断を下したことと併せて これまで以上に探鉱 開発に資金が回らず 石油生産量の伸びは期待できないとの見方が強まった しかし 一方で 油価下落で Maduro 政権は石油政策再検討を迫られているとの見方もある 財務状況が厳しい PDVSA は 外資誘導強化に向け方針転換を企図していると見られ 西部の成熟油田では掘削等の操業や資機材の購入 投資等に関しパートナーに対してこれまでよりも発言権を認めたという 生産量を増加させるため オリノコベルトにもこの動きが広がっているというのだ PDVSA がほとんどの操業上の決定をパートナーに任せているので ビジネスの環境は悪くなく 新たな開発に投資をするほどのインセンティブはないが 長期的に現在のプロジェクトから得られる報酬はよいとする企業もある *7 そのため 油価下落にもかかわらず生産は安定しているとの見方もある また 2015 年 1 月には Maduro 大統領が 油価下落に対処し 生産量を増加させ より多くの資金を得るた めに オリノコベルトの外資の権益比率引き上げを求め (4) 探鉱 開発促進策探鉱 開発投資を増やし 石油生産量を増加させ 経済の立て直しを図るべきなのだが ベネズエラではそれに逆行する動きが見られた 2014 年 11 月 20 日に開催された Petrocaribe の第 14 回石油相会議で Rafael Ramírez 外相は ベネズエラ政府は従来どおり Petrocaribe との公約を守り 石油の供給を継続すると言明した Petrocaribe は Chávez 前政権下の 2005 年に設立されたベネズエラからカリブ諸国 中南米諸国に原油や石油製品を割安な価格で供給する枠組みで この Petrocaribe 等の協定に基づいて ベネズエラから 中米やカリブ海諸国 17 カ国には 18 万 b/d 程度の石油が供給されている また 同月には Maduro 大統領が原油価格の下落を受けて 公共支出を合理化 削減し 大統領等の政府 ることになるだろうと語った *8 ひっぱく油価下落により逼迫する PDVSA の財務状況を改善しようとする動きも出ている 2014 年 7 月末に発表された PDVSA の子会社 Citgo Petroleum 売却計画は 9 月末に Maduro 大統領がいったんは否定したが 12 月に入札が実施され Marathon Petroleum Valero Energy HollyFrontier TPG Capital/Riverstone Holdings の少なくとも 4 社 ( グループ ) が入札に参加 応札した 応札額は最高が 100 億ドル超であった ベネズエラは また 資金確保 原油価格回復のための働きかけを行っている 具体的には 2015 年 1 月 Maduro 大統領が 中国や OPEC 加盟国 ロシアを訪問し 石油価格回復のための減産を呼びかけ 財政的な支援を訴えた ロシアからは 41 石油 天然ガスレビュー

生産削減も 財政的な支援も引き出すことはできなかったが 中国からは経済 エネルギー 社会プロジェクト向けに 200 億ドル超の投資を受け入れることで合意したとベネズエラ側は発表している 投資の時期や原油供給によって返済するか否か等詳細は明らかにされていない また カタールの金融機関からは 2015 2016 年向けの資金を集めつつあるとした 4 月には 同大統領が中国から新たに 50 億ドルの融資を受けたことを明らかにした 中国は ベネズエラに開発プロジェクト向けの融資をし ベネズエラは石油と燃料で対価を支払う 為替制度についても見直しが行われた 2015 年 1 月 5 日 ベネズエラ中央銀行が PDVSA がキューバ等近隣諸国への石油輸出で受け取ったドルを SICAD II に基づく為替レートで売却することを認めると発表した SICAD II は入札方式の外貨供給システムで 為替レートは 1 ドル =50 ボリバル程度で 公式レートの 1 ドル =6.3 ボリバル等に比べ有利なレートである PDVSA はこれまで 大部分の取引について公式レートを用いていた ベネズエラ政府はその後 3 種類存在する為替制度のうち 公定レートの為替制度はそのまま存続させ 変動相場制の SICAD I と II(1 ドル =12 ボリバル 50 ボリバル前後 ) を統合した さらに 毎日の需要によって外 貨の価値が変わる変動相場制の新為替制度 SIMADI(1 ドル =170 ボリバル前後 ) を導入した そして 2 月 24 日 PDVSA 幹部は同国の大規模プロジェクトに参加している外資系企業 12 社に SIMADI の適用を許可したと述べた ベネズエラ政府は これにより 外貨を獲得するとともに プロジェクトを進展させたいとの考えと見られる ベネズエラでは このように 本来 探鉱 開発に回るべき資金が貧困者対策等に使われたり 割引価格で原油が販売されたりするなどで 探鉱 開発へ十分な投資が行われず その上 十分な経験を持たない国営石油会社等に探鉱 開発を任せようとしたことから 石油生産量が伸び悩むという状況に陥っている さらに 油価が下落したことで状況が悪化したことから ここから抜け出そうとする動きが若干ではあるが出てきているようだ 外貨準備が減少し 国債や PDVSA 債の償還期限が続く上に 低油価も加わり デフォルト懸念が高まっているが 2015 年 12 月に予定される国会議員選挙までは持ちこたえるのではないか 石油輸出でドル収入があるので債権者側もデフォルトされるよりはリスケジューリング ( 債務返済の繰り延べ ) を受け入れるほうがよいと考え デフォルトにはならないだろうと見る専門家もあり 今後の動向を注視していきたい 2. ブラジル (1) 概況ブラジルでは 石油 天然ガスの自給達成を目指し 国営石油会社 Petrobrasが中心となって主に Campos Basinで探鉱 開発が行われてきた 2000 年代に入り石油生産量が順調に増加を続けるようになると これまでの重質油に加えて 軽質油と天然ガスの生産を増やしたいと Petrobrasは Santos Basinや Espíritosanto Basinでも探鉱を進めるようになった その結果 2006 年以降 Santos Basin 等のプレソルト *9 で巨大な油田が相次いで発見されるようになった 探鉱の成果から ブラジルの確認埋蔵量は石油 天然ガスともに増加傾向にある 2014 年末の確認埋蔵量は石油が162 億 bbl 天然ガスが 4,6 4 0 億m3である 石油生産量も順調に増加していたが BP 統計によると 2010 年以降は2010 年 213 万 7,000b/d 2011 年 219 万 3,000b/d 2012 年 214 万 9,000b/d 2013 年 211 万 4,000b/dと210 万 b/d 台で推移し 増加が見られなくなった これは Campos Basinの既存油田の生産量が著しく減退する一方で Santos Basinプレソルト等の新規油田の生産開始が遅れ 予定していたほどには生産量が増加しなかったことによるとされる しかし ANP( ブラジル国家石油庁 ) によると プレソルトの油田の生産量が増加したことで 2014 年 6 月以降 ブラジルの石油生産量は220 万 b/dを超えるようになり 12 月には249 万 7,000b/dと過去最高を記録 2014 年通年では225 万 b/dとなった また ガス需要が低調に推移していたため 2000 年以前に生産が行われていた非随伴ガス田はMerluzaと Pescada/Arabaianaの 2 ガス田のみであった しかし 1999 年にボリビアからパイプラインガスの輸入を開始 2015.7 Vol.49 No.4 42

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- 図 10 ブラジル石油確認埋蔵量 図 11 ブラジル天然ガス確認埋蔵量 出所 :ANP ホームページを基に作成 図 12 ブラジル石油生産量 消費量 図 13 ブラジル月別石油生産量 図 14 ブラジル天然ガス生産量 消費量 して以降 需要が急増し Mexilhão Manati 等のガス田開発やパイプライン網の整備が進められている 2014 年の天然ガス生産量は2013 年の187 億m3から200 億m3に7% 増加した ブラジルの2014 年の天然ガス消費量は396 億m3で 消費量の28% にあたる112 億m3をボリビアからパイプラインで輸入 20% にあたる79 億m3のLNGを輸入している (2) 主要プロジェクトの状況 ~プレソルト~ Petrobrasは 2006 年 Santos Basin BM-S-1 1 鉱区 のプレソルトでTupi(Lula) 油田を発見 2007 年 11 月 同油田の可採埋蔵量は石油と天然ガスを合わせて原油換算 50 億 ~ 80 億 bblであると発表した その後 Santos Basin Campos Basinのプレソルトで相次いで油田が発見され 開発が進められている 2015 年 3 月時点で Santos Basin で3 Campos Basin で 6のプレソルトの油田が生産中だ プレソルトの油田の生産量は増加を続け 同月の石油生産量は 67 万 2,867b/d 天然ガスを合わせた生産量は 83 万 3,001boe/dと月間での過去最高を記録した ブラジルの石油生産量に占めるプレソルトの割合は 2011 年 3 月 3% 2012 年 3 月 6% 2013 年 3 月 16% 2014 年 3 月 19% と増加し 2015 年 3 月には 2 8 % となった 5 月 11 日には プレソルトからの生産量が初めて 80 万 b/dを超えたとの発表が Petrobras からなされた Petrobrasは 2015 年だけでプレソルトの生産量が 7 0% 増加する見通しであるとしている プレソルトで大規模な油田が相次いで発見されたことから ブラジル政府はプレソルトの油田を開発するための新たな法律の導入が必要であるとし 法制改革に乗り出した 2009 年 8 月に法案が議会に送られ 2010 年にプレソルト開発に関する3 件の法律が成立した 43 石油 天然ガスレビュー

JOGMEC K Y M C プレソルトで油田発見のあった主要鉱区 Transfer of Rights 1 エ 岩塩分布エリア ス ブラジル ピ リト サ 盆 地 ント 1984年以前の発見油ガス田 1985 2001年発見油ガス田 2002 年発見油ガス田 プレソルトでの発見油ガス田 プレソルトエリア Law12351/10 Albacora Leste鉱区 Albacora鉱区 Marlim Leste鉱区 Barracuda鉱区 Papa Terra Marlim鉱区 BM-C-41鉱区 BM-C-42鉱区 Itapu ス Buzios(Franco)鉱区 ポ Libra Entorno de Iara鉱区 Sepia Nordeste de Tupi油田鉱区 Jupiter BM-S-24鉱区 Carcará Bem-Te-Vi Lula/Tupi Baúna Biguá Sul de Lula鉱区 Abaré Oeste Peroba鉱区 BM-S-21鉱区 Caramba Sapinhoá (Guara) BM-S-9鉱区 Abaré Sul de Guara鉱区 Sul de Sapinhoá Iguaçu 500m Iguaçu Mirim BM-S-8鉱区 サントス盆 地 1,000m BM-C-33鉱区 地 Gato do Mato Parati Macnaima Corcovado Lapa Carioca S-M-623鉱区 Sagitário Xerelete鉱区 BM-C-43鉱区 盆 BM-S-54鉱区 Florim鉱区 BM-S-10鉱区 Caratinga鉱区 ン Iara Dolomita Sul Cernambi BM-S-11鉱区 BM-S-42鉱区 サンパウロ Roncador BM-C-29鉱区 Voador鉱区 リオデジャネイロ カ 100Km 1 BaleiaFranca Argonauta Ostra Baleia Ana Cachalote Jubarte Baleia Azul Nautilus Abalone Caxareu Itaipu BM-C-32 BM-C-30 Pirambu Wahoo 3,000m 2,000m 出所 各種資料より作成 図15 ブラジル主要鉱区図 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 万 Petrobras が探鉱を行ったとこ プレソルト原油生産量 b/d プレソルト原油換算生産量 boe/d ろ こ の Transfer of Rights の 6 鉱区には当初想定していた 5 0 億 bbl よりも 5 倍程度多い可採埋蔵 量が賦存していることが判明し た そ こ で 2 0 1 4 年 6 月 2 4 日 国家エネルギー政策会議 CNPE 5 2011 8 11 2 2012 5 8 11 2 2013 5 8 11 2 2014 出所 ANP ホームページを基に作成 図16 プレソルトの月別生産量推移 5 8 11 2 月 2015 年 National Energy Policy Council は Petrobras に プレソルトの 4 鉱 区 Florim Buzios Entorno de Iara Nordeste de Tupi で 既 に契約を結んでいる累計 5 0 億 bbl を上回る原油を生産する権利を この法律に基づき 2 0 1 0 年 9 月には Petrobras が過去 入札によらずに付与することを決定した Petrobras は 最大規模の増資を実施 追加公開分を含めて約 7 0 0 億ド 2 0 1 4 年にサインボーナスとして 2 0 億レアル 9 億ドル ル このうち約 4 2 5 億ドル分の株式は ブラジル政府 を政府に支払い また 利益原油の政府シェア分として が石油換算埋蔵量 5 0 億 bbl 相当の Santos Basin プレソル 1 3 0 億レアル 5 8 億 5,0 0 0 万ドル を生産に先立って トの 6 鉱区 Transfer of Rights の権益を Petrobras に移 2015年に20億レアル 9億ドル 2016年30億レアル 13 転し それと引き換えに政府が取得した 億 5,0 0 0 万ドル 2 0 1 7 年 2 0 1 8 年は各 4 0 億レアル 1 8 2015.7 Vol.49 No.4 44 035_舩木 0811修正.indd 44 2015/08/11 14:50:40

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- 億ドル ) と分割して支払う さらに 税 ロイヤルティとしてコスト回収後に76.5% を政府に支払う これにより Petrobrasは石油換算 98 億 ~ 152 億 bblと推定される追加生産が可能になった また プレソルト開発法に基づき 2 0 1 3 年 1 0 月には プレソルト鉱区を対象とする最初のライセンスラウンドが実施された 対象とされた Santos Basinの Libra 鉱区 は 推定可採埋蔵量が80 億 ~ 120 億 bbl ピーク時生産量は140 万 b/dが期待されるとされたにもかかわらず 入札件数は 1 件で Petrobras Total Shell CNPC CNOOCのコンソーシアムが落札した 政府引き取り利益原油はANP が入札条件として提示した割合と同一の 41.65% で サインボーナスは150 億レアル (67 億 5,000 万ドル ) 最低探鉱計画は約 6 億 1,000 万レアル (2 億 7,000 表 3 プレソルト主要油田の状況 Basin 鉱区油田 Santos Campos Lula-Iracema (BM-S-11) Sapinhoá (BM-S-9) Buzios (Franco) Iara (BM-S-11) Entorno de Iara Lapa (BM-S-9) 可採埋蔵量 ( 億 boe) API 比重 ( 度 ) Lula 65 28 Iracema 18 30 Sapinhoá 21 28~30 Buzios 30.58 26~28 Atapu Berbigão Sururu 50 25~27 Lapa 4.59 26 Libra Libra 80 ~ 120 27 Jubarte Jubarte N.A. 30 Baleia Azul Baleia Azul N.A. 30 探鉱 開発状況 生産量生産井数 ( 上段 b/d 下段 boe/d (2015 年 3 月 ) 2015 年 3 月 ) 2006 年 Tupi(Lula) 油田発見 2009 年 5 月 テスト生産開始 2 0 10 年 10 月 パイロット生産開始 288,068 370,781 2012 年 テスト生産実施 2014 年 10 月 生産開始 2008 年 Guará(Sapinhoá) 油田発見 2010 年 12 月 テスト生産開始 2013 年 1 月 商業生産開始 2010 年 5 月 Franco(Buzios) 油田発見 2013 年 テスト生産開始 2015 年 3 月 商業生産開始 2008 年 Iara 油田発見 20 20 年以降 生産開始予定 2007 年 Carioca(Lapa) 油田発見 2016 年下半期 生産開始予定 2011 年 Libra 油田発見 2 013 年 10 月 初のプレソルトライセンスラウンドにより PS 契約締結 2020 年 生産開始予定 2 0 0 8 年 9 月 ブラジル初のプレソルトでの生産開始 2 0 0 8 年 11 月 プレソルトで油田発見 2012 年 生産開始 Marlim Leste Marlim Leste N.A. 30 2 011 年 2 月 プレソルトの生産開始 Barracuda/ Caratinga Barracuda/ Caratinga Baleia Franca Baleia Franca N.A. 30 Pampo/ Trilha/ Linguado/ Badejo *: オペレーター出所 : 各種資料より作成 Pampo/ Trilha/ Linguado/ Badejo N.A. N.A. 2 010 年 12 月 プレソルトの生産開始 2 0 0 8 年 12 月 プレソルトで油田発見 2 010 年 7 月 プレソルトの生産開始 N.A. N.A. 153,216 186,475 9,450 11,5 2 6 15 7 権益保有比率 (%) Petrobras * 65 BG 25 Galp 10 Petrobras * 45 BG 30 Repsol Sinopec 25 1 Petrobras * 100 Petrobras * 65 BG 25 Galp 10 Petrobras * 100 86,850 94,497 58,374 71,0 7 7 49,108 56,111 24,451 26,770 12,263 14,958 538 790 Petrobras * 45 BG 30 Repsol Sinopec 25 Petrobras * 40 Shell 20 Total 20 CNOOC 10 CNPC 10 6 Petrobras * 100 4 Petrobras * 100 6 Petrobras * 100 2 Petrobras * 100 2 Petrobras * 100 3 Petrobras * 100 表 4 プレソルト開発に関する法律 プレソルトの新規鉱区および National Energy Policy Council(CNPE) が戦略的地域と定めた地 Law 12351/10 域については 契約形態を PS 契約とし Petrobras が鉱区権益の最低 3 0 % を保有しオペレーターとなる 入札では政府への配分比率を最も高く設定した企業が落札する 1 0 0 % 国有の石油会社 Pré-Sal Petróleo S.A.(PPSA) を設立 PPSA は ANP の監督下に置かれ Law 12304/10 政府に代わって PS 契約の交渉 管理を行い 操業会議に出席し 石油会社の決定に拒否権等を行使 プロジェクトの実施状況を評価 監視する 政府は Petrobras に Santos Basin プレソルトの鉱区権益 ( 埋蔵量 5 0 億 bbl 相当分 ) を付与する Law 12276/10 Petrobras はプレソルトの探鉱 開発に必要な資金を得るために新株を発行するが この新株の一部を鉱区権益付与の代わりに政府が取得し 政府の Petrobras 持ち株比率を引き上げる 出所 : 各種資料より作成 45 石油 天然ガスレビュー

万ドル ) であった このように プレソルトの開発はPetrobras を中心に進められおり 今後もその状況が続く計画であったが 2014 年 3 月以降 同社をめぐる汚職問題が大きく取り上げられるようになった Petrobrasが米国 Texas 州の Pasadena 製油所を高値で買収したとされる件に端を発したこの汚職問題は その後 沖合プラットフォームや製油所建設時の贈収賄や国会議員に対する違法な献金 資金洗浄 ( マネーロンダリング ) 等に問題が拡大した Petrobrasがニューヨークで米国預託証券を上場していることから ブラジル国内のみならず 米国証券取引所や司法省も本件の調査に着手している 2015 年 2 月 4 日には Petrobrasの Foster 表 5 2010 年に政府が Petrobras に 50 億 bbl の生産を認めた Santos Basin プレソルトの鉱区 鉱区 政府より生産を認められた量 Florim 467 Buzios(Franco) 3,0 5 8 Entorno de Iara 600 Nordeste de Tupi 428 Guara South 319 Tupi South 128 Peroba * 計 5,0 0 0 - 百万 boe *: Peroba 鉱区は Petrobras が他の 6 鉱区の埋蔵量の再評価を行い その結果 これらを合わせても埋蔵量が 50 億 bbl に満たない場合の予備とされた 出所 : 各種資料より作成 表 6 Petrobras 汚職問題をめぐる 2014 年の主な動向 年月日 2014 年 3 月 9~10 月 10 月 18 日 出来事 連邦警察が Petrobras の Pasadena 製油所 ( 米国テキサス州 ) 買収問題や SBM Offshore( オランダの FPSO 等沖合生産施設の販売 傭船 ようせん 企業 ) からの収賄疑惑について捜査を開始した Petrobras 元役員 Paulo Roberto Costa 氏 ( マネーロンダリングや Pernambuco 州 Abreu e Lima 製油所建設事業での贈収賄に関与したとの容疑で逮捕 起訴 ) が 減刑と引き換えに利益を享受したとされる人物の情報を提供した そのなかには Edison Lobão 鉱山エネルギー相等 Rouseff 政権の閣僚やブラジル社会主義者党 (PSB) の大統領候補 Campos 氏が含まれていた Costa 容疑者は Petrobras が種々のサービスを提供する企業と契約を結んだ際 契約額の約 3 % を賄賂 ( わいろ ) として受け取り それらの資金が自分自身と 2 0 1 0 年の統一選での労働者党 (PT) 民主運動党(PMDB) 進歩党(PP) の資金源になっていたことも明らかにした さらに 自身が 2 0 0 4 年に当時下院議員だったジョゼ ジャネネ氏 (PP) の推薦で同社の供給部長の職を得 就任時から各政党に不正な資金を提供する役割を担っていたことを認めた Rouseff 大統領は Petrobras 幹部が長年にわたり特定の業者に契約を受注させる見返りに賄賂を受け取っていたことを認め Petrobras から違法に拠出された資金を取り戻すために全力を尽くすと述べた 11 月 9 日 米国司法省も Petrobras の捜査を実施しているとの報道があった 11 月 14 日 11 月 17 日 11 月 19 日 連邦警察が Petrobras と大手建設 土木工事会社など 3 社を家宅捜索 元同社サービス部部長のレナト ドゥケ氏を含む 1 8 人を逮捕した 同社の 2 0 1 4 年第 3 四半期決算が発表される予定であったが 汚職事件の捜査の進展によって内容が影響を受ける可能性があるとし 決算発表の時期を 1 2 月 1 2 日まで延期する方針を明らかにした Petrobras は 汚職対策のための理事会を設置すると発表した Petrobras 経営審議会は Pasadena 製油所買収が高額となった責任は Costa 容疑者や元国際部長のネストル セルヴェロー氏 元総裁 José Sergio Gabrielli 氏らにあるとし 同社が受けた損害の賠償を求め提訴する方針を明らかにした 連邦会計検査院 (TCU) は 総額最大 4 0 億レアルの資金が不正に動いた可能性があるとの見方を示した Morgan Stanley は Petrobras の汚職疑惑による資金流失は最大 210 億レアルになる可能性を指摘した ( 誤差を考慮してリベートを契約金額の 1 ~ 5 % と設定して ) リベート総額は最低 5 0 億レアル 最高 2 1 0 億レアルに達すると予想した 11 月 20 日 ブラジル中央銀行は Petrobras の汚職捜査に関連し 容疑者らの資産約 1,8 6 0 万ドル相当を凍結した 12 月 1 日 12 月 9 日 Petrobras の汚職は 1 5 年ほど前から始まったが 組織化されたのは 2 0 0 4 年でジャネネ氏によると地元紙が報道した 米法律事務所ウルフ ポッパーは 汚職疑惑について 著しく虚偽の陳述をした として Petrobras に対する集団訴訟をニューヨーク米連邦地方裁判所に提起した 2 0 1 0 年 5 月 ~ 2 0 1 4 年 1 1 月に米証券取引所で同社の米国預託証券 (ADR) を購入した 全員 の利益を代表して行動すると述べた 12 月 11 日 ブラジルの検察当局は 汚職疑惑をめぐり 11 月に逮捕された Petrobras 元幹部ら少なくとも 12 人を起訴した 12 月 12 日 Petrobras は 2 0 1 4 年第 3 四半期決算発表を再び延期した なお この日発表された同期の売上高は 8 8 3 億 8,0 0 0 万レアルで 前年同期 7 7 7 億レアルから増加した また 同社は プロジェクトへの投資ペースを緩める ことなど支出計画を削減する意向を示した 出所 : 各種資料より作成 2015.7 Vol.49 No.4 46

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- 表 7 Pasadena 製油所買収問題の詳細 年月日 2005 年 1 月 2006 年 9 月 2008 年 6 月 出来事 Astra/Transcorは Crown Central Petroleum より 米国テキサス州の Pasadena 製油所 ( 精製能力 1 0 万 b/d) を 4,2 5 0 万ドルで買収した Astraは 1 9 4 7 年設立のベルギー資本のトレーディング会社 1 9 8 5 年に石油エネルギー部門に参入 Pasadena 製油所買収が初の製油所取得で その後 2 0 0 6 年にも Washington 州 Tacoma に製油所を保有する US Oil & Refining Company を買収したが 2 0 1 4 年に売却している 2 0 1 2 年にはカナダの Trans Mountain パイプラインの throughput contract を締結 Astra は Pasadena 製油所の 5 0 % を 3 億 6,0 0 0 万ドルで Petrobras に譲渡した 両社は 同製油所の精製能力を倍増させ 重質油の処理を可能にするよう改修する計画であった 当時 官房長官で Petrobras 経営審議会を率いていた Rouseff 氏 ( 現大統領 ) は この取引に賛意を表明 後日問題となる Put-Option( 共同経営のあり方に異議を唱え 契約を破棄する際は相手の持ち株を買い取ることを定めた規定 ) とマルリン ( 市場悪化の場合も共同経営者に利益分配することを定めた規定 ) は契約には盛り込まれていたものの 審議会に提出された契約内容の概要を記した書類には記されていなかった 2014 年に入り実施された捜査で Rouseff 氏は Pasadena 製油所買収問題について Put-Option やマルリンが省かれた書類を見て賛成した これらの存在を当時知っていたら 審議会は同製油所の株式買い取りを承認しなかっただろうと発言した 一方 国際渉外担当理事セルヴェロー氏は Put-Option もマルリンも石油業界の買収交渉では常識的な契約事項で Petrobras の売買契約の手順書にも書かれているとし 報告書に記述しなかったことを正当化した Petrobras と Astra は Pasadena 製油所拡張投資の時期で意見が相違し Petrobras は Astra が 5 0 % の株式保有者としての義務を果たせとして提訴した 2008 年 7 月 Astra が Petrobras に対して Put-Option 行使を求め提訴した 2012 年 Petrobras 敗訴 テキサス州最高裁判所等に残りの株式 5 0 % の買い取りを命じられる Petrobras は残りの 5 0 % の株式取得に対して 8 億 2,000 万ドルを支払う 2013 年 Petrobras は 海外資産売却の一環として Pasadena 製油所売却を計画するが 取りやめた 出所 : 各種資料より作成 CEOが 資産の過剰評価の可能性を指摘し 辞表を提出 Barbassa CFOと 4 名の Executive Directorもこれに倣い 辞任することとなった 同月 6 日 同社の経営審議会で表 8に見るように新たなCEOらが選任された CEOには国営ブラジル銀行のBendine 総裁が就任することとなった Monteiro 新 CFOもブラジル銀行出身だ 一方 新たな Executive Director4 名は技術畑出身で Petrobrasで30 年以上の経験を有する また 3 月 27 日には 取締役会議長にValeのMurilo Ferreira CEOが指名され 4 月 29 日の株主総会で承認された 一方 Petrobrasは 会計監査人が汚職疑惑を理由に 2014 年第 3 四半期の決算の承認を拒否したこと等から同期の決算発表を延期していたが 2015 年 1 月 27 日 外部監査もなく 連邦警察による捜査で判明した汚職による損失計上もない同期の財務結果を発表した 損失計上のない決算発表で同社の金融市場での信用が大幅に失墜し 株価は1 日で10% 下落した ただ 経営陣にブラジル銀行出身者を迎えたことが奏効したのか その後 4 月 22 日には 監査済みの2014 年決算を発表することができた 同社は汚職疑惑に関連する費用として62 億レアル (21 億ドル ) を計上したが これは取引業者が契約獲得で賄賂を支払った疑惑の調査に関連するものだと説明した また 資産がバランスシート上で過大に評価されていたとして4 4 6 億レアル (1 4 9 億ドル ) の減損を計 上した 2014 年通期純損失は216 億レアル (72 億ドル ) となり 債務合計は3,510 億レアル (1,170 億ドル ) に増加したと報告した なお 5 月 15 日に発表された2015 年第 1 四半期決算では 国内のガソリン価格の値上げや輸入ガソリン価格の下落による負債減少で53 億レアル (17 億 7,000 万ドル ) の黒字を計上 純益は前年同期比 1.0% 減少したが 2014 年の216 億レアル (72 億ドル ) の赤字から大幅に改善した 一方 負債総額は3,324 億 5,700 万レアル (1,108 億ドル ) となった 汚職問題の拡大を受けて 格付け機関による同社の債権等の格下げも続いた 米国の格付け機関 Moody s は 2015 年 2 月 汚職問題の影響と約 1,350 億ドルの債務を抱えるPetrobrasの返済能力に対する懸念から 同社優先債の格付けを Baa3からBa2( 投資不適格級 ) に2 段階落とした 2014 年 10 月以降 3 度目の格下げとなる Standard & Poor s(s&p) も2014 年 12 月 Petrobras の政府支援を考慮に入れないスタンドアローン信用格付けをジャンク級 ( 投機的水準 ) のBBに2 段階引き下げた S&Pは 汚職捜査で同社が海外債券市場を利用するのが難しくなることを格下げの理由に挙げた 一方 通常の信用格付けについては Petrobrasが政府支援を得られる可能性は非常に高いとし 投資適格級で最低の BBB-に据え置いた 監査済み決算を発表したことで一息ついた感があるも 47 石油 天然ガスレビュー

表 8 Petrobras の経営陣 CEO Maria das Graças Silva Foster Aldemir Bendine Chief Financial Officer and Chief Investor Relations Officer Almir Guilherme Barbassa Ivan de Souza Monteiro Exploration and Production Officer José Miranda Formigli Filho Solange da Silva Guedes Downstream Officer José Carlos Cosenza Jorge Celestino Ramos Gas and Power Officer José Alcides Santoro Martins Hugo Repsold Júnior Engineering, Technology and Procurement Officer José Antônio de Figueiredo Roberto Moro 出所 :Petrobras ホームページより作成 旧 新 ス 出所 :Petrobras 発表資料を基に作成 図 17 資産売却の内訳 のの 決算発表の遅れや格付け機関による格下げがあったことで Petrobrasが探鉱 開発等に必要な投資資金を確保できるかが懸念されている これに対して 2014 年 12 月 Petrobras 関係者が 同社は 精製や掘削への支出抑制を進めており 2015 年に市場から資金を調達しなくても済むように措置を講じたと説明した さらに同月 Foster CEO が 2015 年に必要とされる資金は 市場で調達できなくとも コスト削減 国内の燃料価格引き上げ 生産増で対処できると発言した Moody s も Petrobras は 2 0 1 5 年は預金 利益等で資本支出 利子や税金の支払い 債務償還等をカバーできると試算している 一方で Fitchは Petrobrasは 年内に期限を迎える社債 110 億ドルの償還や積極的な投資計画を踏まえると 今年 1 5 0 億 2 00 億ドルの調達が必要になりそうだとしている 資金についてPetrobrasは 2015 年 4 月に中国の国家開発銀行より35 億ドルの融資を確保 5 月にブラジル銀行から45 億レアル (1 5 億ドル ) 連邦貯蓄金庫から20 億 レアル (7 億ドル ) ブラデスコ銀行から30 億レアル (10 億ドル ) STANDARD CHARTERED 銀行から 30 億ドルの資金を調達している *10 資金は確保できるとする一方で Petrobrasは同じく 2014 年 12 月に 2015 年の投資額を30% 削減し310 億 ~ 330 億ドルとする方針を表明 2015 年のブラジル国内石油生産量は2014 年比 4.5% 増を目標とするとした Petrobrasは 2014 年 2 月発表の 5 カ年計画で 2014 ~ 2018 年の5 年間に2,206 億ドルを投じ ブラジル国内の石油生産量を2018 年に320 万 b/d 2020 年に420 万 b/dとする計画としていた また Petrobrasは 2015 年 3 月 2 日 2015 ~ 2016 年の2 年間に137 億ドル相当の資産を売却すると発表した 同社は 2014 年 2 月時点では 2018 年までに50 億 ~ 100 億ドルの資産売却をもくろんでいたので 資産売却の規模が拡大されたことになる 売却される資産の内訳は 国内外の探鉱 生産部門 30% 流通部門 30% ガス エネルギー部門 40% であるという 低価格で資産を投げ売りする必要はなく 油価が回復するのを待って 2015 年に30 億ドル 2016 年に100 億ドル相当の資産を売却する計画であるとしていた 当初 Petrobrasは ポストソルトの鉱区権益 発電所 ブラジル国外の下流資産等ノン コア資産を売却するのではないかとの見方がなされていた しかし 4 月末になると 同社は 資本支出を削減し 早期に生産を開始するため 既存のプレソルトのプロジェクトのジョイントベンチャー化を検討していると報道された さらに 5 月には Petrobrasが Santosおよび Campos Basinのプレソルト 5 鉱区 (Pão de Açucar Jupiter Carcará Sagitário 他 ) を含む沖合 6 鉱区の権益を売却する計画との報道があった プレソルト5 鉱区の権益売却額は40 億ドル以上に上るとの見方もある 2015.7 Vol.49 No.4 48

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- 表 9 Petrobras の資産売却の内容 時期 資産売却の内容 2015 年 3 月南西石油の沖縄県の製油所閉鎖を決定 石油製品の受入基地を建設し これを売却する計画 アルゼンチン資産 ( 探鉱 開発権益 輸送インフラストラクチャー ) を同国企業 CGC に 1 億 1 0 0 万ドルで売却すると発表 探鉱 開発権益は Austral Basin の Santa Cruz I Santa Cruz I Oeste 2015 年 4 月 Glencross Estancia Chiripá Santa Cruz II 鉱区 ( 総面積 1 万 1,5 0 0 km2 ) で 1 万 5,0 0 0boe/d を生産中 CGC は Santa Cruz I(2 9 %) と Santa Cruz I Oeste(5 0 %) 鉱区の権益を保有 同 同 出所 : 各種資料を基に作成 石油化学企業 Braskem の株式 3 6.1 % を約 9 億ドルで売却する計画とブラジル紙が報道 売却先等詳細は不明 Potiguar Basin の BM-POT-1 6 鉱区の権益の 3 0 % を BP に Pelotas Basin の BM-P-2 鉱区の権益の 5 0 % を Total に売却することを ANP が承認 POST-SALT PRE-SALT (CONSESSION) TRANSFER OF RIGHTS PRODUCTION SHARING To be contracted 出所 :Petrobras Business Plan2015-2019 年 図 18 Petrobras のブラジル国内の石油生産計画 (3) 油価下落の影響 2014 年中頃からの原油価格下落によりブラジル沖合の油田開発が影響を受けているのではないかと懸念する向きがある Petrobrasが2015 年 1 月に発表したところによると 原油価格が $40 ~ $45/bblで推移していればプレソルトの油田は経済性が見込めるという 同社によると プレソルトでは42 坑で生産が行われており 生産量は平均で 2 万 b/dである 生産量が 1 万 5,000 ~ 2 万 5,000b/d の坑井の損益分岐点は $45/bblであるが 3 万 b/d 以上を生産する坑井もあり これらの坑井の損益分岐点は $10/bblになるという 5 月初めに Petrobrasは プレソルトの生産コストは下落を続けており 現在 $9/bblで さらに削減できる見通しであるとした このような発表から 油価下落の観点からは Petrobrasのプレソルトの開発計画が変更されることはないのではとの見方をする向きもあった しかし 6 月末に発表されたPetrobrasの新 5カ年計画では 油価下落 汚職問題に加え レアル安の影響もあって 大きく変更されることになり 2015 ~ 2019 年の5 年間の投資額は前年発表の5カ年計画比 40.9% 減の1,303 億ドル 2020 年のブラジル国内の生産目標は前計画比 33% 減の280 万 b/dとされた 同社は 投資額を削減するものの ブラジル上流 特にプレソルトの油田開発は優先するとし 総投資額の83% にあたる1,086 億ドルを探鉱 生産部門に充て うち644 億ドルをプレソルトの油田開発を含む新規プロジェクトに向けるとしている 2020 年には プレソルトの油田からの生産が同社 49 石油 天然ガスレビュー

の生産の半分以上を占めることになる計画であるといと新たな契約を締結するための入札に参加することを禁う 一方 下流やその他の部門はメインテナンス 操業じられている 維持のみを行うという 資産売却については 2015 ~ さらに 政府はインフレ上昇を避けるため 2016 年に137 億ドルを売却するとしていたが これを Petrobrasに対して燃料価格の値上げを認めず 同社は引き上げ151 億ドルとするとした さらに 2017 ~ 国際市場価格で輸入したガソリンやディーゼル LNG 2018 年にも追加で 4 2 6 億ドルの資産売却 事業の解体 を国内で割安な価格で販売し その逆ザヤを負担してき再編を計画しているという 同社はこの5カ年計画の実た そのため 同社は過去 5 年間で600 億レアル~ 800 施により 負債を減らし 利益の上がるプロジェクトに億レアルの損害を被ってきたという 集中することで 株主に対し価値を創出するとしている ブラジルでの探鉱 開発をさらに進めるためには 汚 2015 年 3 月に ブラジルで30 以上の石油 ガスプロジェ職問題を早期に解決するとともに こうした問題も解決クトに携わっているGalp EnergiaのManuel Ferreira de することが必要だろう 実際 ブラジル国内にも これ Oliveira CEOが 汚職捜査の拡大により Petrobrasはプらの課題に対処しようとする動きが見られるようになっレソルトの主要 4 油田 (Lula Sul Lula Norte Lula てきた Extremo Sul Lula Oeste) の開発を少なくとも1 年遅ら石油製品の価格については 2014 年 11 月にせるであろうとのコメントを発表していた 今回の5カ Petrobrasが卸売価格を引き上げ また 油価下落によ年計画では その言葉どおり 多くのプロジェクトの実り国際市場価格が下落しているために 問題は解決に向施時期が1 ~ 3 年先送りされている 中には Carcará かっているようだ Jupiterのように 資産売却の対象となり 2020 年まで石油業界団体 IBPは Amazonas Parnaíba の生産計画から姿を消したプロジェクトもある 大幅な Potiguar Recôncavo Sergipe-Alagoás Jacuípe 投資額 生産目標の削減ではあるが 今回の5カ年計画 Camamu-Almada Campos Espírito Santo Pelotas のに対しては 現実的な投資額 生産目標になったと 好 10 堆積盆地の269 鉱区 ( 沖合 陸上を含む ) を対象に10 意的な見方をする向きが多い 月 7 日に実施が予定されている第 13 次ライセンスラウンドから 入札に関する規則を変更するよう政府に要求 (4) 探鉱 開発促進策している IBPは 入札条件にローカルコンテンツを含 Petrobrasが生産目標を達成できなくなり 経営状況めないこと ライセンスラウンドのスケジュールを作成が悪化し ブラジルの石油生産量が伸び悩んだ背景には すること プレソルト新規鉱区でPetrobrasがオペレー汚職問題や油価下落以外にも多くの問題がある 2010 年に成立したプレソルト開発に関する法律には プレソルトの新規鉱区についてはPetrobrasが権益の少なくとも30% 以上を保有し オペレーターになることが規定されている これにより 同社は 資金面 人材面で過大な負担を背負うこととなった しかし 逆に メジャー等 IOCのなかには オペレーターを務められないことから プレソルトでの探鉱 開発に関心を失った企業もあるのではないか また 政府がブラジル国内の産業を発展させるためローカルコンテンツ規制を設けていることで ブラジルで活動する石油会社はコストの高いブラジル産の資機材を用いなくてはならなくなっていると考えられ出所 :ANP ホームページる そして Petrobrasの汚職問題でブラ図 19 第 13 次ライセンスラウンドの対象となる堆積盆地ジルのエンジニアリング企業の多くが同社 2015.7 Vol.49 No.4 50

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- ターになることを義務付けている点を変更すること 環境ライセンスの発給を透明化すること等を求め 諸条件を政府と協議したいとしている 野党 PSDBのJosé Serra 氏は 連邦議会上院の委員会にプレソルトの新規鉱区で民間企業が自由にオペレーターを務めることができるようにする法案を提出した 同氏は Petrobrasを再度成長の軌道に乗せ 効率的な操業を取り戻すには過大な義務を取り除くことが必要だとしている 5 月には Eduardo Bragaエネルギー相が 政府は外 国企業がプレソルトでの探鉱 開発に興味を示すように規則の変更を検討していると発言した また 外国企業に対するローカルコンテンツの規制を見直す可能性にも言及した 2014 年 10 月にルセフ大統領が再選された際には プレソルト開発法やローカルコンテンツの規制は変更されないとの見方が強かったが 汚職問題の拡大により Petrobrasの経営状況が悪化したことを機に これらの変更について真剣に検討がなされるようになってきたことは注目に値する 3. コロンビア (1) 概況コロンビアでは 主要油田の生産減退とゲリラ活動の激化により1990 年代に探鉱 開発が停滞した また BP がオペレーターを務めるコロンビア最大のCusiana- Cupiagua 油田の生産量が 1999 年の 43 万 1,000b/dから 2007 年には 10 万 4,000b/dに Cusiana-Cupiaguaに次ぐ規模でOccidentalがオペレーターを務めるCaño Limón 油田の生産量も2004 年の9 万 5,000b/dから2006 年には3 万 5,000b/dに減少した このように主要油田の生産量が減少したこともあって 同国の石油生産量は 1999 年の83 万 8,000b/dから2004 ~ 2007 年には52 万 ~ 53 万 b/dに減少した 事態を憂慮したウリベ前政権が2002 年以降 ブラジルに倣い積極的な外資導入政策を採り 生産期間の制限 (28 年 ) 廃止やロイヤルティの変更など契約条件を変更した 鉱区付与や契約手続きを担当する ANH(National Hydrocarbons Agency: 国家炭化水素庁 ) が設置され 頻繁にライセンスラウンドが実施され 国営石油会社 Ecopetrolは探鉱 開発に専念できるようになった 治安面でも ゲリラ対策が採られ 誘拐 石油生産施設やパイプラインへの攻撃が減少し コカ栽培面積やコカイン生産量も減少し 改善が見られるようになった その結果 2005 年を底に石油生産量は急増した 政府は 2011 年末までに1 日あたりの石油生産量 100 万 b/d 突破を目指し さらに 年間の石油生産量を2011 年には92 万 b/d 2012 年には100 万 b/dにすることを計画した しかし 2 0 11 年以降 ゲリラによる誘拐や石油インフラストラクチャーへの攻撃が増加 また 労働者が労働 条件の改善を求めて 地元住民が道路や環境破壊を問題として 抗議行動を起こすようになり 同国の石油生産量は伸び悩んだ 石油生産量が 100 万 b/dを超えたのは 2012 年 12 月末で 年間の生産量も 2011 年が91 万 5,000b/ d 2012 年が94 万 4,000b/dと目標に届かなかった 2013 年はようやく 年間を通して100 万 7,000b/dと生産量は 10 0 万 b/d を超えたものの 2 014 年に入り ゲリラの活動がさらに激化 爆破されたパイプラインの修復作業を地元住民が妨害するという事件も起き Caño Limónパイプライン (Caño Limón-Coveñas 間全長 770km 送油能力 22 万 b/d) や OBC(Oleoducto Bicentenario) パイプライン (Llanos Basin-Coveñas 間全長 9 6 0km 送油能力 4 5 万 b/d) の操業が頻繁に そして 長期間にわたり停止することとなった 6 月に行われた大統領選挙で Santos 大統領が再選されたことで ゲリラとの和平交渉が継続され パイプライン等インフラストラクチャーへの攻撃が減少するのではとの期待が高まったが それ以降もゲリラの活動は収束していない 加えて 環境許可取得に時間がかかることも コロンビアでの石油会社の活動を阻害している 例えば Colombian Petroleum Association( 同国で活動中の石油会社 37 社が参加 ) によると 石油会社の70% が 環境許可の取得が1 年以上遅れるために 予定していた 2014 年の資本投資を使い切ることができなかったとしている 直接投資は2012 年の54 億ドルから2013 年は 49 億ドルに減少したが 2014 年はさらに減少しているようである パイプラインの操業停止や投資額の減少から 生産量の減退が見込まれたため 政府も2014 年の生産目標を 51 石油 天然ガスレビュー

ス ス 図 20 コロンビア石油生産量 消費量 図 21 コロンビア天然ガス生産量 消費量 図 22 コロンビア石油確認埋蔵量 図 23 コロンビア天然ガス確認埋蔵量 103 万 b/dから98 万 b/dに 2015 年の生産目標を107 万 b/dから103 万 b/dに引き下げることとした 2014 年の実際の石油生産量は98 万 8,100b/dと 2006 年以降初めて石油生産量が減少した 天然ガスは主に Chevron の Ballena Chuchupaガス田と Cusiana-Cupiagua 油田で生産されているが Cusiana- Cupiagua 油田で生産されたガスの多くは再圧入されている 2014 年の天然ガス生産量は118 億m3 消費量は 109 億m3であった コロンビアの石油確認埋蔵量は 2003 年以降 13 億 ~ 16 億 bblでほぼ横ばいの状態にあったが 2010 年以降増加し2014 年末は24 億 bblとなった 天然ガス確認埋蔵量は2010 年以降ほぼ横ばいの状態で 2014 年末は1,621 億m3となっている (2) 主要プロジェクト 1 Llanos Basin Pacific Rubiales Energy と Ecopetrol は Llanos Basin のRubiales Quifa 油田の探鉱 開発を行い コロンビアの石油生産量を大きく伸ばしてきた Rubiales 鉱区 Piriri 鉱区 (2 鉱区合計で面積 569km2 ) にまたがるRubiales 油田は1981 年に発見され埋蔵量が 6 億 bblとされたが 遠隔地にあり また API 比重が 12.5 度と重質であることから当時は商業生産が難しいと判断され 放置されていた 2002 年にMeta Petroleum がオペレーターとなり 6 坑を掘削し 1,000b/d 弱が生産されるようになった 2003 年にはさらに14 坑が掘削され 生産量は3,800b/d に増加した 2007 年に Meta PetroleumがPetro Rubiales Energy( 後のPacific Rubiales Energy) に買収され 同油田の生産量は増加 2008 年には 3 万 6,816b/d となった Pacific Rubiales EnergyはPDVSA の元幹部が経営に携わっており ベネズエラでの重質油生産の知識や経験を生かし 生産増が図られたのだ しかし パイプラインがないために生産された原油はタンクローリーで輸送するしかなく そのために生産量は伸び悩んでいた そこで Ecopetrolと Pacific Rubiales Energyが Ecopetrol 65 % Pacific Rubiales Energy 35% の割合で5 億 3,000 万ドルを投じ Rubiales 油田と Monterrey(Casanare) 間に全長 235kmの ODL (Oleoducto de Los Llanos) パイプライン ( 送油能力 24 万 b/d) を建設 2009 年 9 月にこれが完成した Rubiales 2015.7 Vol.49 No.4 52

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- 油田で生産される重質油は カリブ海沿岸のCoveñasまでODLパイプラインとOcensaパイプラインを利用して輸送できるようになり 輸送コストも半減した 2011 年 3 月にはOcensaパイプライン (Cusiana-Cupiagua 油田 ~ Coveñas 間全長 8 3 0km) の送油能力の拡張 (4 6 万 b/d から56 万 b/dに ) も実施された ところが ODLパイプライン操業開始後も Rubiales 油田 Quifa 油田で生産される原油が増加してパイプラインの輸送能力を上回ってしまい 全ての原油を同パイプラインで輸送することができず コロンビアの生産量 100 万 b/dの10 ~ 20% は引き続きタンクローリーで輸送されていた そのため Llanos Basinと Coveñas 間に OBCパイプラインの建設が計画され その第 1 フェーズ (Casanare 県 Araguaneyと Arauca 県 Banadía 間全長 2 3 0km 総工費 14 億ドル ) が 2 0 1 3 年下半期に完成した 送油能力は 12 万 b/dで Banadíaからは Caño Limón- Coveñas パイプライン ( 送油能力 2 2 万 b/d OBC パイプライン稼働前の通油量 8 万 b/d) を利用し Coveñasまで原油を輸送できるようになった Rubiales 油田の生産量は2010 年には12 万 3,581b/d 2011 年 16 万 5,446b/dと増加 2010 年 4 月には Rubiales Piriri 鉱区を取り囲む Quifa 鉱区 (Pacific Rubiales Energy 6 0 % Ecopetrol 4 0 %) の開発も開始された しかし 両油田の生産量は2014 年第 1 四半期に 14 万 5,900b/d 2015 年第 1 四半期に 11 万 9,300b/d と減退期に入っている その一方で Ecopetrolが主導する Castilla Chichimene 油田の生産が2014 年第 1 四半期の15 万 1,100b/ dから2015 年第 1 四半期には19 万 8,100b/dに31% 増加し Rubiales Quifa 油田の減退を補っている 現在 Enbridge Energy が太平洋岸に Llanos Basinで生産された重質油を輸送するパイプラインプロジェクト Oleoducto al Pacífico(OAP)(Llanos Basin ~ Buenaventura 間全長 760km 輸送能力 25 万 b/d 総工費 50 億ドル 2019 年に完成予定 ) を計画している パイプライン建設は環境許可の取得 ゲリラによる攻撃 資金等多くの問題をクリアする必要があるが コロンビアの石油輸出量の20% が中国向けで カリブ海沿岸の Coveñas 港から喜望峰 (Cape of Good Hope) を回って輸送されており 太平洋沿岸までパイプラインができれば輸送コストを2ドル /bbl 削減できるという パイプラインの輸送能力とともに Coveñas 港の積み出し設備にもボトルネックが生じていた Pacific Rubiales Energyは Cartagena の南西に位置する Puerto Bahia 港に輸出能力 45 万 b/dの積み出し設備と 付随する貯蔵設備 ( 容量 300 万 bbl) 等を建設 2015 年 1 月には Coveñas 港と Puerto Bahia 港を結ぶ Olecarパイプライン ( 全長 130km) 工事に着手 同パイプラインは 2015 年末までに完成予定となっている Coveñas 港の輸出能力は68 万 b/dで それを上回る量の原油を同パイプラインでPuerto Bahia 港に輸送し ここから輸出する計画だ また 重質油希釈用にナフサ8 万 b/dも輸入する 当面は Llanosで生産される Castilla Blendを Puerto Bahiaにタンクローリーで輸送し 帰途のタンクローリーで輸入したナフサを持ち帰る計画だ なお Rubiales 油田の契約は 2016 年 6 月末に切れるが 2015 年 3 月 政府は Pacific Rubiales Energyとは契約を更新しないことを決定した 現在は Ecopetrol が権益の 60% Pacific Rubiales Energyが 40% を保有し Pacific Rubiales Energyがオペレーターを務めているが 2016 年 7 月以降は Ecopetrolが権益の100% を保有することになる Ecopetrolの Javier Gutiérrez CEOは Pacific Rubiales Energyは十分に成果を上げてきたが EcopetrolもCastilla Chichimene 等の油田で重質油の生産を行っており 単独で Rubiales 油田の生産を行うことができるという 2カリブ海沖合探鉱 開発停滞が懸念されるコロンビアだが カリブ海沖合の探鉱については進展が見られる Ecopetrol のCEO Juan Carlos Echeverry 氏は2015 年 5 月に 探鉱はカリブ海沖合とメキシコ湾に注力していく方針であると発表した 特に カリブ海沖合については 天然ガス生産量 埋蔵量の減少を補うために掘削を継続していくと表明した 同社は2014 年 12 月に Petrobras( オペレーター 40%) Repsol(30%) とカリブ海沖合のTayrona Block の水深 674mの海域でOrca-1 号井を掘削 ( 掘削長 4,240m) 天然ガスを確認した これはコロンビア深海での初のガス田の発見である Petrobrasは 2015 年に 2 坑 2016 年に2 ~ 3 坑を掘削する計画だ Ecopetrolは また Anadarkoと カリブ海沖合の Col 2 Col 5 Fuerte Norte Fuerte Sur Purple Angel Ura4 の六つの鉱区で 3D 地震探鉱 6,500 km2を実施した 2015 年には Kronos-1 号井と Calasu-1 号井の 2 坑を掘削する計画である 3LNG 輸出入計画 Pacific Rubiales Energyと ExmarはコロンビアからのLNG 輸出を計画 2012 年 3 月に 天然ガス液化 再 53 石油 天然ガスレビュー

Chuchupa Ballena Chuchupa Ballena SOTE La Creciente Trans Andino OCP Ocensa OAM ODC ODL Caño Limón OBC Caño Limón Cupiagua Cusiana Apiay Libertad Suria Castilla Chichimene 9 Florena Dele Cupiagua Cusiana Corcel 17 La Gloria Pauto Volcanera La Gloria Norte 6 Campo Rico Sabanero ODL Jaspe Rubiales 出所 : 各種資料より作成 図 24 コロンビア主要鉱区図 ガス化 貯蔵 輸送サービスに関する契約を締結したと発表した Exmarが FLRSU(Floating Liquefaction, Regasification & Storage Unit) を建造 操業し Pacific Rubiales Energyがパイプライン ( 全長 88km 口径 18 インチ 当初輸送能力 100 MMcf/d 建設コスト1 億ドル ) を建設し La Creciente ガス田からガス 6 9.5 MMcf/dを 15 年間にわたり供給 液化するという 同年 6 月には Wison Offshore & Marine がExmarから FLRSUのEPCIC ( 設計 / 資材調達 / 建造 / 設置 / 試運転 ) を受注したと発表 バージにガス液化設備 ( 最大液化能力約 5 0 万 t/ 年 ) とタンク ( 貯蔵能力 1 万 4,0 0 0 m3 ) を設置し桟橋に係留する計画だった その後 同プロジェクトは 再ガス化を含まない FLNGのプロジェクト Caribbean FLNG( 液化能力 50 万 t/ 年 貯蔵容量 1 万 6,0 0 0 m3 ) に変更された 2014 年 11 月にはWisonの造船所で進水式が行われ 2015 年第 2 四半期より年間 50 万 tのlngを供給することで Pacific Rubiales と Gazprom が 2 0 1 3 年 1 1 月にHOAを 2015 年 1 月には売買契約 (SPA) を締結していた とこ ろが 同月 Pacific Rubiales Energyと Exmarは市場が不安定なことを理由に同プロジェクトの開始を延期すると発表した しかし その後 Exmarは 2015 年第 1 四半期の決算報告書で Pacific Rubiales Energyがカリブ海沿岸で推進するCaribbean FLNGプロジェクト用の FLNGを 2016 年第 1 四半期に Pacific Rubiales Energyに引き渡す予定であるとし LNG 輸出は遅れるものの実現される見通しだ 一方で 天然ガス確認埋蔵量が2015 年から2018 年までに年率 5% ずつ減少するとの見通しや 太平洋岸では2017 年 その他の地域では2018 年にガスが不足するとの Colombian Petroleum Associationの見通しがあるため いくつかのLNG 受入基地の計画が持ち上がっている 2014 年 11 月 Hoegh LNGは Sociedad Portuaria el Cayao(SPEC Promigas が株式の51% Baru LNGが 49% を保有 ) とLNG 再ガス化ターミナルのジョイントベンチャーに関する20 年契約を締結した Cartagena 2015.7 Vol.49 No.4 54

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- 1 6 7 ucua Ballena rca 2 SN 7 alasu PP N 4 N 4 5 N S ronos 出所 : 各種資料より作成 図 25 カリブ海沖合主要鉱区図 に FSRU(Floating Storage and Regasification Unit) を設置し ガス化を行うもので SPEC は既に2014 年初に政府から許可を取得しており 2016 年中頃に稼働する予定だ FSRUの貯蔵能力は17 万m3 再ガス化能力は41 億m3 / 年で 契約期間は5 年 10 年 15 年に削減可能である さらに スペインのSacyrも同年 12 月 15 日 CartagenaにLNG 受入基地を建設すると発表した 受け入れ能力は4 億m3 /dで 全長 10kmのパイプラインも建設する 建設総事業費は1 億 600 万ドルとされており 2 0 16 年第 2 四半期に運転を開始する予定である (3) 油価下落の影響今般の油価下落を受けて コロンビアで最も活発に活動を行ってきたEcopetrol と Pacific Rubiales Energyが 2 0 15 年の資本支出削減を発表している Ecopetrolは 2014 年 12 月に 油価下落により 2015 年の生産目標を引き下げ 資本支出も削減すると発表した 100 万 boe/d とされていた2015 年の生産目標は 76 万 boe/d に引き下げられた 2015 年の資本支出は 2014 年の106 億ドルから25.8% 削減され78 億 6,000 万 ドルとされた このうち 探鉱 開発部門への投資額は 2014 年の66 億ドルから 2015 年は46 億 4,000 万ドルと30% 削減された 特に探鉱部門への投資額の削減幅は大きく 2014 年の12 億ドルから2015 年は5 億 300 万ドルと58% 削減される Ecopetrolは 環境許可の取得に時間がかかること 住民の抗議行動 ゲリラによるインフラストラクチャーへの攻撃等の問題に加え 技術的な問題からCastilla- Chichimene 油田の開発も遅れており これらが生産目標の引き下げや資本支出削減の原因になったとしている また 中質のVasconia 原油が2013 年 12 月 16 日の bblあたり 100.07 ドルから 54.36 ドル 重質の Castilla Blendが95.07ドルから49.61ドルへと コロンビア原油の価格が1 年前に比べ半減した そのため マージンが減少し コスト高の油田の開発が経済性を失いつつあることも一因という Ecopetrolは 非戦略資産の売却により必要な資金の一部を取得することになっていたが 2015 年 5 月には 5 億ドルのコスト削減を図るとともに 今後 12 ~ 18カ月で10 億ドルのノンコア資産を売却すると発表した 国営送電企業 ISAや長距離通信企業 ETB 等の売却によ 55 石油 天然ガスレビュー

り7 億ドルを取得できる見通しという なお 2014 年の同社の生産量は 2013 年の78 万 8,000boe/ dから75 万 5,400boe/dに減少し 年間の生産目標 81 万 9,000boe/dを達成できなかった 2014 年末には 2006 年以来初の生産量減少の責任を取って 2007 年以降 Ecopetrolの CEO を務めてきた Gutiérrez 氏の退任が決まり 後任には Juan Carlos Echeverry 氏が 4 月 6 日付で就任した 同氏は 1962 年生まれ Los Andes 大学等で経済学を専攻 New York 大学で経済学の博士号を取得 Los Andes 大学経済学部長 国家計画庁長官 大蔵 公債大臣 米州開発銀行の Executive Director 等を務めた 同社は2015 年 5 月には 2015 ~ 2020 年の戦略計画を発表 2020 年の生産目標を100 万 boe/dから87 万 boe/dに引き下げ この目的を達成するため年率 1 ~ 2% の生産増を図るとした そして 年間 10 億ドルの支出削減 探鉱 生産部門の成長促進 製油所や輸送部門の効率向上を目指すという 埋蔵量ポテンシャルを高めるためメキシコ湾 コロンビア沖での探鉱を促進 さらに資産売却を進める Pacific Rubiales Energyの CEO Ronald Patin 氏は 2015 年 1 月 油価下落により2015 年の資本支出を15 億ドルから11 億 ~ 13 億ドルの範囲に引き下げると発表した しかし 生産量は2014 年第 3 四半期の14 万 8,790boe/ dから2015 年は15 万 ~ 16 万 boe/dに引き上げる また 操業コストは2014 年第 3 四半期のbblあたり30.79ドルから28ドルに引き下げる計画だ *11 このように コロンビアの主要企業 2 社が 2 015 年の資本支出を削減するが 同国全体の生産見通しはどうか 2015 年 2 月に ANHが発表したところによると 2014 年は開発井 950 坑が掘削されたが 2015 年は52 億ドルを投じ700 坑が掘削される計画で コロンビアの石油生産量は2015 年に103 万 b/d 2018 年に115 万 b/ dに増加する見通しだ しかし ANHはもともと 2015 年までに同国の石油生産量を130 万 b/d 2020 年までに150 万 b/dとすることを目指していたので 生産見通しの大幅な下方修正がなされたことになる Colombian Petroleum Associationによると 2015 年は同国で活動中の石油会社のうち70% の企業が生産量を維持 30% が生産量を増やすとしており 2015 年の石油生産量は2014 年比約 3% 増の102 万 2,000b/d となり 100 万 b/d 台に回復する見込みである しかし 探鉱 開発部門への投資額が削減されていることから 原油価格の上昇や政府の探鉱 開発促進策がなければ 石油生産量は2016 年には現在よりも約 10% 減少し90 万 b/dに 2018 年には約 20% 減少し78 万 5,000b/d 前後になる見 通しだという また IEA(International Energy Agency) は 治安の悪化 探鉱の停滞 油価下落 成熟油田の操業上の問題から 2015 年のコロンビアの石油生産見通しを17 万 b/d 引き下げ93 万 b/dとした 各機関による2015 年の石油生産見通しは93 万 b/dから103 万 b/dとばらつきがあるが 生産量が伸び悩みの傾向にあることでは一致している 石油部門はコロンビアの輸出の55% GDPの5.5% 直接投資の30% 歳入の20% を占めている 政府は生産量減少と油価下落による影響を避けるため 短期的には成熟油田の回収率向上 長期的には沖合や非在来型の探鉱 開発を促進することで対処するという (4) 探鉱 開発促進策コロンビアでは近年 大規模な油田の発見がない その上 パイプラインに対するゲリラの攻撃や住民による抗議行動が激化 環境許可の取得に時間がかかる等の要因に加え 油価が下落したことで 探鉱 開発が再び停滞するのではと懸念されるようになった ANHが2014 年 7 月 23 日に行ったライセンスラウンド Ronda Colombia 2014 も 公開された 95 鉱区のうち 26 鉱区に 参加資格を取得した38 社中 19 社しか応札しないという低調な結果に終わった 沖合鉱区 19 鉱区のうち カリブ海沖合の鉱区についてはCOL1 COL6 COL7 鉱区に Anadarkoが SIN OFF7 鉱区に Shell/ Ecopetrolが COL4 鉱区に Repsol/ExxonMobil/Statoil が応札したが 太平洋沖合鉱区には札が入らなかった 58 鉱区の既発見未開発鉱区についても 11 鉱区に主に小規模の企業 10 社が札を入れたのみで 企業の関心は薄かった 非在来型 ( シェール ) 鉱区は19 鉱区が公開されたが このうち Middle Magdalena Basinの VMM9 鉱区にParexを含む2 社が応札しただけであった 有資格企業のうち Pacific Rubiales Energy Petrobras Chevron Totalは札を入れなかった 2012 年 10 月 17 日に行われた前回のライセンスラウンドでは Enap Petrobras YPF 等南米の国営石油会社 Chevron Total Shell ConocoPhillips 等メジャー Sinopec CNOOC Sinochem ONGC Videsh SK Innovation 等アジア企業の他 Talisman Anadarko Repsol Pacific Rubiales Energy Petrominerales Gran Tierra Canacol OGX 等 53 社が PQを取得し 対象とされた115 鉱区のうち49 鉱区に37 社から105 件の入札があった ANHは 今回の入札ラウンドでも前回同様の結果が期待されるとしていたが 期待外れの結 2015.7 Vol.49 No.4 56

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- 果となった このような事態から 政府は 石油 ガスセクター向けフリートレードゾーン ( 税優遇地域 ) を設置し 石油 ガスの探鉱 関連製品の製造 関連ロジスティクス等を当該地域内で行うことを目的として一定額の投資を実施した場合 通常 25% の法人税を15% まで減税することとし 探鉱 開発促進 石油生産量の維持増加を図ろうとしている また Tomas Gonzalez 鉱山エネルギー相は 2015 年 4 月に 投資を呼び込むため 沖合 非在来型油 ガスについてロイヤルティを引き下げる等のインセンティブを設けてきたが さらに契約条件を見直すと発表した ANHの Mauricio de la Mora 長官も 5 月に コロンビアは新たな鉱区付与制度の導入を検討していると言明した 新制度は 企業が届け出順にANHと直接交渉を行うというもので 2カ月以内に導入すると語った 4. アルゼンチン (1) 概況アルゼンチンは 1990 年代後半には中南米で最も上流活動が活発な国であったが 経済危機の影響や 探鉱が既に成熟化し有望地域が少ないと見られていたこと 探鉱 開発にインセンティブが設けられなかったこと等から 石油会社が十分な投資を行わず 探鉱 開発が停滞した その結果 石油 天然ガスともに埋蔵量 生産量が減少傾向にある 2014 年末のアルゼンチンの石油確認埋蔵量は 23 億 bbl で 2007 年以降微減している 天然ガスの確認埋蔵量は 2001 年末の 7,780 億m3から 2014 年末には 3,282 億m3に激減した 生産量は 石油が 2001 年の 91 万 b/d をピークに減退し 2014 年は 62 万 9,000b/d 天然ガスが 2006 年の 461 億m3をピークに減少し 2014 年は 354 億m3になり いずれも消費量が生産量を上回るようになった 探鉱 開発は Neuquén Basin と San Jorge Basin を中心に行われており 石油は Neuquén Basin と San Jorge Basin 天然ガスは Neuquén Basin を中心に生産されている アルゼンチンで最も活発に探鉱 開発を行っている企業は YPF で Petrobras Chevron 等の外国石油会社の他 Pluspetrol Tecpetrol 等の自国企業も活動している 石油生産量の約 75% を YPF Pan American Energy Petrobras Chevron Occidental が ガス生産量の約 62 % を YPF Petrobras Pan American Energy Total が生産している アルゼンチンでは 2004 年以降ガス不足が顕著となり 年間を通して見れば生産量が消費量を上回っているとはいえ 需要がピークとなる 6 ~ 8 月には天然ガスが不足する状態となった そこで 政府は 2004 年にパイプライ ンでボリビアからの天然ガス輸入を再開 2008 年 5 月に Bahia Blanca の LNG 受入基地を稼働させ 2011 年 5 月には Buenos Aires 近郊の Escobar の LNG 受入基地の試験操業を開始した 2014 年のボリビアからの天然ガス輸入量は 54 億m3であった LNG 輸入量は 2008 年 4 億 1,000 万m3 2009 年 9 億 6,000 万m3 2010 年 17 億 8,000 万m3 2011 年 43 億 8,000 万m3 2012 年 52 億m3 2013 年 69 億m3と年々増加していたが 2014 年は 65 億m3と微減した (2) 主要プロジェクト~ Vaca Muerta シェール~ YPF は 2010 年 12 月に Neuquén Basin の Loma La Lata 鉱区でシェールガスとタイトガス合わせて 4.5Tcf を確認したと発表した さらに 2011 年 5 月には同鉱区でシェールオイル 1 億 5,000 万 bbl を確認したとしたが 同年 11 月にこれを上方修正し Loma La Lata Norte エリア (Loma Campana 鉱区 ) のシェールオイル シェールガスの可採埋蔵量が 9 億 2,700 万 boe であることを確認したと発表した YPF は 周辺の La Amarga Chica 鉱区や Bajada de Añelo 鉱区等でもシェールオイルを確認し La Amarga Chica 鉱区については Loma La Lata エリアと同規模のポテンシャルがあるとした 一方 米国 EIA( エネルギー省エネルギー情報局 ) は 2011 年 4 月に発表した 世界のシェールガス資源量評価 で アルゼンチンのシェールガス技術的回収可能量は 774Tcf で中国 米国に次いで世界で第 3 位であり 特に Neuquén Basin はアルゼンチンのシェールガス資源量の過半を占めていると発表した 2013 年 6 月に EIA は同レポートを見直し アルゼンチンのシェールガス技術的回収可能量は 802Tcf シェールオイル技術的回収可能量は 265 億 bbl で それぞれ世界第 2 位 第 4 位にあるとした Neuquén Basin には Vaca Muerta と Los Molles 等 57 石油 天然ガスレビュー

図 26 アルゼンチン石油確認埋蔵量 図 27 アルゼンチン天然ガス確認埋蔵量 ス ス 図 28 アルゼンチン石油生産量 消費量 図 29 アルゼンチン天然ガス生産量 消費量 のシェール層があるが これまで Neuquén Basin で開発が進められてきたシェールオイル シェールガスは全て Vaca Muerta シェール由来のものである Vaca Muerta シェールの地質状況は北米の主要シェール層である Horn River Barnett Haynesville Bakken シェールに近いが 層厚は Eagle Ford(70m) や Bakken(30m) より厚い また 地層圧力は高く 区画あたりの埋蔵規模も大きく 北米のシェール層よりも良好な条件になる可能性もあるとされる これを受け YPF や Neuquén 州州営石油会社 Gas y Petroleo del Neuquén(GyP) に加え Chevron ExxonMobil Total 等が参入し シェールオイル シェールガスの探鉱が進展し 一部の鉱区では生産も開始されている YPFの非在来型の生産量は2015 年 1 月の4 万 1,200boe/d から 4.4 % 増加し 5 月初めの時点で 4 万 3,000boe/d で Vaca Muerta シェールの生産量も 4 万 boe/d 強と考えられる API 比重 35 ~ 50 度の原油が生産されている Vaca Muerta シェールは層厚が厚いこともあって これまで主に垂直井による開発が行われてきたが 2014 年夏より規模の大きい企業は Vaca Muerta シェールでの掘削を垂直井から水平坑井にシフトするようになっ ている 2014 年初には Vaca Muerta シェールで生産量の最も多い坑井は垂直井で 700boe/d を生産していたが 現在は 1,000boe/d を生産する水平坑井がある * 12 掘削コストの削減が進んでおり 垂直井 1 坑あたりの掘削コストは当初 1,100 万 ~ 1,200 万ドルであったが 現在は 700 万 ~ 750 万ドル程度に 水平坑井は 2014 年末の 2,500 万ドルから 1,500 万ドル程度に減少している 30 日以上であった垂直井掘削日数も 20 日あるいはそれ以下に減少している しかし 垂直井掘削コストをさらに引き下げる必要があり 掘削コストの削減は今後も引き続き Vaca Muerta シェール開発の課題だろう 2015 年には Chubut 州南部に水圧破砕用のプロパント製造プラントが開業するので YPF は ブラジルからプロパントを輸入する場合よりも 1 坑あたり約 50 万ドルのコスト削減が可能になるとしている また 2015 年中頃にはリグ 10 基が追加され リグ移動の時間やコストを削減できる見込みであるという アルゼンチンでは ローカルコンテンツを満たしながら必要な技術力を有する技術者を確保することは難しく ボトルネックが生じコストが上昇する可能性があるとされてきた しかし Neuquén 州はシェールブームとなっていることで 技術者が集まってきており 需給 2015.7 Vol.49 No.4 58

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- ギャップは縮まっている 在来型ブームの時に石油産業に従事していた技術者が戻ったり 周辺産業の労働者が上流産業に流入したりする例もある 石油サービス会社も技術者育成のための教育 訓練コースを提供している インフラ整備はオペレーターにとって懸案事項ではあるが 探鉱 開発の多くが既に生産中の Loma Campana 鉱区で行われていることもあり 現在のところは既存の設備で対処が可能であり パイプラインが喫緊の問題であるとするオペレーターはない (3) 油価下落の影響 2014 年半ば以降の油価下落にもかかわらず Vaca Muerta シェールでの探鉱 開発には変化は見られない YPF は効率のよいリグを導入し 掘削コストを削減 効率的な資本計画を実施している 2015 年 2 月 27 日には 2015 年も資本支出を据え置き 60 億ドルを投じて 生産量を 3 ~ 5% 増加させると発表した YPF は 2014 年は Apache のアルゼンチン資産を取得し 生産量が 3 万 8,600boe/ d 増加したこともあって 前年比 13.5% の 56 万 100boe/d( 石油生産量前年比 5.3% 増の 24 万 4,600b/d ガス生産量 25.1% 増の 42.4MMm3 /d) を生産した 2014 年は Vaca Muerta シェール開発により同社の埋蔵量は 3 億 3,300 万 boe 増加し 埋蔵量置換率 (reserve-replacement ratio) は過去 15 年で最高の 163% となった 同社は 2014 年は 908 坑を掘削 うち 255 坑が非在来型で このうち 173 坑が Loma Campana 鉱区で掘削された 同社の Galuccio CEO は 政府が探鉱 開発促進のため最低価格を設定しており Chevron Sinopec Petronas 等とのプロジェクトが遅延することはないと思うと語っている 政府も YPF/Chevron が掘削コスト削減に成功する等 Vaca Muerta シェールの開発は効率が改善し 開発コストが低減しており 油価下落によりシェール探鉱 開発向け投資が削減されることにはならないだろうとのことだ (4) 探鉱 開発促進策アルゼンチン政府は 2001 年以降 経済政策の一環と 出所 : 各種資料より作成 図 30 El Curqui Los Toldos Rincón La Ceniza El Orejano Aguada Federal Bajada de Añelo Aguada Pichana El Mangrullo Rincón del Mangrullo La Invernada La Escalonada Parva Negra San Rogue Neuquén 州主要鉱区図 Veta Escondida Rincón de Aranda La Amarga Chica Cruz de Lorena Loma Campana Sierras Blancas Loma La Lata 南米 アルゼンチン Neuquén 州 して天然ガス価格を規制してきた そのため 2008 年まで 同国の天然ガスの価格は 1 ~ 2.5 ドル /MMBtu 程度とされてきた また 政府は国内に原油が十分に供給されることを念頭に 2002 年以降 原油輸出税を課してきた さらに 2006 年には 陸上および 12 海里以内の沖合に賦存する炭化水素資源の探鉱 生産 輸送に関する権限を州政府に移管する法律が制定された 多くの州がこれを基に独自の炭化水素法を制定 炭化水素資源を管轄する機関が複数存在することになったが これは 契約条件等が州ごとに異なるという企業にとっては複雑で厄介な状況である 2011 年以降は 輸出により得られた外貨を全てアルゼンチンに送金し ペソに変換することが義務付けられた これらの政策が採られたことで 同国の探鉱 開発は停滞 埋蔵量 生産量も減退することとなった 59 石油 天然ガスレビュー

出所 :EIA Technical Recoverable Shale Oil and Shale Gas Resources 図 31 堆積盆地別シェール技術的回収可能量 2004 年以降のガス不足から 最初に探鉱 開発促進策が採られたのは ガス価格についてであった 2008 年には Gas Plus Program に基づいて 新たに生産を開始するガス田で生産されるガスや非在来型ガスの価格は 4 ~ 5 ドル /MMBtu とすることが認められた 2012 年 11 月 政府は新たに生産を開始するガス田で生産されるガスについては価格を 7.50 ドル /MMBtu とすることを承認した そして 2013 年には 国家炭化水素投資計画 戦略調整委員会に プロジェクトを申請し承認が得られれば 政府が財務的補償を行うことで 国内市場向けに 7.50 ドル /MMBtu で天然ガスを販売することが認められることになった 石油に関しても同様に政府が価格を設定する制度が敷かれ 2014 年 12 月に政府は国内の油価を 77 ドル /bbl に引き上げた 原油輸出税に関して 政府は 2013 年 1 月に 国際市場で油価が 80 ドル /bbl 以上の場合 企業は 70 ドル / bbl を受け取ることができることになると発表した また 7 月には アルゼンチン国内の非在来型プロジェクトに 5 年間で 10 億ドルを投資する企業には 生産の 20% 分の輸出については 輸出税を免除し 輸出により得られた外貨はアルゼンチンに還流せずに自由に運用す ることを認めた さらに 油価下落を受けて 2014 年 10 月 22 日に 経済財務省が シェール開発促進のため石油と派生品の輸出税の税率を 油価が 80 ドル /bbl 以下であれば 13% 75 ドル /bbl 以下であれば 11.5% 70 ドル /bbl 以下であれば 10% に引き下げることとした 2015 年に入ると 政府は Brent の価格が 79 ドル /bbl 以下なら 輸出税の税率を 1% にするとした 2014 年 10 月 31 日には 炭化水素法改正法が成立した 新しい法律では 入札は引き続き中央政府や州政府が実施することになったが 最大の投資 作業義務を提示した企業が落札するという共通の枠組みが設定された ロイヤルティは従来同様 12% で ケースによっては 5% まで引き下げることが可能とされた 陸上は最長 9 年 沖合は 12 年とされ 3 フェーズに分けられていた探鉱期間は 在来型が 3 年 +3 年の 6 年 (1 年の延長が可能 ) 非在来型が 4 年 +4 年の 8 年 (5 年の延長が可能 ) と変更された また 非在来型プロジェクトに 5 年間で 10 億ドルを投資する企業に対して設けられていた優遇措置は 3 年間に 2 億 5,000 万ドルの投資に修正された 2015 年 1 月には 油価下落による生産量減退を阻止するため 連邦政府と産油 10 州が 2014 年第 4 四半期から生産量を増加 維持させたオペレーターに対してはロ 2015.7 Vol.49 No.4 60

南米の石油 ガス探鉱 開発状況 - 原油価格下落下で探鉱 開発は進んでいるのか?- 表 10 Vaca Muerta シェールの探鉱 開発状況 企業鉱区年月契約締結 探鉱 開発等の状況 YPF/Chevron YPF/Dow Chemical YPF/Petrolera Pampa Loma La Lata Loma Campana El Orejano Rincón del Mangrullo 2013 年 7 月 2014 年 4 月 2014 年 9 月 2013 年 9 月 2014 年 9 月 2013 年 11 月 2015 年 5 月 開発契約を締結 1 年間の第 1 フェーズでは 1 2 億 4,0 0 0 万ドルを投じ General Enrique Mosconi エリア (20 km2 ) で 1 0 0 坑を掘削 2014 年中に 1 6 億ドルを投じ Loma Campana 鉱区で 1 7 0 坑を掘削すると発表 大規模な開発段階に移行 今後数年間に 1 6 0 億ドルを投じる計画 Loma Campana 鉱区の生産量は 2014 年初の 1 万 2,000b/d から 2 万 1,000b/d に増加 水平坑井 10 坑 垂直坑井 2 0 0 坑で生産中 掘削コストは垂直井が 2 0 1 3 年 7 月の 1,2 0 0 万ドルから 7 0 0 万ドルに 垂直井が 2 0 1 3 年末の 2,5 0 0 万ドルから 1,5 5 0 万ドルに下がった 掘削の時間も短縮 垂直井掘削日数は 31.7 日から 2 0 日かそれ以下となった スィートスポット 2 カ所を確認 西側は垂直井で開発 東部分は 2 0 1 5 年に水平坑井のキャンペーンを行う *13 El Orejano 鉱区の開発に関する契約を締結 Dow Chemical が 1 億 2,0 0 0 万ドル YPF が 6,8 0 0 万ドルを投じ シェールガス井 1 6 坑を掘削 3MM m3 /d を生産する計画 25 万m3 /d(8.8 MMcf/d) を生産 2 0 1 4 年末までに 1MM m3 /d のガス処理プラントが建設され生産量は増加する予定 第 1 フェーズでは 8,1 5 0 万ドルを投じて 3D 地震探鉱 4 0 km2と 3 4 坑の掘削を 第 2 フェーズでは 7,000 万ドルを投じ 1 5 坑を掘削することで契約締結 49 坑より 1.4MM m3 /d(5 0 MMcf/d) を生産中 1 億 5,0 0 0 万ドルを折半で追加投資 生産量を 4MM m3 /d に引き上げる計画 2014 年 2 月 La Amarga Chica 鉱区開発に関しパートナーを組むことで MOU を締結 YPF/Petronas La Amarga Chica 2014 年 8 月 Petronas は YPF より La Amarga Chica 鉱区の権益の 5 0 % を取得し 同鉱区にファームインすることで予備合意 3 年間に 5 億 5,0 0 0 万ドル ( うち 4 億 7,5 0 0 万ドルは Petronras が負担 ) を投じ 2 0 1 5 年第 1 四半期より水平坑井 垂直井合わせて 35 坑を掘削する その後 ファクトリー開発モードに移行し 5 年間に 1 0 億ドルを投じる計画 2015 年 5 月契約発効 YPF/Sinopec 2015 年 1 月 YPF/Andes Energia El Manzano West (Mendoza 州 ) 2015 年 3 月 YPF/Total 2015 年 3 月 アルゼンチンで探鉱 開発を行う合弁会社の設立で暫定合意 MOU に調印 在来型およびシェールオイル シェールガスを共同開発する Las Varillas x-1 井を掘削 ( 掘削長 2,3 9 3 m) 水圧破砕に成功 API 比重 2 3 度の原油を出油 Andes は Vaca Muerta シェールの 4 0 % Agrio シェールの 1 0 0 % の権益を保有 Vaca Muerta シェールのプロジェクトについて評価 今後の JV 拡充について協議 Total は Aguada Pichana 鉱区の権益 27.3% San Roque 鉱区の権益の 24.7% を保有 Aguada Pichana 鉱区と San Roque 鉱区ではガスを生産中 Total はオペレーターとして Aguada de Castro Pampa de Las YeguasⅡ El Curqui La Escalonada Rincón La Ceniza 鉱区で パートナーとして Rincón de Aranda Veta Escondida Cerro de Las Minas Sierra Chata Cerro Partido 鉱区で非在来型ガスを探鉱中 YPF/Gazprom 2015 年 4 月 Gazprom と YPF Vaca Muerta シェールの開発に Gazprom が参加する旨の覚書締結 YPF/ONGC 2014 年 9 月 上流分野での協力関係を樹立 YPF/ExxonMobil 2014 年 10 月 非在来型資源開発での協力について協議 2014 年 1 月 Wintershall は Aguada Federal 鉱区の権益 5 0 % を取得 GyP と同鉱区を開発する GyP/Wintershall Aguada Federal 2014 年 12 月 1 億 1,000 万ドルを投じパイロットプロジェクトを開始 2015 年 3 月探鉱井 2 坑の掘削を開始 結果によっては水平坑井 6 坑を掘削予定 GyP/ExxonMobil Parva Negra 2014 年 7 月 ExxonMobil は Parva Negra 鉱区の Petrobras 保有権益 4 2.5 % を取得 La Invernada 2014 年 12 月 La Invernada X-3 井を掘削 ( 掘削長 4,6 8 6m) 石油 4 4 8b/d ガス 1MMcf/d の出油 出ガスに成功 GyP/Shell Americas Petrogas/ ExxonMobil Sierras Blancas/ Cruz de Lorena Los Toldos Ⅰ 等 2013 年 3 月最初に掘削し水圧破砕を行った水平坑井で API3 5 度の石油 4 6 5b/d の出油に成功 2014 年 12 月 Sierras Blancas 鉱区で水平坑井 4 坑 垂直井 1 坑 Cruz de Lorena 鉱区で水平坑井 1 坑を掘削 パイロットプロジェクト実施へ 5 年間に 2 億 5,0 0 0 万ドルを投じ 掘削と 1 万 b/d を処理できる原油ガス処理プラント等インフラの建設を行う パイロットプロジェクトの結果が良好であれば開発に移行 2013 年 2 月多段階フラクチャリング実施 2013 年 6 月坑井をパイプラインにつなぎ ガスの販売を開始 Madalena Ventures/ 2015 年末初の水平坑井掘削 水圧破砕実施予定 Pluspetrol 出所 : 各種資料より作成 イヤルティを 3 ドル /bbl 割り引き 輸出量を維持 増加させた企業には 2 ドル /bbl の割り引きという生産刺激策で合意した アルゼンチンでは 2015 年 10 月に大統領選挙が実施 されるが 候補者はみなビジネス志向であるという 新政権が投資家にとってより条件のよい炭化水素法を導入することが期待されている 61 石油 天然ガスレビュー

おわりに 本稿の最初の部分で 原油価格が100ドル /bblを超える状態であれば これら南米各国の探鉱 開発に問題はないかもしれないと述べた しかし こうして各国の状況を眺めてみると いずれの国も高油価の下でもさまざまな課題を抱え 順調に探鉱 開発を進めることが難しい状況にあったことが分かる そして ベネズエラ ブラジル コロンビアは油価下落により探鉱 開発に打撃を受けたが 油価が下落したことで これらの国の問題が顕在化し 各国ともそれに対処せざるを得なくなった 各国の対応が順調に進めば 活動を停滞させた油価下落が逆に後押しとなって 探鉱 開発を促進する可能性が出てきたとも言えるのではないか 経済に大きな打撃を受けたベネズエラは 石油政策を再検討せざるを得なくなってきたと見る向きもある 油価下落にPetrobrasの汚職問題が重なったブラジル でも プレソルト開発法やローカルコンテンツを変更しようとする動きが高まってきた Petrobrasが抱え込んでいたプレソルトの鉱区をメジャーやNOC(National Oil Company) が開発することで 生産増を図れるかもしれない 埋蔵量ポテンシャルが小さく 外資参入が進んでいるために 油価下落の影響を大きく受けているコロンビアも 新たな鉱区付与制度の導入を検討し始めた また 油価下落下でも 探鉱 開発に落ち込みが見られないアルゼンチンでは 10 月の大統領選挙後には 新たな探鉱 開発促進策が採られるのではないかと期待が高まっている とはいえ いずれの国も状況は厳しく これをどのように乗り切っていくのか 動向を注目していきたい < 注 解説 > * 1: PDVSA 年報によると 2014 年の原油生産量は2013 年の298 万 4,000b/dから277 万 9,000b/dに減少した 主な生産地域は東部で 生産量は 199 万 7,000b/dとなっており Maracaibo-Falcón エリアでも 74 万 6,000b/dを生産した * 2: Platts Oilgram News2015/4/23 * 3: Petroleum Intelligence Weekly2015/4/27 * 4: IHS Energy PDVSA:Flight of skilled personnel compounds risks for investors 2015/1/26 * 5: Petroleum Intelligence Weekly2015/4/27 * 6: Financial Times2015/5/29 * 7: Petroleum Intelligence Weekly2015/3/23 * 8: Platts Oilgram News2015/1/23 * 9: 下部白亜系岩塩層直下の炭酸塩岩を貯留岩とする大水深 大深度のプレイをプレソルトと呼ぶのに対し 岩塩層より上部のプレイをポストソルトと呼ぶ *10: ブラジル日本商工会議所 2015/5/18 *11: 2015 年 5 月にAlfa/Harbor Energyが Pacific Rubiales Energyを55 億ドルで買収することになった *12: Wood Mackenzie Vaca Muerta:notes from Neuquén 2014/11/9 *13: Petroleum Intelligence Weekly2014/9/22 執筆者紹介 舩木弥和子 ( ふなきみわこ ) 神奈川県逗子市生まれ 慶應義塾大学法学部法律学科卒業 JOGMEC 調査部 ( 南米およびカナダ担当 ) 近況 : 昨年 3 月から 3 回 引っ越しました 今年末にもう 1 度予定している転居に向けて 現在 荷物を減量中です せっかくいろいろな場所に住むので 家の近くでおいしいお店を探そうと頑張っていますが 1 カ所に住む期間が短いので 大忙しです おかげで 体のほうの減量は難しそうです 2015.7 Vol.49 No.4 62