慈恵 ICU 勉強会 友利昌平

Similar documents
「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

課題名

スライド 1

et al No To Shinkei Clin Neurol Neurology et al J Neurosurg et al Arch Neurol et al Angiology

総合診療

95_財団ニュース.indd

Microsoft Word - 博士論文概要.docx

<4D F736F F D204A4F544E D8E8094BB92E88B4C985E8F DCE88C88FE3816A >

要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

HPB16_表1-表4.ai

さらに, そのプロセスの第 2 段階において分類方法が標準化されたことにより, 文書記録, 情報交換, そして栄養ケアの影響を調べる専門能力が大いに強化されたことが認められている 以上の結果から,ADA の標準言語委員会が, 専門職が用いる特別な栄養診断の用語の分類方法を作成するために結成された そ

Microsoft Word - ①【修正】B型肝炎 ワクチンにおける副反応の報告基準について

01 表紙

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

はじめに難聴の重症度をいくつかのカテゴリーに分類する意義は 難聴そのものの程度と それによってもたらされる障害を 一般的な言葉で表し 難聴に関する様々な記述に一定の客観性 普遍性を持たせることにあると考えられる 仮にこのような分類がないと 難聴に関する記述の際に数値を示すか あるいは定量的な裏付けの

岸和田徳洲会病院 当院では以下の研究に協力し情報を提供しております この研究は 国が定めた指針に基づき 対象となる患者さまのお一人ずつから直接同意を得るかわりに 研究の目的を含む研究の実施についての情報を公開しています 研究結果は学会等で発表されることがありますが その際も個人を特定する情報は公表し

IntroducAon 重症頭部外傷患者の約 60% は植物状態や要介助など予後不良な転帰を辿る. 約 39% は外傷が原因で死亡する. Lancet 2012;380: 生存例でも一般人口より 3.2 倍短命 Med J Aust 2012;196:40-45 ヨーロッパでは過去 5

簡易型 ADL 評価スケール S-スコア入力支援ソフト Version.1 は宮城県気仙沼保健福祉事務所 ( 気仙沼圏域地域リハビリテーション広域支援センター ) のホームページからダウンロードして御利用ください

看護師のクリニカルラダー ニ ズをとらえる力 ケアする力 協働する力 意思決定を支える力 レベル Ⅰ 定義 : 基本的な看護手順に従い必要に応じ助言を得て看護を実践する 到達目標 ; 助言を得てケアの受け手や状況 ( 場 ) のニーズをとらえる 行動目標 情報収集 1 助言を受けながら情報収集の基本

障害程度等級表

抗精神病薬の併用数 単剤化率 主として統合失調症の治療薬である抗精神病薬について 1 処方中の併用数を見たものです 当院の定義 計算方法調査期間内の全ての入院患者さんが服用した抗精神病薬処方について 各処方中における抗精神病薬の併用数を調査しました 調査期間内にある患者さんの処方が複数あった場合 そ

untitled

<4D F736F F D F9D95618ED282CC94C EF393FC82EA8EC08E7B8AEE8F C9F93A289EF95F18D908F B A97768E862E646F6378>

(別添様式)

資料 3 全国精神保健福祉センター長会による自殺予防総合対策センターの業務のあり方に関するアンケート調査の結果全国精神保健福祉センター長会会長田邊等 全国精神保健福祉センター長会は 自殺予防総合対策センターの業務の在り方に関する検討チームにて 参考資料として使用されることを目的として 研修 講演 講

P01-16

<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6>

SBOs- 3: がん診断期の患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 4: がん治療期 ; 化学療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 5: がん治療期 ; 放射線療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 6: がん治療期

薬剤師のための災害対策マニュアル

スライド 1

機能分類や左室駆出率, 脳性ナトリウム利尿ペプチド (Brain Natriuretic peptide, BNP) などの心不全重症度とは独立した死亡や入院の予測因子であることが多くの研究で示されているものの, このような関連が示されなかったものもある. これらは, 抑うつと心不全重症度との密接な

10_12A-20.pdf

<4D F736F F F696E74202D AAE90AC94C5817A835F C581698FE39E8A90E690B6816A2E >

助成研究演題 - 平成 27 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 改良型 STOPP を用いた戦略的ポリファーマシー解消法 木村丈司神戸大学医学部附属病院薬剤部主任 スライド 1 スライド 2 スライド1, 2 ポリファーマシーは 言葉の意味だけを捉えると 薬の数が多いというところで注目されがちで

というもので これまで十数年にわたって使用されてきたものになります さらに 敗血症 sepsis に中でも臓器障害を伴うものを重症敗血症 severe sepsis 適切な輸液を行っても血圧低下が持続する重症敗血症 severe sepsis を敗血症性ショック septic shock と定義して

<4D F736F F D EA94CA8ED C93FA967B945D905F8C6F8A4F89C88A7789EF B835E B83588CA48B868E968BC D905

系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学


RAD-AR News Vol.15, No.4 (Nov. 2004) 2

Microsoft Word 報告書_v1.7

なぜ社会的責任が重要なのか

wslist01

頭頚部がん1部[ ].indd

採択演題一覧

コンテンツ・プロデュース機能の基盤強化に関する調査研究

コンテンツ・プロデュース機能の

02›f›æ’»“ì-16.qxd

平成30年度精神保健に関する技術研修過程(自治体推薦による申込研修)

1. 多変量解析の基本的な概念 1. 多変量解析の基本的な概念 1.1 多変量解析の目的 人間のデータは多変量データが多いので多変量解析が有用 特性概括評価特性概括評価 症 例 主 治 医 の 主 観 症 例 主 治 医 の 主 観 単変量解析 客観的規準のある要約多変量解析 要約値 客観的規準のな

vol4.qxd

untitled

抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

ICD-11 β draft の訳について ( 要点のみ ) ICD-11 β draft の依存領域の全体的翻訳は別添資料 2 をご覧ください この資料 1 で は 先生方のご意見をいただきたいポイントを 7 項目にしぼって記載しています 1. 大項目について ICD-11 β draft では

saisyuu2-1

2011 年 11 月 2 日放送 NHCAP の概念 長崎大学病院院長 河野茂 はじめに NHCAP という言葉を 初めて聴いたかたもいらっしゃると思いますが これは Nursing and HealthCare Associated Pneumonia の略で 日本語では 医療 介護関連肺炎 と

医師主導治験 急性脊髄損傷患者に対する顆粒球コロニー刺激因子を用いたランダム化 プラセボ対照 二重盲検並行群間比較試験第 III 相試験 千葉大学大学院医学研究院整形外科 千葉大学医学部附属病院臨床試験部 1

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

4 月 17 日 4 医療制度 2( 医療計画 ) GIO: 医療計画 地域連携 へき地医療について理解する SBO: 1. 医療計画について説明できる 2. 医療圏と基準病床数について説明できる 3. 在宅医療と地域連携について説明できる 4. 救急医療体制について説明できる 5. へき地医療につ


どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

問題 近年, アスペルガー障害を含む自閉症スペク トラムとアレキシサイミアとの間には概念的な オーバーラップがあることが議論されている Fitzgerld & Bellgrove (2006) 福島 高須 (20) 2

スライド 1

1.ICD-10(2013 年版 ) のコーディングの確認対象 確認対象医療機関 DPC 対象病院および DPC 準備病院 確認対象期間 平成 28 年 10 月診療分 ~ 平成 30 年 3 月診療分 ( 計 18 か月 ) 確認対象 ICD-10 様式 1 の診断情報の ICD-10 コードを対

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

‚æ01Łª“û†œ070203/1‘Í

Ł\”ƒ53_4C

( 別紙 ) 法的脳死判定のチェックシート 脳死判定を受けた者 氏名 住所 性別生年月日年月日生 脳死判定を拒まない 承諾した家族 代表者氏名 住所 脳死判定を受けた者との続柄 脳死判定を受けた者及び家族の意思 ア脳死判定を受けた者が生存中に臓器を提供する意思を書面により表示しており 脳死判定に従う

PowerPoint プレゼンテーション

対象 :7 例 ( 性 6 例 女性 1 例 ) 年齢 : 平均 47.1 歳 (30~76 歳 ) 受傷機転 運転中の交通外傷 4 例 不自然な格好で転倒 2 例 車に轢かれた 1 例 全例後方脱臼 : 可及的早期に整復

4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

15288解説_D.pptx

p

産業21-66号.indd

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx


公的医療保険が対象とならない治療 投薬などの費用 ( 例 : 病院や診療所以外でのカウンセリング ) 精神疾患 精神障害と関係のない疾患の医療費 医療費の自己負担ア ) 世帯 ( 1) における家計の負担能力 障害の状態その他の事情をしん酌した額 ( しん酌した額が自立支援医療にかかった費用の 10

P001~017 1-1.indd

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

2. 延命措置への対応 1) 終末期と判断した後の対応医療チームは患者および患者の意思を良く理解している家族や関係者 ( 以下 家族らという ) に対して 患者が上記 1)~4) に該当する状態で病状が絶対的に予後不良であり 治療を続けても救命の見込みが全くなく これ以上の措置は患者にとって最善の治

コンテンツ・プロデュース機能の基盤強化に関する調査研究

専門)精神医学 単位数履修方法配当学年 4 単位 R or SR 3 年以上 科目コード CQ4140 担当教員松江克彦 ( 上 ) 平成 26 年度より R or SR 科目に変更され スクーリングが開講されています スクーリングは別教員 ( 滝井泰孝先生 左 西尾雅明先生 中 高野毅久先生 右

第1 総 括 的 事 項

NIRS は安価かつ低侵襲に脳活動を測定することが可能な検査で 統合失調症の精神病症状との関連が示唆されてきました そこで NIRS で測定される脳活動が tdcs による統合失調症の症状変化を予測し得るという仮説を立てました そして治療介入の予測における NIRS の活用にもつながると考えられまし

和歌山県地域がん登録事業報告書

7 対 1 10 対 1 入院基本料の対応について 2(ⅲ) 7 対 1 10 対 1 入院基本料の課題 将来の入院医療ニーズは 人口構造の変化に伴う疾病構成の変化等により より高い医療資源の投入が必要となる医療ニーズは横ばいから減少 中程度の医療資源の投入が必要となる医療ニーズは増加から横ばいにな

Spinal Surgery 標準治療と明日の医療を考える 誌上フォーラム Forum Stratagies & Indications vol.1 上位頚椎の事故外傷 招待コメンテーター : 鈴木晋介 ( 仙台医療センター ) 企画 コメント : 乾敏彦 ( 冨永病

千葉テストセンター発行 心理検査カタログ

2008年6月XX日

H29_第40集_大和証券_研究業績_C本文_p indd

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

当院人工透析室における看護必要度調査 佐藤幸子 木村房子 大館市立総合病院人工透析室 The Evaluation of the Grade of Nursing Requirement in Hemodialysis Patients in Odate Municipal Hospital < 諸

2) 各質問項目における留意点 導入質問 留意点 A B もの忘れが多いと感じますか 1 年前と比べてもの忘れが増えたと感じますか 導入の質問家族や介護者から見て, 対象者の もの忘れ が現在多いと感じるかどうか ( 目立つかどうか ), その程度を確認する. 対象者本人の回答で評価する. 導入の質

CONTENTS

Microsoft Word - 【6.5.4】特許スコア情報の活用

ISO9001:2015規格要求事項解説テキスト(サンプル) 株式会社ハピネックス提供資料

3T MRI導入に伴う 安全規程の変更について

1 48

01.eps


Transcription:

慈恵 ICU 勉強会 2014.10.18 友利昌平

Contents 1 INTRODUCTION 2 GCSの開発と発展 3 GCSの信頼性 4 GCSの不足点 GCSの問題点 5 GCSの補足 6 まとめ 私見

1 INTRODUCTION

Ø 1974 年 The Lancet ある意識障害の評価方法が提案された 後に Glasgow Coma Scale(GCS) と呼ばれる Ø 2014 年 :40 年後の現在 GCS は 世界中で臨床 研究において不可欠な存在 Ø この Personal View は... GCS の開発者たち自身が 当初の目的をどの程度達成されているか評価し 現在の臨床 研究における役割に助言するものである Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

2 GCS の開発と発展

GCS 開発の背景 1970 年代以前 頭部外傷や急性脳障害の患者の評価は困難で 画一的ではなかった 意識レベルの評価 : 明確な定義はなく 一貫性のない方法で評価 comatose sub-comatose obtundation stupor semi-purposeful posturing といった用語に分類 Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

GCS 開発の背景 1974 年 The Lancet で 意識障害の評価方法が提案 刺激への応答 に基づいた意識レベルの評価方法 曖昧な用語の結果生じる混乱に対処 市中病院と高次施設の間で 明確で一貫性のある情報共有が必要とされていた 入院時の状態と転帰の関連性を明らかにする必要性 Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

GCS の誕生

GCS の誕生 The Lancet 1974; 13: 81-84

GCS という評価方法の提案 あらゆる場面で普及するように 特別なトレーニングを受けていない医療スタッフによって簡単に実施できるもの あらゆる場面で出会う 様々な程度の意識障害患者を表現することができる 刺激への反応 を 3 種類の側面から評価する The Lancet 1974; 13: 81-84

GCS という評価方法の提案 ü Eye Opening Spontaneous To speech To pain No response ü Best Verbal Response Orientation Confused conversation Inappropriate speech Incomprehensible speech No response ü Best Motor Response Obeying commands Localising response Flexsor response Extensor response No response The Lancet 1974; 13: 81-84

GCS による評価 The Lancet 1974; 13: 81-84

GCS の発展 Motor は 1974 年オリジナル版では 5 段階であった 1979 年改訂版で Motor の項目が 6 段階に改められた 屈曲反応を正常と異常に分けることで 予後予測に有用であることが示されたため Acta Neurochir Suppl 1979; 28: 13-16 Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

GCS の発展 簡便 情報伝達が容易 臨床的変化を捉えやすい 医療従事者 特に看護師から歓迎された 現在 GCS は 80 以上の国で使用され その 74% の国ではそれぞれの公用語に翻訳されている WHO による ICD-11:injury and neurology section にも GCS は使用されている Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

3 GCS の信頼性

GCS を用いた重症度分類 頭部外傷患者の重症度のスペクトラムは連続的なものであるが GCS の点数をもとに重症度を分類することは今日では common practice である US の 6 箇所の頭部外傷センターにおいて大規模な頭部外傷患者のデータ収集が行われ 1983 年 J. Neurosurg でその pilot phase が発表された これは GCS 8 点以下を重症頭部外傷と定め その患者について受傷機転や転帰を含めた様々なデータを収集するものであった J. Neurosurg 1983; 59: 276-284 Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

GCS を用いた重症度分類 今日私たちが用いている GCS 1-8 点を重症 9-12 点を中等症 13-15 点を軽傷とする重症度の分類はこれに端を発する 科学的というよりは即興的な分類ではあったが 重症度を summarize することには有用であった J. Neurosurg 1983; 59: 276-284 Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

GCS を用いた重症度分類 BMJ 2000; 320: 1631-35

GCS と予後 転帰の関連 重症度の指標としての GCS の妥当性 一般に GCS と他の臨床的特徴 機能的 代謝的特徴 構造的特徴と outcome との関係を評価する GCS の点数と種々の outcome との相関関係を示した研究がある Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

GCS と早期脳障害指標との関連 Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

GCS と早期脳障害指標との関連 Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

GCS と臨床転帰の関連 BMJ 2008; 336: 425-429

GCS と臨床転帰の関連 BMJ 2008; 336: 425-429

GCS と臨床転帰の関連 BMJ 2008; 336: 425-429 Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

4 GCS の不足点 GCS の問題点

GCS の信頼性を弱める因子 特に GCS の各項目が 評価不能 とみなされる点について述べる 今日 重症外傷患者はしばしば受傷の時点で鎮静 気管挿管されており GCS の各項目が評価不能であるとみなされることは 1974 年と比較して増加している 評価不能であるとみなされる原因により 各々の 失われたデータ へのアプローチ方法は異なる Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

GCS の各項目が評価不能とみなされる因子 薬物 ( 麻酔薬 鎮静薬 筋弛緩薬など ) 脳神経障害 中毒 ( アルコール 薬物 ) 聴力障害 気管挿管 気管切開 四肢 脊髄障害 失語症 認知症 精神疾患の存在 眼球外傷 言語 文化的問題 眼窩腫脹 Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

交絡因子へのアプローチ Ø 一時的な鎮静の中止 (wake-up test) Ø 挿管 気切患者の V を VT とする Ø 鎮静されている患者 評価不能の患者に対し 1 点を付けない Ø 統計に基づく補完 挿管患者の verbal score を開眼 運動反応に基いて補完する Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

Verbal score の補完 J Trauma 1996; 41(3): 514-522 J Trauma 1998; 44(5): 844-845

Verbal score の補完 GCS の各項目の間には数学的な関連があるという仮定のもと 挿管された患者の Verbal score をその他の項目から計算する方法を提案する この関連は 1 次 2 次 3 次の多重線形回帰式を用いて容易にモデル化される J Trauma 1996; 41(3): 514-522 J Trauma 1998; 44(5): 844-845

Verbal score の補完 J Trauma 1996; 41(3): 514-522 J Trauma 1998; 44(5): 844-845

Verbal score の補完 J Trauma 1996; 41(3): 514-522 J Trauma 1998; 44(5): 844-845

5 GCS の補足

GCS を有効に臨床に用いるために.. 各項目の反応をそれぞれ独立して記録する 最良運動反応が 6 段階 全体で 15 点が満点であるスケールを用いる 評価不能であるとみなされる項目に 代替として 1 点を付けることを避ける 評価方法の標準化を改善していく 予後評価に用いる場合は 他の因子と組み合わせる ( 年齢 瞳孔の反応 画像所見 ) Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

GCS がカバーしない領域へ Lancet Neurol 2014; 13: 755-7

GCS がカバーしない領域へ Minimally consious state という概念 最小限かつ変動する意識状態を示すが コミュニケーションは不可能である状態の患者を表現する概念 Lancet Neurol 2014; 13: 755-7

Full Outline of UnResponsiveness(FOUR) Ann Neurol 2005; 58: 585-593

Full Outline of UnResponsiveness(FOUR) 追視を評価する 言語反応は問わない 脳幹機能を評価する 以上より GCS の評価項目のみでは検出できない意識状態についても言及可能である 予後について GCS よりも多くの情報を提供できる可能性がある Lancet Neurol 2014; 13: 755-7

GCS は他の方法に代替されうるか GCS のように定着した medical standard が一朝一夕に他のものに取って代わられるようなことは考えにくい 将来的には... 多次元の診断評価および予後評価が ゲノミクス バイオマーカー 電気生理学 神経画像技術から得られる情報と 標準化された行動スケール ( 評価者に非依存的な 自動化された瞳孔および追視の評価を含む ) から得られる情報を統合するだろう Lancet Neurol 2014; 13: 755-7

6 まとめ 私見

Conclusions and future research GCS は リスク評価 モニタリング 重症度分類 予後を含んだ様々な適応をもち 臨床のツールとして進化してきた 40 年の後 GCS は広く受け入れられることで妥当性を示し その目的は大筋で達成されたといえる GCS のオリジナル論文は 臨床神経外科の論文で最も引用されたものであり続けている GCS を中核とした大規模国際研究も進行中である Lancet Neurol 2014; 13: 844-54

私見 GCS は様々な場面で有用なツールである 特に予後予測に関して GCS を補完するような意識のスケールがある GCS のみで予後評価を行うべきではない これは 意識していないながら日常臨床で実践している? GCS を今後も同様に使い続けていくだろう