Q 1 VRE とは どんな菌ですか? 2 VRE は多剤耐性菌のひとつですか? VRE と VRE 感染症一般について A 腸球菌は 広義には 乳酸菌 の一種とも考えられ 乳製品の製造や 整腸剤に加えられることもあります ヒトの腸管にいる細菌であり 健常な方には病原性はありませんが 免疫が低下した方には感染症を引き起こすことがあります VRE は 腸球菌の中で とくにバンコマイシンという抗菌薬が効きにくくなった細菌のことを指しますが 病原性については通常の腸球菌と同様で 知らないうちに保菌している人もいます そうです 腸球菌はもともと有効な抗菌薬の少ない細菌です VRE は 普通の腸球菌なら効くはずのバンコマイシンという抗菌薬が効かなくなっている ( これを耐性といいます ) ため有効な抗菌薬は非常に少なく 多剤耐性菌のひとつといえます 3 VRE はどのようにうつるのですか? VRE は接触によって広がります VRE をもっているヒト ( 保菌者 ) の便から排泄された VRE が 保菌者の手からヒトへの直接的伝播 あるいは医療従事者やベッド柵 トイレ ドアノブなどの環境を介した間接的伝播によって広がっていきます 4 5 VRE を保菌したかどうかは どうしたらわかりますか? VRE の保菌状態と感染症発症はどのように違うのですか? VRE が腸管内に入ってきても ( 保菌 ) 通常は症状はありません VRE を対象とした検査をすることで 保菌者であるか否か確認できます 検査は便や直腸ぬぐい液を使って行います 腸管の中に VRE がいるだけで何の病気も起こしていない状態を 保菌 といいます VRE が便や尿以外から検出され VRE によって患者様の身体に問題がおきている場合には 感染症 をおこしていると考えます 6 VRE に感染するとどうなりますか? VRE は病原性が非常に弱いので 健康な方が保菌しても感染症を引き起こすことはほとんどありません しかし悪性疾患をお持ちの方や術後の患者様など免疫が低下した方には 血流感染症 心内膜炎 尿路感染症 創部感染症等を起こすことがあり治療が必要となります VRE は多剤耐性菌のため 感染症を起こすと予後を悪化させる可能性があります 7 下痢しているのですが VRE ではないでしょうか? VRE では下痢をおこすことはありません その他の原因については 必要に応じて医師にご相談ください
8 そんなに怖くない細菌とのことですが どうして大騒ぎになるのでしょうか? VRE の病原性は弱いのですが 免疫が低下した方では感染症の原因となることがあります (Q6 参照 ) VRE は通常の便検査ではみつかりません VRE をねらって検査をしないと保菌の有無がわからないため 知らない間に菌が広がっていることがあり 上記のような患者様が入院している病院では特に注意が必要と考えられています
9 VRE を保菌すると退院できないのですか? VRE 陽性患者様からの質問 入院の原因となった疾患が治れば通常通り退院できます VRE を保菌している方が施設に入所される場合 受け入れ態勢が整うまでは退院延期となることがあります 10 VRE を保菌しているといわれました 消えるまで入院させてほしいのですが VRE はいったん保菌すると消えるまで長期間 ( 数か月 ) かかるといわれていますので 消えるまで入院していただくことはできません ご理解ください 11 VRE 保菌者が退院した後に 一般の人と接触して大丈夫ですか? 12 手指衛生について教えてください 13 VRE は家族や知り合いにうつりませんか? VRE は健常者にとってはほとんど無害な細菌であり また一般の方も知らないうちに保菌している可能性もあります 手洗い ( とくにトイレ使用後 ) と手指消毒を励行していただければ伝播を抑えることが出来ます 手指衛生には 流水とせっけんによる 手洗い と速乾性手指消毒薬による 手指消毒 があります 目に見えるよごれがある場合には 手洗い が推奨されます 手指消毒 のときには消毒薬 ( アルコールなど ) を一回当たり適切な量をお使いください VRE は腸管にすんでいて便とともに排出されますので トイレ後などに石鹸と流水で手洗いを励行していただければ うつる可能性を下げることができます 一定期間が過ぎると VRE はいなくなるといわれています 14 VRE が消えたかどうかはどうやったわかりますか? VRE が陽性の患者様は担当した診療科で 3 か月後に便または直腸ぬぐい液で検査を致します 一度 陰性になっても 抗菌薬を使用したときなどには再度陽性になることがありますので 引き続き手指衛生の励行をお願い致します 15 家族の検査はしてもらえますか? 16 VRE 感染症を発症したら 治療費はどうなりますか? 健常人は保菌者になりにくいといわれており また仮に保菌していても無害な菌ですので検査は不要と考えております もしどうしても検査をご希望でしたら 当院総合診療科 ( 通常の外来保険診療となります ) で検査を行いますのでご相談ください VRE 感染症の治療にかかった費用につきましては, 通常通り 定められた保険点数の請求をさせていただきます
17 全棟スクリーニングのあとに入院したのですが 自分も検査をしてもらえますか? VRE 陽性者以外からの質問 今後は 必要と判断される病棟毎に時期をみてスクリーニング検査を行っていきます スクリーニング時期に入院されていない患者様が検査を希望される場合には 総合診療科で検査を行います ( 保険診療となります ) 18 19 獨協医科大学越谷病院で外来診療を受けたいのですが うつりませんか? マスクは必要ですか? 今後 入院予定なのですが VRE がうつるのではと 心配です 外来で VRE が伝播されることは極めて少ないと考えております また VRE はインフルエンザのようにせきやくしゃみではうつりませんので VRE 伝播予防のためのマスクは不要です 手洗いと手指消毒が最も有効な方法です 御心配をおかけして申し訳ありません 当院では 私立医科大学病院感染対策協議会の改善支援のご意見等も参考にして VRE 保菌者の正確な把握 手指衛生 接触予防策と環境整備など 職員一同 より強化した VRE 伝播予防対策に取り組んでおります 20 VRE 保菌者のお見舞いにいきたいのですが 大丈夫ですか? 患者様やベッド周囲の環境からの伝播を防ぐため 手袋とエプロンの着用をお願いしております 面会終了後は 手洗いあるいは手指消毒 (Q12 参照 ) をしてください 21 産婦人科で健診を受けるのですが 胎児には影響ないですか? 外来で VRE が伝播されることは極めて少ないと考えております またもし仮に保菌した場合にも 腸管の中に定着するため胎児への影響はないものと考えております
22 どうして VRE が広がったのですか? アウトブレイクと感染対策に関する質問 今回のアウトブレイクについては 入院中の外国から来られた患者様が保菌していた VRE が他の入院患者様に広がったものと考えております 多剤耐性菌は 日本国内より海外で蔓延しています 今後は 海外から来られた方が入院される際には個室に入院していただくなどの対応を強化していきます 23 持ち込み とはどういうことですか? 市中にも広がっているということですか? 国内では VRE はまだあまり広がっていませんが 入院前にすでに VRE を保有していて入院後のスクリーニング検査で判明するという場合があります このような場合を 持ち込み と判定しています 当院では 持ち込み症例からの VRE 伝播を抑制するため 今後も入院時の VRE スクリーニングを実施していきます 24 いつごろから院内で広まっていたのですか? 25 どうしてこんなに広まったのですか? 9 月に海外からの患者様を受け入れる前にも 当院ではバンコマイシン長期使用者を対象に VRE スクリーニングを実施しておりましたが検出はほとんどありませんでした このことからも 広がったのは本患者様を受け入れた後からと考えております VRE が広がったのは 主に重症患者様が入院する病棟でした 人工呼吸器 血管内カテーテル 尿道カテーテル 抗菌薬使用歴や手術歴のある患者様が多いため 定着した VRE が増殖し 伝播しやすい環境にあったものと考えております 26 今後の感染対策について教えてください VRE スクリーニングの検出率は高くないので 検査は複数回行う予定です さらに 私立医科大学病院感染対策協議会の改善支援のご意見も参考にしながら VRE スクリーニングによる保菌者の早期把握 保菌者からの伝播予防 手指衛生 環境整備 面会の制限 抗菌薬適正使用 VRE 保菌者とその家族へ接触予防策と手指衛生のお願いなどを徹底していきます 27 なぜ入院患者全員に検査をする必要があるのですか? VRE を保菌している患者様を早期に把握して伝播予防の対策をとることと VRE 伝播予防策が確実にできているかの効果判定のために検査をさせていただいております 28 なぜ入院のたびに検査をする必要があるのですか? 過去に陰性であっても その後の経過で陽性になることもあります 院内への VRE 持ち込みを早期に把握し伝播予防策をとるためです
29 入院時に保菌検査をしたばかりですが また検査をしなくてはいけないのですか? 30 どのような状況になったら終息となるのですか? VRE を保菌していても 1 回の検査では陽性にならないことがあるといわれています 保菌者を正確に把握するためには複数回の検査が必要と考えています 病院内で新たな VRE 保菌者が出ない状況が続いた場合に 終息とします 31 終息したあとのスクリーニングは必要ですか? いったん終息と判断しても 新たな保菌者が出てこないかを把握するためのスクリーニング検査は続けます 32 外部専門家による対策会議 とありましたが どんな人たちが参加しているのですか? 私立医科大学病院感染対策協議会から派遣される 感染制御を専門とする医師や看護師たちが参加しています