研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性

Similar documents
佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

h29c04

頭頚部がん1部[ ].indd

死亡診断書・死体検案書

第2次JMARI報告書

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

病理剖検登録の手引き_剖検情報


実地医家のための 甲状腺エコー検査マスター講座


耐性菌届出基準

ここが知りたい かかりつけ医のための心不全の診かた

入した場合には 経気道的な散布巣として臓側胸膜から 2-3mm 離れた内側に小葉中心性粒状影や tree-in-bud といわれる小葉中心性病変を呈しますが この所見をみた場合には呼吸器感染症を強く疑います 汎小葉性病変は 小葉間隔壁に囲まれた ほぼ 1, 2cm 四方の小葉内が細胞浸潤や滲出物ある

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

平成20年度 大学院シラバス(表紙)

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

2009年8月17日

がん登録実務について


厚生労働省科学研究費補助金研究事業 ( 地域医療基盤開発推進研究事業 ) 分担研究報告書 東海大学における実施報告書 長村義之 1) 梶原博 1) 中村直哉 1) 山下智裕 2) 今井裕 2) 長谷川巖 3) 大澤資樹 3) 1) 東海大学医学部基盤診療学系病理診断学 2) 画像診断学 3) 法医学

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

P001~017 1-1.indd

めまい

密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

院内がん登録について 院内がん登録とは がん ( 悪性腫瘍 ) の診断 治療 予後に関する情報を収集 整理 蓄積し 集計 解析をすることです 登録により収集された情報は 以下の目的に使用されます 診療支援 研修のための資料 がんに関する統計資料 予後調査 生存率の計測このほかにも 島根県地域がん登録

4 月 20 日 2 胃癌の内視鏡診断と治療 GIO: 胃癌の内視鏡診断と内視鏡治療について理解する SBO: 1. 胃癌の肉眼的分類を列記できる 2. 胃癌の内視鏡的診断を説明できる 3. 内視鏡治療の適応基準とその根拠を理解する 4. 内視鏡治療の方法 合併症を理解する 4 月 27 日 1 胃

福島県のがん死亡の年次推移 福島県におけるがん死亡数は 女とも増加傾向にある ( 表 12) 一方 は 女とも減少傾向にあり 全国とほとんど同じ傾向にある 2012 年の全のを全国と比較すると 性では高く 女性では低くなっている 別にみると 性では膵臓 女性では大腸 膵臓 子宮でわずかな増加がみられ

H28_大和証券_研究業績_C本文_p indd

石綿による健康被害の救済に関する法律の解説

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

エントリーが発生 真腔と偽腔に解離 図 2 急性大動脈解離 ( 動脈の壁が急にはがれる ) Stanford Classification Type A Type B 図 3 スタンフォード分類 (A 型,B 型 ) (Kouchoukos et al:n Engl J Med 1997) 液が血管

かった また患者の黒色便が消失したこともあり, 微小な病変が凝固因子製剤の補充により改善した可能性があると考え今回はこれ以上の追加精査は行わず, 再度増悪時にダブルバルーン内視鏡などを考慮する方針とし, 患者は 1 月 14 日に名大病院を退院した 患者は退院後も定期的に名大病院血液内科外来を受診し

院内がん登録について 院内がん登録とは がん ( 悪性腫瘍 ) の診断 治療 予後に関する情報を収集 整理 蓄積し 集計 解析をすることです 登録により収集された情報は 以下の目的に使用されます 診療支援 研修のための資料 がんに関する統計資料 予後調査 生存率の計測このほかにも 島根県地域がん登録

る 飼料は市販の配合飼料を使用している 発生場所である肥育豚舎エリアの見取り図を図 1に示した 今回死亡豚が発生したのは肥育舎 Aと肥育舎 Dで 他の豚舎では発生していないとの事であった 今回病性鑑定した豚は黒く塗りつぶした豚房で飼育されていた なお この時点では死亡例は本場産の豚のみで発生しており

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

部位別 施設名 総数 がん診療連携拠点病院院内がん登録 2014 年集計 口腔咽頭 食道胃結腸直腸大腸肝臓 胆嚢胆管 膵臓喉頭肺 埼玉県立がんセンター 3, さいたま赤十字病院 1,456-2

1)表紙14年v0

<30358CC48B7A8AED C838B834D815B8145E4508CB E089C88A772E786477>

情報提供の例

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or


  36 特発性間質性肺炎 臨床調査個人票     (1

Case  A 50 Year Old Man with Back Pain,Fatigue,Weight Loss,and Knee Sweling

資料 2-5 ヒブワクチン及び小児用肺炎球菌ワクチンに関する 死亡症例概要 ( 平成 23 年 6 月 4 日までの報告分 ) 同時接種の症例 1 症例 3 及び単独接種の症例 2 については 委員及び参考人限り

06_改訂のお知らせ & MR勉強用資料作成

中皮腫と癌腫の鑑別に有用である ( ウ )fluorescence in situ hybridization(fish) 法による p16 遺伝子欠失の解析上皮型中皮腫と反応性中皮細胞の鑑別や 肉腫型中皮腫と線維性胸膜炎の鑑別に有用である ( エ ) Glucose transporter-1(g

<4D F736F F D E9197BF312D37817A8E EA C789C A8DC58F492E646F6378>

「             」  説明および同意書

パスを活用した臨床指標による慢性心不全診療イノベーション よしだ ひろゆき 福井赤十字病院クリニカルパス部会長循環器科吉田博之 緒言本邦における心不全患者数の正確なデータは存在しないが 100 万人以上と推定されている 心不全はあらゆる心疾患の終末像であり 治療の進步に伴い患者は高齢化し 高齢化社会

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

094.原発性硬化性胆管炎[診断基準]

BMP7MS08_693.pdf

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

<303491E592B BC92B08AE02E786C73>

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

<4D F736F F D E7396AF8CF68A4A8D758DC08B E690B6>

1.中山&内田 P1-9

4. 膵腫瘤存在診断 A) 確診 1 粋の明らかな異常エコー域 ( 注 ) 2 粋の異常エコー域が以下のいずれかの所見を伴うもの a) 尾側膵管の拡張 b) 膵内または膵領域の胆管の狭窄ないし閉塞 c) 膵の限局性腫大 B) 疑診 1 膵の異常エコー域 2 膵領域の異常エコー域 3 膵の限局性腫大

2009年8月17日

薬剤師のための災害対策マニュアル

<4D F736F F D F90D290918D64968C93E08EEEE1872E646F63>

④鬼塚伸也

03 H22ネット(死亡).xls

1 8 ぜ 表2 入院時検査成績 2 諺齢 APTT ALP 1471U I Fib 274 LDH 2971U 1 AT3 FDP alb 4 2 BUN 16 Cr K4 O Cl g dl O DLST 許 皇磯 二 図1 入院時胸骨骨髄像 低形成で 異常細胞は認め

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

食道癌手術さて 食道は文字どおり口 咽頭から胃まで をつなぐ管状の器官でまさに食物を運ぶ道です そして縦隔と呼ばれる背骨の前方の狭い領域にあり 大動脈 心臓そして気管などと密に接しています さらに 気管とは私たちの身体が構成される過程で同じところから発生し 非常に密な関係にあります さらに発生の当初

2. 延命措置への対応 1) 終末期と判断した後の対応医療チームは患者および患者の意思を良く理解している家族や関係者 ( 以下 家族らという ) に対して 患者が上記 1)~4) に該当する状態で病状が絶対的に予後不良であり 治療を続けても救命の見込みが全くなく これ以上の措置は患者にとって最善の治

スライド 1

気管支学 Vol 41, No 4

資料4-2メイン

1981 年 男 全部位 C00-C , , , , ,086.5 口腔 咽頭 C00-C

Microsoft Word - 01_2_【資料1】ICD最近の動向(脳卒中、認知症)170626(反映)

目 次 統計の説明 部位( 中分類 ) 別男女別腫瘍数 1 部位別腫瘍数 < 総数グラフ> 2 部位別腫瘍数 < 男性グラフ> 3 部位別腫瘍数 < 女性グラフ> 4 部位( 中分類 ) 別年齢階層別腫瘍数 5 部位( 中分類 ) 別来院経路別腫瘍数 6 来院経路別腫瘍数 <グラフ> 7 部位( 中

Microsoft Word  医療事故調査制度QA改定(確定)

富士

スライド タイトルなし

330 先天性気管狭窄症 / 先天性声門下狭窄症 概要 1. 概要気道は上気道 ( 鼻咽頭腔から喉頭 ) と下気道 ( 気管 気管支 ) に大別される 指定難病の対象となるものは声門下腔や気管に先天的な狭窄や閉塞症状を来す疾患で その中でも先天性気管狭窄症や先天性声門下狭窄症が代表的な疾病である 多

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

主な検査所見 ( 月 日 )Hb 10.9 g/dl, 血小板 13.2 万 /μl, アルブミン 3.1 g/dl,ast 27 IU/l, ALT 27 IU/l,LDH 475 IU/l,BUN 16 mg/dl, クレアチニン 0.56 mg/dl, 血糖 173 mg/dl,hba1c 7

はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

の場合は特徴的なものを挙げることは困難である 肝障害のタイプからみた所見の特徴肝細胞障害型 胆汁うっ滞型 混合型に特徴的な所見を挙げることは困難である なお肝不全に至った場合 播種性血管内凝固症候群 (DIC) を併発すれば血小板減少 出血傾向に伴う貧血を認め 感染を併発すれば白血球増多や血液像で核

第71巻5・6号(12月号)/投稿規定・目次・表2・奥付・背

臨床研究実施計画書

障害程度等級表 級別じん臓機能障害 1 級 じん臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 3 級 じん臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 じん臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

エコーによる肺病変の診断

目次 1. 地域医療連携パスとは 肝疾患医療連携パスの運用方法について... 3 (1) 特長 (2) 目的 (3) 対象症例 (4) 紹介基準 (5) 肝疾患医療連携パスの種類 (6) 運用 3. 肝疾患医療連携パス... 7 (1) 肝疾患診断医療連携パス ( 医療者用 : 様式

第58回日本臨床細胞学会 Self Assessment Slide

平成17年

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房

S-1 急性肺血栓塞栓症の項参照 144 頁 緊張性気胸などをま 一過性意識障害 と失神 肺水腫 肺血栓塞栓症 ず鑑別する その他 COPD 増悪を含む などの呼吸器疾患 心不全 急性 慢性 急性心不全の項参照 139 頁 などの循環器疾患以外にも 貧血 神経筋疾患 代謝疾患 S-2 意識障害 精神

3 成人保健

表 19 死亡数 ( 場所 区 ) 年次 総数 施設内 施設外 総数病院診療所老健施設助産所老人ホーム総数自宅その他 平成 23 10,380 9,363 8, , ,389 9,324 8, ,065 88

通常の市中肺炎の原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌に加えて 誤嚥を考慮して口腔内連鎖球菌 嫌気性菌や腸管内のグラム陰性桿菌を考慮する必要があります また 緑膿菌や MRSA などの耐性菌も高齢者肺炎の患者ではしばしば検出されるため これらの菌をカバーするために広域の抗菌薬による治療が選択されるこ


Transcription:

研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性壊死性肺アスペルギルス症の診断となる 1 か月前にも肺炎で入院し 軽快退院したが 1 週間後より呼吸状態が再び悪化して再入院 感染 心不全に対する加療を行ったが 突然の呼吸の薄弱化を認め それと共に脈拍 血圧も低下して死亡した 生前画像による評価の要点 生前 CT では 左肺を中心に線維化 器質化が認められ 肺アスペ 死後画像による評価の要点 死後 2 時間 30 分で Ai( マルチスライス CT) 施行 生前画像に加えて 右肺にも肺炎像 胸水が認められる ( 図 2) 解剖後 喉頭部を肺野条件で見直したところ 喉頭にモヤモヤした陰影を認めた ( 図 3) 解剖学的診断の要点 1. 右肺びまん性肺胞傷害 2. 左陳旧性胸膜炎 + 器質化肺炎 ( 無気肺状態 ) 3. 痰による気管の閉塞 ( 図 4) 図 1; 死亡前 1 週間の CT 像 左肺に線維化 器質化が目立つ 図 2: 死後 CT 像 右肺炎および胸水が認められる 79

図 3: 死後 CT 像 喉頭に内腔を埋める陰影が認められる 喉頭蓋 声帯 気管 図 4 解剖時の肉眼像 声門下に泡沫状の痰の貯留があり 内腔はほぼ閉塞していた 死後画像 (PMI)- 剖検 (autopsy) 対比による死後画像 (PMI) の 5 段階評価の結果 1. 死後画像 (PMI) のみで病態解析および死因究明が可能 ( 病理解剖とほぼ同等である : 主病変の画像診断と病理診断が一致し 副病変あるいは合併症についてもほぼ一致する ) 2. 死後画像 (PMI) のみで病態解析および死因究明はほぼ可能 ( 病理解剖で指摘された項目のうち 主病変については一致するが副病変や合併症については一致しない ) 3. 死後画像 (PMI) のみでは病態解析において一致しない項目もあるが 死因についてはほぼ指摘できる 4. 死後画像 (PMI) のみでは病態解析は部分的に可能であるが 死因についてはその可能性を指摘するにとどまる 5. 死後画像 (PMI) のみでは病態解析および死因究明は困難 6. その他 80

死後画像 - 剖検対比についての本症例の代表的コメント 痰による窒息が CT で評価できた症例 痰のつまりと死因との関係が評価困難であった 提示者による症例の総括 比較的短期間に画像上の大きな変化があり 死後画像の有効性は高い症例であった Ai では咽頭 気管の評価が重要であり CT は気道の評価にも役立つ 本症例のような死戦期の喉頭の変化などをどの程度ダイレクトに死因として診断に反映させるかは検討の余地がある 一致性と有用性の評価 81

病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 2 検討の概要ス CT) 施行 58 時間で剖検を行った 臨床診断 脳梗塞 臨床経過概要 入院当日昼 宿泊所で転倒し 30 分後に左半身を下にして倒れているのを発見される 救急搬送時 左上下麻痺あり 呂律が廻らず 応答がはっきりしなかった 頭部 CT にて右被殻付近に LDA を認め 脳梗塞の診断で入院となる 入院時から左肺上葉に炎症所見あり 加療にかかわらず増悪 意識障害も増悪し 第 18 病日に死亡した 親族の所在が不明で 死体解剖保存法に則り医師 2 名が必要と認め 死後 42 時間で Ai( マルチスライ 生前画像による評価の要点 生前画像の提示はない 死後画像による評価の要点 死後 CT により 喉頭正門部より上の部分に density の高い領域が認められた ( 図 1) 解剖学的診断の要点 1. 肺炎 ( 器質化を伴うびまん性肺胞傷害 ) 2. 多発脳梗塞 3. 舌と喉頭蓋の間に固形物充填 ( 図 2) 図 1. 死後 CT 像 喉頭正門部より上の部分に density の高い領域が認められる 82

図 2 解剖時の肉眼像 舌根部と喉頭蓋の間に固形物を認める 喉頭蓋 固形物 死後画像 (PMI)- 剖検 (autopsy) 対比による死後画像 (PMI) の 5 段階評価の結果 1. 死後画像 (PMI) のみで病態解析および死因究明が可能 ( 病理解剖とほぼ同等である : 主病変の画像診断と病理診断が一致し 副病変あるいは合併症についてもほぼ一致する ) 2. 死後画像 (PMI) のみで病態解析および死因究明はほぼ可能 ( 病理解剖で指摘された項目のうち 主病変については一致するが副病変や合併症については一致しない ) 3. 死後画像 (PMI) のみでは病態解析において一致しない項目もあるが 死因についてはほぼ指摘できる 4. 死後画像 (PMI) のみでは病態解析は部分的に可能であるが 死因についてはその可能性を指摘するにとどまる 5. 死後画像 (PMI) のみでは病態解析および死因究明は困難 6. その他 一致性と有用性の評価 死後画像 - 剖検対比についての本症例の代表的コメント 気道の閉塞は Ai で確認できる可能性が高い ただし 気道内の内容物と死因との関係の評価は難しい 解剖で気管に割を入れてしまうと 気管内に充満していたものでも 充満していたということがわからなくなるので 解剖前の画像によるスクリーニングは有用であろう 提示者による症例の総括 気道内容物を死後画像でとらえることができた症例である ただし 解剖で確認された舌根部と喉頭蓋の間の固形物は フィブリンと粘液の固まった古いもので これによる窒息は否定的であった 肺には 器質化を伴うびまん性肺胞傷害が認められ 死因として矛盾しなかった 一般に 癌の終末期などには気道内の痰の貯留はしばしば遭遇するものであるが 窒息などといった点が強調されると 異常死や医療関連死などとされてしまう可能性があり 画像所見の解釈には注意が必要である 83

昭和大学症例 1 検討の概要 病理解剖症例 70 歳台 女性 臨床経過概要 2 週間前に他院に入院 血液検査で貧血 血小板減少を認め CT で胸水貯留と肝脾腫を認めた 全身状態悪化のため当院に転院 前医を出るときから 酸素 10 L/min 投与にても SpO 2 70% 台であった 当院到着後 すぐに呼吸停止 CPR を施行した 一旦 心拍再開したが 当日死亡した 生前画像による評価の要点 生前画像の提示はない 死後画像による評価の要点 死後約 1 時間 20 分で死後 CT 画像を撮影 肝脾腫 ( 図 1) が指摘された 図 1 死後 CT 像 著明な肝 脾の腫大が見られるが 腫瘍の存在は指摘しえない 解剖学的診断の要点 1. 肝悪性腫瘍 : 暗赤色調 境界不明瞭な原発巣と考えられる腫瘍 + 転移 : 肝内 両側肺 胸膜 2. 両肺うっ血水腫 + 胸水貯留 3. 出血傾向 4. 求心性左心室肥大 ( 軽度 ) 提示者による症例の総括 死後画像で びまん性の肝腫大がみられたが 腫瘍は指摘できなかった 剖検の結果 肉眼的にも特殊な悪性腫瘍 ( 非上皮性などが推定される ) であり 腫瘍の境界が不明瞭であることから CT では指摘できなかったと思われた 死因は肝悪性腫瘍および呼吸不全と考えられた 84