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Transcription:

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本日の発表 1. ICHとは 2. ICH-E6(R2) 改訂の内容 3. Sponsor への影響 4. 日本の臨床試験への影響 5. まとめ 2

ICH 発足の経緯 日本 米国 ヨーロッパでは 医薬品の販売開始前に政府による評価 承認を行うため それぞれ独自に法制度を整備してきました 特に 1960 年代から 1970 年代にかけては 各国で急速に法令やガイドラインが整備され 新医薬品の品質 有効性および安全性についてのデータ報告 評価の体制が整いました しかし 新医薬品の品質 有効性 安全性を評価するという基本は共通であったものの 承認申請の際の詳細な技術的要件は地域により異なっていました 製薬企業の国際化に伴い 各地域の規制要件を満たすため 時間とコストのかかる重複した試験を数多く行う必要がありました そのため 拡大する医薬品開発コストへの懸念を背景に 必要な患者に安全で有効な新医薬品をより早く提供するため 各地域の医薬品承認審査の基準の合理化 標準化が必要となり 1990 年 4 月 日本 米国 ヨーロッパの各医薬品規制当局と業界団体の 6 者により ICH が発足しました また 2015 年 10 月に International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use ( 日米 EU 医薬品規制調和国際会議から International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for human use ( 医薬品規制調和国際会議 ) に変更されました < PMDA Web ページ : ICH 医薬品規制調和国際会議より https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0014.html > 3

ICH の目的と役割 ICH の目的は 新医薬品を時宜に即し また継続的に患者が利用できるようにすること ヒトにおける不必要な臨床試験の重複を避けること 安全性 有効性及び品質の高い医薬品が効率的に開発 登録及び製造されること 及び安全性及び有効性が損なわれることなく動物試験が軽減されることに資する技術的要件における国際調和を促進することで公衆衛生を促進することです < PMDA Web ページ : ICH 医薬品規制調和国際会議 https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0014.html より一部抜粋 > 4

ガイドラインの策定プロセス ステップ1 ステップ2a ステップ2b ステップ3 ステップ4 ステップ5 新しい調和ガイドラインを作成する提案が新しいトピックとして総会により承認を受けると 専門家作業部会が設置されます 専門家作業部会では協議を重ねて技術ドキュメント ( ガイドライン案のベース ) を作成します 技術ドキュメントの確認ステップ 1 の技術ドキュメントが総会で承認されるとステップ 2a となります ガイドライン案の採択ステップ 2a の技術ドキュメントをベースにしたガイドライン案が総会の規制当局代表者により承認されるとステップ 2b となります ICH の各地域 国の規制当局 ( 日本では厚生労働省 ) からガイドライン案が公表され 公に意見が求められます 寄せられた意見に基づいて専門家作業部会で協議が行なわれ ガイドライン案が修正されます ガイドライン案が総会の規制当局代表者によって最終的に合意 採択されるとステップ 4 となります ICH の各地域 国の規制当局において それぞれの手続きにしたがってガイドラインが実施されます 日本では 厚生労働省医薬 生活衛生局から通知されます < PMDA Web ページ : ICH 医薬品規制調和国際会議 https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0014.html より一部抜粋 > 5

ICH の組織体制の改変 ICH 協会の設立 スイスに法人を設置 日米 EU3 極からグローバルな枠組みへ組織体制を含めて変更された (2015 年に協会が設立 2016 年 1 月稼働開始 ) 構成 : 総会 執行委員会 事務局 監査 総会 : 全会員で構成 ( 最高決定機関となる ) 執行委員会 : 開始 2 年間は 8 常任委員 後に 拡大 ( 非常任の追加 : 行政 業界 ) 常任委員 : 非改選 創始団体 (EC, FDA, MHLW, EFPIA, PhRMA, JPMA) 常任委員 : 非改選 行政 ( カナダ厚生省 スイス連邦医薬品庁 ) 非常任委員 : 改選 ( 任期 4 年 ) 総会で選出( 行政 業種別グローバル業界代表 ) オブザーバー : 行政 (WHO) 業界(IFPMA) < 製薬協 Web ページ : (ICH ) 即時報告会 http://www.jpma.or.jp/information/ich/ich_list.html 第 31 回 ICH 即時報告会 第 32 回 ICH 即時報告会から抜粋 6

本日の発表 1. ICH とは 2. ICH-E6(R2) 改訂の内容 3. Sponsor への影響 4. 日本の臨床試験への影響 5. まとめ Step 4 (R2), Dated 9November 2016 <http://www.ich.org/products/guidelines/efficacy/article/effic acy-guidelines.html> 7

経緯 2013 年 11 月 : 2014 年 4 月 : 2014 年 11 月 : 2015 年 6 月 : 2015 年 11 月 16 日 : 2016 年 6 月 16 日 : 2016 年 11 月 9 日 : 2017 年 6 月 : ICH 大阪会合において FDA から新規トピックの提案 : Assessment of Clinical Trial Quality Clinical Trial Quality に関する Addendum または Q&A を ICH E6(R1) ( 現行の ICH GCP) に付録として追加する 旨の draft Concept Paper 等が運営委員会会合で了承 ICH リスボン EWG 会合 ICH 福岡 EWG 会合 (Step 2 合意 ) 日本でのパブコメ募集 (~2016 年 1 月 15 日 ) ICH リスボン EWG 会合 (Step3 合意 ) ICH 大阪会議 (Step4 サインオフ ) EU Effective 8

前提条件 決定事項 ( 前提条件 ) 検討方針既存のガイドラインは改訂しない 新規の検討事項を明記のみとする 体裁 記載方式 ADDENDUM として 既存のガイドラインに明確に判るように挿入する 明記箇所のみを添付する形式とはしない 9

記載例示 < 記載例 1> 1.62 Well-being (of the trial subjects) The physical and mental integrity of the subjects participating in a clinical trial. ADDENDUM 1.63 Certified Copy A copy (irrespective of the type of media used) of the original record that has been < 記載例 2> 2.10 All clinical trial information should be recorded, handled, and stored in a way that allows its accurate reporting, interpretation and verification. ADDENDUM This principle applies to all records referenced in this guideline, irrespective of the type of media used. 10

改訂内容 (1) 次の項に ADDENDUM の文章が挿入された : Introduction, 1.63, 1.64, 1.65, 2.10, 2.13, 4.2.5, 4.2.6, 4.9.0, 5.0, 5.0.1, 5.0.2, 5.0.3, 5.0.4, 5.0.5, 5.0.6, 5.0.7, 5.2.2, 5.5.3 (a), 5.5.3 (b), 5.5.3 (h), 5.18.3, 5.18.6 (e), 5.18.7, 5.20.1, 8.1 計 26 箇所 11

改訂内容 (2) INTRODUCTION ICH-GCP(R1) が策定されてから 臨床試験は規模の増大 複雑化 コストの増加に直面してきた これに伴い 新しい技術や Risk Management Process など新しい取り組みが開始されている 新しい取り組みや 効率化の流れを踏まえて 継続的な被験者の保護やデータの信頼性を維持する仕組みについて述べる また 電子記録や必須文書に関する統一的な基準を記載する 他の ICH 文書と併せて使用されることが推奨される ( 例 :E2A 安全性データ E3 CSR 等 ) EU 日本 米国 カナダ スイスならびにこの考えを受容する各地域で 臨床データの相互受け入れを促進するために統一した考え方を提供する 追記された補遺 (R2 Addendum) とオリジナル (R1) 文書の内容が一致しないと考えられる場合には R2 を優先する 12

改訂内容 (3-1) 1. Glossary ADDENDUM として明記された内容を踏まえ 以下の定義が明記された 1.63 Certified Copy 1.64 Monitoring Plan 1.65 Validation of Computerized Systems 13

改訂内容 (3-2) 1. Glossary 1.63 Certified Copy 適切な媒体を利用した保証された複写物で オリジナルと同じ情報や記載内容 コンテキスト (IT 用語でいうプログラムの実行情報 ) 構造が含まれていることが求められる ここで言う保証には署名と日付けを記載するか 保証されたプロセスで作成されていること等を示すことが重要となる ポイント 紙媒体と電磁媒体の運用の差異を見越した表現となっている そのため 実行の際には 紙と電磁の違い と 何が必要なのか を意識する必要がある 14

改訂内容 (3-3) 1. Glossary 1.64 Monitoring Plan モニタリングプランとは 臨床試験のモニタリングの戦略 方法 責務及び要件を記述した文書 ポイント プランを記載するドキュメントスタイルについては明言されていない 15

改訂内容 (3-4) 1. Glossary 1.65 Validation of Computerized Systems コンピュータ化システムに対してあらかじめ定められた要求事項が システムの設計から稼働停止もしくは新しいシステムへの移行までの間 一貫して満たされているように保つ状態を確立し 文書化するプロセス バリデーションのアプローチは 意図したシステムの用途 被験者の保護および治験の結果の信頼性へのシステムの潜在的な影響を考慮したリスクアセスメントに基づく 16

改訂内容 (4-1) 2. The Principles of ICH GCP 黒字 : オリジナル E6(R1) 文書 2.10 治験に関する全ての情報は 正確な報告 解釈及び検証が可能なように記録し 取り扱い及び保存しなければならない ADDENDUM 本原則は 使用する媒体を問わず 本ガイドラインで規定する全ての記録に適用される旨が明記された 17

改訂内容 (4-2) 2. The Principles of ICH GCP 黒字 : オリジナル E6(R1) 文書 2.13 治験のあらゆる局面の質を確保するための手順を示し たシステムが 運用されなければならない ADDENDUM 当該システムは 治験において被験者の保護及び治験結果の信頼性の確保に不可欠な側面に重点を置くものとする旨が明記された 18

改訂内容 (5) 4. INVESTIGATOR 4.2 Adequate Resources ADDENDUM 4.2.5 治験責任医師は 治験業務を委託した個人または第三者を監督する責任を有する旨が明記され 委託業務の管理責任が強調された 4.2.6 治験責任医師 / 治験実施医療機関は 個人または第三者に業務を委託した場合には その者が業務を遂行するための要件を満たしていることを保証し 併せて 作成される業務と作成されるデータについても保証する旨が明記された 19

改訂内容 (6) 4. INVESTIGATOR 4.9 Records and Reports 4.9.0 治験責任医師 / 治験実施医療機関は 治験に関する被験者の観察記録を含め 全ての原資料 原データに関する記録を保存する 原データは 帰属性 判読性 同時性 原本性 正確性および完全性を満たし 原データを変更した場合には その過程を遡ることが出来ると共に 変更前の記載内容を不明瞭にしない また 必要に応じて監査証跡等により 変更の経緯が説明で可能である旨が明記された 20

改訂内容 (7-1) 5. SPONSOR 5.0 Quality Management 治験の品質を管理するために Quality Management System(QMS) が必要である旨が明記された 品質保証及び品質管理のために使用する方法は 治験特有のリスク及び収集する情報の重要性と釣り合いの取れたものとし 不必要な複雑な手順やデータの収集を避けるべきである 治験実施計画書や SOP 等の業務手順書は簡潔明瞭で一貫しているべきである また QMS には Risk Based Approach を用いる旨などが明記された 21

改訂内容 (7-2) 5. SPONSOR Risk Based Approach Risk Based Approach の手法 を用いる旨が明記された ICH Quality (Q) 9 Guidelines Quality Risk Management EMA, Reflection Paper on Risk- Based Quality Management in Clinical Trials, 2013 22

改訂内容 (7-3) 5. SPONSOR 5.0.1 Critical Process and Data Identification 重要なプロセスやデータを特定する 5.0.2 Risk identification リスクをシステム ( 体制 ) レベル 治験レベルの両面で特定する 5.0.3 Risk Evaluation エラーの発生確率 影響 検出可能な程度等を考慮し リスクを評価する 5.0.4 Risk Control リスクの軽減措置や許容範囲を決定する また手順書等を整備し 役割分担の明確化 必要な措置 トレーニング等を検討する 5.0.5 Risk Communication 品質マネジメント活動記録等を作成し 関係者間で共有する 5.0.6 Risk Review 最新の知識及び経験を利用し 定期的にリスクコントロールをレビューする 5.0.7 Risk Reporting 事前に定めた手法等を CSR に記載し 併せて重要な逸脱が生じた場合には その要約を文書として報告 / 記録する 23

改訂内容 (7-4) Risk based QM のイメージ 臨床試験 計画実施報告 Risk Based QM 重要なプロセス / データの特定 リスクの特定 / 評価 許容範囲の決定 リスク低減計画 重要なプロセス / データのモニタリング 定期的なレビュー! Issue 総括報告書への重要な逸脱の記載 PDCA サイクルの実行 (Issue Manage ment の一例 ) 計画 の改訂 新たなリスク 重大なリスクの発現 想定を逸脱した頻度 前提条件の変更 原因分析 是正措置 予防措置 措置の有効性の確認 24

改訂内容 (7-5) 5.0.1 Critical Process and Data Identification 5.0.2 Risk identification 5.0.3 Risk Evaluation 目的 :< リスクの特定 > 重要なプロセス / データの特定 リスクの特定 / 評価 プロセスの例示 治験実施計画で重要なポイント例 ) 同意の取得 組み入れ基準 / 除外基準 中止基準 ( 安全性 / 有効性 ) 治験薬の投与 評価項目 / 評価方法 検出性 & 方法例 ) 検出難易度 困難 中程度 容易 発生する確率例 ) 大きい 中程度 小 エラー発生時の影響例 ) 大きい 中程度 小 許容範囲 25

改訂内容 (7-6) 5.0.3 Risk Evaluation 5.0.4 Risk Control プロセスの例示 目的 :< Action Plan の策定 > 特定されたリスクの検出方法 リスクの軽減活動 特定されたリスクの検出方法 / 箇所例 ) 同意の取得 : 資料の閲覧 組み入れ基準 / 除外基準 : 登録票 ( データ ) の確認 中止基準 :EDC/Labo Data 事前準備の完了 低減措置の決定例 ) モニタリング 手順書 / マニュアルの整備 トレーニング 許容範囲の設定 モニタリング ( 監視 ) 方法例 ) On-site IT システム 例 :EDC IWRS Fax メール 26

改訂内容 (7-7) 5.0.5 Risk Communication 5.0.6 Risk Review 5.0.7 Risk Reporting 適切に Risk の状況について関係者間でコミュニケーションを取り 情報を共有するために 記録が重要! 目的 :< Plan の実行とモニタリング ( 監視活動 )> プロセスの例示 監視活動の開始 On-site モニタリング Centralized モニタリング 他 モニタリング方法の変更例 ) On-site 方法 / 回数 確認指標 / 頻度 定期的 Risk の評価例 ) 逐次評価 事前の予測値の越境 重大インシデントの発生 閾値の見直し 新たな対応の必要性 最終報告書の作成および CSR の概要陳述 最終的な評価 データの信頼性 Action Plan の実行 ( 完了 ) Issue の確認 Issue の発現状況 重大な逸脱 重要な逸脱 データの確認 27

改訂内容 (8) 5. SPONSOR 5.2 Contract Research Organization (CRO) 治験依頼者は 治験依頼者が契約するCROが第三者に再委託した業務を含め 治験依頼者に代わり遂行された 治験に係わる全ての業務の監督を保証する旨が明記された 28

改訂内容 (9-1) 5.5 Trial Management, Data Handling, and Record Keeping 黒字 : オリジナル E6(R1) 文書 5.5.3(a) 電子データ処理システムが 完全性 正確性 信頼 性及び意図された性能についての治験依頼者の要件を満たし ていることを保証し 文書化する ( すなわちバリデーション ) ADDENDUM 治験依頼者は システムのバリデーションにおいて 当該システムの利用目的並びに当該システムが被験者の保護及び治験結果の信頼性に与える影響を考慮した リスク評価に基づいたアプローチをとる旨が明記された 29

改訂内容 (9-2) 5.5 Trial Management, Data Handling, and Record Keeping 5.5.3(b) これらのシステムを使用するための標準業務手順書を整備する 黒字 : オリジナル E6(R1) 文書 ADDENDUM 標準業務手順書の対象範囲にはシステムのセットアップ インストール及び使用方法を含めるものとする 標準業務手順書はシステムのバリデーション及び機能テスト データの収集及び取扱い システムの維持管理 システムのセキュリティ対策 変更管理 データのバックアップ 復旧 危機管理計画並びにシステムの廃止を記載しなければならない これらのコンピューター化システムの使用に関する治験依頼者 治験責任医師及びその他の当事者の責任は明確に規定され 使用者にはシステムの使用に関するトレーニングが実施されなければならない 30

改訂内容 (9-3) 5.5 Trial Management, Data Handling, and Record Keeping ADDENDUM 5.5.3(h) 背景 内容及び構成を説明するデータを含め データの完全性を保証する この点は ソフトウェアのアップグレード又はデータの移行等 コンピューター化システムを変更する場合に特に重要である 31

改訂内容 (10-1) 5. SPONSOR 5.18.3 Extent and Nature of Monitoring 治験依頼者は 治験のモニタリング実施に当たり 体系的で優先順位を考慮した リスクに基づくアプローチを策定する モニタリングの範囲及び方法は モニタリングの有効性及び効率性を改善するさまざまなアプローチを許容され 治験依頼者はオンサイトモニタリング オンサイト及び中央モニタリングの併用 又は 正当な理由がある場合 中央モニタリングのみのいずれかを選択することが可能となる 治験依頼者は 選択したモニタリング戦略の根拠を文書化する ( モニタリングプランへの記載 ) 等が明記された 32

改訂内容 (10-2) 5. SPONSOR 5.18.3 Extent and Nature of Monitoring (Centralized Monitoring) 時宣に即して実施される累積データの遠隔的な評価であり 適切に資格を有し 訓練を受けた者 ( データマネージャー 生物統計専門家等 ) によってサポートされるモニタリングである また オンサイトモニタリングを補完し その範囲及び ( 又は ) 頻度を削減し 信頼性のあるデータと潜在的に信頼性のないデータとの判別を補助することでさらなるモニタリングの可能性をもたらすものである旨が明記された 33

改訂内容 (10-3) 5. SPONSOR 5.18.3 Extent and Nature of Monitoring (Centralized Monitoring) 中央モニタリング / データレビューの利用例 (a) 欠測データ 不整合データ 外れ値 予想外の変動の欠如及び治験実施計画書からの逸脱の特定 (b) 治験実施医療機関内及び施設間におけるデータの範囲 一貫性及び変動性等 データの傾向の分析 (c) 治験実施医療機関内又は施設間におけるデータ収集及び報告の体系的又は重大なエラーの評価 ; 又はデータ操作の疑い又はデータの完全性に関する問題 34

改訂内容 (10-4) 5. SPONSOR 5.18.3 Extent and Nature of Monitoring (Centralized Monitoring) 中央モニタリング / データレビューの利用例 (d) 治験実施医療機関の特性及び性能指標の解析 (e) オンサイトモニタリング実施対象の治験実施医療機関 及び ( 又は ) プロセスの選択 35

改訂内容 (10-5) 5. SPONSOR 5.18.6 Monitoring Report (e) オンサイト及び ( 又は ) 中央モニタリングの結果は レビュー及びフォローアップを実行できるように 適切な時期に治験依頼者 ( 監督責任を有する適切な管理者及びスタッフを含む ) に提出される モニタリング活動の結果は モニタリングプランの遵守状況の検証に十分な詳細度で記録される 中央モニタリング活動の報告は定期的に行い 通常の施設訪問とは独立して実施してもよい 36

改訂内容 (10-6) 5. SPONSOR 5.18.7 Monitoring Plan 治験依頼者は 被験者の保護及びデータの完全性に関する治験固有のリスクに応じたモニタリングプランを作成する モニタリングプランにて モニタリング戦略 全ての関係当事者のモニタリングの責任 使用する種々のモニタリング方法及びその使用根拠が説明される モニタリングプランは 重要なデータ及びプロセスのモニタリングについても強調され 日常的な診療業務で実施しない事項や 追加的なトレーニングを要する事項については特別な注意が払われ 適用される指針や手順を参照するものとする旨が明記された 37

改訂内容 (11) 5. SPONSOR 5.20.1 Noncompliance 被験者保護又は治験結果の信頼性に重大な影響を与える 又は重大な影響を与える可能性のある不遵守が発見された際は 治験依頼者は根本原因を分析し 適切な是正 予防措置を講じる旨が明記された 注 :Noncompliance ( 不遵守 ): 従来の記載でも 治験実施計画書 標準業務手順書 GCP および ( 又は ) 適用される規制要件を遵守していない場合には 必要な措置を講じる旨は既に規定されている 38

改訂内容 (12-1) 8. ESSENTIAL DOCUMENTS FOR THE CONDUCT OF A CLINICAL TRIAL 8.1 Introduction ADDENDUM 治験依頼者および治験責任医師 / 治験実施医療機関は 原資料を含む各文書の所在に関する記録を保持し 体系的に文書の識別 検索 入手ができるようにする 治験の文書は 当該資料の重要性および関連性に応じて補完されなければならず また 正当な理由があれば ( 治験開始前とする ) 削減することができる 39

改訂内容 (12-2) 8. ESSENTIAL DOCUMENTS FOR THE CONDUCT OF A CLINICAL TRIAL 8.1 Introduction ADDENDUM 治験依頼者は 治験依頼者に対して報告される症例報告書データに関して 治験責任医師が管理権限を保持し かつ 常にアクセス可能であることを保証する 治験依頼者がこれらのデータを独占的に管理してはならない 複写物を元の文書 ( 原資料 CRF 等 ) の代わりとして置き換える場合 当該複写物は保証付き複写の要件を満たすものとなる 治験責任医師 / 治験実施医療機関は 治験開始前 実施中及び終了後に治験責任医師 / 治験実施医療機関が作成したすべての必須文書及び記録の管理権限を保持する 40

本日の発表 1. ICHとは 2. ICH-E6(R2) 改訂の内容 3. Sponsor への影響 4. 日本の臨床試験への影響 5. まとめ 41

Sponsor への影響 (1) 既にガイドライン等が発出されているが 日本では対応が遅れているプロセスや手順書などの作成等が盛り込まれている ( 例 :Quality Management System, Risk Review, Centralized Monitoring documentation) これらの内容には まだ馴染みが薄いプロセス等が有り 具体的なパイロット結果の情報公開や先行する海外での事例紹介が 日本での実行には不可欠と考えている 注意 : 医療機関の方々が 自ら治験を実施しようとする場合 ( いわゆる医師主導治験 ) および ICH-GCP を遵守して臨床研究を実施する場合には 製薬企業の立場と同様になると想定している 42

Sponsor への影響 (2) Risk Based Approach(RBA) が提唱されてから 概念的に RBA は広く知られているが 具体的な 手法 指標 Review の具体性 妥当性について明確に示されたものが無く 各社が試験的に実施中の状態である 事前に想定した基準と 実行後の Review ならびに Monitoring の結果の水準を受け入れ可能と判断する根拠 ( 妥当性の判断基準 ) の設定に苦慮する RBA に関するノウハウに乏しいことや 信頼性を確保するうえでの妥当な水準 適切なアプローチ等の実例が少ない為に 試行錯誤している状態である 43

Sponsor への影響 (3) 従来は Non compliance の扱いについて規制上で明確に定義されておらず 治験実施計画書等からの逸脱が確認された際は適切な措置を講じる 旨が GCP ガイダンスには定義されている Non compliance の収集 原因分析 改善策の策定から実行までの 全ての過程を記録する様に求められることとなり 相応の管理方針 具体的な管理体制等が必要となる 体制的なアプローチのみならず 問題解決スキル 改善策や再発防止策の立案等の 従来は明確に求められていないスキルの習得も課題となる 44

Sponsor への影響 (4) Essential document も 必須文書 ではなく 治験の経緯を再現するために必要となる文書 との意図がより明確に示されている そのため 併せて漫然とした文書保存ではなく 試験の規模等に応じた文書 記録の所在から始まり 体系的アプローチとした TMF* を意識した文書 記録の管理が求められると考えている *:Trial Master File ( 治験マスターファイル ) の略で 単純な文書を保管 / 綴じ込んだファイルではなく 試験特有のファイリングルールを含めた計画的かつ具体的なルールに基づいた 文書のファイリングと考えている 45

本日の発表 1. ICHとは 2. ICH-E6(R2) 改訂の内容 3. Sponsor への影響 4. 日本の臨床試験への影響 5. まとめ 46

社会的な背景 本邦における情勢 ICH-E6(R2):Step4 GCP ガイダンス等へ 臨床研究の法制化 次世代医療基盤の法制化 医薬品承認スキーム変更の議論 Global Wide の動き ICH の体制変更 GCP Renovation の議論活発化 JPMA 臨床評価部会が注目している <ICH-E6(R2) 研修会より > 臨床試験の複雑さの増加とそれに伴う労務や費用の増加が 試験関係者への負担となり 効率化が新たな課題となっている 47

医療における規制の区分 治験 ( 承認申請目的の医薬品等の臨床試験 ) 臨床研究 医薬品等の臨床研究 特定臨床研究 未承認 適応外の医薬品等の臨床試験 製薬企業等から資金提供を受けた医薬品等の臨床試験 手術 手技の臨床研究 一般の医療 基準遵守義務 (GCP) 基準遵守義務 基準遵守義務 ( 努力義務 ) 基準遵守義務 ( 努力義務 ) 医薬品医療機器等法 臨床研究法 医療法 48

臨床研究の法制化 関係機関の基盤整備が具体的な課題 特定臨床研究実施に際し 医療機関の体制整備 特定臨床研究における安全性情報の収集経路の確立 医療機関と企業の連携 特定臨床研究で得られたデータの利活用 49

第三条 臨床研究法附則 この法律施行の際現に特定臨床研究を実施しているものが実施する当該特定臨床研究については この法律の施行の日 (2017 年 4 月 14 日 ) から起算して 1 年を経過する日までの間は 第四条第二項及び第五条第一項の規定は 適用しない 第四条 2 特定臨床研究を実施する者は 臨床研究実施基準に従ってこれを実施しなければならない 第五条特定臨床研究を実施する者は 特定臨床研究ごとに 次に掲げる事項を記載した特定臨床研究の実施に関する計画 ( 以下 実施計画 という ) を作成し 厚生労働省令で定めるところにより 厚生労働大臣に提出しなければならない 50

臨床研究法附帯決議 一何人も その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けないとする国際人権規約の規定の趣旨を尊重し 臨床研究の対象者の保護に万全を期すこと また 臨床研究実施基準等において 研究者等による臨床研究の対象者の権利の尊重を明確に規定すること 二臨床研究実施基準の策定に当たっては ICH-GCP や GMP に準拠することにより 臨床研究の一層の信頼性の確保に努めるとともに 国際的な規制との整合性を確保し 国際的な共同研究 共同治験の一層の推進に向けて取り組むこと 三医薬品 医療機器等の開発を推進するため 治験と臨床研究の制度区分と活用方法を明確化して 臨床研究を促進するとともに 臨床研究で得られた情報を 医薬品 医療機器等の承認申請に係る資料として利活用できる仕組みについて速やかに検討すること 四特定の認定臨床研究審査委員会に審査意見業務が集中することにより 審査意見業務の質や公平性 公正性が損なわれないよう 認定臨床研究審査委員会の運営環境の整備を図り 臨床研究の対象者の確実な保護に努めること 51

臨床研究法附帯決議 五臨床研究の対象者に健康被害が生じた場合の補償及び医療の提供が適切に行われるよう 医薬品副作用被害救済制度についての周知徹底を図るとともに 同制度の対象とならない臨床研究について 健康被害が生じた場合に同制度に準じた補償が受けられるよう 必要な措置を検討すること 六研究過程の透明性を確保し 研究の進捗状況の把握や学術的解析を可能にするため 臨床研究実施基準において 臨床研究の概要 進捗状況及び結果を公的なデータベースに登録する旨を規定し 臨床研究の結果を含む情報の登録 公開要件等の拡充について検討すること 七学問の自由に配慮しつつ臨床研究の一層の信頼確保を図るため 研究資金等の提供に関する情報等の公表制度の実施状況を踏まえながら 本法の公表の対象外とされている情報提供関連費や接遇費等を公表の対象とすることについて検討すること 八研究者等の事前準備に遺漏や混乱を生じさせないよう 臨床研究実施基準の案については できるだけ速やかに公表すること 九患者申出療養 評価療養として保険外併用療養費制度で行われている医療行為について 有効性 安全性等が確認されたものは引き続き保険収載に向けて必要な措置を講ずること 52

QMS を支える構成要素の例 外部との提携 Partnering Risk Management 組織 体制 QMS 記録作成と保存 明確なプロセス Process Issue Management 54

組織 体制 組織と部署 個人の役割 責任の明確化 シニアマネジメント / 経営陣のリーダーシップ 職務にあったトレーニングの実施 記録 クオリティに関する意識づけ ( マインドセット ) QC 担当者だけでなく ひとりひとりが品質に貢献しているという意識をもつ 意思決定機関 会議体の設置 ( 必要最低限 ) 55

組織 体制 シニアマネジメント / 経営陣 品質の Oversight 各部門長 Issue の Escalation 品質のOversight 監査部門品質管理活動各部署 /QC 担当部署 56

外部との提携 (Partnering) 治験依頼者あるいは医薬品の製造承認申請者として申請資料の品質に責任がある 共同開発 両者の役割分担や SOP などを明確にする CRO/Vendor オーバーサイトをどのようにするかあらかじめ決めておく必要がある 57

明確なプロセス クオリティ スタンダードの設定 ( 品質方針 目標 ) SOP の策定 役割 責任の明確化 分かりやすく 簡潔に記載 品質方針 品質目標に合致させる 遵守すべき要件 ( 例えば GCP 薬機法 各社におけるポリシーなど ) を網羅する リスクを低減させる手順であるか SOP 作成前に想定されるリスクを洗い出し 評価する 必要に応じて QC 手順を追加する ( または QC の SOP を別途作成することも可能 ) 目的にあった詳細度で 58

明確なプロセス スタッフへの周知 SOP の公開 新規 SOP や改訂された場合の通知 SOP Training SOP の定期的なレビュー ( 必要に応じて改訂 ) 59

Risk Management ICH E6 5.0.1 重要なプロセス及びデータの特定 5.0.2 リスクの特定 リスクの特定 リスクの分析 <ICH Q9> 品質リスクマネジメントプロセスの開始リスクアセスメントリスク特定リスク分析 Quality Plan 5.0.3 リスクの評価 5.0.4 リスクのコントロール 5.0.6 リスクレビュー リスクの評価 リスクの検出 リスクの受容 リスクのレビュー リスクコミュニケーション リスクコントロール リスクレビュー リスク評価 リスク低減 リスク受容 品質リスクマネジメントプロセスのアウトプット / 結果 5.0.5 リスクコミュニケーション事象レビュー 5.0.7 リスク報告 60 リスクマネジメント手法

記録の作成および保存 Issue Management 1. Issue の収集 報告 2. Issue の分類 3. CAPA の作成および承認 4. CAPA の実行 5. CAPA の有効性レビュー 6. CAPA の終了 (Closure) Issue Management の体制 61

記録作成と保存 ( 含む電子記録 ) 保管すべき記録 GCP/ 各種規制要件で保管が定められている記録 各社の SOP で保管が定められている記録 QMS がどのように評価されたか または結果としてどのような対応をとったかを示せるもの 例えば QC 記録 監査記録 CAPA リスクアセスメント issue escalation 等の記録 保管期間 各社のポリシーに従う 但し 最低限 GCP の定める期間 62

記録作成と保存 ( 含む電子記録 ) ICH-E6 (R2) 8.1 ADDENDUM The sponsor and investigator/institution should maintain a record of the location(s) of their respective essential documents including source documents. The storage system used during the trial and for archiving (irrespective of the type of media used) should provide for document identification, version history, search, and retrieval. 治験期間中及び書庫保管 ( 使用する媒体を問わない ) に使用される保管システムは 文書の識別 版履歴 探索及び取得に関する機能を有しなければならない 記録の作成 管理 保存を体系的に管理し 監督すること ( レコードマネジメント ) が重要! 63

再考しなければならないこと 臨床試験に求められる体系的な品質管理システムの理想的なゴールの全体像をイメージし 既に GCP で規定されていて適切に実行されている要素を明確にする 自らの組織等に欠けている要素ならびに改善が必要な要素を明確にする ギャップの自覚 ギャップを分析し 重要度 組織 / 規模の最適化 技術 IT システム 予算等を考慮して優先順位を付し 対応順位を決定する GCP 施行時までに組織 体制を構築する必要がある 64

本日の発表 1. ICHとは 2. ICH-E6(R2) 改訂の内容 3. Sponsor への影響 4. 日本の臨床試験への影響 5. まとめ 65

まとめ ICH-E6(R2) 対応に際して 治験のみを実施する医療機関の方々に影響は大きくない しかし 医師主導治験等各種の臨床試験を実施する際には非常に影響が大きい 臨床試験に対する Quality Management System(QMS) を構築する必要がある System として明確に体制を構築する必要があるが 個々の医療機関の規模に応じて状況が大きく異なる Risk Based Approach を実施する経験が豊富でない 体制構築の要件が現時点では まだ明確でない データを創出するプロセスが個人に依存しているケースがあり プロセスの統一や個人に依存しない管理体系が客観的指標等により制御される必要がある 66

より良い医薬品をより早く 患者さんのもとに ご清聴ありがとうございました