資産課税についてのアンケート調査結果について 平成 23 年 1 月 31 日財団法人関西社会経済研究所問合先 06-6441-0550( 鈴木 ) 平成 23 年度税制改正において 資産課税 に関する改正が行われ 高額の遺産相続に対する課税が強化されました そこで関西社会経済研究所では 今回の税制改正の効果を検討するため 資産課税に関し 資産課税についての調査 :18 歳以上の子どもがいる世帯主 1000 人全国アンケート を実施しました この度その調査研究結果がまとまりましたので ご報告いたします なお 本研究は当研究所の抜本的税財政改革研究会 ( 主査 : 橋本恭之教授 ( 関西大学経済学部 )) が中心になってとりまとめたものです 1. 調査研究の狙い 資産形成における相続 贈与の比重の大きさについて 相続税負担の現状について 相続及び贈与と階層の固定化の関係について 所得 保有資産と教育の関係について 2. アンケート調査結果のポイント ( 平成 22 年 11 月 29 30 日アンケート実施 ) 所得上位層(8%) に多くの資産 (24%) が集中している ( 図表 1) 資産全体の半分は資産家上位 10% に保有されて 資産保有は偏っている ( 図表 2) 高額資産保有者の資産形成は相続によるものが大部分と判明 ( 図表 3 図表 4) 3 億 ~9 億円の資産保有者の約半数は資産の 8 割が相続によるもの 高額の資産保有者の相続税実効税率は高くない ( 図表 5) 高所得層ほど子どもへの贈与が多い ( 図表 6) 階層の固定化が観察できる ( 図表 7) 例会社役員の親の 40% は会社役員 所得階層が高い家庭ほど子供に対する高額な教育投資を行い 結果としていわゆる難関校に進学させている ( 図表 8 図表 9) 3. 提言 今回の相続税改正は再配分という方向性としては評価できるものの 最高税率の引上げは金額的には効果が小さいといえる 土地を優遇する制度を改めるのが効果的である 親の資産による教育格差が存在する現状を踏まえ これ以上の教育格差拡大を防ぐため 子ども手当は必ず教育費に充当されるような支給方法 ( 教育バウチャー ) が望ましい 以上 1
図表一覧 図表 1 所得階級別資産保有シェア 所得階層上位 8% が資産の 24% を保有している 図表 2 資産保有分布 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ Ⅷ Ⅸ Ⅹ 資産階級分位 資産保有額順に並べると 上位 10% が資産全体の半分を保有している 2
図表 3 資産保有額別相続割合 ( 土地 + 金融資産 - 負債 ) 資産保有額相続割合 3 億 ~9 億円 (11 世帯 ) 4 世帯 : 相続なし 2 世帯 : 相続の割合が 8% または 14% 5 世帯 : 相続割合 80% 以上 1 億 ~2 億円 (37 世帯 ) 28 世帯 : 相続なし 9 世帯 : 相続割合 50% 超 7000 万 ~1 億円未満 (57 世帯 ) 平均資産形成相続割合 21% 4000 万 ~7000 万円未満 (137 世帯 ) 平均資産形成相続割合 21% 3~9 億円という高額資産を保有する世帯は 11 世帯存在するが 彼らの中の 5 世帯は その資産の 80% 以上が相続である 図表 4 所得階級別の相続資産継承 所得階層世帯数相続あり世帯数 相続あり世帯平均 相続あり世帯平均 割合相続資産額資産形成相続割合 1500 万円以上 4.4% 31.8% 1 億 7795 万円 49.9% 1250~1500 万円未満 4.0% 3% 3109 万円 51.8% 1000~1250 万円未満 9.4% 34.0% 2053 万円 59.0% 高所得階層では 平均相続資産額も多く 資産形成に占める相続資産の比率も 大きい 図表 5 相続資産階級別の相続税実効税率 相続資産 世帯数 実効税率 7 億 ~11 億円 2 億 ~5 億円 1 億 ~2 億円未満 5000 万 ~1 億円未満 3 5 8 25 3.7% 4.3% 2.9% 1.4% 実効税率 = 相続税負担額 / 相続資産額 相続税の負担は実効税率で見ると少ない 3
図表 6 所得階層別の子に対する定期預金状況 1,500 万円以上 2 15.9 2.3 56.8 1,250~1,500 万円未満 27.5 2 2.5 4 1,000~1,250 万円未満 29.8 12.8 1.1 56.4 700~1,000 万円未満 26.5 12.4 1.0 60.1 600~700 万円未満 28.3 14.2 57.5 500~600 万円未満 2 12.2 0.9 67.0 400~500 万円未満 13.9 12.7 2.5 70.9 300~400 万円未満 11.0 14.6 1.2 73.2 200~300 万円未満 18.3 11.7 6 100~200 万円未満 21.7 4.3 73.9 100 万円未満 13.5 13.5 73.0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 毎年数年おき数十年おきおこなっていない % 高い所得階層において定期預金を通じた生前贈与 ( 節税策 ) を行っている傾向がある 贈与による格差拡大が懸念される 例 )1250~1500 万円所得階層で 52.5% が 毎年と数年おき に定期預金を行っている 一方 300~400 万円所得階層ではこの値は 25.6% になっている 図表 7 職業の連鎖 本人が会社役員の人の 40% は親も会社役員である ( 階層固定化 ) 自営業の 31% は親も自営業である 4
図表 8 所得階級別教育投資額の分布 1,500 万円以上 9.1 2.3 13.6 18.2 20.5 18.2 6.8 11.4 1,250~1,500 万円未満 2.5 22.5 27.5 17.5 1 1,000~1,250 万円未満 8.5 4.3 7.4 23.4 33.0 13.8 6.4 3.2 700~1,000 万円未満 9.2 4.6 12.4 23.9 33.3 11.8 4.2 0.7 600~700 万円未満 14.2 6.7 1 18.3 29.2 8.3 3.3 500~600 万円未満 15.7 3.5 20.9 22.6 27.8 6.1 2.6 0.9 400~500 万円未満 10.1 11.4 13.9 38.0 17.7 7.6 1.3 300~400 万円未満 15.9 4.9 14.6 20.7 29.3 8.5 4.9 1.2 200~300 万円未満 16.7 8.3 13.3 3 21.7 6.7 1.7 1.7 100~200 万円未満 8.7 21.7 17.4 8.7 21.7 8.7 4.3 8.7 100 万円未満 21.6 8.1 5.4 18.9 24.3 16.2 2.7 2.7 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 なし 5,000 円未満 5,000~1 万円未満 1~2 万円未満 2~4 万円未満 4~6 万円未満 6~10 万円未満 10 万円以上 % 所得階層が高い家庭ほど子供に対する高額な教育投資が行われている 1 か月 10 万円以上の教育投資となるとこの傾向はさらに顕著である 例 )4~6 万円の教育投資は 1500 万円以上世帯では 18.2% 600~700 万円世帯では 8.3% である 5
図表 9 所得階層別の子どもの進学状況 ( 長子 )60 歳以上サンプル除去 1,500 万円以上 39.0 39.0 9.8 7.3 4.9 1,250~1,500 万円未満 3 32.5 22.5 7.5 2.5 1,000~1,250 万円未満 2 40.2 19.6 6.5 2.2 3.3 3.3 700~1,000 万円未満 17.7 30.1 26.1 12.0 4.7 8.4 1.0 600~700 万円未満 13.9 21.7 22.6 2 12.2 8.7 0.9 500~600 万円未満 12.8 21.1 31.2 18.3 5.5 10.1 400~500 万円未満 6.5 22.1 27.3 18.2 7.8 18.2 300~400 万円未満 9.5 28.4 16.2 17.6 4.1 24.3 200~300 万円未満 9.6 26.9 26.9 19.2 1.9 13.5 1.9 100~200 万円未満 2 2 2 1 100 万円未満 23.5 32.4 29.4 2.9 5.9 5.9 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 レベル A レベル B レベル C レベル D レベル E 大学進学しなかった大学進学前の年齢である % 所得階層が高い家庭ほどレベルの高い大学に子供を進学させている 例 )1500 万円以上世帯では 40.9% がレベル A( 旧帝大 医学部 早慶 ) に入学させている この値は 400~600 万円世帯に至るまで下がり続ける (400~600 万円世帯では 6.3%) 6
得階層層補足資料付表 1 世帯主の年齢分布 60 代 50 代 40 代 30 代 0 10 20 30 40 50 60 % 付表 2 世帯主所得分布 所得階1,500 1,250~1,500 万円未満 1,000~1,250 万円以上所万円未満 700~1,000 万円未満 600~700 万円未満 500~600 万円未満 400~500 万円未満 300~400 万円未満 200~300 万円未満 100~200 万円未満 100 万円未満 0% 10% 20% 30% 40% 7
付表 3 職業別平均年収職種平均所得会社員 727 万円会社役員 801 万円公務員 団体職員 788 万円専門家 1101 万円自営業 507 万円自由業 411 万円アルバイト 172 万円 付表 4 所得階層別年齢分布 (1)100 万円未満 1.6% 1.4% 1.2% 1.0% 0.8% 0.6% 0.4% 0.2% % 40~44 歳 45~49 歳 50~54 歳 55~59 歳 60~64 歳 65 歳以上 8
付表 5 所得階層別年齢分布 (2)100~200 万円未満 1.0% 0.9% 0.8% 0.7% 0.6% 0.5% 0.4% 0.3% 0.2% 0.1% % 40~44 歳 45~49 歳 50~54 歳 55~59 歳 60~64 歳 65 歳以上 付表 6 所得階層別年齢分布 (3)200~300 万円未満 2.5% 2.0% 1.5% 1.0% 0.5% % 40~44 歳 45~49 歳 50~54 歳 55~59 歳 60~64 歳 65 歳以上 9
付表 7 所得階層別年齢分布 (4)500~600 万円未満 % 4.5% 4.0% 3.5% 3.0% 2.5% 2.0% 1.5% 1.0% 0.5% % 40~44 歳 45~49 歳 50~54 歳 55~59 歳 60~64 歳 65 歳以上 10