標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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宗像市国保医療課 御中

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Ⅰ 目標達成

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特定健康診査等実施計画

(7)健診データの受領方法

特定健康診査等実施計画

1 基本健康診査基本健康診査は 青年期 壮年期から受診者自身が自分の健康に関心を持ち 健康づくりに取り組むきっかけとなることを目的に実施しています 心臓病や脳卒中等の生活習慣病を予防するために糖尿病 高血圧 高脂血症 高尿酸血症 内臓脂肪症候群などの基礎疾患の早期発見 生活習慣改善指導 受診指導を実

(この実施計画は「高齢者の医療の確保に関する法律」第19条の規定に基づき作成し、

特定健康診査等実施計画 ( 第二期 ) 三重交通健康保険組合 平成 25 年 7 月

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第三期 特定健康診査等実施計画 ウシオ電機健康保険組合 平成 30 年 4 月

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背景及び趣旨 我が国は国民皆保険のもと世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきた し かし 急速な少子高齢化や国民の意識変化などにより大きな環境変化に直面しており 医 療制度を持続可能なものにするために その構造改革が急務となっている このような状況に対応するため 高齢者の医療の確保に関する

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平成 29 年 3 月改定 特定健康診査等実施計画 ( 第 2 期 ) 協和発酵キリン健康保険組合 平成 29 年 3 月

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特定健康診査等実施計画書 ( 第 3 期 ) JXTG グループ健康保険組合 平成 20 年 4 月 1 日制定平成 22 年 4 月 1 日改訂平成 25 年 4 月 1 日改正平成 30 年 4 月 1 日改正 - 1 -

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

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歯科中間報告(案)概要

特定健康診査等 ( 平成 30 年度 平成 35 年度 ) 背景 現状 基本的な考え方 No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 事業所数が多く その健康課題も多岐にわたるため対策実施に当たっては事業所の協力が欠かせない 被保険者の特定健診受診率は 95% 前後であり 事業主健診は

2 第 1 期データヘルス計画 ( 平成 27 年度 ~ 平成 29 年度 ) の要点 ⑴ 加入者の状況被保険者は 男性が約 85% と多く 年齢構成は 40 歳代 50 歳代が多い 被扶養者は 子供を除くと女性が多い ⑵ データに基づく健康課題 1 生活習慣病及び生活習慣病関連疾患が医療費に占める

4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

医療費適正化計画の概要について 国民の高齢期における適切な医療の確保を図る観点から 医療費適正化を総合的かつ計画的に推進するため 国 都道府県は 医療費適正化計画を定めている 根拠法 : 高齢者の医療の確保に関する法律作成主体 : 国 都道府県計画期間 :5 年 ( 第 1 期 : 平成 20~24


内部統制ガイドラインについて 資料

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2

3 対象者への案内の方法 当該年度の特定保健指導対象者全員 ( 基準では非該当だが 医療保険者の判断で特定保健指導対象となる方 も含む ) に対して 参加案内を郵送して 結果説明会を実施するとともに 特定保健指導における初回時面接を行います また 初回時面接未参加者に対しても 再度 特定保健指導の参

各種健診等の連携についての考え方 一現行制度における各種健診等の連携. 基本健診において生活機能評価を同時実施 () 現在 老人保健法において 65 歳以上の対象者については 生活機能評価を基本健診において同時に実施するよう求めている 同時実施は 本人の利便性 受診率の向上 検査重複の回避に資する

特定健康診査等実施計画

スライド 1

協会けんぽ加入者における ICT を用いた特定保健指導による体重減少に及ぼす効果に関する研究広島支部保健グループ山田啓介保健グループ大和昌代企画総務グループ今井信孝 会津宏幸広島大学大学院医歯薬保健学研究院疫学 疾病制御学教授田中純子 概要 背景 目的 全国健康保険協会広島支部 ( 以下 広島支部

3 成人保健

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平成13年度税制改正(租税特別措置)要望事項(新設・拡充・延長)

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特定健康診査等実施計画 第二期 ( 平成 25 年度 ~ 平成 29 年度 ) 第一版 三菱鉛筆健康保険組合 平成 25 年 5 月

本日のテーマ

平成20年度内部評価実施結果報告書《本編》

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-2-

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

平成23年度国保連合会

Ⅰ 計画策定にあたって 1. はじめに私たちは 国民皆保険制度 フリーアクセス という日本の医療を支える象徴的な仕組みを享受し 世界最長レベルの平均寿命や高い保健医療水準を達成してきた しかし 日本経済が長期停滞する中 少子高齢化の進展や生活スタイルの変化 加えて医療技術の高度化や疾病構造の変化など

(6/5 19:00修正)資料3 標準的な健診・保健指導プログラム改定のポイント (2) (2)

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Taro-3-H26厚生労働白書(社会

第3章「疾病の発症予防及び重症化予防 1がん」

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特定健康診査等実施計画 平成 20 年 3 月 水俣市国民健康保険

( 選定提案 ) は 利用者に貸与しようと福祉用具の種目の候補が決まった後で 具体的な提案品目 ( 商品名 ) を検討する際に用いる つまり ( 選定提案 ) に記載されるのは 候補となる福祉用具を利用者に対して提案 説明を行う内容である 平成 30 年度の制度改正では 提案する種目 ( 付属品含む

大阪府医師国民健康保険組合 特定健康診査等実施第 2 期計画 ( 平成 25 年 7 月 1 日 ) 1. 計画策定の背景昭和 36 年の国民皆保険の成立により わが国の平均寿命は飛躍的に伸び 今や世界一の長寿国となった しかし 世界に冠たるこの国民皆保険制度は 平均寿命の伸びによる高齢化の急激な進

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特定保健指導における情報通信技術を活用した面接による指導の実施の手引き 新旧対照表 改正後 特定保健指導における情報通信技術を活用した面接による指導の実施の手引き 現行 ICT を活用した特定保健指導の実施の手引き 最終改正平成 30 年 2 月 9 日 1.ICTを活用した特定保健指導の実施者保険

< 糖尿病療養指導体制の整備状況 > 療養指導士のいる医療機関の割合は増加しつつある 図 1 療養指導士のいる医療機関の割合の変化 平成 20 年度 8.9% 平成 28 年度 11.1% 本糖尿病療養指導士を配置しているところは 33 医療機関 (11.1%) で 平成 20 年に実施した同調査

平成 28 年度健康診断について 基本健康診断 ( 一次検査 ) 健康保険組合は疾病予防事業として被保険者 被扶養者の皆様の健康診断を実施しています 健診種類 ( いずれかを選択 ) 生活習慣病健診 人間ドック 被保険者 対象者 対象年齢 ( 該当年度末日 (3 月 31 日 ) 基準 ) 年齢制限

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

ISO19011の概要について

特定健康診査等実施計画 静岡県自動車販売健康保険組合 平成 19 年 12 月

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PowerPoint プレゼンテーション

はじめに第1章基本方針第2章岐阜市の現状第3章第4章第二次ぎふ市民健康基本計画の評価今後の取り組み第5章効果的な推進体制第6章参考資料7 第 3 章岐阜市の現状 1 岐阜市の人口統計 (1) 人口の推移 本市の人口は 昭和 60 年以降 減少傾向にあったものの 平成 18 年柳津町との合併により 一

第 3 章特定健診 特定保健指導の実施 1 特定健診実施等実施計画についてこの計画は 国の定める特定健康診査等基本指針に基づく計画であり 制度創設の趣旨 国の健康づくり施策の方向性 第 1 期の評価を踏まえ策定するものです この計画は 5 年を一期とし 第 2 期は平成 25 年度から 29 年度と

愛知県アルコール健康障害対策推進計画 の概要 Ⅰ はじめに 1 計画策定の趣旨酒類は私たちの生活に豊かさと潤いを与える一方で 多量の飲酒 未成年者や妊婦の飲酒等の不適切な飲酒は アルコール健康障害の原因となる アルコール健康障害は 本人の健康問題だけでなく 家族への深刻な影響や飲酒運転 自殺等の重大

下の図は 平成 25 年 8 月 28 日の社会保障審議会介護保険部会資料であるが 平成 27 年度以降 在宅医療連携拠点事業は 介護保険法の中での恒久的な制度として位置づけられる計画である 在宅医療 介護の連携推進についてのイメージでは 介護の中心的機関である地域包括支援センターと医療サイドから医

平成27年度事業計画書

このような現状を踏まえると これからの介護予防は 機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく 生活環境の調整や 地域の中に生きがい 役割を持って生活できるような居場所と出番づくりなど 高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた バランスのとれたアプローチが重要である このような効果的

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死亡率 我が国における疾病構造 生活習慣病は死亡割合の約 6 割を占めている 我が国の疾病構造は感染症から生活習慣病へと変化 死因別死亡割合 ( 平成 24 年 ) 生活習

2 保険者協議会からの意見 ( 医療法第 30 条の 4 第 14 項の規定に基づく意見聴取 ) (1) 照会日平成 28 年 3 月 3 日 ( 同日開催の保険者協議会において説明も実施 ) (2) 期限平成 28 年 3 月 30 日 (3) 意見数 25 件 ( 総論 3 件 各論 22 件

練馬区国保における糖尿病重症化 予防事業について 平成 29 年 3 月 6 日練馬区区民部国保年金課 1 東京都糖尿病医療連携協議会配布資料

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はじめに

自殺予防に関する調査結果報告書

磐田市水道事業ビジョン

CONTENTS

対象疾患名及び ICD-10 コード等 対象疾患名 ( 診療行為 ) ICD-10 等 1 糖尿病 2 脳血管障害 3 虚血性心疾患 4 動脈閉塞 5 高血圧症 6 高尿酸血症 7 高脂血症 8 肝機能障害 9 高血圧性腎臓障害 10 人工透析 E11~E14 I61 I639 I64 I209 I

資料 4 医療等に関する個人情報 の範囲について 検討事項 医療等分野において情報の利活用と保護を推進する観点から 医療等に関する個人情報 の範囲をどのように定めるべきか 個別法の対象となる個人情報としては まずは 医療機関などにおいて取り扱われる個人情報が考えられるが そのほかに 介護関係 保健関

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第 2 章計画の推進及び進行管理 1 計画の推進 県 市町村及び県民が 関係機関等と相互に連携を図りながら 県民の歯 口腔の健康づくりを推進します 県における推進 (1) 全県的な推進 県全域の課題を踏まえた基本的施策や方向性を示すとともに 取組の成果について継続的な評価を行い 県民の生涯を通じた歯

1 保健事業実施計画策定の背景 北海道の後期高齢者医療は 被保険者数が増加し 医療費についても増大している 全国的にも少子高齢化の進展 社会保障費の増大が見込まれる このような現状から 一層 被保険者の健康増進に資する保健事業の実施が重要となっており 国においても 保健事業実施計画 ( データヘルス

介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

Transcription:

第 2 章保健事業 ( 保健指導 ) 計画の作成 (1) 現状分析 1) 分析が必要な理由保健事業 ( 保健指導 ) 計画を作成するためには まず 現状を正確に把握し分析することが重要である 第一の理由としては 対象者の所属する地域 職域などの集団全体の健康課題を分析することにより その集団においてどのような生活習慣病対策に焦点を当てるのかということと 優先すべき健康課題を把握し 保健事業全体の目標を設定するためである このことは ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチ全てを含んだ生活習慣病予防対策の全体像を把握し 社会資源を有効に活用しながら保健事業を組み立てていくことにつながる また 今回の医療制度構造改革においては 医療費を適正化することが求められているため 糖尿病等の生活習慣病の有病者 予備群の割合や 医療費を分析することによりその増大の原因を明らかにすることが重要となる 第二の理由として 対象者の的確な把握を行うことにより 対象者に合った効果的 効率的な保健事業 ( 保健指導 ) を行うことができるためである さらに 保健指導対象者数を概算することができるため 投入する人的資源や予算を計画することができる また 反対に 決められた予算の中で効率的に保健指導を行う計画 ( 支援方法 優先順位などの検討 ) を作成することができる 2) 分析すべき項目現状分析は 集団全体の分析 と 個人 保健事業の単位の分析 の双方から実施する 集団全体の分析 と 個人 保健事業の単位の分析 は密接な関係があるため 計画作成に当たっては情報の共有化を図らなければならない 集団全体の分析項目としては 1 健診結果等の変化 生活習慣病の有病率 医療費の変化 死亡率等の健康課題を把握するための項目 2 健診受診率 保健指導対象者のうちの保健指導を実施した者の割合等の効果的な保健事業 ( 保健指導 ) を実施しているかどうかを判断する項目 3 保健 医療提供体制 保健指導実施者に対する研修体制と研修実施状況等の効果的な保健活動を実施できる体制にあるのかどうかを判断するための項目が挙げられる 個人 保健事業の単位の分析項目としては 1 個人単位での健康度を把握するための項目と2 保健事業 ( 保健指導 ) の効果を把握するための項目が挙げられる なお 分析項目については 平成 20 年度においては 老人保健事業等これまでの保健事業で既に把握されているデータを活用することにより 保健事業 ( 保健指導 ) 計画作成の段階から把握することが可能な項目もあるが 73

新たな健診 保健指導にかかる事業を進める上で新しく設定するべき分析項目もあるため 保健事業 ( 保健指導 ) 実施後に把握することが可能な項目もある したがって 基準値となるデータの把握時点が異なることから 保健事業 ( 保健指導 ) 計画作成の際に すべての分析項目を把握することができないため 保健事業 ( 保健指導 ) を進めながら 分析項目を整備してくことが必要となる なお 表 1 集団全体の分析項目 と表 2 個人 保健事業の単位の分析項目 を参考として例示した 3) 分析の方法と保健事業 ( 保健指導 ) 計画への活用分析に当たっては 基準の統一 比較可能性等に留意して行う必要がある また 分析結果については 医療費 対象の属性 環境などの観点からさらに解析を行い その結果を整理する そして健康課題 保健指導の効果が期待される対象者集団及び効果が期待される方法等を明らかにして その課題解決に向けた保健事業 ( 保健指導 ) 計画を策定するための基礎資料を作成する 基礎資料には 次のような分析結果を整理することが考えられる 1 医療費などの負担の大きい疾病等の分析 重点的に対策を行うべき病態や生活習慣を選定する 2 医療費増加率 有所見率の増加が著しい疾病等の分析 背景にある要因 ( 生活習慣 環境の変化など ) を考察し 重点的に適正化を図るための計画を立案する 3 属性ごとの分析 優先的に対象とすべき性別 年代を選定し 対象となる属性 ( 働き盛り ( 管理職 営業職 ) 育児中の親など) に受け入れやすい保健事業を計画する 4 環境( 地域 職場 ) ごとの分析 重点的に対策を行うべき対象を選定し その地域 職場の共通の生活習慣に関連する問題についてはポピュレーションアプローチの視点も含めて計画を作成する 5 プロセス( 過程 ) アウトプット( 事業実施量 ) アウトカム( 結果 ) の分析 プロセス ( 過程 ) 指標とアウトプット ( 事業実施量 ) 指標 アウトカム ( 結果 ) 指標との関係について分析する 保健事業の投入により 健康課題の改善が図られているかどうかを検討する 不十分な場合には保健事業の見直し または他の影響する要因について分析する ( 第 3 編第 4 章を参照 ) 74

表 1 集団全体の分析項目 ( 例 ) 1 健康課題把握のための項目死亡率死亡率の変化標準化死亡比標準化死亡比の変化要介護者等の割合 (*) 要介護者等の割合の変化 (*) 要介護状態の原因疾患 (*) レセプト ( 特に生活習慣病関連医療費 疾患名 ) 医療費の変化生活習慣病の患者数健診結果等の変化生活習慣の状況生活習慣の変化その他分析に必要な項目 2 効果的な保健事業 ( 保健指導 ) の実施状況を判断するための項目保健指導対象者のうち 動機づけ支援 積極的支援 を実施した者の割合保健指導を実施した者のうち 行動変容のステージ ( 準備状態 ) が改善した者の割合 要医療 対象者のうち 保健指導又は治療を受けた者の割合生活習慣病の治療中断者の割合効果的で常に運営可能な内容の提供状況生活習慣改善指導を希望する者の効果的な保健事業へのアクセス状況その他分析に必要な項目 3 効果的な保健事業 ( 保健指導 ) を実施できる体制であるかどうかを判断するための項目保健 医療提供体制 ( 人的資源 施設等 ) 保健指導実施者に対する研修体制と研修実施状況保健指導のための支援材料等の開発活用可能な社会資源の状況その他分析に必要な項目 計画作成時から把握可能 () () () () () () () () () (*): 市町村国保では分析することが望ましい項目 把握の時期事業実施後に把握可能 () 事業の最終的な評価で把握可能 75

表 2 個人 保健事業の単位の分析項目 ( 例 ) 把握の時期 計画作成時から把握可能 事業実施後に把握可能 1 個人単位での健康度を把握するた めの項目 壮年期死亡や重篤な疾患を起こした () 事例 その他分析に必要な項目 2 保健事業 ( 保健指導 ) 対象者把握 のための項目 健診結果等リスク判定表 に基づ () く生活習慣病リスクごとの対象者数 保健指導対象者数 ( 情報提供 動 () 機づけ支援 積極的支援 ) その他分析に必要な項目 3これまでの保健事業 ( 保健指導 ) の効果の項目 ( 集団全体 ) 生活習慣改善の意欲等主観的な指標 () の変化 生活習慣の変化 () 健診結果の変化 () 医療費の変化 () その他分析に必要な項目 ( 事業 ) 医療費に対する効果 苦情 トラブルの件数 対応状況 費用対効果 () 委託件数 その他分析に必要な項目 事業の最終的な評価で把握可能 76

(2) 保健事業 ( 保健指導 ) の目標設定平成 27 年度までに 糖尿病等の生活習慣病の有病者 予備群を少なくとも 25% 減少させるという目標に向け 必要な対象者に必要な保健指導を行い 確実に効果をあげていくためには 対象者の正確な把握 効果的な保健事業の実施とその評価が必須である 1) 保健事業全体の目標設定保健事業の目標設定は 前節の現状分析に基づき優先課題を掲げるものであるが 医療保険者の保健事業に対する考え方を示すという意味もあり どのような目標を掲げるかは 重要な判断を要するものである 優先課題は 糖尿病等の生活習慣病の有病者 予備群を減少させることに寄与するものであることは前提であるが 医療保険者としての集団全体の健康問題の特徴を現状分析から明らかにし その課題のうち 最も効果が期待できる課題を重点的に対応すべき課題として目標に掲げる必要がある 優先課題のうち目標として掲げる内容の選定は 目標を達成するための現実的な手段が明らかであることや そのための費用 人的資源 施設の保健事業の実施体制が可能であるかなど 総合的に判断し 目標を設定することが必要である 保健事業を開始した当初は 分析すべきデータが十分に整備されない中で目標を設定することになるが 年次を追って健診や保健指導のデータが収集されることから これらのデータ分析を加え 適宜 保健事業全体の目標を変えていく必要もある また 目標は抽象的な内容ではなく 例えば 糖尿病の新規治療者を **% に減少させる など できる限り数値目標とし 事業終了後の評価ができる目標を設定することが必要である 2) 保健指導レベル毎の目標設定対象者を正確に把握するために 医療保険者は 40 歳から74 歳までの全対象者のうち 糖尿病等の生活習慣病の予備群は 健診結果等による対象者階層化基準 に基づき 糖尿病等の生活習慣病保健指導 対象者として分類し 各基準に該当する人数を求める 保健指導レベル別対象者数の概数を算出し 保健指導にかかる事業全体のボリュームを調査し 対象者数の目標を設定する ( 全対象者から生活習慣病による受療者を除いた対象について 前年度の健診結果を判定基準に投入 各保健指導レベル別の対象人数の概数を算出する ) なお 治療中の者について 主治医からの紹介がある場合は 主治医と連携を図り その指導のもとに保健指導を実施する また 治療を中断している者については 受診勧奨を行う必要がある 保健指導対象者の保健指導実施率は100% に高めていくことが望ましい なお 対象者の事情等により 例えば 本来 積極的支援 を行うべき対象 77

者であったが 動機づけ支援 のみ実施した場合などには 可能な範囲でその割合も把握しておくことが望ましい 各保健指導である 情報提供 動機づけ支援 積極的支援 については 例えば下記のような指導目標を設定する必要がある なお 数値目標は 健診結果の変化 アンケート調査等に基づくものとする 1 情報提供 のみの対象者 健診結果を正常範囲のまま維持し 悪化させない 動機づけ支援 対象への移行率を% 以下とする ( この数値は性別 年代別に各医療保険者で設定 ) 2 動機づけ支援 の対象者 健診結果を改善 または悪化させない 内臓脂肪症候群 ( メタボリックシンドローム ) 予備軍では腹囲の減少をめざす 積極的支援 対象への移行率を % 以下とする ( この数値は性別 年代別に各医療保険者で設定 ) 3 積極的支援 の対象者 健診結果を改善させる 内臓脂肪症候群 ( メタボリックシンドローム ) では腹囲 体重の減量 危険因子の減少をめざす 保健指導対象者の 割以上の人において 判定の改善をめざす 要治療 への移行率を % 以下とする 3) 保健指導の対象者の優先順位の付け方の基本的な考え方今後は 保健指導対象者の増加が予測されること さらに糖尿病等の生活習慣病の有病者 予備群の25% を減少させるためには 効果的 効率的な保健指導の実施が必要である そのため 保健指導対象者に優先順位をつけて 最も必要な そして効果のあがる対象を選定して保健指導を行う必要がある 例えば 保健指導の対象者の優先順位のつけ方としては 下記の方法が考えられる 年齢が比較的若い対象者 健診結果の保健指導レベルが情報提供レベルから動機づけ支援レベル 動機づけ支援レベルから積極的支援レベルに移行するなど 健診結果が前年度と比較して悪化し より緻密な保健指導が必要になった対象者 第 2 編第 2 章 3) 質問項目 ( 標準的な質問票 7~19 番 ) の回答により 生活習慣改善の必要性が高い対象者 前年度 積極的支援及び動機づけ支援の対象者であったにもかかわらず保健指導を受けなかった対象者 78

(3) 保健事業 ( 保健指導 ) 計画作成 目標を達成するために 保健指導全体 実施 評価について具体的な計画 を作成することが望ましい 1) 保健指導全体の計画 情報提供 動機づけ支援 積極的支援 別の具体的な方法 保健指導のための人材 支援材料 記録方法 実施場所 保健指導担当者の研修などを検討する これらの状況や既存の社会資源等を総合的に判断して アウトソーシングの検討を行う また 前年度までの評価 ( 実施状況 効果 問題点など ) を踏まえ より効果的な内容となるようこころがける さらに 保健指導全体の計画にあたっては 毎回よりよいものを作成することをめざす 2) 実施体制に関する計画実施の計画については 健診から保健指導まで円滑に実施できるように保健指導の進め方 実施体制 広報の方法等に留意して作成することが必要である また 実施計画に合わせて予算を計上し 確定した予算にあわせ 実施計画の見直し 対象者の選定方法の見直しを行う 1 保健指導の進め方 情報提供 動機づけ支援 は健診結果の返却時にあわせて実施するなど 参加者の負担を軽減する方法を計画する 動機づけ支援 積極的支援 については 対象者の性別 年代 職業等 社会背景を考慮し 参加しやすい時間帯や場所を設定することや対象者が関心を持つような方法を考慮する 2 実施体制保健指導の実施に当たっては 効果 効率を考え 最適な実施体制を検討する 保健指導に関わる関係者会議を行い 支援方法の標準化 媒体 支援材料や記録の方法などを徹底する 外部講師や外部機関と連携して事業を実施するときには 事業の目的と評価法 対象者の状況などを十分に理解してもらうよう 事前の調整を十分に行う また 実際の参加者の情報についても共有化しておくことが重要である 保健指導のアウトソーシングを行う場合は 医療保険者との役割分担 責任を詳細にわたって明確にしておく 79

3 周知方法健診 保健指導の在り方や保健指導の目的 内容 効果等について 地域住民や職員全員に十分周知しておく また 地域住民や職員への周知がポピュレーションアプローチとしての意味合いも持つことを考慮して効果的に行う さらに 保健指導対象者が積極的に参加できるよう 地域 職域別に方法を検討する 特に被扶養者については 周知が徹底されるように配慮することが望ましい なお 個々の対象者に対する計画については 第 3 編第 3 章に記載する内容を踏まえ 個別に計画を作成する 3) 評価計画糖尿病等の生活習慣病の予備群に対する保健指導の効果を明確に示していくためには 保健指導をPDCA( 計画 (Plan) 実施 (Do) 評価 (Check) 改善 (Action)) サイクルで計画から見直し 改善までのプロセスを継続することによって よりよい成果をあげていくことが期待できる このため 評価の目的 方法 基準 時期 評価者 評価結果の活用法について 計画の段階から明確にしておく また 評価計画については 企画部門及び保健事業部門の両者で作成 共有化し 評価結果のうち 公表するものを明確にしておく アウトソーシングをする場合は 委託先にも評価計画を明示する (4) 保健事業 ( 保健指導 ) 計画作成の進め方 これまで述べてきたように 保健事業 ( 保健指導 ) 計画の作成においては 概ね次のような流れがある 1 各種データから集団全体の分析と個人 保健事業の単位の分析を行い その集団における優先すべき健康課題を明確にする 2 1において明らかになった健康課題を解決するために 優先順位を考慮した上で 保健指導目標として達成すべき目標や数値目標を設定する 3 2において設定した目標を具体的に達成するために 方法 実施 評価について計画を作成する 図 1 の保健事業 ( 保健指導 ) 計画作成の進め方を参照 80

図 1 保健事業 ( 保健指導 ) 計画作成の進め方 現状分析 全体の方向性を考える材料国の制度 ガイドライン 教材 研修会資料国民健康 栄養調査の調査結果健康日本 21 の指標論文 学会などで報告された新しい知見 集団全体の分析 1 健診結果を把握するための項目 ( 健診結果等の変化 医療費の変化等 ) 2 効果的な保健事業 ( 保健指導 ) を実施しているかどうかを判断する項目 ( 健診受診率 保健指導対象者のうちの保健指導を実施した者の割合等 ) 3 効果的な保健活動を実施できる体制であるかどうかを判断する項目 個人 保健事業単位の分析 1 個人単位での健康度を把握するための項目 ( 壮年期死亡や重篤な疾患を起こした事例の詳細分析 ) 2 保健事業 ( 保健指導 ) 対象者把握のための項目 ( 生活習慣病リスクごとの対象者数 保健指導対象者数等 ) 分析結果の整理 医療費 介護給付費等の負担の大きい疾病等の分析 重点的に対策を行うべき病態や生活習慣を選定 属性ごとの分析 優先的に対象とすべき性 年代を選定 構造 ( ストラクチャー ) 過程 ( プロセス ) 結果 事業実施量 ( アウトプット ) 結果 ( アウトカム ) の分析 医療費増加率 有所見率の増加が著しい疾患等の分析 背景にある要因の考察 重点的に適正化を図る計画 環境ごとの分析 ポピュレーションアプローチの視点も含めて計画を作成 健康課題の明確化 目標の設定 対象者数の把握 健診結果と問診による対象者階層化基準に基づく対象者数 性 年代などの属性など 保健指導対象者数の概算 情報提供 動機づけ支援 積極的支援 実施すべき保健指導の量の概算 保健指導ごとの達成目標の選定 計画の作成 保健指導全体の計画 保健指導ごとの具体的な方法 人材 支援材料 実施場所 研修 社会資源の活用 アウトソーシングの有無 など 投入予算の概算 予算の獲得 実施計画 保健指導の進め方( 時間 期間 回数 場所 費用など ) 実施体制 広報の方法 評価計画 目的 方法 基準 評価の時期 評価者 評価結果の活用法 など 81