日本金属学会誌第 76 巻第 1 号 (2012)96 106 特集 永久磁石材料の現状と将来展望 解説論文 Sm 2 Co 17 系磁石の現状と将来展望 大橋 健 信越化学工業株式会社 J. Japan Inst. Metals, Vol. 76, No. 1 (2012), pp.96 106 Special Issue on Recent Progresses of Materials Science of Rare Earth Permanent Magnet Materials and Their Perspectives 2012 The Japan Institute of Metals OVERVIEW Present and Future of Sm 2 Co 17 Magnets Ken Ohashi Shin Etsu Chemical Co., Ltd., Tokyo 100 0004 Sm 2 Co 17 magnets have high thermal resistivity and corrosion resistance with over 240 kj/m 3 of (BH) max,whicharewell balanced ones. But as NdFeB magnets are superior to both magnetic properties and costs, the Sm 2 Co 17 magnets are used in severe circumstance such as automobile applications. The magnetic property of Sm 2 Co 17 magnets are reviewed at first and its coercive force mechanism is discussed. As follow, some applications are introduced. (Received July 7, 2011; Accepted October 27, 2011; Published January 1, 2012) Keywords: 2 17 samarium cobalt magnet, maximum energy products, coercive force, zirconium additive, Z value, cellular structure, pinning type coercivity, magnetic wall energy, variable flux motor, thermal flux loss, radiation effect 1. はじめに Sm 2 Co 17 系磁石 ( 以降,2 17SmCo 磁石と呼ぶ ) は希土類磁石におけるスタープレーヤではなくなっているが, 耐熱性, 対候性, マイナーカーブ特性などの特徴から, バイプレーヤとして特色のある用途で使われ続けている. 磁気特性の向上という点では,Co に対する Fe 置換量の頭打ちや Cu 量減少の限界,Zr に代わる有効な添加物が見出されない現状から, 今後の大幅な改善や向上を見込むことは難しい. 原料の Co 価格がレアメタル一般の動向として上昇傾向にあり,Sm も中国問題から入手が難しくなっている. しかし,Sm は磁石用途以外にはあまり使い道がないため, 基本的に Dy のように資源的に逼迫している訳ではない. 用途によってうまく使い分けることが望ましい. 永久磁石の材料という観点に留まらない, 使い方に対する発想転換があり得るかもしれない. 保磁力機構という観点から見ると,2 17SmCo 磁石の保磁力に真の理解が得られているとは言えない. ここ 10 年以上,2 17SmCo 磁石の新しい組成提案や磁気特性の向上がなされていないため, 磁石材料開発の現状は以前に書かれたものに付け加える点は多くはない 1). 本レビューは通常とは少し異なるスタイルで,2 17SmCo 磁石の開発経緯に触れながら, 磁石材料の基礎と磁気特性や著者の推測も交えた保磁力機構と磁石応用について述べていく. 2. R Co 系金属間化合物の磁性および相図と結晶構造 Fig. 1 に永久磁石として重要な Sm Co の 2 元相図を示 Fig. 1 Binary phase diagram of Sm Co.
第 1 号 Sm 2 Co 17 系磁石の現状と将来展望 97 す 1). いくつもの金属間化合物が存在するが, このうち永久 磁石として重要な金属間化合物は SmCo 5 と Sm 2 Co 17 である. Table 1 に RCo 5 と R 2 Co 17 (R 希土類元素 ) のうち今後の議 論に重要な Y 2 Co 17,Sm 2 Co 17 の磁気特性を 2),Fig. 2 に RCo 5 と R 2 Co 17 の結晶構造を示す 1).R 2 Co 17 の結晶構造は,RCo 5 の R の一部を Co Co ペアで規則的に置換した近縁のもので あり, その詳細は後で説明する. RCo 5 と R 2 Co 17 の磁性に寄与するのは R と Co の両方であ り,R 副格子と Co 副格子に分けて考えるのがよい 3). 磁性 を担っているのはそれぞれ 4f 電子と 3d 電子であるが, 強相 関な電子系ではないので 3d 電子の詳細に立ち入らなけれ ば, その磁性の理解は比較的単純である. 永久磁石材料の 3 要件 ( 必要条件 ) は, キュリー点 (T c ), 結晶磁気異方性 (K u ) と飽和磁化 (m 0 M ) が大きいことで, その中でも結晶磁気異 方性は永久磁石候補材料で最重要な要件である. R Co 系化合物の結晶磁気異方性は R 副格子と Co 副格子 Table 1 Magnetic properties of RCo 5,Y 2 Co 17 and Sm 2 Co 17. Compound Saturation magnetization, J s /T Curie temperature, T c /K Magneto crystalline anisotropy, K u /MJm -3 Maximum energy products, (BH) max /kjm -3 YCo 5 1.09 903 5.5 223 LaCo 5 0.91 840 6.3 161 CeCo 5 0.77 653 6.4 118 PrCo 5 1.20 893 8.1 287 NdCo 5 1.22 910 0.24 296 からの足し合わせである.Co 副格子からの結晶磁気異方性は YCo 5 から見積もることができ,Co 副格子の結晶磁気異方性は 5.5 10 6 J/m 3 の大きな値を示す 4). この値だけでも通常は磁石候補材料の資格がある.R 2 Co 17 の Co 副格子は負の異方性を有していて, ほとんどの化合物の異方性は負の値となっている.R 原子間の相互作用は弱いが,R Co 副格子間相互作用により R 副格子の磁性は室温以上まで保持されるので,R 副格子の結晶磁気異方性が支配的となる. その理由は,R 原子の 4f 電子は 5d, 6s 電子の内殻側に位置し, 軌道角運動量がよい保存量となっていて, 周囲の結晶場の影響を受けて 4f 軌道が 3d 軌道と重ならない特定の方向に向きやすいためである 3).R の 4f 電子雲を Fig. 3 に示す 5).RCo 5 化合物では細長い 4f 電子雲をもった R 原子 (Stevens 因子が正 ) の場合に, 結晶磁気異方性が大きくなる.SmCo 5 化合物の異方性が取り分け大きい理由は,Sm の 4f 電子が上位の準位とのミキシングを起こしているためである.R 2 Co 17 では Co 副格子の影響を受けて, ほとんどの化合物は負の異方性を示すが,Sm 2 Co 17 だけは Sm の異方性が非常に強いため, 3.2 10 6 J/m 3 の正の値を示す. もう 1 つの重要な要件であるキュリー温度 (T c ) は主に遷移金属により担われており,Co 副格子による寄与でほぼ決まる 3). 非磁性 R 原子である YCo 5 や LuCo 5 が, ベースとなる Co 副格子の磁性を反映している. それに R と Co 副格子間の磁気的相互作用が重畳されて,RCo 5 や R 2 Co 17 の T c は R 原子の種類により少し変化する.R 原子間の 4f 電子間交換相互作用 (sf 相互作用 ) は弱いので,T c にはあまり寄与し SmCo 5 1.07 1000 17.2 229 GdCo 5 0.363 1008 4.6 26 TbCo 5 0.236 980 11 DyCo 5 0.437 966 38 HoCo 5 0.606 1033 3.6 72 ErCo 5 0.727 1053 3.8 105 TmCo 5 0.75 1020 112 Y 2 Co 17 1.25 1167-0.34 Sm 2 Co 17 1.20 1190 3.3 287 Fig. 3 4f orbital shapes of rare earth atoms. 5) Fig. 2 Crystal structure of R Co 5 andr 2 Co 17 compounds. 1)
98 日本金属学会誌 (2012) 第 76 巻 ない. 飽和磁化 (m 0 M もしくは飽和自発分極 J c ) も Co 副格子が支配的ではあるが,R 副格子の寄与もある.T c と状況が少し異なるのは両者の単純な足し算にならない点である.R Co 間は伝導電子を媒介とした sd,sf 相互作用が働く. スピン間は平行となるが,R の磁性は J=L+S で決まるので ( J 合成角運動量,L 軌道角運動量,S スピン角運動量), Eu を含むより原子番号の小さい軽希土類 LRE と Co 間の磁気モーメントは平行,Gd より原子番号の大きい重希土類 HRE と Co 間の磁気モーメントは反平行なフェリ磁性となる 3).Co の磁気モーメントは HRE の磁気モーメントで減じられるので, 永久磁石材料候補として望ましいのは,LRE Co 系の化合物である. Fig. 2 に RCo 5 と R 2 Co 17 の結晶構造を示す. 基本となる RCo 5 は R, Co よりなる面と Co のみからなる面を c 軸方向に積層したものである.RCo 5 と R 2 Co 17 の結晶系は異なるが, 近縁の構造である 1). 3RCo 5 R+2Co=R 2 Co 17 上記の式で示すように,RCo 5 の 3 ユニットから R を 1 つ抜いて,Co ペアで置換したのが R 2 Co 17 化合物である.R を Co ペアで置換する時,Co ペアは c 軸方向にダンベルを形成する形で入るため,R 2 Co 17 は RCo 5 より a 軸が縮み c 軸が伸びる.Co ペアが c 軸に沿って A, B, C, A, B, C と置換すれば Th 2 Zn 17 型菱面体晶構造となり,A, B, A, B と置換すれば Th 2 Ni 17 型六方晶構造となる. 磁石として重要な Sm 2 Co 17 は Th 2 Zn 17 型菱面体晶構造をとる. 後で触れるが,2 17SmCo 磁石が 1 5 相と 2 17 相の微細なセル組織に分離するのは, 両方の結晶構造が非常に近縁の関係にあって, 格子不整合が小さくなるような面が存在するためである 1).2 17SmCo 磁石と類似の 2 相分離微細構造を他の材料系に展開できていないのは, 上記のような条件を満たしかつ少なくとも一方の結晶磁気異方性が大きいような化合物系が見つかっていないためである. RCo 5 と R 2 Co 17 で磁石候補として望ましいのは,R が軽希土類側の Stevens 因子が正のもので, 結晶磁気異方性の特に大きい SmCo 5 や相対的に値の大きい Sm 2 Co 17 である 2). ただ,SmCo 5 の異方性が飛び抜けて大きいため,Sm を Pr や Nd(Stevens 因子が負 ) で一定程度置換することは可能である.Pr や Nd は磁気モーメントが Sm より大きいため, 飽和磁化の増大に寄与する. 3. 2 17SmCo 希土類磁石の磁気特性と推移 2 17SmCo 磁石の開発は組成で示すと便宜的に次の 4 つの世代に分けられる 1). 組成中の遷移金属はその構成のみで, 実際の組成比率を示すものではない. 第 1 世代 R(CoCu) 5 R=Ce, Sm 第 2 世代 R(CoFeCu) 7 R=SmCe, Sm 第 3 世代 Sm(CoFeCuM) 7.5 M=Ti,Zr,Nb,Ta,etc. ( 主に遷移金属 ) 第 4 世代 Sm(CoFeCuZr) 7.5~8 低 Cu 第 1 世代の R(CoCu) 5 磁石は析出硬化型の磁石を目指し て検討され, 結果として全く異なる保磁力機構の異なる磁石ではあったが磁石特性を示すものが得られた 6). 当初は鋳造磁石で検討されていたが, 磁石の脆性や c 軸配向の問題を改善するため, 磁粉配向と粉末焼結法を標準製造工程として, 焼結磁石が開発されるようになった. 俵や Nesbitt などの少数の研究者が開発を行っていただけで, あまり注目されていなかった 6,7). その原因は Co を Cu で置換することによる飽和磁化の減少であった. 当時の研究の主流は Strnat の提唱に始まる SmCo 5 金属間化合物の磁石化で 8), ほとんどの研究者や開発者はこちらの磁石化を競っていた.R(CoCu) 5 磁石化開発の経緯について, 最近俵が大変興味深い話しを書いているので, そちらを是非お読みいただきたい 9). 俵によると R(CoCu) 5 の開発を続けていたのは,Cu 置換系では資源的に有利な Ce(CoCu) 5 が磁石化できることと,Co を一定程度 Fe で置換可能なためである.Ce(CoCuFe) 5 組成で Cu 置換による磁性の希薄化を若干補償できた 10).SmCo 5 磁石では Co の Fe 置換ができない. これは SmFe 5 化合物が相図上で存在していないためであるが,Cu 置換により一定比率の Fe の固溶が可能になることは,Cu 置換系の大きな利点の 1 つである. 1970 年前後では希土類元素 (R) は今日ほど一般的でなく, せいぜい混合希土類金属であるミッシュメタル (MM) がライターの火打ち石として用いられている程度であった. 当然,Sm は用途もなかったので, 国内で分離精製製造しているメーカは皆無であった.Ce はサンプル的にではあるが入手が可能であったのと, 相対的に値段が安かったことは利点の 1 つである. 磁気特性が低いとはいえ Ce(CoCuFe) 5 磁石で達成された 96 kj/m 3 (12MGOe) の特性は 10), 当時の主流であったアルニコ磁石やフェライト磁石に比較すると 3 倍以上の磁気特性である. 典型的な CeCo 磁石の組成を下記に示す. Ce(Co res Fe 0.14 Cu 0.14 ) 5 ( 1 ) 当時の応用分野から見た欧米の状況と日本の状況を比較して見ることは興味深い. 欧米, 特にアメリカにおける希土類磁石開発の目的 目標は, 軍需用途を目指していたことは明らかである. それは希土類磁石の創始者である Strnat が, 最初 US Air Force Laboratory に所属していたことからも分かる. また, 希土類元素のイオン交換分離や溶媒抽出などによる分離精製はアメリカの Ames Laboratory などで精力的に開発されたが, この技術の基礎は U の分離精製に由来している. したがって, 軍需用途の観点からはコストより特性優先であり, 高磁気特性が期待できる SmCo 5 の開発に注力することは当然の選択であった. 一方, 太平洋戦争に負けた日本には軍需用途の選択はありえず, 勃興期にあった家電や民生用電子機器がターゲットであった. この用途でまず優先されるのはコストであり, 用途に見合った磁気特性である. Ce(CoCuFe) 5 磁石が, 当時松下電器に所属していた俵らにより開発されたことは偶然ではない. この日米の応用分野への指向の差が, その後の希土類磁石ビジネスにおける明暗を分ける要因の 1 つになる. Ce(CoCuFe) 5 や Sm(CoCu) 5 で注目されるのは, 初磁化 曲線である. 希土類磁石の保磁力機構にはピンニング型保磁
第 1 号 Sm 2 Co 17 系磁石の現状と将来展望 99 Fig. 4 Relationship between initial curve and coercive force mechanism: (a)pinning type and (b)nucleation type. 力と核発生成長型保磁力があり,Fig. 4 に模式的に示すが, 初磁化曲線により区別される 1). ピンニング型保磁力は Cu 置換 R(CoCu) 5 磁石や 2 17SmCo 磁石で発現し, 核発生成長型保磁力は SmCo 5 磁石や NdFeB 磁石で発現している. ピンニング型保磁力の磁石は, 磁壁が何らかのピン止めサイトにトラップされているため, 外部磁場による磁壁駆動エネルギがピン止めによるポテンシャルエネルギの利得を上回るまでは, 磁壁移動による磁化の変化は起きない. そのため Fig. 4(a) のような初磁化曲線を示す. ところが開発された当時も, 微細組織の観察手段がもっと進んだ最近でも, R(CoCu) 5 磁石内に磁壁ピン止めのサイトになる明瞭な微細組織は見つけられていない 11).TEM で微細構造の観察をしても均質な組織が見えるだけである. この事実は深く追求されることもなく, 材料開発の歴史の中に埋もれてしまっているが, この点は後に 4 節で議論する. 第 2 世代は R ( CoFeCu ) 7 磁石 (R = SmCe, Sm ) の開発で 12), 下記の組成が典型的である 13). Sm(Co res Fe 0.06 Cu 0.15 ) 6.8 ( 2 ) SmCo 5 はラインコンパウンドではなく,Co に対してある幅の固溶限があることは分かっていた.R と T( ここでは Fe, Co や Cu を含む遷移金属部を T で表す ) の比を Z で表すと, R 2 T 17 に相当する Z 値が 8.5 である.RT Z の T 中の Cu 量を適切に選択することにより,Z~7 付近に, 六方晶 TbCu 7 型 RT 7 ( 以降, 化合物を 1 7 相と呼ぶ ) という高温で安定な均質相が存在する.RT 7 は Fig. 2 に示す R 2 T 17 の T T ダンベルペアを R 位置にランダムに置換した結晶構造で, 高温準安定相のため徐冷により低温では RT 5 と R 2 T 17 に分離する.T が Fe の場合,RFe 5 化合物は存在しないが R 2 Fe 17 化合物は存在し,R 2 (CoFe) 17 は全域で相互に固溶可能である. Cu で安定化された RT 7 では Fe を一定程度置換することが可能である. 磁化の大きさを主に担っている遷移金属の比率を増やすことができ Fe 置換も可能なため, 飽和磁化が大幅に上昇し SmCo 5 石の値を超えた 12).Sm 2 T 17 化合物 ( ここでは T=Co や CoFe, Z=8.5) は Strnat により開発されるべき高特性磁石の候補と提唱されていたので 8), 俵らの Sm(CoFeCu) 7 磁石は 2 17 磁石と認識されるようになった. Fig. 5 は俵らにより得られた 1 7 磁石のヒステリシス曲線で, (BH) max =160 kj/m 3 (20MGOe) である 13). R(CoCu) 5 磁石と Sm(CoFeCu) 7 磁石の大きく異なるのは, 数十 nm のセル状微細組織が観察された点である.Fig. 6 に 2 相分離したセル状組織の模式図を示す.c 面と c 軸を含む面での断面形状は少し異なっており,c 軸方向に少し引 Fig. 5 Hysteresis loop of SmCe(CoFeCu) 7 magnet. 13) Fig. 6 Schematic cell structure in 2 17SmCo magnet. (a) c plane and (b) plane including c axis. き延ばされた形状をしている. 微細組織は Sm(CoCu) 5 ( 以降,1 5 相と呼ぶ ) と Sm 2 (CoFe) 17 ( 以降,2 17 相と呼ぶ ) よりなり,2 17 相の周囲を薄い 1 5 相が包むようなセル状組織を示す 14). Sm(CoFeCu) 7 磁石は初磁化がピンニング型保磁力の特徴を示すため, このセル組織から結晶磁気異方性が大きい 1 5 相に磁壁がピン止めもしくは磁壁移動が阻止されると考えるのは自然である.1 5 相と 2 17 相に相分離後,Fe は主に 2 17 相に拡散濃縮され,Cu は 1 5 相に拡散濃縮される. 磁壁ピン止めに寄与する 1 5 相と磁化の増大に寄与する 2 17 相という, 絶妙な微細組織の組み合わせを持つ磁石である. この基本スキームが認識されると, 低 Cu 高 Fe 高 Z 値組成が目指された.R Co Cu(Fe) 多元相図の複雑さから, 第 5 元素の添加により前記の目標を達成しようとして, 数多くの研究者が添加物の探索に参入した.R(CoFeCu) 7 磁石はこの流れを作り出した源流であり, 以後の希土類磁石開発のメインストリームとなった 12,13). 第 3 世代は Sm(CoFeCuM) Z 磁石の最適添加物 M と最適添加量を検討することにより,Cu 置換量の低減と Fe 置換量の増大,Z 値の向上 (8.5 を上限として ) を達成することが研究の焦点となった. 置換元素 M には種々のものが検討され,Ti,Ta,Nb,Mo,Zr,Hfなど 4d,5d 遷移金属が主に試行されて効果が確認され,Mn, Cr などの 3d 遷移金属も一定程度効果のあることが分かった 15,16). 種々の添加物は 1 7 相の高 Z 値 低 Cu 高 Fe 領域への拡大に寄与する 17). これらの中で Zr と Hf が一番効果のある添加物で, 資源的によりレアな Hf ではなく Zr が添加物として一番適していることが分かった 15).Zr がなぜ一番効果的であるのかは不明だが, 一つの仮説としてサイズ効果が考えられる.Zr
100 日本金属学会誌 (2012) 第 76 巻 は原子サイズが Co Fe Cu より大きいが,R よりは小さい. そのため当初,Zr が Co サイトを置換するのか R サイトを置換するのかがはっきりしなかった. 今でも Zr 置換サイトを明確に同定した報告はなされていないが, 一般的には Co サイトを置換すると考えられている. 素朴な考えとして, Zr 置換によるサイズ効果で格子が膨らむことにより,Co を Fe が置換しやすくなるのであろう. 尾島, 米山らによる下記の組成が標準組成として知られている 15). Sm(Co res Fe 0.20 Cu 0.10 Zr 0.01 ) 7.5 ( 3 ) 第 2 世代の Sm(CoFeCu) 7 組成比較で,Fe 量増加 Cu 量減少 Z 値の向上が見て取れる. セル状微細組織の比較では, セルの形状が第 2 世代に比べて大きくなっている 18). 高温安定の 1 7 均一相から 1 5 相と 2 17 相セル状組織に相分離した後,Fe が 2 17 相に, Cu が 1 5 相に相互に拡散しながら各々濃縮する.Zr は主に 2 17 相に置換されている.Z 値が更に 8.5 に近くなったため 2 17 相の割合が増える. 従来のセルサイズのままでは 1 5 相と 2 17 相の格子界面歪みエネルギが増大するので, セルサイズを大きくすることによってセル界面の比率を下げるのではないか考えられる. また,Zr 添加はセルと境界相間における Fe/Cu 相互拡散を促進する方向で働いているのであろう. 第 3 世代の磁石の製造プロセスにおいて, 焼結 時効条件の最適化は重要である. 第 2 世代の磁石は焼結溶体化段階でほぼ保磁力が決まってしまい, 時効熱処理は行われていたがあまり重要ではなかった. しかし, 第 3 世代の磁石では焼結溶体化後の時効熱処理が重要で, 米山らは高温からの多段時効 ( 徐冷 ) が保磁力増大に効果的であることを見出した 15). 焼結直後は 1 7 均質相のため保磁力は非常に低く, 多段時効の過程で前述のように 1 5 と 2 17 相間における Cu/Fe の相互拡散が生じ, 徐々に保磁力が増加する. 多段時効の開始温度と保持時間や冷却速度 時効終了温度は保磁力の値を左右する重要なパラメータである.Fe/Cu の相互拡散による濃度の開きを Fig. 7 に示す ( 但し, 磁石組成は第 4 世代のものに対してである ) 1).1 5 相は薄く EDX 解析が難しいので,2 17 相の組成変化を示している. これら組成や粉末冶金法による諸条件の最適化 ( 粒度分布, 粉末酸化程度, 磁場配向条件, 圧粉成形条件, 焼結 時効熱処理条件, 等 ) の結果,(BH ) max で 240 kj / m 3 ( 30 MGOe) を超えるようになり 15),SmCo 5 磁石を大きく超える磁気特性が得られるになった. 俵による第 2 世代磁石の開発以降,2 17SmCo 磁石の本質的なブレークスルーは日本においてなされた. これはいくつかの要因が考えられる. 大学や研究所における磁性材料研究の伝統, 数多くの磁性材料メーカが存在していて国内で切磋琢磨していく環境が存在していたこと, 磁石材料のユーザである電機 電子機器メーカが右肩上がりの成長の中で高価で高特性な磁石材料を使いこなし, 新規な応用製品を開拓する力を持っていたことなどが挙げられる. もう 1 つ磁石開発の研究者 開発者コミュニティーを要因に挙げてもよいかもしれない 19).2 17SmCo 磁石開発の本質部分の多くが民間メーカの開発技術者により行われた. これは磁石原料価格 Fig. 7 Inter diffusion of iron and copper at aging heat treatment in 2 17SmCo magnets. 1) や焼結磁石製造装置の規模の点で, 大学での実験に適さなかったことも一因である. 通常, 民間メーカの技術者間では大学研究者間におけるような自由な意見交換はなされない. それは特許の問題であり, 製造プロセスのノウハウの問題であり, 各社の利益に直結するため, 社外の壁を越えての議論は当然限られたものにならざるを得ない. しかし, 日本の希土類磁石開発においては会社間の制約は厳守しながらも, 学会や研究会 国際会議などの集まりを通じて, 基礎的な部分で民間技術者間の議論や大学研究者との共同研究が活発になされた. この関係は NdFeB 磁石開発においてより加速され, NdFeB 磁石開発と希土類金属間化合物の基礎磁性研究の非常に好ましい正のフィードバックが実現された. 第 4 世代の磁石は一見第 3 世代の単純な改良のように見えるが,Zr 添加量の増加という形で提案された 20). 第 3 世代の磁石は保磁力が概ね 800 ka/m(10 koe) 以下で,BH ヒステリシス曲線の第 3 象限 ( 減磁曲線 ) にクニックが生じる. これは磁気回路設計の上で制約となるため, 減磁曲線が直線的になるように, 残留磁束密度 (B r ) の値を超える保磁力 (H cj ) を有する磁石が望まれていた. 下田らによる提案は, 従来組成より Zr 添加量を倍増し, それを補償するため Cu 量を半分に減らし Fe 量と Z 値を高くするもので, 長時間の時効熱処理も必須要件であった 20).Zr 添加量増加の効果は顕著で,1.6MA/m(20 koe) を超える大きな保磁力 (H cj ) が得られた. 彼らはボンド磁石用の溶解合金に対して前記の結果を得ていたため, 粉末冶金法による焼結磁石での検討が直ちになされた. 当初, ヒステリシス曲線の角形性が悪く, H cj が大き過ぎて電磁石の磁場ではマイナーループしか測定できなかった. 組成や製造条件を最適化した結果, おおよそ下記のような組成に収斂した. Sm(Co res Fe 0.20~0.30 Cu 0.05~0.055 Zr 0.02~0.025 ) 7.5~7.7 ( 4 ) 下田らの提案組成から Z 値は小さい方に若干ずれたが, 基本的には Zr 量の倍増 Cu 量の半減と長時間の時効熱処理が本質的であった. 熱処理の各段階における保磁力変化について一例を Fig. 8 に示す 21). 時効開始温度と保持時間により 2 相分離のセルサイズとその分布が決まり, 冷却速度によりセル間の相互拡散濃度差が決まる. 保磁力やヒステリシス曲線の角形性が左右される
第 1 号 Sm 2 Co 17 系磁石の現状と将来展望 101 Fig. 9 Magnetic curve of 2 17Sm(CoFeCuZr) Z magnets at 4th generation (Shin Etsu Chemical. R32H). 23) Fig. 8 Aging condition and coercive force dependence in Sm(Co res Fe 0.20 Cu 0.055 Zr 0.025 ) 7.5 magnet. 21) ので, 時効熱処理の条件は詳細に検討する必要がある.2 相分離のプロセスについて Ray が詳細な議論をしている 22). 第 4 世代の磁石は,Cu 濃縮度合いにより 2.4 MA/m(30 koe) を越えるような非常に大きな保磁力を発現することも可能である. しかし,H cj を大きくし過ぎるとヒステリシス曲線の角形性が悪化して, 非常に大きな着磁磁場が必要になってしまう. セルサイズやセル間濃度差に分布ができてしまい, 結果として保磁力の分布や角形性の悪化の原因となるのであろう. 下田らによるボンド磁石と焼結磁石における Z 値のズレに関しては, 製造法の違いによる. 希土類焼結磁石の粉末冶金法では, 合金をジェットミルにより数 mm 程度の微粉末にするので, 微粉末の表面酸化は避けられない.2 17SmCo 磁石微粉においては酸素量で 0.1mass 前後の酸化が生じ, Sm が酸化されやすいので組成を予め Sm リッチ側にしておく必要がある. 例えば Z 値が 7.5 の組成の場合, 微粉の酸化によりすべて Sm 2 O 3 となると仮定してそれ以外の組成を補正計算すると, 実質的な Z 値はおおよそ Z~8.0 になる. 一方, ボンド磁石では合金を粗粉砕したものを樹脂と混練し, 磁場中で配向 成形する. 焼結磁石のような微粉化は必要なく, 数十 mm 程度の粗粉でよいためその酸化程度は低い. 磁性に寄与する実質的な組成だけで比較すると, ボンド磁石と焼結磁石の組成差はあまり大きくない. 現在量産されている最高グレードの 2 17SmCo 磁石のヒステリシス曲線を Fig. 9 に示す 23).Fe 量が高くなっているため ( 組成式 (4) を参照 ), 焼結や時効熱処理の制御が大変難しく, 角形性は少し低下している. 2 17SmCo 磁石で磁気特性向上の余地があるかどうか考 察してみる. 今日,NdFeB 焼結磁石で行われている無酸素雰囲気で微粉取り扱いを行えば, 酸化防止ができて Z 値を 8 前後まで向上できる. 磁気特性向上は見込めるが, 製造コストを上げることになる. 一方, 更に低 Cu と高 Fe 組成の可能性は,Zr 添加物系では難しい.1 7 相の安定領域がそちら側に拡がっていないためである. その他添加物系で検討の余地はあるかもしれないが ( 例えば Hf), 膨大な検討が必要となるであろう.Sm を磁気モーメントの大きな Pr, Nd で置換することは,10~20at 程度は可能である. しかし, 結晶磁気異方性が低下するため, 部分置換にとどまる. 現在, 飽和磁化の高い NdFeB 磁石が存在しているため,2 17SmCo 磁石の磁気特性向上要求は市場ニーズの点からはない. 現在の組成と磁気特性がこの磁石系の最終到達点であろう. 第 4 世代磁石の微細構造はセル構造を有する点では従来と同じであるが, セルサイズが肥大化している点と c 面方向にプレートレットと呼ばれる Zr リッチな板状組織がセルを貫いて走っている点が異なる 21,26).Fig. 10 に TEM 観察による微細構造を示すが,(a) は c 面,(b) は c 軸を含む面である. また,Fig. 10(c) に第 3 世代の c 軸を含む面の微細構造を示すが, セルサイズが大きくなっていることが分かる.Z 値が高くなって,2 相分離時に 2 17 相の比率が上昇するためセル組織が肥大化する. セル肥大化により Fe/Cu の相互拡散距離は第 3 世代のものより長くなる. これが第 4 世代磁石において時効熱処理が長時間化した要因であろう. プレートレット相は非常に薄いため, その組成と結晶構造の同定は容易ではない 21,26). プレートレット相は c 面方向にセルを貫いて延びており,Fe/Cu 相互拡散のパスの 1 つになっているのではないかと推測されている. セルサイズが大きくなってもプレートレット相を通して相互拡散が効率的に進むので, 高い保磁力が得られるのであろう. 拡散パスの仮説を直接検証することが望ましいが, プレートレット相は非常に厚みが薄いため解析は容易ではない. 第 4 世代の磁石は Fe/Cu 相互拡散に長時間かかるため, 従来の時効熱処理条件では不十分であった. 下田らは溶解合金で実験を行っていたため, 均質化や時効熱処理に長時間かけたのであろう 20).2 17SmCo 磁石の保磁力は, 組成と熱処理が磁壁ピン止めサイトとなるセル組織と Fe/Cu 相互拡散に直結しているため, どちらかが適切でなければ十分な保磁力は得られない. 第 3 世代の 2 17SmCo 焼結磁石開発に
102 日本金属学会誌 (2012) 第 76 巻 Fig. 10 Micro structure of 2 17SmCo magnets by TEM. 1) (Arrows in figures show c axis.)(a) Cplaneof2 17SmCo magnetat4 th generation. (b) Plane including c axis of 2 17SmCo magnet at 4 th generation. (c) Plane including c axis of 2 17SmCo magnet at 3 rd generation. おいて Zr の最適添加量を特定するため, 上記の添加量範囲状を検討していた開発者は著者を含め多くいた. しかし, その下に豊かな鉱脈があることは気付かず見逃してしまった. 第 4 世代磁石開発の経緯は, 材料開発における 1 つの教訓を与えてくれる. 材料開発においてすべての場合をやり尽くす訳にはいかないが, 狭い範囲の極小値に落ち込まないように, パラメータを大きく振るような意識的な試行を開発に盛り込む必要があろう. 4. 2 17SmCo 磁石の保磁力機構 2 17SmCo 磁石は磁壁ピンニング型保磁力を示すものとして, 核発生成長型保磁力を示す NdFeB 磁石や SmCo 5 磁石と対比される. 磁壁ピンニング型と核発生成長型は,Fig. 4 に示すように初磁化曲線の違いで判別される. ここでは 2 17SmCo 磁石とその議論に必要な Sm(CoCu) 5 磁石の磁壁ピンニング型保磁力について考える 1). 2 17SmCo 磁石の微細構造は Fig. 10 に示されるようなセル構造をしている. 既に述べたようにセル内部が 2 17 相, セル境界が 1 5 相である.1 5 相 2 17 相共に強磁性相であるので, 単磁区粒子型の保磁力でないことは明らかである. 1 5 相が非常に薄いため,2 17 相と 1 5 相は交換結合している. 熱磁気曲線を測定しても 1 5 相に相当するキュリー点のクニックは測定されず,2 17 相単相のようなカーブを示すだけである. 一般的には下記の簡単な式で示されるように 1 5 相と 2 17 相の磁壁エネルギの差で, 保磁力が発現すると認識されている 24). H cj = g 1 5-g 2 17 m 0 M s d g 磁壁エネルギ,d 磁壁厚み,m 0 M s 飽和磁化 2 相分離は焼結粒内で概ね均一に起きるので, 磁壁はどこでピン止めされてもほぼ同じ保磁力を与える. また, 磁壁がピン止めされた個所から磁場を印加して移動させるには, 一定 Fig. 11 Magnetic wall observations of 2 17SmCo magnet at each stage in aging process by Lorentz TEM. 21) (a), (b), (c) and (d) correspond to,, and at aging process in Fig. 8. Fig. 12 Schematic potential models of magnetic wall energy difference in 2 17SmCo magnet micro structure. 1) (a) Potential barrier model, (b) potential well model and (c) double potential model. 以上の外部磁場を印加させる必要があるので, 既に述べたように Fig. 4(a) のような初磁化曲線を与えることは容易に想像できる. 2 17SmCo 磁石のセル組織の生成と上記のピンニング保磁力の描像が, 矛盾なく整合しているかどうかにつき考えてみる. 踏まえるべき実験事実は, 次の 3 点である. 焼結後は TbCu 7 構造の 1 7 均質相であるが, 時効熱処理初期の高温保持段階で 1 5 相と 2 17 相の 2 相に分離してセル構造が生成される. この段階でセルは形成されるが, 有意な保磁力は発現していない. 時効熱処理の徐冷過程で 2 17 セル相と 1 5 セル相間で Fe/Cu の相互拡散が進行し, 保磁力が徐々にかつ単調に増大する. 熱消磁状態で磁壁は 1 5 相にピン止めされ,Fig. 11 のローレンツ TEM による観察結果が示すように磁壁は 1 5 相に沿ってジグザグな形状となる 21). 着磁や減磁過程で磁壁はある 1 5 相のピン止め個所からはずれて, 別な 1 5 相の個所にピン止めされる. 磁壁のピンニング機構については,Fig. 12(a)(b) に示す 2 つのモデルが最初に提案されていた 1). 仮に (a) をポテンシ
第 1 号 Sm 2 Co 17 系磁石の現状と将来展望 103 ャルバリアモデル 14),(b) をポテンシャル井戸モデル 18) と呼ぶ. 結晶磁気異方性の値を比較すると,SmCo 5 化合物 ( セル境界 ) の方が Sm 2 Co 17 化合物 ( セル内部 ) より圧倒的に大きいので, ポテンシャルバリアモデルが合理的に思える. 時効初期の高温保持段階でセル組織が形成されるので, セル形成が起きれば磁壁エネルギ差により直ちに保磁力が発現するはずである. しかし, 実際は時効熱処理の徐冷により徐々に保磁力が増加する. また,Fig. 11 のローレンツ TEM による磁壁観察の結果は 21), 熱消磁状態で磁壁は 1 5 境界相に境界に沿ってジグザグな形でピン止めされていることを示している. 磁壁エネルギから見ると不利なはずの 1 5 相に磁壁はピン止めされている. ポテンシャルバリアモデルは実験事実と矛盾している. では, ポテンシャル井戸モデルは実験事実と整合するだろうか.1 5 相に磁壁がピン止めされること, 冷却過程で徐々に保磁力が増大する事実は,Fe/Cu の相互拡散による濃度差増大によりポテンシャル井戸が深くなること整合しているようにみえる. しかし, 元々結晶磁気異方性定数 (K u ) が K u1 5 >K u2 17 であるから最初はポテンシャルバリアであり, Fe / Cu の相互拡散により K u1 5 = K u2 17 を経て,K u1 5 < K u2 17 となってポテンシャル井戸に変化する必要がある. 時効により直ぐに大きな保磁力が発現し, それに続く徐冷過程で減少し, 更に徐冷すると再度保磁力が増大するという挙動を示すはずである. 実験事実はこれに反して, 冷却過程で保磁力は単調に増大するだけである. つまり単純なポテンシャルバリアモデルもポテンシャル井戸モデルも実験事実と矛盾している. Kronmuller らは両者の複合案である Fig. 12(c) のような 2 重ポテンシャルバリアモデルを提唱している 25). 高温保持段階 ( 通常 800 C 以上 ) でセル組織形成が形成されても,1 5 相と 2 17 相のキュリー点 (T c ) の違いにより, 冷却過程でまず 2 17 相が磁性を回復する.1 5 相は冷却温度が T c 以下になったら磁性を回復するが,T c 直下ではもっと高温で既に磁性を回復した 2 17 相の結晶磁気異方性の方が大きいので,1 5 相がポテンシャル井戸になってここに磁壁がピン止めされる. 更に冷却することにより 1 5 相の結晶磁気異方性は回復して行くが, その段階では Cu が 1 5 相に濃縮され厚み中央部で一番高濃度になっている.Fig. 12(c) のように 1 5 相のポテンシャルバリア中に Cu 濃縮により井戸が形成され, 磁壁はこの 1 5 相にピン止めされて動けなくなる. 更なる徐冷により 2 重バリア間のポテンシャル井戸は更に深くなって, 保磁力は単調に増加する. このモデルは一見実験事実を無理なく説明しているように思える. では, 時効初期の高温保持段階で熱処理を中断してそこから急冷すれば, Cu 濃縮が進んでいないので 1 5 相内にポテンシャル井戸は形成されていない. 室温において, 磁壁は結晶磁気異方性の小さくエネルギ的に有利な 2 17 相にいて,2 17 相と 1 5 相間のポテンシャルバリアにより大きな保磁力が発現するはずであるが, これは実験事実と反する 21). また必要十分な時効熱処理を行った磁石で, 着磁もしくは減磁過程で磁壁は 1 5 相のピン止め個所からはずれて, よりエネルギ的に安定 な 2 17 相内に落ち着くはずである. つまり磁壁は 1 5 相に沿ったジグザク状にならず, 主に 2 17 相内を走って比較的ストレートになるはずである. しかし, 進藤らによる電子線ホログラフィー観察で, 磁壁移動後も 1 5 相にピン止めされることが観察されている 21).Kronmuller らは時効初期段階で形成されたセル境界相は 1 5 相ではなく, 構造の乱れた相のため結晶磁気異方性が小さいという提案もしている. 岡部, 進藤らは電子線回折により時効各段階 ( 高温での等温保持初期と徐冷終期 ) の試料を測定し, セル形成時の境界相も 1 5 相であることを示した 21).2 重ポテンシャルバリアモデルを更に修正したモデルも提案されているが 26), 磁壁ピンニングに対する各種ポテンシャル差のモデルで実験事実を矛盾なく説明できるものはない. 著者は磁壁ピンニングモデルに固執することなく, 原点である R(CoCu) 5 の保磁力機構を解明することが重要であると考える 1).Sm(CoCu) 5 磁石に微細組織が存在せずしかも本質的に均質であるかどうかを, 宝野らは TEM とアトムプローブで調べた. アトムプローブによる解析結果の一例を Fig. 13 に示すが,Co, Cu に濃度揺らぎや微細組織は見られない 27).SmCo 5 では Sm+Co 面と Co 面が c 軸方向に交互に積層するが, その Sm 面が atom map で見えていることに注意願いたい. この分解精度で見ても Cu に濃度揺らぎは認められない. Fig. 13 Atom probe observation of Sm(CoCu) 5 rapid quench magnet. 27) (a) atom maps and (b) composition profiles. Fig. 14 Coercive force and magnetization dependence against copper content. 7)
104 日本金属学会誌 (2012) 第 76 巻 Fig. 14 は Nesbitt らにより随分昔に報告された Sm(CoCu) 5 磁石における Cu 量と保磁力の関係である 7).1 5 相への Cu 濃縮により保磁力がある濃度以上で急に増大しており, しかもピンニング型保磁力を示す. 2 17SmCo 磁石は 2 相分離組織を有するため磁壁エネルギ差のポテンシャルモデルは考えやすい. しかし,Cu がある量以上置換された 1 5 相自体に, 磁壁がピン止めされるとするのが実験事実を一番無理なく説明できる 1). セル形成の初期段階において小さい保磁力しか示さないのは,1 5 相に Cu 濃縮があまり起きていないためである. 時効冷却により Cu が 1 5 相に濃縮されるにつれ, 保磁力は増加する.1 5 相自体がピン止めサイトになるので, 熱消磁や着磁 減磁処理を行ってもピン止め点が 1 5 相のある個所から別な個所に移るだけで, 磁壁は 1 5 相に沿ってジグザグ状になる 21). 2 17SmCo 磁石において Sm(CoCu) 5 セル境界相自身が磁壁ピンニングサイトになるという考えが一般に受け入れられていないのは, 従来の素朴な保磁力機構では均質相による磁壁ピンニングという事実の説明ができないためである. また, R(CoCu) 5 磁石は磁気特性が低く, 初期に少数の研究者しか検討していなかったので, 問題が共有されなかったこともあるであろう.R(CoCu) 5 磁石の保磁力機構が解明される前に, 2 17SmCo 磁石が開発されそのセル構造が観察されたので, 考えやすい磁壁エネルギ差のポテンシャルモデルが受け入れられた, という歴史的経緯も影響している. Zijlstra は磁壁が非常に薄くなって結晶のユニットセルに近い連続体モデルが成り立たないような場合, 磁壁が結晶格子のどこに位置するかで磁壁エネルギに差が生じ, 保磁力の起源になることを論じて 28), これを Intrinsic pinning と呼んでいる. つまり非常に薄い磁壁では, 結晶格子の不均質を磁壁が感じると言い換えることができる.R(CoNi) 5 化合物 (R=Y, Th, La) の極低温における高い保磁力をこの機構で説明している. Sm(CoCu) 5 磁石に同じ議論が成り立つかどうかは定かではないが, 定性的に議論してみたい. 磁壁幅は下記の式で表される. d=p d 磁壁幅,A 交換スティフネス定数 K u 結晶磁気異方性定数上記の式に当てはめると,SmCo 5 化合物の磁壁幅は 5nm 程度と見積もられている 1).Sm(CoCu) 5 磁石で Co を Cu で置換していった場合, 結晶磁気異方性定数 K u は Cu 置換に対して一定量まで比例して低下せず, 減少程度は緩やかである. これは Sm 原子が回りの結晶場全体の影響により異方性を生じているため,Co 副格子に属する Cu 置換の影響を受けにくいため ( ただし置換量の少ない場合 ) であろう. 一方, 交換スティフネス定数 A は Co 副格子サイトに主に依存していて, 交換相互作用定数 J に比例するため,Cu 置換の局所的影響を受けて置換量に比例するかそれ以上に減少するであろう. その結果, 磁壁幅 d は減少し,Cu 置換の格子不均質により低温でなくても Intrinsic pinning が成立するので A K u はないかと考えている. ただし,Cu 置換による A の変化は分かっていないため, 著者の推測にとどまる. 室温において発現する均質組織での磁壁ピンニング型保磁力は,SmCo 5 化合物のように大きな結晶磁気異方性を有していて, 非常に薄い磁壁が発現する場合に成立する保磁力機構であろう. 著者らは前記のような定性的イメージを持っているがお話のレベルにとどまるので 1), 物理系の磁性研究者の出番ではないだろうか 明確なピン止めサイトがなくても磁壁移動が難しくなる, つまり磁壁移動に対する磁気的粘性が非常に高くなるような定量的理論の構築が必要とされている. 5. Sm Co 系希土類磁石の応用展開 2 17SmCo 磁石は (BH) max から見て NdFeB 磁石より低く, Co が重量比で 50 以上なので原料コスト面で不利である. そのため, 応用分野は現在では限定的である. しかし,Co が主元素であるためキュリー点 (T c ) が高く保磁力の温度変化も相対的に小さく, 熱安定性と耐食性が優れている. Nd 2 Fe 14 B の T c ~310 C に対して,Sm 2 Co 17 の T c ~800 C である. 現在は耐熱性 耐食性が要求される用途で主に使用されていて, 例えば車載用の ABS 用回転センサーはその代表例である.Fig. 15 に回転センサーの模式図を示す. コイルと磁石が一体となった磁気回路により, 回転体突起部が対峙した時に強く励磁され, その磁束変化をコイルで検出する. 磁束変化の時間間隔から回転数が検出される. 現在では NdFeB 磁石が使用される場合もあるが, 高い耐熱性と耐食性を要求される応用で,2 17SmCo 磁石は最適な選択であ Fig. 15 Rotation sensor for ABS in automobile use. (ABS means anti rock braking system.) Fig. 16 Thermal irreversible loss of 2 17SmCo magnet with H cj =1.6 MA/m and 0.5 to 2.0 of permeance coefficients at 200 C. 23)
第 1 号 Sm 2 Co 17 系磁石の現状と将来展望 105 る. Fig. 16 に H cj ~1.6 MA/m の 2 17SmCo 磁石の経時変化例を示す.200 C で熱減磁せず使用に耐える 23). 最近, 東芝や堺らにより 2 17SmCo 磁石のモータにおける非常に興味深い使い方が提案された 29). 永久磁石を用いた同期モータにおいて, ロータ磁石によりステータ電機子に誘起される逆起電圧と界磁の電圧が釣り合うところまでしか回転数を上げられない限界がある. 実用上もっと高回転領域まで使いたい場合, ロータ磁石に界磁コイルで逆磁場を印加し, 磁石の磁束を弱めて逆起電圧を下げることにより高回転数領域まで伸ばす制御方法があり, これを弱め界磁という. 実際に HEV に搭載されている同期モータにおいて, 車を高速領域までモータ駆動する場合に弱め界磁が用いられている. しかし, 弱め界磁は磁石に逆磁場を与えて磁力を弱める制御を行うため, モータ効率が悪くなる. 堺らによる可変磁力モータのロータ概略図を Fig. 17 に示す. ロータ磁石に NdFeB 磁石と 2 17SmCo 磁石を混合使用し, 回転数に応じてロータ磁石の磁束を可変にするものである 29). 第 3 世代 2 17SmCo 磁石のような保磁力の少し低いもの ( 例えば H cj ~500 ka/m 程度 ) を使う. 低回転数のトルクの要求される領域ではどちらもフル着磁された状態で磁石を使用する. 高回転になったら 2 17SmCo 磁石に電機子コイルで逆磁場を与えて反対方向に着磁し, 磁石からの界磁磁束を弱めてやる. 界磁磁束が減少した分だけ, 逆起電圧が下がって回転数を高くできる. 高回転域ではモータトルクは小さくてもよいので, 磁石からの磁束が減少しても問題ない. 通常の弱め界磁制御と異なるのは, 磁石を逆方向に着磁するため一度逆磁場をかけるだけでよい. 磁束可変としての使い方であれば低保磁力の NdFeB 磁石と併用すればよいようにも思えるが, 堺らは 2 17SmCo 磁石の磁石特性を巧みに利用している.2 17SmCo 磁石の磁化マイナーループは Fig. 18 のように, 保磁力はほとんど変わらずに磁化だけが低下したような形になる. ある磁場範囲で, 印加磁場に応じて磁化の値と形がほぼリニアに変化する. 2 17SmCo 磁石に適切な逆磁場を与えて, その磁束をリニアに何段階にも制御することが可能である. 一方,NdFeB 磁石の逆磁場に対する減磁曲線は非線形な挙動を示すため, 正逆どちらかの方向にフルに着磁する使い方しかできない. また,2 17SmCo 磁石は保磁力の温度変化が小さいため, 保磁力が小さくても高温領域まで熱減磁を起こさず使用可能な点も可変磁束という使い方に適している. トルクの大きい低回転領域とトルクが小さく高回転領域の両方で効率よくモータを使用したい EV/HEV 駆動用や洗濯機用モータに適用可能な技術である. 2 17SmCo 磁石は MeV オーダーの放射線や粒子線に対する耐性も良好である. 奥田ら 30) や伊藤らにより 31,32) 希土類磁石の放射線 粒子線照射の影響が調べられた.Fig. 19 に a 線 (p + ) による照射効果を示す 31). 希土類磁石の減磁は g 線照射の方が小さく,a 線や b 線のような粒子線照射の場合大きい.NdFeB 磁石は特に粒子線に対して照射耐性が低く容易に減磁が起きるが,2 17SmCo 磁石は g 線にも粒子線に対してもかなり高い耐性を示す. 核発生成長型保磁力機構の Fig. 17 Schematic structure of a variable flux motor (a)positive flux state and (b)negative flux state. 29) Fig. 18 Schematic minor hysteresis loop of 2 17SmCo magnet. Fig. 19 Proton radiation effects for Rare earth magnets. 31) NdFeB magnet (N48; H cj =950 ka/m, N32Z; H cj =2.4 MA/ m). 2 17SmCo magnet (R26H; H cj =1.8 MA/m). 磁石の方がピンニング型保磁力機構の磁石より放射線耐性が低い. 累積照射量と減磁の間には相関があり, 照射量が大きいほど減磁は大きく, 保磁力の大きい方が相対的に減磁量は小さい. また, 照射エネルギが高いと減磁が大きい. 放射線や粒子線による減磁のメカニズムは解明されていない. 照射実験の例が少ないので一般化できないかもしれないが, 照射エネルギを温度, 累積照射量を経時時間と読み替えれば, 熱減磁とよく似た挙動を示す. 伊藤らの照射実験では被照射磁石は金属ブロックに接触しており, 照射により磁石が昇温しないようにしているので ( 熱電対で測温もしている ), 熱減磁との相乗的な影響は小さい 31). 減磁メカニズムとして, 放射線 粒子線照射により
106 日本金属学会誌 (2012) 第 76 巻 磁石内部で核への衝突やエネルギ吸収により非常に局所的な加熱減磁が広範に起こることが考えられる. また, 核への衝突や励起により電子間の交換相互作用が阻害分断され, 逆磁区が発生して減磁することも考えられる. ただ実験の困難さから, 放射線 粒子線による照射減磁のメカニズムを詳細検討することは容易ではない. 永久磁石をフルに着磁した状態は熱消磁状態より反磁場が大きくなる分, 静磁エネルギが高くなってしまう. つまり準安定な状態であるため, 熱的励起であれ放射線による励起であれ, 局所的なポテンシャル井戸から離脱できる何らかのエネルギが与えられれば, より安定な熱消磁状態向かって減磁が進行する. 現在起きている福島原発の事故では, 高温 高湿のみならず高放射線量下での作業の困難性が大きな問題となっている. 放射線暴露環境では人体に対する影響ばかりでなく, 無人ロボットを稼動させるにしても, 半導体チップやモータなど駆動部品の耐放射線性が大きな問題である. また, 人工衛星などの宇宙環境においてはヴァンアレン帯や大気などの粒子線遮蔽が存在しないので, 宇宙線照射による部品動作への影響を考慮する必要がある. 代替えのきかない機器の信頼性確保は非常に重要である. このような過酷な環境下で, 永久磁石を用いる同期モータで機器を駆動したり, 位置センシングに磁石を用いたりするのであれば,NdFeB 磁石ではなく放射線性耐性に優れた 2 17SmCo 磁石を用いるのが望ましい. 過酷環境下で使用される機器は, 部品コストだけで使用の可否を判断する訳にはいかない. 6. まとめ 2 17SmCo 磁石は熱安定性や耐食性に優れた高特性な磁石であるが, 現在は NdFeB 磁石の補完的な使われ方に止まっている. 現状と今後は次のようにまとめられる. 2 17SmCo 磁石は Zr 添加の第 4 世代 Sm ( Co res Fe 0.20~0.30 Cu 0.05~0.055 Zr 0.02~0.025 ) 7.5~7.8 組成に収斂し, クニックのない減磁曲線と 240 kj/m 3 (30 MGOe) 以上の高い特性の磁石が量産されている. 更に高特性が実現できる添加物や組成は見つかっていない. また, 応用ニーズ面からも NdFeB 磁石が存在するため 2 17SmCo 磁石の高特性化要求は出ていない. 現行の組成と特性がこの磁石系の到達点となるであろう. 2 17SmCo 磁石の保磁力機構は磁壁ピンニングモデルで未だ十分に理解されているとは言えず,R(CoCu) 5 系を含めた保磁力機構の本質的理解が望まれる. 2 17SmCo 磁石は熱安定性や耐食性に優れ, 保磁力機構やヒステリシス曲線の挙動も NdFeB 磁石とは異なるため, その特徴を活かした使用方法が今後も提案されるであろ う. アトムプローブのデータを使用させていただいた宝野和博教授 ( 独物質材料研究機構 つくば大学 ),TEM のデータを使用させていただいた進藤教授 ( 東北大学 ),2 17SmCo 磁石を共に開発させてもらった俵好夫氏に感謝します. 文 献 1) Y. Tawara and K. Ohashi: Rare Earth Magnets, (Morikita Publishing Co., 1999). 2) K. J. Strnat: Ferromagnetic Materials, Vol. 4, ed. by E. P. WolfarthandK.H.J.Buschow,(North Holland Publishing, 1988) p. 131. 3) J. Kanamori: Magnetism New Physics Series 7, (Baifukan Publishing Co., 1969). 4) G. Hoffer and K. J. Buschow: IEEE Trans. Magn. MAG 2 (1966)487. 5) J. M. D. Coey (Ed.): Rare Earth Iron Permanent Magnets, (Oxford Publications, 1996). 6) Y. Tawara and H. Senno: Jpn. J. Appl. Phys. 7(1968) 966. 7) E. A. Nesbitt, R. H. Willens, R. C. Sherwood, F. Buehler and J. H. Wernick: Appl. Phys. Lett. 12(1968) 361. 8) K. J. Strnat: Cobalt. 36(1967) 133. 9) Y. Tawara: Magnetics Jpn. 6(2011) 164. 10) Y. Tawara and H. Senno: IEEE Trans. Magn. MAG 8(1972) 560. 11) H. J. Lemy and M. L. Green: IEEE Trans. Magn. MAG 9 (1973) 205. 12) Y. Tawara and H. Senno: IEEE Trans. Magn. MAG 10(1974) 313. 13) Y. Tawara and H. Senno: Jpn. J. Appl. Phys. 14(1975) 1619. 14) J.D.Livingston:J.Appl.Phys.46(1975) 5259. 15) T.Ojima,S.Tomizawa,T.YoneyamaandT.Hori:IEEETrans. Magn. MAG 13(1977) 1317. 16) K. Inomata, T. Oshima, T. Ido and M. Yamada: Jpn. J. Appl. Phys. 17(1978) 1993. 17) M. Sahashi, T. Mizoguchi and K. Inomata: J. Magn. Magn. Mater. 31 34(1983) 225. 18) L. Rabenburg, R. K. Mishra and G. Thomas: J. Appl. Phys. 53 (1982) 2389. 19) For example: The Investigation Committee of Rare Earth Permanent Magnets in The Institute of Electrical Engineers of Japan (IEEJ). 20) T. Shimoda, K. Akioka, O. Kobayashi and Y. Yamaguchi: 10 th Int. Workshop on RE Magnets and Their Applications at Kyoto, (1979) p. 389. 21) F.Okabe,H.S.Park,D.Shindo,Y.G.Park,K.OhashiandY. Tawara: Mater. Trans. 47(2006) 218. 22) A. E. Ray: IEEE Trans. Magn. MAG 20(1984) 1614. 23) Shin Etsu Chemical Co., Ltd.: URL, http://www.shinetsu rare earth magnet.jp/ 24) Y.Tawara:Jpn.J.Appl.Phys.10(1972) 1587. 25) H. Kronmuller and D. Goll: Scr. Mater. 47(2002) 545. 26) X. Y. Xiong, T. Okubo, T. Koyama, K. Ohashi, Y. Tawara and K. Hono: Acta. Mater. 52(2004) 737. 27) Courtesy of K. Hono. 28) H. Zijirsta: Ferromagnetic Materials, Vol. 3, ed. by E. P. Wolfarths, (North Holland, 1982). 29) H. Oesterreicher: Appl. Phys. 15(1978) 341. 30) Nikkei Electronics, (2010.9.20) p. 54 31) S. Okuda, K. Ohashi and N. Kobayashi: J. Nucl. Instr. Meth. B 94(1994) 227. 32) Y.Ito,K.Yasuda,R.Ishigami,S.Hatori,O.Okada,K.Ohashi ands.tanaka:nucl.instr.meth.b183(2001) 322.