日本金属学会誌第 70 巻第 3 号 (2006) 合金としてのウィスカ抑制 Pb フリーはんだ 林田喜任 1 橋義之 1 大野隆生 1 荘司郁夫 2 1 タムラ化研株式会社 2 群馬大学工学部 J. Japan Inst. Metals, Vol. 70, No. 3 (2006),

Similar documents
鉛フリー無電解Niめっき皮膜中の共析物がはんだ実装信頼性に及ぼす影響

スライド 1

DiovNT

錫-亜鉛-アルミニウム系鉛フリーはんだの実用化

新高耐久Pbフリーソルダペースト

環境負荷低減に向けた低温接合技術

CuおよびCu‐Sn系化合物のSn‐Pbはんだ濡れ性解析

J. Jpn. Inst. Light Met. 65(6): (2015)

渡辺(2309)_渡辺(2309)

ステンレス鋼用高性能冷間鍛造油の開発

特-4.indd

Microsoft Word - NPI09プレゼン原稿_日本スペリア社_ doc

準備するもの 1 ハンダポット ( 鉛フリーハンダ用に使うと決めたもの ) 2 鉛フリー棒ハンダ (SMIC ECO M705 Sn-Ag-Cu) 液状フラックス ( スパークルフラックス ES-1061) 3 4 フラックス希釈液 ( タムラ製 #2300) IPA: イソプロピルアル

EcoSolderJ_070514cs.indd

Microsoft PowerPoint プレゼン資料(基礎)Rev.1.ppt [互換モード]

3. 実験結果と考察 3.1 Sn-Bi 合金の引張特性 Fig. 2 は Sn-Bi 系合金の引張試験によって得られた応力 -ひずみ線図を示す 図からわかるように Bi 濃度によらず Sn-Bi 合金は ほぼ同様の挙動を示した また 伸び量は Sn-40%Bi で最大値を示した Fig.3 は S

電子部品はんだ接合部の熱疲労寿命解析

無電解析出

1 EPDM EPDM EPDM 耐塩素水性に優れた EPDM の開発 - 次亜塩素酸による EPDM の劣化と耐塩素水性に優れた EPDM の開発 - Development of EPDM with Excellent Chlorine Water Resistance - EPDM: Degr

電子部品の試料加工と観察 分析 解析 ~ 真の姿を求めて ~ セミナー A 電子部品の試料加工と観察 分析 解析 ~ 真の姿を求めて ~ セミナー 第 9 回 品質技術兼原龍二 前回の第 8 回目では FIB(Focused Ion Beam:FIB) のデメリットの一つであるGaイ

第62巻 第1号 平成24年4月/石こうを用いた木材ペレット

1-1. 表面実装部品例 カメラ 携帯電話 デジカメ等 実装部品の軽量極小化顧客の要求 極小部品の品質保証 信頼性の向上 信頼性試験の規格 方法, 評価基準 顧客に製品提供 保護膜抵抗被膜内部電極 Ni めっきはんだめっきセラミック 2 接合強度測定機 ボンディングテスタ測定

AN504 Through-hole IRED/Right Angle Type 特長 パッケージ 製品の特長 φ3.6 サイドビュ - タイプ 無色透明樹脂 光出力 : 5mW TYP. (I F =50mA) 鉛フリーはんだ耐熱対応 RoHS 対応 ピーク発光波長指向半値角素子材質ランク選別はん

X線分析の進歩36 別刷

Fig. 1 Sampling positions from the ingot. Table 2 Chemical compositions of base metal (%) Fig. 2 (unit: mm) Shape and size of fatigue test specimen. T

AND9137JP - SO8FLパッケージ用ユニバーサル・フットプリント

【PDF】2018_和文_はんだ・フラックス

1 Fig. 1 Extraction of motion,.,,, 4,,, 3., 1, 2. 2.,. CHLAC,. 2.1,. (256 ).,., CHLAC. CHLAC, HLAC. 2.3 (HLAC ) r,.,. HLAC. N. 2 HLAC Fig. 2

42 1 Fig. 2. Li 2 B 4 O 7 crystals with 3inches and 4inches in diameter. Fig. 4. Transmission curve of Li 2 B 4 O 7 crystal. Fig. 5. Refractive index

Microsoft Word -

I-t カーブ ( 参考 ) I-t カーブは 当社が試験条件を特定して測定した実測値の平均値をプロットしておりますので 保証値ではありません ヒューズの特性は使用条件によって変化しますので 貴社のご使用条件下で ヒューズが貴社のご要求を満足しているかを実際にご確認頂く必要があります Control

untitled

2 251 Barrera, 1986; Barrera, e.g., Gottlieb, 1985 Wethington & Kessler 1986 r Cohen & Wills,

Rate of Oxidation of Liquid Iron by Pure Oxygen Shiro BAN-YA and Jae-Dong SHIM Synopsis: The rate of oxidation of liquid iron by oxygen gas has been s

& Vol.5 No (Oct. 2015) TV 1,2,a) , Augmented TV TV AR Augmented Reality 3DCG TV Estimation of TV Screen Position and Ro

0900906,繊維学会ファイバ8月号/報文-01-高橋

Vol. 19, No. 3 (2012) 207 Fig. 2 Procedures for minute wiring onto polyimide substrate. Fig. 3 Ink - jet printing apparatus as part of laser sintering

Fig. 4. Configuration of fatigue test specimen. Table I. Mechanical property of test materials. Table II. Full scale fatigue test conditions and test

* * 2

Fig. 3 Flow diagram of image processing. Black rectangle in the photo indicates the processing area (128 x 32 pixels).

FF14A Series ケーブルロックタイプ RoHS2 0.5mm ピッチ FPC メンブレン用コネクタ 概要 FF14A シリーズは 0.5mm ピッチ コネクタ高さ0.9mmのケーブルロック機構を備えています FPC 厚 0.2mm で FFC メンブレンも嵌合対応可能です 用 途 タブレッ

日本感性工学会論文誌

Vol. 63, 4, 無電解 Ni めっきに共析する添加剤とはんだ接合性 土田徹勇起 a, 大久保利一 a, 狩野貴宏 b, 荘司郁夫 b a 凸版印刷 総合研究所 ( 埼玉県北葛飾郡杉戸町高野台南 4 2 3) b 群馬大学大学院工学研究科 (

Microsoft PowerPoint - 印刷用②低銀鉛フリーはんだの信頼性と成分分析調査(配布用)

HAJIMENI_56803.pdf

IPSJ SIG Technical Report Vol.2009-DPS-141 No.20 Vol.2009-GN-73 No.20 Vol.2009-EIP-46 No /11/27 1. MIERUKEN 1 2 MIERUKEN MIERUKEN MIERUKEN: Spe

Fig. 1. Relation between fatigue crack propagation rate and stress intensity factor range. Fig. 2. Effect of stress ratio on fatigue crack opening rat

スライド 0

【PDF】はんだ・フラックス_2017_003

** Department of Materials Science and Engineering, University of California, Los Angeles, CA 90025, USA) Preparation of Magnetopulmbite Type Ferrite

電子部品及びプリント基板実装品の調査事例

248 Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi Vol. /-, No./,,.2,/. (,**0) 12 * * * Microencapsulation of Glutamine with Zein by a Solvent Evaporation Metho

20 m Au 2. 現行のマイクロバンプ形成技術における課題 Au Au Au 2 WB 11 m m 1 m 2008 Au FC m 10 m 30 m OTK Au 表 1 マイクロバンプ形成におけるめっき法の比較 3. 無電解めっきによる Au

UDC : ' : '24' : '24'26' : : A Study of Condition of Pits Formation and Their Fe

フロントエンド IC 付光センサ S CR S CR 各種光量の検出に適した小型 APD Si APD とプリアンプを一体化した小型光デバイスです 外乱光の影響を低減するための DC フィードバック回路を内蔵していま す また 優れたノイズ特性 周波数特性を実現しています

北海道水産試験場研究報告

PEA_24回実装学会a.ppt


DPA,, ShareLog 3) 4) 2.2 Strino Strino STRain-based user Interface with tacticle of elastic Natural ObjectsStrino 1 Strino ) PC Log-Log (2007 6)

Decomposition and Separation Characteristics of Organic Mud in Kaita Bay by Alkaline and Acid Water TOUCH NARONG Katsuaki KOMAI, Masataka IMAGAWA, Nar

日本感性工学会論文誌

EOS: 材料データシート(アルミニウム)

000..\..

77期上期技術報告会 樹脂劣化の要因調査

Nov 11

0801297,繊維学会ファイバ11月号/報文-01-青山

QOBU1011_40.pdf

3D プリンタにより作製した樹脂部品の強度に関する研究 尾形正岐 阿部治 長田和真 西村通喜 山田博之 渡辺誠 Study on Strength of Resin Materials Processed by Fused Deposition Modeling Printer Masaki OGA

Microsoft Word - 02目次


C-2 NiS A, NSRRC B, SL C, D, E, F A, B, Yen-Fa Liao B, Ku-Ding Tsuei B, C, C, D, D, E, F, A NiS 260 K V 2 O 3 MIT [1] MIT MIT NiS MIT NiS Ni 3 S 2 Ni

Transcription:

日本金属学会誌第 70 巻第 3 号 (2006)220 225 合金としてのウィスカ抑制 Pb フリーはんだ 林田喜任 橋義之 大野隆生 荘司郁夫 2 タムラ化研株式会社 2 群馬大学工学部 J. Japan Inst. Metals, Vol. 70, No. 3 (2006), pp. 220 225 2006 The Japan Institute of Metals Whisker Free Pb Free through Alloying Yoshitou Hayashida, Yoshiyuki Takahashi, Takao Ohno and Ikuo Shohji 2 TAMURA KAKEN CORPORATION, Iruma 358 850 2 Faculty of Engineering, Gunma University, Kiryu 376 855 Electronic products with Sn Pb solder are being now excluded due to the harmful effect of Pb on the environment. Generally, Sn Ag Cu solder is used in place of Sn Pb solder. In the solder joint, acicular crystals called whiskers often grow. Whiskers often cause a short circuit problem in a fine pitch solder joint. In this study, several lead free solders added with a small amount of various elements were prepared to investigate the effectiveness validity of added elements in restraining whisker growth. The elements effective in inhibiting whisker growth were identified. (Received November 8, 2005; Accepted February, 2006) Keywords: whisker growth, whisker growth restraint, whisker growth mechanism, lead free solder, solder paste, high temperature humidity test, tin oxidation, zinc addition. 緒言電気製品で使われる電子部品の接合に使用されていた材料は,Sn Pb 系はんだがほとんどであった ). 電気製品が故障や破損等で廃棄される場合, 電子部品が剥き出しとなった実 装基板の一部はリサイクルされずに破砕されて, 埋め立て処 理されているのが現状である. そのような廃棄物に現在問題 視されている酸性雨が降りかかることによって, はんだ中の Pb が地下水に溶け出し, 河川や海洋に流れ込むことによっ て, 食物を通して人体中に悪影響を与える Pb を摂取される ことになり, 先進国では特に問題視されてきた 2). この問題を解決するために, 欧州では WEEE 指令や RoHS 指令が発令され, これらに基づいて Pb を使用しない はんだ材料,Sn Ag Cu 合金等のいわゆる Pb フリーはんだ 合金, が開発され, 用いられるようになってきた 3 5). 特に めっきでは Sn めっきによって Pb フリー化は既に実用化さ れている. しかし,Pb フリー化によって新たな問題が現れ た.Sn の再結晶によって発生する Sn 針状結晶 ( いわゆるウ ィスカ ) が発生する現象である 6 8). これまでは, ウィスカは めっきはんだのみの問題としての認識があったが 9 ), 電子 部品接合に用いられるはんだについてもウィスカの発生が判 明した 2). 電気製品の性能競争によって, 電気回路基板の小型化に伴ってパターンや部品間隔は狭くなってきている. このため, ウィスカが発生した場合, 回路短絡による電気信頼性を欠く問題がでてきた. そこで本研究ではウィスカ抑制はんだ合金の開発を行い, ウィスカ抑制効果のあるはんだ合金組成を見出し 2), ウィスカの発生メカニズムおよび抑制効果の検討を行った. その成果について報告する. 2. 実験方法 2. はんだ合金の作製 はんだの原料となる Sn または Sn Ag Cu はんだに少量の 元素を添加し, そのウィスカ抑制効果について検討した. 添加元素が少量ならば, 現存の Pb フリーはんだとしての 特性を失わずに, ウィスカ抑制効果が現れると予測した. 添 加元素の選定は 低環境負荷, 原料が安価, 通常状態で Table compositions. Compositions (mass ) SGe Sn 0.Ge SMn Sn 0.Mn S0.Zn Sn 0.Zn SZn Sn.0Zn SAC Sn 3.0Ag 0.5Cu SACGe Sn 3.0Ag 0.5Cu 0.Ge SACMn Sn 3.0Ag 0.5Cu 0.Mn SAC0.Zn Sn 3.0Ag 0.5Cu 0.Zn SACZn Sn 3.0Ag 0.5Cu.0Zn

第 3 号合金としてのウィスカ抑制 Pb フリーはんだ 22 安定であることを基準に選択した. 黒鉛るつぼに Sn や Sn 3.0Ag 0.5Cu はんだを約 850 g 入れ, 窒素雰囲気下, マッフル炉 ( 株デンケン製 ) により 300 C で加熱溶解後, 溶融しているはんだに数種類の元素を ca.0. mass 添加した. さらに窒素雰囲気下で 500~000 C,~ 2 時間加熱し, はんだに添加元素を溶融させ, 添加元素を含有する Sn 合金やはんだ合金を作製した.Table に作製したはんだ材の成分を示した. 組成は, 一般的に使われているはんだ組成表記法である mass を用いた. 2.2 試験片作成方法メニスコグラフにより溶融させたウィスカ検討対象はんだ合金中に, 表面研磨後, フラックス ( タムラ化研製,EC 9S 8) を塗布した JIS 2 型クシ型基板を, 約 3 秒間浸漬させることで, ディップはんだ付を行った. この基板を酢酸エチルに浸し, 超音波によってフラックス残さを除去した後, 85 C, 85 R.H. 条件下に放置した.500 時間経過後, はんだ付されたクシ型回路から発生しているウィスカを光学顕微鏡により観察し, その長さを測定することで, 添加元素によるウィスカ発生の抑制効果傾向を検証した. また,SAC, SACZn を用いたはんだ粉のはんだペーストを作製し, ペーストの場合のウィスカ抑制評価も行った. 3. 実験結果および考察 Sn X 系と同様に Zn を添加した SAC0.Zn では金属光沢が維持されていることがわかった.Zn 以外の添加元素では, このような金属光沢は観察されなかった. SAC および SAC0.Zn のはんだ表面の SEM による観察結果を Fig. 2 に示した.SAC では Cu 下地とはんだ界面部分や, はんだが酸化した所から, 太さや長さが異なったウィスカの発生が確認された. 一方,SAC0.Zn では, はんだの酸化やウィスカは確認されなかった. さらに, ウィスカの主な発生箇所を詳しく観察したところ, フィレット末端のはんだの厚さが薄いところ ( 約 40 mm 以下 ) から多く発生しているのが確認された. 反対にフィレット中央のはんだが多く供給され厚さが 40 mm 以上あるところからは,SAC の場合でもウィスカの発生は観察されなかった. さらにはんだ表面状態を比較すると,SAC では Sn X 系合金などよりは Ag, Cu 含有による Sn 総量の減少で, はんだの酸化部分は減少している. しかし, 添加元素によりはんだ表面状態はそれぞれ異なるが,Zn 以外を添加した Sn Ag Cu X 系はんだは酸化の度合いは異なるが, 黒く変色していた. Zn 添加したものは,Sn Zn 合金,Sn Ag Cu Zn 合金のどちらの場合も, はんだ表面の酸化が見られずはんだは金属光沢を保っていた. このことから, 添加された Zn がはんだ表面上で亜鉛酸化膜を形成しているものと考えられる. これ 3. ディップはんだ付によるウィスカ検証 Sn に元素を添加した Sn 合金のウィスカ発生状態を Table 2 に示した. この場合,SGe が比較的ウィスカの成長を抑制していたが, 高温高湿槽に放置することで, はんだ表面が酸化によりかなり腐食されていた. しかし,S0.Zn や SZn ではウィスカの発生は認められず, はんだ表面の腐食もなく, 金属光沢が維持されていることがわかった. Sn 3.0Ag 0.5Cu はんだに元素を添加したはんだ合金の場合を Table 3 に示した. この場合も Zn を添加した SAC0.Zn の場合だけ, ウィスカの発生を抑制していることが確認された. Fig. に SAC, SAC0.Zn のはんだ表面の様子を示した. Table 2 whisker of Sn X system solder alloy (85 C, 85 R.H., 500 h). SGe 30 S0.Zn 0 SMn 50 SZn 0 Table 3 whisker of Sn 3.0Ag 0.5Cu X systemsolder alloy (85 C, 85 R.H., 500 h). SAC 40 SAC0.Zn 0 SACGe 40 SACZn 0 SACMn 60 Fig. surface of (a) SAC and (b) S0.Zn by an optical microscope observation result (85 C, 85 R.H., 500 h).

222 日本金属学会誌 (2006) 第 70 巻 Fig. 2 surface by SEM observation result (85 C, 85 R.H., 500 h). (a) An oxidation part of SAC and (b) a joining part of SAC0.Zn. Fig. 3 (a) surface of (a) SAC and (b) SAC 0.Zn by SEM observation result (85 C, 85 R.H., 500 h). は Zn が従来もっている犠牲防食作用による防錆効果ではないかと考えられる. また高温高湿試験では, 各時間終了後, 試料を試験機から取り出して観察を行った. そのため, 試験実施時に結露が生じた可能性があり, 結露による酸化腐食もウィスカ発生の一因と考えられる. しかし, 実装部品を実際に使用する状況において, 結露現象が起こる可能性がある. このような環境下でも,Zn の微量添加はウィスカ発生の抑制に効果があると考えられる. 3.2 経時変化および Zn 添加量とウィスカの関係 SAC および SAC0.Zn について, さらに高温高湿条件下におけるウィスカ長さの経時変化について, 比較検討を行った. その結果を Fig. 3, 4 に示す. この結果,SAC では時間の経過とともにウィスカが成長していたが,SAC0.Zn ではウィスカの発生はほとんど認められなかった.500 時間後の SAC では最長 60 mm のウィスカが観測された. また,Zn 添加量を増加した場合では, その効果は更に顕著に現れた.SZn は Sn 37Pb はんだよりもウィスカが抑制されていることがわかった. また,SACZn では 500 時 Fig. 4 A relationship of whisker length and aging time of SAC, SAC0.Zn, SACZn, S0.Zn, SZn and Sn 37Pb (85 C, 85 R.H.). 間経過後もウィスカの発生は全く確認されなかった. このように Zn の添加量が増加することでウィスカ抑制効果が向上することも確認された. 3.3 はんだペーストとしてのウィスカ評価 SAC, SACZn を用いたはんだペーストでのウィスカ評価

第 3 号合金としてのウィスカ抑制 Pb フリーはんだ 223 Table 4 Reflow conditions investigated. Marker Temp. T/ C Pre heat Time t/s Peak temp. T/ C Melt time t/s Reflow times 235 90 4 70 50 290 90 80 200 70 235 50 90 を行った. 試験基板は, ディップはんだ付に使用したものと同じものを用いた. また, 試験基板のフラックス残さを洗浄または無洗浄の状態で実験を行った. さらに, プリヒート温度, 時間, ピーク温度, 溶融時間についてリフロー加熱条件を変化させ, ウィスカ発生状況についても比較検討した. リフローは, 静置型リフロー装置を用いて Table 4 示す条件にて実施した. Fig. 5 に各リフロー条件において作製した SAC, SACZ はんだ接合部の 85 C, 85 R.H. 放置下におけるウィスカ長さの経時変化を示す.SAC のペーストの場合, ディップはんだ付の場合よりも,500 時間でのウィスカ長さは短かった. また, リフロー加熱温度を高くしたり, 加熱時間を長くすると通常条件 (Marker, 500 h, 90 mm) よりもウィスカは成長する傾向が見られた (Fig. 5(a)). また, フラックス残さが残っているとウィスカの成長は遅くなる傾向が見られた. しかし, リフロー条件を前述のように高温, 長時間にすると, ウィスカの成長する傾向が見られた (Fig. 5(b)). SACZn の場合では, フラックス残さの有無や, リフロー条件の変化にかかわらずウィスカの発生は認められなかった (Fig. 5(c)). 3.4 ウィスカ発生原因および抑制メカニズムの考察 ウィスカの発生箇所がはんだフィレットの末端部分や, 酸化されている所に集中していたことから (Fig. 2(a)), ウィスカの発生原因は, はんだの酸化と推測している. そこで,60 C, 90 R.H. と 85 C オーブン ( 加湿無し ) に高温高湿条件を変えて, はんだの酸化環境変化による SAC, SAC0.Zn, Sn 37Pb のウィスカ評価を行い, 結果を Fig. 6 に示した.60 C, 90 R.H. 環境下では SAC だけが,000 時間で 40 mm のウィスカの発生が確認された.85 C, 85 R.H. と比較してもウィスカの成長速度は格段に遅くなっていた. また,85 C オーブン条件では, どのはんだもウィスカの発生は認められなかった. さらに, はんだ中の Sn の酸化がウィスカ発生に影響を与えているか確認する為に,85 C, 85 R.H., 500 時間後のウィスカ発生箇所の断面を EPMA により観察し,SAC と SACZn の Sn と O の分布状態を Fig. 7, 8 に示した.SAC において酸化物が発生し, それらに挟まれたはんだから, ウィスカが発生していることが確認された (Fig. 7).SACZn においては, このような酸化物の発生は確認されておらず, Fig. 5 A relationships of whisker length and aging time (85 C, 85 R.H.). (a) SAC with cleared flux residue, (b) SAC without cleared flux residue and (c) SACZn with cleared and without cleaned flux residue. ウィスカ発生原因がはんだ中の Sn の酸化によることが確認 された (Fig. 8). 以上の結果からウィスカ発生メカニズムを考察した.

224 日本金属学会誌 (2006) 第 70 巻 Fig. 6 Relationships of length of whisker and aging time in dry (85 C oven) and 60 C, 90 R.H., conditions of Sn 37Pb, SAC and SAC0.Zn. はんだの主成分である Sn が空気中の水分によって酸化されて, 低密度の酸化物になる. 酸化による Sn の体積増加によりはんだフィレット内に応力が生じ, フィレット末端部では, はんだ量が少なく応力が集中しやすいため, 内部応力が蓄積される. 内部応力を開放するためにフィレット末端の Sn が押し出され, ウィスカが発生すると考えられる. Zn 添加はんだ合金においてウィスカ発生が抑制されるのは, はんだ表面に Zn 酸化被膜が形成され, はんだ中の Sn の酸化を防止し, 酸化物の生成による内部応力が発生せず, ウィスカの発生を抑制しているものと考察される. 4. 結論 ウィスカ抑制はんだについて得られた結果を以下にまとめた. Sn に Zn を 0.~.0 mass 添加することで, ウィスカの発生を抑制できることが確認された. Pb フリーはんだとして一般的な Sn 3.0Ag 0.5Cu はんだに Zn を 0.~.0 mass 添加した場合も, ウィスカの発生を抑制できることが確認された. Sn 3.0Ag 0.5Cu 0.Zn はんだは高温高湿条件下 (85 C, 85 R.H.) に 500 時間放置しておいても, ウィスカの発生が抑制されていることが確認された. 高温高湿試験では, 結露による酸化腐食もウィスカ発生の一因と考えられるが, そのような環境下でも Zn 添加によるウィスカ発生の抑制効果があるものと考えられる. 実用可能な Pb フリーはんだペーストとして期待される Sn 3.0Ag 0.5Cu.0Zn はんだペーストについてもウィスカ抑制効果があることが確認された. その場合, さまざまなリフロー条件においてもウィスカ抑制効果が認められた. ウィスカ発生原因として, はんだ成分の Sn の酸化による内部応力の発生が主要因であると考えられる. 文 Fig. 7 A cross section of SAC solder paste at whisker grows part by EPMA observation atoms mapping. (a) Areflection electronic view, (b) oxygen mapping view and (c) tin mapping view. 献 ) 標準マイクロソルダリング技術, 日本溶接協会マイクロソルダリング教育委員会編, 日刊工業新聞社 (2002). 2) 鉛フリーはんだ付け技術, 菅沼克昭著, 工業調査会 (2000). 3) A. Hirose, T. Fujii, T. Imamura and K. F. Kobayashi: Mater. Trans. 42(200) 794 802. 4) M. Nishiura, A. Nakayama, S. Sakatani, Y. Kohara, K. Uenishi andk.f.kobayashi:mater.trans.43(2002) 802 807. 5) S.K.Kang,P.Lauro,D. Y.Shih,D.W.Henderson,J.Bartelo, T. Gosselin, S. R. Cain, C. Goldsmith, K. Puttlitz, T. K. Hwang andw.k.choi:mater.trans.45(2004) 695 702.

第 3 号合金としてのウィスカ抑制 Pb フリーはんだ 225 6) T. Ando: Proc. of 6th Symposium on Microjoining and Assembly Technology in Electronics (2000) pp. 57 60. 7) S. Higuchi: Proc. of 6th Symposium on Microjoining and Assembly Technology in Electronics (2000) pp. 6 66. 8) T. Akamatsu: Proc. of 4th Micro Electronics Symposium (2004) pp. 237 240. 9) S. Lal and T. D. Moyer: IEEE Transactions on Electronics Packaging Manufacturing 28(2005) 63 74. 0) J.W.Osenbach,R.L.Shook,B.T.Vaccaro,B.D.Potteiger,A. N. Amin, K. N. Hooghan, P. Suratkar and P. Ruengsinsub: IEEE Transactions on Electronics Packaging Manufacturing 28(2005) 36 62. ) K. N. Tu and J. C. M. Li: Materials Science and Engineering A 409(2005) 3 39. 2) Y. Hayashida: Proc. of 5th Micro Electronics Symposium (2005) pp. 273 276. Fig. 8 A cross section of SACZn solder paste by EPMA observation atoms mapping. (a) A reflection electronic view, (b) oxygen mapping view and (c) tin mapping view.