山口ほか 大腿動脈穿刺後仮性動脈瘤 1994年6月 表4 手術法ならびに動脈穿刺部位 診断法 手術法 2 RIアンギオ 超音波 交通十 瘤切除十穿刺部直接閉鎖 瘤切除十穿刺部直接閉鎖 穿刺部位 一 浅大腿動脈 外腸骨動脈 3 超音波 交通十 瘤切除十穿刺部直接閉鎖 浅大腿動脈 4 超音波十RIアンギオ瘤切除十穿刺部直接閉鎖 5 超音波 交通 瘤切除十穿刺部直接閉鎖 総大腿動脈 症例 一1 335 総大腿動脈 破裂 一 入院期間 一 2日 転院 5日 転院 48日 14日 8日 の交通が確認された 手術時に破裂していた症例はな 女性では皮下脂肪が厚いこと (2)動脈径が小さいこ かった 瘤の発生部位は外腸骨動脈が1例 総大腿動 と (3)穿刺に適した動脈の範囲が狭いこと などに 脈が2例 浅大腿動脈が2例であった 手術法として よって動脈穿刺手技ならびに検査終了後の圧迫止血操 は全症例において瘤切除十穿刺部直接縫合閉鎖が施行 作が困難なことなどが瘤発生と関連があるものと推察 された 5例中4例は瘤の中枢側と末梢側とを剥離 テ される 従来から穿刺前後の抗凝固療法と仮性動脈瘤形成と ーピングして出血のコントロールを可能にした後 瘤 の処理を行っているが 仮性動脈瘤が外腸骨動脈から の間に関連があるという報告が多くなされている 生じていた症例2では瘤の末梢側の剥離 テーピング が2 5 6) われわれの症例でも5例中3例に穿刺前後に を行った後 末梢側から中枢へFogartyカテーテルを 何らかの抗凝固剤が投与されており また2例で検査 挿入しバルーン閉鎖による中枢側からの出血のコント 中ヘパリン投与が行われていた 一方 高血圧 糖尿 ロールを行った 5例中4例は術後経過良好であった 病 肥満 喫煙 動脈硬化などとの関連についても検 が I例で創感染が生じて術後12日目にドレナージを 討されているが5.6)今回のわれわれの検討ではこれら 行って48日目に治癒退院した 術後早期に紹介医のも の疾病を合併した症例は少なかった とへ退院せしめた2例以外は創が完全に治癒した状態 穿刺部位と仮性感無纏1溌亙との関連については で退院しており(術後8 48日) 合併症の併発がなけ Rapoportら5)が総大腿動脈の穿刺に比べて浅大腿動 れば概ね術後1 2週間で退院可能であった(表4) 脈や大腿深動脈を穿刺すると仮性動脈瘤が発生しやす いと報告して以来これを支持する報告が相次いでい 考 察 る7 11 13 14.24)しかし現実的にはわれわれの検討した症 例でもみられたように総大腿動脈からの仮性動脈瘤発 大腿動脈穿刺時の穿刺部局所の合併症として(1)出 生が認められ2 6 13)不適切な圧迫止血が行われればた 血 (2)血栓形成などによる動脈閉塞 (3)仮性動脈 瘤形成, (4)動静脈痕形成などが報告されているl とえ総大腿動脈を穿刺しても仮性動脈瘤が生ずるもの 3). 欧米では以前から大腿動脈穿刺後仮性動脈瘤の報告が と思われる われわれの施設では皮下血腫発生がその なされ1 2 4'8) その発生頻度は0.05 6 と報告者によ 後の圧迫止血を困難にする1つの要因と考え 穿刺は りかなり異なるが近年増加傾向にあるという報告が多 できるかぎり1回で完遂し検査終了後は確実に動脈穿 く6 7) その原因として血管内カテーテルを用いた診断 刺部を少なくとも10分以上圧迫 止血確認後も12時 や治療手技の進歩に伴いシースの使用や口径の太いカ 間は圧迫包帯による圧迫を続け24時間は被験者に安 テーテルの使用が増加していることが挙げられてい 静 臥位をとらせている 診断については大腿ヘルニアや鼠径部膿瘍あるいは る6) 一方,本邦では大腿動脈穿刺後の仮性動脈瘤につ いての報告はいまだ少ないが9 血流豊富なリンパ節などとの鑑別が問題になる11)が 23)発生頻度の記載さ れているものをみると木村ら14)は0.27%,寺田ら13)は 病歴ならびに理学的所見から診断は容易と思われる 0.4%と報告している ただ われわれの症例でみられたように仮性動脈瘤の なかには拍動も血管性雑音も認められない症例もあり 欧米の報告では男性の発生例が多い2 5 6 8)のに比べ 本邦ではむしろ女性に多く13 14 21)特にわれわれの症 注意を要する 検査法としては 超音波断層法は非侵 例では小柄な女性に多いことから, 襲的で何回も繰り返して行うことが可能であり診断能 (1)男性に比べて 3
日血外会誌 336 も高いため頻用されている25 3巻3号 1 全例女性で非破裂例であった. 27)またIV-DSAは侵襲 (2) もほとんどなく確定診断ならびに術前の情報を得る有 5例の内訳は 血管造影後2例 心カテ後1例 カテーテルアプレーション後1例 透析用カテーテル 用な検査法と思われる の誤穿刺I例であった われわれの症例では全例 瘤切除十穿刺部直接縫合 閉鎖を行ったが 瘤と動脈との交通孔が大きかったり (3) 5例中3例に抗凝固療法が行われていた 炎症のため動脈壁が脆弱化している場合は必要に応じ 4 穿刺部位は 外腸骨動脈1例 総大腿動脈2例 浅大腿動脈2例であった て自家静脈あるいは人工血管によるパッチまたはバイ 5 全例に瘤切除十穿刺部直接縫合閉鎖を行って治 パス術が行われている6) 癒せしめ得たが I例に創感染を合併し処置を要した 手術の合併症としては 創感染 神経痛(femoral 6 疼痛などの症状の強いものは手術適応となるが neuralgia).血腫形成などが報告されている25) Grahamら25)は,感染は手術の際に生じたものではなく動 術後創感染を併発する可能性のあることを常に念頭に 脈穿刺時すでに生じていたものと推定しており この おいて手術すべきである 意味からも手術の際には細菌の温床となりうる血腫を 文 可及的に除去しかつ止血を確実に行うことが必要であ り 人工血管などの異物はできるだけ使用しないこと 1 Hessel, S. J., Adams, Complications が賢明と思われる 献 D. F. and of angiography. 2) 関しては 発見され次第外科的処置が必要と考えられ Kresowik, al.: A てきたが 経過観察例の中には瘤が血栓化して自然治 T.F Khoury, Radiology, 138 : prospective M. D Miller, B.V. et study of the incidence natural history of femoral 癒するものが少なくないことも次第に明らかになって after percutaneous きた26-28)しかし現在までのところ動脈瘤の予後を判 3) transluminal Sacks, D., Robinson, 後に発生した仮性動脈瘤への対処法は意見の分かれる Femoral ところではあるが 自覚症状の強い例には外科的処置 J.Ultrasound coronary 4 を行い 症状のない例では破裂の可能性を常に念頭に Brener, arterial injury following B. J. and G. S.: catheterization N. P. : Peripheral arte- of left heart catheterization and their management. 1991年にFellmeth 1991. 8 : 241-246, 1989. Couch, rialcomplications 置きながら超音波検査などにより経過観察するという angio- M. L. and Perlmutter, Med., and vascular complications plasty. J. Vase. Surg 13 : 328-336, 定する確実な指標は得られていないため大腿動脈穿刺 Am. J. Surg, 125 : 521-526, 1973. ら28'により超音波ガイド下に仮性動脈瘤と動脈との 5) 交通部(neck)を圧迫し瘤の血栓化をはかる治療法 Rapoport, S Sniderman, al.: Pseudoaneurysm technique in femoral 表されて以来 複数の施設でUGCRが行われて良好 ogy, 154 : な成績の得られたことが報告されており29 30)有用な 6) および治療目的でさらに各種のカテーテル操作が大腿 after angiography. 動脈を用いて行われる機会が増え仮性動脈瘤の発生が 1987. Kim, of femoral D., Orron, opment 動脈瘤の発生を予防することが肝要と思われる of cardiac 8) 脈瘤5例について検討し以下の結果を得た Allen, Selective 4 non J. J. et al.:role artery puncture in the develand percutaneous catheterization. B. T., Munn, J.: Surgi- J Surg 154 : 676-680, pseudoaneurysm Diagn 25 : 9卜97, 教室で経験した 大腿動脈穿刺後に発生した仮性動 Radiol- pseudoaneurysm D. E., Skillman, fistula complicating 語 Pinkerton, artery Am. ofsuperficial femoral ず確実な動脈穿刺と圧迫止血とを行い 少しでも仮性 of faulty arterial puncture. Roberts, S. R, Main, D. and cal therapy 7 S, S. et 529-530, 1985. 非手術的治療法の1つとして期待される 今後 診断 増加することが危惧される 治療もさることながらま KyW Morse, : A complication (Ultrasound guided compression repair: UGCR)が発 結 H. L.: 273-281, 1981. 従来大腿動脈穿刺後に発生した仮性動脈瘤の治療に のが大勢であろうと思われる, Abrams, a rten o venous transfemoral Cathet. Cardiovasc. 1992. J. S., Stevens, operative S. T. management of et al.: