資料 9 水理計算参考資料 1 水理の基本 (1) 水の重さ 1 気圧のもとにおける水の密度は 3.98 において最大である 温度と密度の関係 を下表に示す 温度 ( ) 4 1 1 2 3 密度 999.84 999.97 999.7 999.1 998.2 99.6 ρ( kg /m 3 ) 単位体積重量 9.798 9.8 9.797 9.791 9.782 9.77 w(kn/m 3 ) 水の密度 ρ( ロー ) は 厳密には表のように温度によって異なるが 一般に計算に おいては ρ=1 kg /m 3 (=1g/ cm 3 =1t/m 3 ) として計算する また 単位体積重量 w は次のようになる w=ρg=1 kg /m 3 9.87m/sec 2 =987N/m 3 =9.87kN/m 3 ( 重力の加速度 g=9.87m/sec 2 とする ) (2) 水圧水圧の単位は Pa( パスカル ) で表されるが これを長さと力の単位で表すと 1Pa=1N/m 2 つまり 1Pa の水の圧力の大きさは 1m 2 の面積に1N( ニユートン ) の力が作用した大きさである いま 水深 1の水底の水圧を考える 水底には 水底上の水の重量がかかるので 水底の水圧は 水圧 = 底面上の水柱の重量 底面積 =1m 1m 1 9.87kN/m 3 1m 2 =98.7kN/m 2 =98.7KPa(=.987MPa) 1 すなわち 水圧 98.7KPa(=.987MPa) という ことは 1 の高さまで水を押し上げることがで きる圧力ということになる 1m 1m 67
(3) 水圧と水頭の関係 P= 水圧 (Pa) W= 水の単位体積重量 =1kg /m 3 =9.87kN/m 3 H= 水頭 (m) P=WH=9.87(kN/m 3 ) H(m)=9.87H(kN/ m2 )=.987H(MPa) 1MPa( メガパスカル )=1 1 6 Pa=1N/mm 2 N(kg m/ sec 2 ) は力の単位で質量 1kgの物体に働き1m/sec 2 の加速度を生じるときの力で重力の加速度 g=9.866 9.87である 1kgf=9.87N 1kgf/cm 2 =9.87 1 4 N/m 2 =98.7 kpa( キロパスカル )=.987MPa 例題 1..3MPaの静水圧があるとき直結給水はどのくらいの高さまで上昇するか また 1mの静水頭の水圧はいくらか H=P W=.3.987=3.9m P=W H=.987 1=.147MPa 2. 従来単位で 3 kgf/cm 2 はSI 単位 (MPa) では いくらになるか 3.987=.294MPa 概算的には 従来単位 kgf/cm 2 をSI 単位 (MPa) に変換した場合は1 分の1になる (4) 流速と流量の関係 Q=A V V=Q A Q= 流量 V= 流速 A= 断面積例題内径 /mの管を流れる水の平均速度が2./secであると その流量は1 分間何リットルになるか Q=A V=πd 2 /4 V=(π (.) 2 /4) 2.=.392m 3 /sec =.392m 3 /sec 1l /m 3 6sec/min=23.l /min 68
() 動水勾配線 A B ha 動水勾配線 hb a 図のような装置で管端 aに栓をすると立上り管 A Bの水位はタンクの静水面と同じ高さで静止する 次に栓をはずすと矢印のように管路に水が流れ aより放水される この時立上り管 A Bの水位は図のように低下する これは管内を水が流れる場合 管壁との摩擦によりエネルギーが失われるからで この失われた水頭 ha hbを損失水頭という そして 管路に水が流れているときの各立ち上り管の水位を結んだ線を動水勾配線という 損失水頭と距離との比を動水勾配といいIで表す I=h/L となるが 水理計算上ではこの値が小さすぎるため 千分率 ( ) に補正して取り扱うことが多い したがって 前記式は I=(h/L) 1 ( ) として利用される ここに I= 動水勾配 h= 損失水頭 L= 距離 損失水頭損失水頭を生ずる原因には 次のようなものがある ( ア ) 管の内壁と水との摩擦による損失 ( イ ) 管の流入部で生ずる損失 ( ウ ) 管の曲り部分で生ずる損失 ( 工 ) 仕切弁等の障害物によって生ずる損失 ( オ ) 管の口径の変化によって生ずる損失 ( 力 ) 管の流出口によって生ずる損失損失水頭の発生は 主に水の粘性にかかわっており そのうち ( イ ) から ( 力 ) については それぞれの箇所で水流が乱れるために生ずるものである これらの損失は 管水路を流れる水の運動エネルギーの一部を失うものであるから 損失水頭 hは 速度水頭であるv 2 /2gにある係数を乗じた値となる h=f v 2 /2g この式でfを損失係数といい 個々の場合毎に実験的に求められている 損失水頭の 69
うち 最も大きなものは 摩擦損失水頭であり その他の損失は個々に計算しないで摩擦損失に相当する値に置き換えておく方が簡便であり 通常の管水路の計算式ではこれによることが多い なお 置き換える場合に 水頭で置き換えるより 直管の長さに置き換えた方が便利である これを直管換算長という 例題延長 1の管路に水が流れたときの損失水頭が2mであった このときの動水勾配はいくらか I=(h/L) 1( )=(2m/1) 1=2 2 流量表による計算例 例題 1. 給水管の口径 D=2/m 給水管の延長 L=21m 配水管の水圧 P=.2MPa のときの給水栓の流量 Qを求めよ XMN 1m 1m 4m 1m 表 2-12 より各換算長を求めて給水管の長さを加えると 2/m 分水栓 2. 副栓付伸縮止水栓 2.7m メーター 8. メーター用逆止弁. エルボ 2. (2 個 1m) 給水管 21. 給水栓 8. 計 48.7m 有効水頭 h= 配水管水頭 -( 土被り + 立上り ) =2.4-(1.+1.)=18.4m 配水管水頭 =.2MPa.987=2.4m 動水勾配 I=(h/L) 1( )=(18.4/48.7) 1=378 ウェストン公式流量図表より 378 を上にあがり2/mの線との交点より横にQ=.7l /secを得る 同様にTW 公式流量図表でもQ=.7l /sec を得る 7
2. 図のタンクに給水する場合 4 時間以内にタンクを満水するには 何 m/m の給 水管を必要とするか 3 XMN 1m 1m 1 配水管の水圧 P=.1MPa 2 給水管の延長 L=3. 3 タンクの容量 W=. 3 給水管口径を2/mと仮定して L=3.+2.( 分水栓 )+2.7m( 伸縮止水栓 )+8.( メーター )+.( 逆止弁 )+3. ( エルボ 3 箇所 )+2.( ボールタップ )=7.7m h=1.2m-2m( 土被り + 立上り )=8.2m 配水管水頭 =.1MPa.987=1.2m 動水勾配 I=(h/L) 1( )=(8.2/7.7) 1=116 ウェストン公式流量図表より 116 を上にあがり2/mの線との交点より横にQ=.39l /secを得る Q=.39l /sec=1.4 3 /hr 満水時間 = 1.4=3.6 時間 <4 時間したがって 給水管の口径は 2/mでよい 71
3 住宅団地等の計算例 1 住宅団地等の共用給水管設計の一例として 支分栓の使用水量及び所要水頭を仮定し 共用給水管の管径を決定する方法を述べる 次の共用給水管の管径を求める 13mm 13mm 13mm 13mm 13mm 配水管水圧 P=.1Mpa O m m m m m m m m m A B C D E F G H I 13mm 13mm 13mm 13mm 13mm 支分栓の口径は 13mm で 使用水量は.2l /sec(1l /min) とする また それ ぞれの支分栓の所要水頭は 1 とする 同時使用率を考慮し 水量を共用給水管の 幹線各区間での流量を求め 支分栓分岐箇所の水圧が 1 以下とならないよう幹線 の管径を決定する 区間支分栓数全流量 l /sec 同時使用率同時使用流量 H-I 2. 1.. G-H 3.7 1..7 F-G 4 1..9.9 E-F 1.2.9 1.13 D-E 6 1..9 1.3 C-D 7 1.7.9 1.8 B-C 8 2..9 1.8 A-B 9 2.2.9 2.3 O-A 1 2..9 2.2 同時使用率は 第 2 章第 3 節表 2-8 による (1) 幹線 H-I 間の設計 1 流量.l /sec 2mm 3 区間直間換算長 m 72
4 動水勾配流量.l /sec 管径 2mm の場合ウェストンの表より 6/1=6 損失水頭動水勾配 6 管延長 m より 6/1 =.3 7 区間所要水頭.3+=.3 (2) 幹線 G-H 間の設計 1 流量.7l /sec 2mm 3 区間直間換算長 m 4 動水勾配流量.7l /sec 管径 2mm の場合ウェストンの表より 12/1=12 損失水頭動水勾配 12 管延長 m より 12/1 =.6 7 区間所要水頭.6+=.6 (3) 幹線 F-G 間の設計 1 流量.9l /sec 3 区間直間換算長 3m m 4 動水勾配流量.9l /sec 管径 3m の場合ウェストンの表より 7/1=7 損失水頭動水勾配 7 管延長 m より 7/1 =.3m 7 区間所要水頭.3m+=.3m (4) 幹線 E-F 間の設計 1 流量 1.13l /sec 3 区間直間換算長 3m m 4 動水勾配流量 1.13l /sec 管径 3m の場合ウェストンの表より 1/1=1 損失水頭動水勾配 1 管延長 m より 1/1 =. 7 区間所要水頭.+=. () 幹線 D-E 間の設計 1 流量 1.3l /sec 3 区間直間換算長 3m m 73
4 動水勾配流量 1.3l /sec 管径 3m の場合ウェストンの表より 1/7=143 損失水頭動水勾配 143 管延長 m より 143/1 =.72m 7 区間所要水頭.72m+=.72m (6) 幹線 C-D 間の設計 1 流量 1.8l /sec 3 区間直間換算長 4m m 4 動水勾配流量 1.8l /sec 管径 4m の場合ウェストンの表より /1= 損失水頭動水勾配 48 管延長 m より /1 =.2m 7 区間所要水頭.2m+=.2m (7) 幹線 B-C 間の設計 1 流量 1.8l /sec 4m 3 区間直間換算長 m 4 動水勾配流量 1.8l /sec 管径 4m の場合ウェストンの表より /8=63 損失水頭動水勾配 63 管延長 m より 63/1 =.32m 7 区間所要水頭.32m+=.32m (8) 幹線 A-B 間の設計 1 流量 2.3/sec 4m 3 区間直間換算長 m 4 動水勾配流量 2.3l /sec 管径 4m の場合ウェストンの表より 23/3=77 損失水頭動水勾配 77 管延長 m より 77/1 =.39m 7 区間所要水頭.39m+=.39m (9) 幹線 O-A 間の設計 1 流量 2.2l /sec 4m 3 区間直間換算長 m 74
4 動水勾配流量 2.2l /sec 管径 4m の場合ウェストンの表より 18/2=9 損失水頭動水勾配 9 管延長 m より 9/1 =.4m 7 区間所要水頭.4m+=.4m (1)O 点の所要水頭は 1+.3+.6+.3+.+.72+.2+.32+.39+.4=13.88mになる 図に表すと下記のようになる E F G H I 11.7m 1.13 3 1.. 11.2m.9 3 7.3.3 1.9.7 2 12.6.6 1.3 1.l /sec 1 2 2mm 3 m 4 6.3 6 7.3 O A B C D 13.88m 2.2 4 9.4.4 13.43m 2.3 4 77.39.39 13.4m 1.8 4 63.32.32 12.72m 1.8 4.2.2 12.47m 1.3 3 143.72.72 すなわち 求めた O 点の所要水頭 13.88m は 配水管の水頭 1.3m(.1MPa) より小さいので それぞれの仮定管径でよい 2. 住宅団地等の給水管は 例 1 のように給水量を求め配水管の動水圧及び給水管の 損失水頭から求めることとするが 想定できない場合には概算的に第 2 章第 3 節表 2-9 2-1 を利用し求める 給水戸数 7 戸の場合 給水量は 表 2-9 より 17~11l /min となる 次に表 2-1 より流速 2m 以下で上記流量が可能な口径を選ぶと 必要口径は 4/m になる 7
3. 一定規模以上の給水用具を有する場合の同時使用水量の算出は 表 2-11 器具給水 負荷単位表より 各種給水用具の負荷単位に給水用具を乗じたものを累計し 図 2-1 給水負荷単位と流量表より求める A B C F E D 各部屋の給水用具 負荷単位 台所流し :3 洗面器 :1 浴槽 :2 シャワー :2 大便器 ( 洗浄タンク ) :3 計 11 単位 区間 負荷単位 同時使用水量 l /min A-B 11 2= 22 8 B-C 11 4= 44 98 C-D 11 6= 66 128 D-E 11 12=132 193 E-F 11 18=198 23 E-F 間の使用水量は 23l /min であるので 第 2 章第 3 節表 2-1 より求める 口径は 7mm になる 76
4 流入管口径の計算例 受水タンクの流入量 q K Q T V q: 受水タンク流入量 (m 3 /hr) V: タンク有効量 (m 3 ) K:3. ( 時間係数 ) T: 使用時間 ( 第 9 章第 14 節表 9-3) Q:1 日平均使用水量 (m 3 / 日 ) 上記の式より受水タンク流入量を求め第 9 章第 14 節表 9-4 メーター適用基準表の許容 流量よりメーター口径を決定する 例題 1. 4 階建てのマンションにおけるそのタンク容量と流入管口径を求める ただし 3LDK 8 戸 2DK 1 戸とする 1 日平均使用水量表 9-3より Q1 3LDK Q2 2DK 8 4 人 3l =9.6m 3 / 日 1 2 人 4l =8. 3 / 日 合計 17.6m 3 / 日受水タンク容量第 9 章第 14 節 1より 17.6 4/1=7.4<7.m 3 / 日高置タンク容量第 9 章第 14 節 3より 17.6 1/12=1.47<1.m 3 / 日 17.6 (7. 1.) 流入量 q=3 2. 1m 3 /hr 12 故に表 9-4メーター適用基準表の許容流量より2.1<2.3m 3 /hr から流入管口径は 2m/m となる 2. 4 階建てのワンルームマンション 12 戸のタンク容量と流入管口径を求める 1 日平均使用水量第 9 章第 14 節表 9-3より Q=12 戸 1 人 4l =4.8m 3 / 日受水タンク容量第 14 節 1より 4.8 4/1=1.92<2. 3 / 日 77
4.8 2. 流入量 q=3. 7 3 /hr 12 表 9-4メーター適用基準表の許容流量より.7<.8m 3 /hr から流入管口径は 13m/mになる 上記の例の場合 計算上は13m/m になるが 例えば動水勾配が2 では.184l /sec=.66m 3 /hrしか流れないので 流入不足になる このように管路の延長が長い場合や配水管動水頭が少ない場合は 到達流量計算をしてみる必要がある 3. 建築面積 282のホテルにおけるタンク容量と流入管口径を求める 有効面積第 14 節 1より 28 6%=1 68 m2 1 日平均使用水量表 9-3より Q=168 m2 4l /d/ m2=67.2m 3 / 日受水タンク容量第 14 節 1より 67.2 4/1=26.9<27. 3 / 日高置タンク容量第 14 節 3より 67.2 1/12=.6<6. 3 / 日 67.2 (27. 6.) 流入量 q=3 8. m 3 /hr 12 故に表 9-4メーター適用基準表の許容流量より8.<2m 3 /hr から流入管口径は /m となる 78