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ph の計算 08 年 月 日

目次.0 強酸 強塩基の溶液 (NOH, Hl).0 弱酸 弱塩基の溶液. 一塩基酸の ph (HOAc, NH l). 一酸塩基の ph (Et NH, NOAc). 多塩基酸 多酸塩基 (H O, N O ) 6. 両性物質 (NHO, NH Ac, H NH O H) 8.0 ph 緩衝液. HendersonHsselrch の式 (NOAc + HOAc). 緩衝液の緩衝能 (NOAc + HOAc). ph による酸および塩基化学種の変化 (H PO ) 6.0 中和曲線 (HOAc + NOH) 7 5.0 ph 計算のまとめ 9 08 年 月 日編著者古川淳 fumitheory.com 08 fkj

.0 強酸 強塩基の溶液強酸, 強塩基は水溶液中で完全に電離しているので +,[OH は, 加えられた酸または塩基のモル濃度そのものである. 例 )Hl 溶液 ( 0 mol/l) の ph. ph= log 0 = 例 )NOH 溶液 ( 0 mol/l) の ph. poh= log 0 =, 次に水のイオン積を用いて ph を求める. ph = pw poh = = ( + [OH = 0 ) 極端に薄い Hl 溶液の場合に上と同様な計算をすると ph = 7.0 を通り越して アルカリ性溶液 になってしまう. このような誤りは, 水の電離を無視しているからである. 0 5 mol/l の Hl ph = 5 0 7 mol/l の Hl ph = 7 0 9 mol/l の Hl ph = 9 この場合の計算法は以下のようにする. 例 )Hl 溶液 (.0 0 7 mol/l) の ph. ( 溶液中の平衡 ) Hl + HO HO + + l HO + HO HO + + OH ( 水のイオン積 ) + [OH = w =.0 0 ( 電荷収支 ) 溶液中の陽電荷数と陰電荷数は等しいので, + = [OH + [l ( 物質収支 ) 溶液中の酸 HA は HA か A のいずれかの形で存在しているから酸の濃度 は = l + [l =.0 0 7 ここで Hl は完全に電離しているので l = 0. [l =.0 0 7 = 従って, から [OH [l を消去して +.0 0 7 +.0 0 = 0.0 0 + = 50 7 =.6 0 7 (mol/l) ph=6.79 強酸の濃度が 0 8 mol/l より低いときには + [l であり, + はほとんど水の電離だけに依存して,pH = 7 に極めて近くなる. NOH のような強塩基溶液についても poh を同様に計算でき, w の関係より ph を計算できる. fumitheory.com 08 fkj

.0 弱酸 弱塩基の溶液. 一塩基酸の ph ( 溶液中の平衡 ) 濃度 の弱酸 HA 溶液では次の平衡が成り立つ. HA + HO HO + + A [A ( 解離定数 ) = A ( 電荷収支 ) 溶液中の陽電荷数と陰電荷数は等しいので + = [OH + [A ( 物質収支 ) 溶液中の酸 HA は HA か A のいずれかの形で存在しているから = A + [A を使って から [A A を消去して ([ H = ([ H [OH [OH ) ) + [OH = w により [OH を消去すれば + + + (w + ) + w = 0 5 即ち 三次方程式 F(x) = x + (+)x + ( w ) x w =0 を解けば + が求まる. ここで F(0) = w < 0 および F() = > 0 であるから 次方程式 F(x) = 0 は つの実数解 (α<, <β<0, 0<γ) をもち + > 0 であるから つの解のうち正数解 (γ) が + に対応する.( 計算は.0 中和曲線を参照 ) ( 近似 ) 水溶液が極めて弱い酸性でなければ [OH + なので において [OH = 0 として = [ H + + + = 0 5 5 は 5 で [OH =w/ + = 0 すなわち w = 0 とした近似式とみることもできる ( 近似 ) 溶液があまり希薄でなければ 弱酸の電離は極めて小さいので + ( 例えば + <0.05 ), このとき より + = ( 近似の妥当性検証 ) 一塩基酸において [OH + であれば, 式でより水素イオン濃度を求めることができる. しかし 得られた結果について, その近似が妥当であったか確認の必要がある. 実用的な簡略計算法 ( 次方程式と近似計算の意味 (p) も参照 ) HA H + +A 又は B+HO OH +BH + について 平衡式 より ( ) w が無視できれば 5 に対応する α +α = 0 を導き 電離度 α を求める方法がある α ( α = + 又は [OH ) が成立する場合は に対応する (α) = が導かれる fumitheory.com 08 fkj

例 ) 酢酸溶液 (.0 0 mol/l AcOH) の ph. 酢酸の =.8 0 5. ( 溶液中の平衡 )HOAc + HO HO + + OAc ( 解離定数 ) [OAc = OAc ( 電荷収支 ) + = [OAc + [OH ( 物質収支 ) = OAc + [OAc + = =.8 5 0 0 =. 0 ( 近似の妥当性検証 ) 得られた + について近似の条件が妥当であったか検討する. 先ず + =. 0, [OH = w/ + 0 [OH + 又 + =. 0, = 0.0 + すなわち 近似 ( 溶液は酸性 ) および近似 (=0.0 mol/l はかなり高濃度 ) は妥当である. + =. 0 mol/l ph =.87 例 ) 強酸と弱塩基の塩 (.0 0 mol/l NHl) の溶液の ph.nh の電離定数 : =.8 0 5. NHl は, 塩なので, 水溶液中ではほとんど完全に電離している. NHl NH + + l ( 溶液中の平衡 )l は完全に電離して H + と結合しないので, 塩基としての性質は示さず, 酸塩基反応に無関係であるから, この溶液は酸としての NH + の溶液として扱うことができる. その電離は次のように示される. NH + + HO NH + HO + w [NH ( 解離定数 ) = = [OH [NH ( = =.8 0 5 ) [NH [NH ( 電荷収支 ) + + [NH + = [l + [OH ( 物質収支 ) = [l = [NH + + [NH 近似式により + = = w =7. 0 6 (mol/l) ph = 5. ( 近似の妥当性検証 ) この値は, 近似の条件 ([OH + = 0. mol/l) を満足する. ( プロトン収支 ) 電荷収支のかわりにプロトン収支を考えても同じ結果となる 即ち 水溶液中で H + ( プロトン ) は孤立して存在し得ないので, プロトンを放出してできた化学種 (NH, OH ) と, 受けとってできた化学種 (HO + ) とは同濃度存在する. + = [NH + [OH fumitheory.com 08 fkj

. 一酸塩基の ph モル濃度 の一酸塩基 B の水溶液では次の平衡が成立する. ( 溶液中の平衡 )B + HO HB + + OH ( 解離定数 ) B [OH = [B ( 電荷収支 ) B + + + = [OH ( 物質収支 ) = [B +B + 一塩基酸の場合と同じようにして をへ代入すると ([OH )[OH = ([OH ) + [OH = w により + を消去すれば [OH + [OH (w + ) [OH w = 0 この 次方程式を解けば [OH が得られる (. 一塩基酸の ph の5と同様 ). 5 ( 近似 ) 水溶液があまり弱い塩基性でなければ において + [OH [OH = [OH [OH + [OH = 0 5 ( 近似 ) さらに, 極めて薄い溶液でなければ [OH であるから より [OH = ( 近似の妥当性検証 )[OH から poh ついで ph を求めることができる. 得られた結果について, その近似が妥当であったか確認の必要がある点も同じである. 次方程式と近似計算の意味 (. および. に共通 ) 水の解離は無視して 酸あるいは塩基の解離度を α として より得られる 次方程式 (α) + (α) = 0 からまず解離度を求める計算法は 式中の α を + または [OH と置き換えれば 5 と同一であることから 近似 に相当する すなわち 5 と 5 の違いは 水の解離を考慮あるいは無視 (w = 0 とおく ) する違いと云える 5 の解は y = f(x) と y = g(x) の交点の x 座標 5 の解は y = f(x) と x 軸の交点の x 座標である (. では ( +, )) を. では ( [OH, ) を夫々 (x, ) で置き換える ) f (x ) = x + x x = x (x + x ) g(x )=w x + w 近似 の妥当性 : 0 <(5 の解 )<(5 の解 ) なので. では [OH (5 の + の解 ) ならば [OH (5 の + の解 ) が成立し. では + (5 の [OH の解 ) ならば + [(5 の [OH の解 ) が成立する 近似 の妥当性 : 同様な考察により 0 <(5 の解 )<( の解 ) なので. において ( の + の解 ) ならば (5 の解の + ) であり. では ( の [OH の解 ) ならば [(5 の [OH の解 ) が成立 0 y y=f(x) y=g(x) x fumitheory.com 08 fkj

例 ) EtNH(.0 0 mol/l) の水溶液の ph を求めよ.EtNH の電離定数 : =. 0 ( 溶液中の平衡 ) ジエチルアミン水溶液中の平衡は次のように示される. EtNH + HO EtNH + + OH ( 解離定数 ) = [Et NH [OH [Et NH ( 電荷収支 ) [EtNH + + + = [OH ( 物質収支 ) 0.00 = [EtNH + [EtNH + 近似式 に代入すると [OH = [OH =. 0.0 0 =.6 0 (mol/l) ( 近似の妥当性検証 ) しかし, この解では, ジエチルアミン全濃度 (.0 0 ) のうち / 以上が解離していることになり 近似 ([OH ) に反する. 従って 近似式 により解を求める. [OH +. 0 [OH.0 [OH =.0 0 (mol/l)poh=.5 この解は近似 ( + [OH ) を満足している..00 =0 ph=.8 例 ) 強塩基と弱酸の塩の水溶液 (.0 0 mol/l NOAc) の ph. 酢酸の電離定数 :=.8 0 5 酢酸ナトリウムは, 塩であるので水溶液中では完全に電離している. AcON AcO + N + ( 溶液中の平衡 )N + は OH と結合しないので酸としては働いていない. AcO のみが塩基として働き水と 反応する AcO + HO AcOH + OH ( 解離定数 ) w [AcOH[OH [AcO = = ( = =.8 0 5 ) [AcO [AcOH ( 荷電収支 ) [N + + + =[AcO + [OH ( 物質収支 ) = [N + = [AcO + [AcOH = 0.0 近似式 に代入して [OH を求めると [OH = = w = 7. 0 6 + = 0 /[OH =. 0 9 ( 近似の妥当性検証 ) これらの値は近似条件 + [OH を満足している. ph を求めると,pH = 8.9 となる. fumitheory.com 5 08 fkj

. 多塩基酸, 多酸塩基炭酸 HO やリン酸 HPO などの多塩基酸は水溶液中において段階的にプロトンを放出し, 各段の平衡が成立する. このような多塩基酸の場合, 最初のプロトンを放出することは比較的容易であるが, すでに負に帯電しているイオンから更に第二, 第三のプロトンを放出するのは, 大きなエネルギーを必要とし, 第一段の電離に比べ起こりにくい. このため多塩基酸の各電離定数は多くの場合,... となり,n と (n+) の間には数桁の差が見られるのが普通である. すなわち 多塩基酸の水溶液では第二段階以下の電離が第一段階の電離に比べ無視できるほど小さく 平衡状態における水素イオン濃度は第一段階の電離によって支配される. いいかえれば 多塩基酸の水溶液における ph の算出は, 第一段階の電離だけを考えればよい. ( 溶液中の平衡 ) 濃度 の 価の弱酸 HA 溶液では次の平衡が成り立つ. HA + HO HO + + HA HA + HO HO + + A A ( 解離定数 ) = A [A = A ( 電荷収支 ) + = [OH + A + [A ( 物質収支 ) = A + A + [A 二段階目の電離が無視できるとき [A 0 ( すなわち 0) [ H [OH A 0 = A + A + [A あとの計算は.( あるいは.) と同様である なので は になる 例 )HO 水溶液 (.0 0 mol/l) の ph.ho の電離定数 : =.6 0 7, =. 0 炭酸は以下のように二段に電離する HO + HO HO + + HO = O O HO + HO HO + + O = [O O 第二段の電離を無視して一塩基酸として計算すると + = =.6 0 7 0. 00 =6.8 0 5 (mol/l) ph=.7 この場合, 求めた水素イオン濃度は [OH + を満足している. ちなみに 二段目の電離により生じた水素イオンは, 一段目の電離により生じた水素イオンに比べ量的に fumitheory.com 6 08 fkj

非常に少ないと考えられるので無視するならば, + O と近似できるので この溶液中に存在する O イオンの濃度は式 より計算できる. [O = [O ( + O ) O [O. 0 (mol/l) このように 第二段階の電離は第一段階に比べて極めて小さい. ph5.6 以下の雨のことを酸性雨と定義する二酸化炭素の分圧が 気圧のとき 0 においてL の水に溶解している二酸化炭素の体積は標準状態 (0, tm) で 0.878 L です したがって 0.878 = n 0.0805 7 より n=0.09 mol がL の水に溶けている二酸化炭素のモル数となります 空気中の二酸化炭素分圧は 0.07 0 であるので ヘンリーの法則によれば 0 の水 L に溶け込む二酸化炭素は 0.09 0.07 0 =.5 0 5 mol となります 炭酸は 段階 ( =. 0 7 =5.6 0 ) で電離しますが 二段目の電離により生じる水素イオンは, 一段目の電離により生じた水素イオンに比べ量的に非常に少ないので無視して 解離度 αを計算すると α=0.58 + =α=0.58.5 0 5=.9 0 6 (mol/l) ph 5.6 すなわち, 硫酸や硝酸の入っていない通常の雨水の ph は大気中の二酸化炭素の影響で 5.6 程度です 現在 空気中の二酸化炭素分圧は上昇しており 海水に吸収されて海水温上昇 気象変動の原因になっています 例 ) NO 水溶液 (.0 0 mol/l) の ph.ho の電離定数 :=.6 0 7,=. 0 多酸塩基及び共役する多塩基酸の電離定数の間には = w の関係がある. O の場合 = w & =w の関係がある. 前にも述べたように n と (n+) との間には数桁の差が見られることが多い. このことは, 共役塩基の電離定数についても格段ごとに同様に数桁の差が見られることを意味しており, 多酸塩基水溶液の ph は第二段階以下の電離による OH イオンを無視して, のみから近似的に求めることができる. HO は以下のように電離する. O + HO HO + OH w O [OH = = [O HO + HO HO + OH w O[OH = = O 第二段の電離を無視して一酸塩基として計算すると [OH = =.0 0. 0 =.8 0 (mol/l) poh =. ph=. =.68 求めた水酸化物イオン濃度は + [OH を満たしている. fumitheory.com 7 08 fkj

. 両性物質 NHO 水溶液において HO は O に対しては酸であり HO に対しては塩基となる両性物質である. 両性物質の例として NHPO NHPO NHOAc やグリシンなどのアミノ酸類がある. 例 )NHO 水溶液 (0.0 mol/l) の ph ( 溶液中の平衡 ) HO は酸として あるいは塩基として働いて 次の平衡が成り立つ. HO HO O = O ( 解離定数 ) =. 0 7 [ H O [O O =5.6 0 ( 電荷収支 ) + + [N + = [OH + O + [O ( 物質収支 ) = [N + = O + O + [O より [ O H O より [O O を へ代入 O [OH O O をへ代入 より [ H [OH [ H O O [ H [ H [OH が充分に大きいとき + [OH であるから [ H [ H ph= ( p p ) = 8. 5 両性物質の水溶液は濃度に無関係に一定の ph を示す上記の ph を求める式 5に濃度の項が無い点ことは, 極端に希薄な溶液でなければ, 両性物質の水溶液は濃度に無関係に一定の ph を示すことを意味する. 式 5は, 他の両性物質にも適用できる. たとえば, NHPO 溶液の ph は,pH= ( p p ) =.7 NHPO 溶液の ph は,pH= ( p p) =9.8 fumitheory.com 8 08 fkj

例 ) 弱酸と弱塩基の塩 (NHOAc) の水溶液の ph NHOAc は塩であるから水溶液において完全に電離する.NH + は弱酸, AcO は弱塩基であるから, NHOAc は 分子が酸部分と塩基部分に分かれた両性化合物とみなすことができる. NHOAc NH + + AcO ( 溶液中の平衡 ) アンモニアの共役酸と酢酸の共役塩基について (NH + + AcOH) (NH + + AcO ) (NH + AcO ) ( 解離定数 ) [AcO = 5.6 0 0 [ AcOH [NH [NH w =5.6 0 0 ( 電荷収支 ) + +[NH + = [OH + [AcO ( 物質収支 ) = [AcOH + [AcO =[NH +[NH + [AcO より [ AcOH より [ NH [NH [ H [AcO [NH をへ代入 [ AcO [NH [ H ゆえに [ AcO & [ H に代入すると [NH [ H [ OH ゆえに [ H [ H H [ H [ [ OH が充分に大きいとき + [OH であるから [ H [ H [ H ph= ( p p ) 7 ( p p ) =7.0 fumitheory.com 9 08 fkj

例 ) アミノ酸水溶液の ph グリシンを例として脂肪族アミノ酸は水溶液中で大部分が両性イオン + HNROO の形で存在している. たとえば グリシンは二塩基酸として扱うことができる. ( 溶液中の平衡 ) + HNHOOH + HNHOO HNHOO ( 解離定数 ) [ H NH [ H NH OO OOH 5.0 0 [ NH H NH OO OO = =.6 0 0+ ( 電荷収支 ) H NH OO [OH [ H NH OOH [ ( 物質収支 ) [ H NH OOH + [ H NH OO + NH OO より [ [ HNH OO H NH OOH より NH [ H OO をへ代入 NH OO [ HNHOO [ HNHOO [OH [ H [ HNHOO [ HNHOO をへ代入 [ HNHOO より [ H [OH [ H [ H [ H [ H [OH が充分に大きいとき + [OH であるから [ H 0 [ H ph= ( p p ) =6. fumitheory.com 0 08 fkj

アミノ酸の等電点アミノ酸は低い ph では, 正電荷を持つ化学種 ( + HNROOH) が主に存在し, 高い ph では, 負電荷を持つ化学種 (HNHOO ) が主に存在する, これらの正負の電荷をもつ化学種の濃度が等しくなる溶液の ph を等電点とよび pi で表わす. すなわち [ + HNROOH = NHOO のときより pi= ( p p ) この ph では, アミノ酸の大部分は両性物質として存在する. 多くのアミノ酸は p <7< p であるから, 溶液が中性を示す付近 ( 生体内と考えれば良い ) では, 両性イオンとして存在する.pH=pI では, 電気的に中正な成分が最も多くなるので, 極性物質である水への溶解度は最小になり, 全体として電気泳動を示さない. 酸性アミノ酸のアスパラギン酸では αooh の p=.9, 側鎖の酸性基 (OOH) の p=.7,α NH + の p=9.6 である. アスパラギン酸の αnh + は酸性側ではほとんど解離していないので 二つのカルボン酸の半分量が解離する ph が等電点になる すなわち pi=/(p+p)=.8 である. fumitheory.com 08 fkj

.0 ph 緩衝液. HendersonHssellch の式生体内では ph は一定に保たれている (ph7.0±0.05). これは, 体内にあるアミノ酸を構成成分とするタンパク質, 呼吸関連の炭酸塩イオンや骨にあるリン酸塩イオンやカルシウムイオン, その他, ナトリウムイオンやカリウムイオンなどが働いて種々の酵素が働きやすい内部環境を作るためである. 単純な組成の溶液でも, 少量の酸や塩基を加えて溶液中の水素イオンを増減させても, 水を加えて薄めても, その溶液の ph が大きく変化しない場合がある. このような溶液を緩衝液と呼び, 互いに共役である酸 塩基対をある濃度以上に含む場合にこの現象がみられる. 例えば酢酸と酢酸ナトリウムとの混合溶液の場合には, 溶液中で次の平衡が成立している. 酢酸ナトリウムは塩であるから完全に電離しており, ナトリウムは事実上酸として行動しない. NOAc N + + AcO AcO +HO AcOH +OH AcOH+HO AcO +HO + この溶液の水素イオン濃度を求めてみよう. [AcO ( 解離定数 ) [AcOH =.8 0 5 ( 電荷収支 ) [N + + + = [AcO + [OH ( 物質収支 ) s = [N + s + =[ AcOH + [AcO より [AcO =s + + [OH 5 に代入 [ AcOH = s + [AcO =( + [OH ) 6 ( s [OH ) 56をに代入 + ( [OH ) s or = 0 の場合はそれぞれ AcOH 溶液 or AcON 溶液の + を与える式になる. s, が充分に大きいとき s + [OH であるから 式 7 は [ H s + s 7 ph=p + log s 8 ( このとき 56 により [AcOH & [OAc s ) この式 8 は,HendersonHssellch の式と呼ばれ, 一般に共役の弱酸. 塩基対の溶液の ph は, 用いられた酸と塩基の濃度によらず濃度比の対数に依存しており, この比を変化させると任意の ph の溶液を調製できることを意味している. 緩衝液を希釈してみよう. たとえ 0 倍に希釈しようが酸と塩基の濃度比 s/ に変化はないので,, s +, [OH が成立しているかぎり ph に変化はない. 次にこの緩衝液に少量の強酸を加えてみよう. 加えた H + の全てが水素イオン濃度の増加 [ΔH + に寄与するとすれば HO + +AcO AcOH+HO によって [AcOH +[ΔH + および [OAc s s[δh + が引き起こされ ph p + log s [ H [ H となるが,, s [ΔH + であれば ph はほとんど変化しない. アルカリを加えた場合も同様. fumitheory.com 08 fkj 9

例 ) ) 酢酸ナトリウム, 酢酸の各々.0 0 mol/l 溶液を等容量ずつ混合した場合の混合溶液の ph を求めよ. ただし,p =.7 とする. 共役の酸塩基対の混合溶液であるから,pH は式 8 から次のように求められる. 混合溶液での最終濃度を考えると, 酢酸ナトリウム, 酢酸はそれぞれ 0 mol/l. ph = p + log s.00 =.7 + log =.7.0 0 このように, 共役の酸塩基対の等モル濃度溶液を等容量ずつ混合した場合,pH は p に等しくなる. この時, 弱酸を NOH などで中和する場合にちょうど酸の 50% が中和された量に等しい. ) ) で得た混合溶液 00 ml に.0 mol/l Hl.0 ml を加えた場合の ph 変化量はいくらか加えた水素イオン濃度 + を求めると,.0 mol/l Hl.0 ml 中の Hl は.0 mmol. [ΔH + =.0 mmol / 00 ml=0.0 mol/l. 式 9 より ph を求めると ph p + log s [ H [ H.0 0.0 0 =.7 + log.0 0 +.0 0 =.7 + log 9 =.65 ΔpH=.7.65=0.09 注 ) 溶液は 0 ml になっている ので [ΔH + =.0 mmol / 0 ml 0.00mol/L. とはしないこと もともと緩衝液は希釈に対して抵抗するし ここまで考えるのであれば s, の変化も考慮すべきである しかしながら そうするとかえって希釈を考慮しない方が良いことがわかる すなわち x mmol の H + が含まれている液 ΔV ml を加えるとき 液量の変化は V ml (V+ΔV )ml である s, の変化も考慮して s [ H [ H V V ΔV V V ΔV s x V ΔV x V ΔV s この式で [ΔH + = x/v となっているので 体積の増加分 ΔV は考慮しないで良いことを示している c) 純水 (ph7.0)00 ml に.0 mol/l Hl.0 ml を加えた場合の ph 変化量はいくらか. 上記 ) で求めたモル濃度は,0.00 mol/l. 従って,pH=.0 ph の変化量 = 7.0.0 = 5.0 上記 ) の変化量と比較すると,pH 緩衝液の効果が明らかになる. x V x V d) ph 5.0 の緩衝液を得るには,0. mo/l 酢酸 00ml に,.0 mol/l 酢酸ナトリウム何 ml 加えれば良いか..0 mol/l の酢酸ナトリウム x ml を加えると考えれば式 8から s.0 x 5.0 = p + log =.7 + log x=0 ml 0.00 fumitheory.com 08 fkj

. 緩衝液の緩衝能 ph 緩衝液の緩衝作用の大きさをβとすると, 次式に示すように, 溶液の ph を d(ph) だけ変化させるのに必要な強酸または強アルカリ量で定義づけられこれは, 滴定曲線の勾配の逆数に相当する. dx β = d(ph) いま, 一塩基弱酸である酢酸 [ 濃度 mol/l に x mol/l 相当の水酸化ナトリウムを加えて得た緩衝溶液について緩衝能をもとめてみる AcOH + NOH AcO + N + +HO AcO +HO AcOH +OH AcOH+HO AcO +HO + [AcO ( 解離定数 ) [AcOH =.8 0 5 ( 電荷収支 ) [N + + + = [AcO + [OH ( 物質収支 ) x = [N + = [ AcOH + [AcO より [AcO =x + + [OH 5 に代入して [ AcOH = [AcO = x ( + [OH ) 6 56をに代入すると ( x [OH ) + x ( [OH ) 7 故に式 7 は x ([ H ( [OH [OH ) ) ( x [OH ( ) ( )( [OH ) ( ) x [OH x ) x x ( [OH ) ( w ) dx w d ( ) ln また ph log であるから.0 従って緩衝能 βは dx dx β= d[ph d d(ph) d.0 d.0 d(ph) ( + ) w 8 fumitheory.com 08 fkj

8 式 (Vn Slyke の式 ) は ph=~ では ( ) 内の つの項を無視できるので dx dx d β=.0 8 d[ ph d d(ph) ( + ) 酢酸 酢酸ナトリウム緩衝液の ph による緩衝能の変化を式 8 によって計算した結果を右図に示した. 8 の微分係数 dβ/d + = 0 より + = が得られるので β は ph = p で最大値を示し,pH = p ± の範囲で良好な緩衝能を示すが,0.<s /<0 から外れると緩衝作用は小さくなり, 実用性は低下する. 以上のことより, ある ph の緩衝液を調製するときには, 目的の ph に近い p を持つ酸を選ぶ必要がある ( 下表を参照 ). そうすれば, 酸と塩基の比がほぼ となり緩衝作用が最大となる. よく使われる緩衝剤と p (5 ) グリシン p=.5 リン酸 p=7.0 リン酸 p=.5 HEPES p=7.6 フタル酸 p=.95 トリス (Tris) p=8.06 クエン酸 p=. ホウ酸 p=9. バルビツール酸 p=.0 グリシン p=9.78 コハク酸 p=. 炭酸 p=0. クエン酸 p=.76 リン酸 p=. 酢酸 フタル酸 コハク酸 炭酸 クエン酸 p=.76 p=5. p=5.6 p=6.5 p=6.0 HEPES: NhydroxyethylpiperzineN'ethnesufonic cid Tris: tris(hydroxymethyl)minomethne, / 共役酸の p の値 ) fumitheory.com 5 08 fkj

. ph による酸及び塩基化学種の変化溶液の ph と酸 塩基の解離状態との関係が一目でわかるようなグラフがあれば, ある ph において主に存在する化学種が何であるかすぐにわかるし, ある化学種を含め溶液を得るための適当な ph を知ることができる. 言い換えれば, 反応の計画を立てる上で有効な化学種の存在する ph 範囲を知ることができ, 非常に便利である. 各種医薬品には有機酸あるいは有機塩基であるものがよく見受けられるが, これらが体内で吸収され効力を発言するには特定の化学種として存在しなければならない. そのために有効な指標が, その物質 ( 酸あるいは塩基 ) の全濃度に対して占める特定の化学種の濃度の比率, モル分率 (α) である. 式の誘導については, 省略するが, 三塩基酸であるリン酸 (HPO) についてモル分率を求める式を示すと次のようになる. これらの式により, 各化学種の ph による分布状態を図に示した. α0 = α = α = α = [ H PO PO PO [PO = = = + + + = + この図からわかるように,pH.0 付近では HPO と HPO の化学種のモル分率は, それぞれほぼ 0.5 であり, その他の化学種はほとんど存在しない. また,pH.7 付近では, 溶液中に HPO のみしかほとんど存在しないことがわかる. また, このようなリン酸溶液において, 三種以上の化学種がかなりの量存在する ph 範囲はみられないことがわかる fumitheory.com 6 08 fkj

.0 中和曲線酢酸の濃度が [mol/l 水酸化ナトリウムの濃度が [mol/l である混合水溶液の水素イオン濃度を求めてみよう. 基本的には 5 つの溶質濃度 ( +, [OH, [AcOH, [AcO, [N + ) の間の関係式 ~5を連立方程式として + を求めればよい. AcOH+H O AcO +H O + NOH N + + OH ( 水のイオン積 ) + [OH =.00 0 ( 解離定数 ) [ H [AcO [AcOH =.75 0 5 ( 電荷収支 ) [N + + + = [AcO + [OH ( 物質収支 ) = [N + =[ AcOH + [AcO 5 より [AcO = + ( + [OH ) 6 5に代入 [ AcOH = [AcO =( )( + [OH ) 7 67 を に代入 [ H ( [OH ) + ( )( [OH ) [ H ( [OH ) ( +[OH ) + + ( + ) + +( w ) + w =0 8 + 8 すなわち. 一塩基酸の ph の項でも述べたが 三次方程式 F(x) = x + (+)x + ( w ) x w =0 を解けば + が求まる. ここで F(0) = w < 0 および F() = > 0 であるから 次方程式 F(x) = 0 には つの実数解 (α<, <β<0, 0<γ) が存在し + > 0 であるから つの解のうち正数解 (γ) が + に対応する. 右図は中和曲線で 0.0 mol/l の酢酸水溶液 00 ml に 0. mo/l 水酸化ナトリウム溶液を 0.mL ずつ滴下したとして F(x)=0 の解 γ 即ち + を求め その値を ph に変換してプロットしたものである. 計算によれば 0. mo/l 水酸化ナトリウム溶液を 9.9mL 滴下した時に ph = 7.056 となり 0.0mL 滴下時には ph = 8.58 である. このとき ph 変化量は ΔpH = 8.587.056 =.0 であり最大となっている. このように多数の ph 計算をすることは 次方程式を解くためのソフトウエア例えばエクセルアドイン EQD( 009 A. megi) があれば難しくはない. 以下に述べる三次方程式 8 を条件付きで二次方程式に近似する i)~iii) の方法は注意深く条件を選べば充分な精度の + が得られるが 中和曲線を描くような場合はかえって煩雑であろう. fumitheory.com 7 08 fkj

i) = 0 のとき. すなわち中和滴定開始前の酢酸水溶液の ph の計算は式 8 より ( [OH ) + ( [OH ) 先ず 極端には酸は弱くないので + [OH として 9は + + + + =0 9 更に 極端に酸が強くないので + とすれば 9 は ii) ~(/) のとき 即ち半中和点付近の緩衝作用が顕著な領域の ph 計算に関しては 先ず 極端に酸は弱くないので + [OH として 式 8 より 9 9 ( ) + 0 ( ) + +( + ) + ( ) =0 0 更に 極端に酸が強くないので ( ), + とすれば 0 は ( ) 0 ( ) 同じ溶液は酢酸と酢酸ナトリウムの混合溶液とも考えられる. 0 において = cid, = slt とおいたときの ph を与える式 :ph=p +log( slt / cid ) は HendersonHssellch の式と呼ばれる. この式は一般に共役の弱酸. 塩基対の溶液の ph は, 用いられた酸と塩基の濃度によらず濃度比の対数に依存しており, この比を変化させると任意の ph の溶液を調整できることを示している. iii) = のとき すなわち中和点の弱酸の強塩基の塩の水溶液の ph の計算は 8 より ( [OH ) + ( [OH ) 先ず 極端に塩基性が弱くないので [OH + として ([OH ) [OH + [OH = 0 [OH 更に 極端に塩基性が強くないので [OH とすれば [OH [OH or w fumitheory.com 8 08 fkj

5.0 ph 計算のまとめ 基本事項 = w p + p = + [OH = w ph+poh = 弱電解質 弱い一塩基酸 (AcOH) 弱い一酸塩基 (NH) 加水解離 5 弱塩基と強酸の塩 (NHl) 6 弱酸と強塩基の塩 (AcON) [ H ph (p log) [ OH poh (p log) w [ H ph 7 (p log) w [ OH poh 7 (p log) 緩衝作用 (HendersonHssellch の式 ) 弱酸とその塩 (AcOH+AcON) 弱塩基とその塩 (NH+NHl) s [OH s ph poh p log s p log s 両性物質 7 多塩基酸の塩 (NHO NHPO [ H NHPO アミノ酸 ) 8 弱酸と弱塩基の塩 (AcONH) ph= ( p p ) w [ H ph 7 (p log ) 中和曲線 fumitheory.com 9 08 fkj