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1 999 年 9 月 30 日 Leiomyomatosis の一例 早坂和正 田中良明 矢野希代志 藤井元彰 奥畑好孝 氷見和久 根岸七雄 * 日本大学医学部放射線医学教室 * 第二外科学教室 Hayasaka, T anaka, Yano, Fujii, Okuhata, Himi, Negishi Surgery., l 巴 iomyo matosis, call 巴 d leiomyoma, o ri ginates 合 om find 泊 gs l 巴 s ion s はじめに leiomyomatosis は 非常に稀な良性疾患で 子宮筋腫から由来し内腸骨静脈叢を経て下大静脈や心臓に進展すると言われ 1975 年に Norris や Parm ley l ) によって初めて本症が定義された 今回 われわれは子宮筋腫があり右内腸骨静脈 下大静脈 右房下縁まで腫痛が進展した Intravenous leiomyomatosisの一例を経験したのでそのct と MRI 所見を報告する 症例症例は 62 歳 女性 主訴 : 両下肢腫張家族歴 : 特記事項なし既往歴 : 1967 年卵巣出血で卵巣摘出術 臨床経過 : 1996 年 6 月頃より右下肢腫張を認めたが近 医にて保存的治療を受けていた 8 月になり両下肢腫 張を認めるようになったが経過観察されていた 1997 年 4 月に両下肢腫張が改善しないため当院受診し 精 査のため入院となった 現 症 : 貧血 黄痘なし 心音は第四肋間左縁に Gr2/ V の収縮期雑音を聴取した 腹部は臓下部に小 児頭大の弾性硬の腫癒を触知し 両下肢に浮腫を認 めた 臨床検査成績 : 赤血球 350 万 / μl Hb 1O.3g/ dl Ht 30.5% と軽度貧血 LDH IU/l と著明上昇 腫蕩 マーカー (AFP CEA CA 19-9) は正常値で あった 画像所見 : CT 所見では骨盤内に約 locm 大の辺縁明 瞭内部不均質性の筋組織と等濃度の腫癒を認めた 腫癌は右内腸骨静脈から右房下縁の下大静脈まで進 図 1a 骨盤内 CT: 子宮 ( 矢頭 ) と連続した内部不均質な腫蕩 ( 短矢 ) 内腸骨静脈内腫窪 ( 長矢 ) を認める 図 1b 認める 腹部 CT: 下大静脈内に内部不均質な腫癌 ( 長矢 ) を 別刷請求先 : 1 73-003 2 東京都板橋区大谷口上町 30 番 1 号日本大学医学部放射線医学教室早坂和正

断層映像研究会雑誌第 26 巻 第 2 号 図 2a 2 d 冠状断 MRI: T2 強調画像 (true 6.3/3. 0/70) 冠状断で骨盤内に不均質な腫蕩 ( 長矢 ) 内腸 骨静脈 ( 矢頭 ) 下大静脈内 ( 短矢 ) に腫窪を認める 図 2b 図 2c 図 2.a C. 横断腹部 MRI: 下大静脈内に内部不均質な腫癌 ( 長矢 ) を認める T1 強調画像 (FLASH -2 0 100/4. 1/80) で軽度低信号 (a) T2 強調画像 (turbose 100/4.1/80) で高信号 (b) Gd MRI(c) で不整な造影を認める 2 e 矢状断造影 MRI(FLSH 71/4.2/60): 不均質に造影される骨盤内腫蕩 ( 長矢 ) と下大静脈内腫癌 ( 矢頭 ) を認める

1999 年 9 月 30 日 展していた ( 図 1a, b) MRI 所見では骨盤内に約 locm 大の辺縁明瞭内部で 不均質性の右内腸骨静脈 から右房下縁の下大静脈まで進展する腫痛を認めた Tl 強調画像で骨盤内および下大静脈内に内部不均質 性の筋組織より軽度低信号 T2 強調画像で内部不均 質性の高信号 Gd -enha nce d T1 強調画像で不整な 造影効果のある腫癒を認めた 冠状断では骨盤内腫 蕩と右内腸骨静脈から右房下縁の下大静脈到る連続 性の腫癌性病変が描出された ( 図 2a-e ) 右総腸骨動脈造影では動脈相で骨盤内腫蕩と下大 静脈内の腫癒に tumor stam を認め 静脈相で内腸 骨静脈と下大静脈の閉塞のため 閉鎖静脈から下腹 壁静脈への側副血行路を認めた ( 図 3) 以上より 子宮筋腫と筋腫の静脈内浸潤が考えら れ Intravenous leiomyomatosis と診断された 組織 学的診断では 超音波ガイド下で骨盤内腫蕩と下大 静脈内の腫蕩の生検を行い 異型性に乏しい平滑筋 由来の腫蕩と診断され Intravenous と確診された >rr ムーコ T尽, H.>, ' 5 ア 0 d nv 5, 0:;, 4 図 3 右総腸骨動脈造影静脈相 : 右内腸骨静脈 右総腸骨静脈 および下大静脈の閉塞と閉鎖静脈から下腹壁静脈への側 副血行 ( 矢頭 ) を認める 考案 leiomyomatos is は 1896 年に B isch Hirschfeld 2 ) が始めて報告し 1903 年に Knauer3) お よび 1911 年に S itzenfrey4 ) は子宮筋腫があり子宮静脈 内の腫蕩が血管外の筋腫細胞と連続性があることを 示し 本症が平滑筋腫細胞の血管内浸潤により成長 したものと結論した 1975 年に Norris ら 1 ) は本症の組 織学的検索を行い Knauer Sitzenfrey の説の他 静 脈壁から生じた平滑筋腫が静脈内に成長進展したも のも加え 本症は 子宮筋腫あるいは静脈壁から生じ た組織学的に良性の平滑筋腫が静脈内に成長進展し たもの と定義されるようになった 診断は子宮筋腫の存在や子宮筋腫切除の既往があ り 静脈内や心臓内に腫蕩を認めることで比較的容 易であり 超音波検査 存在診断に有用である CT や MRI 検査などが腫傷の MRI は本症例の如く 内腸 骨静脈から心臓まで連続性のある場合に 矢状断や 冠状断など任意の断面で撮像が可能なので特に有用 と考えられる 本症例では骨盤内に子宮筋腫を認め内腸骨静脈 下大静脈から右房下縁に到る連続性の腫蕩がMRIで確認されたことから 腫蕩の成因は子宮筋腫の血管内播種と診断され 生検により確認された このように腫蕩が下大静脈より 心臓内にまで発育していた Intravenous leiomyomatosisは現在まで約 30 例の報告があるが5-9) この他に平滑筋肉腫でも同様の進展を呈することがあるといわれているが 10) 本症との鑑別は画像診断では難しく組織学的診断は不可欠であると考えられる 又 Wilms 腫蕩で も同様に静脈内に進展発育を呈するとの報告があるが 11 ) 本症との鑑別は腎腫蕩の画像検査による検出能が優れていることから比較的容易であると考えられる 結語 62 歳 女性で子宮筋腫があり内腸骨静脈より下大静脈全域 右房下縁に到る In 仕 avenous の一例を経験したので その CT MRI 像を中心に報告した

断層映像研究会雑誌第 26 巻第 2 号 2168-2178, 5 出 Ed 1 695,1903 1,1911 J, In 仕 acardiac 38 83-86.1 997 Y, S, leiomyomato~is 642-645,1994 ~ 川 tl, CE, JC 巴 t 471-475,1980 A 丘 za ce 灯ヨ C, 700-703,1982 DJ, GP, 409-410,1988 Jr, 1009-1018,1971 626-628,1973