伝熱現象を定量的に評価することや, 機器の設計を行うためには, 伝熱工学の知識が不可欠である. 実際の伝熱現象は, 既存の手法で正確な評価を行うことが難しい場合が多い. 新しい機器の設計や, 新しい熱現象の解明には, 第一次近似として, 大まかな伝熱の評価が必要になる. 伝熱現象をモデル化によって単純化し, 実用上評価可能な精度で伝熱現象を予測することが必要となる. ここでは, 実際の伝熱現象や機器の設計に必要な現象のモデル化とその評価について解説する. 1 シース熱電対の温度測定 課題 ダクト内を流れている500Kの空気温度をインコネルで被服されたシース熱電対で測りたい. 温度 350K の壁からシース熱電対を流れに垂直に挿入するとき, 5K 以内の精度で空気の温度を計測する 熱電対をどのくらい流体内に挿入する必要があるか. JSME テキストシリーズ 伝熱工学 例題 8.1 1
仮定とモデル化 (1) 流体中におかれた棒の先端温度が流体と比較してどのくらい異なるかで, 温度測定精度を検証する. () ダクト内の空気流の温度は一様とする. (3) 熱電対の温接点はシースの先端にあるものとし, 右図のモデルにおいて, 丸棒先端断面からの熱伝達は無視する. (4) ふく射による伝熱は無視する. (5) シース熱電対はインコネルの中実丸棒のフィンで近似し, 温度変化によらず物性値は一定とする. 3 フィンの温度分布 フィンの熱伝導 m( Lx) m( Lx) T T e e cosh ml ( x) ml ml T T e e cosh ml 0 シース熱電対の温度測定 0 hp 4h m 98.3 ka kd 先端温度 T T > 345 K i T0 T 1 T T cosh ml w i とするためには coshml > 30またはmL > ln (30 30 1) 41.6mm L Q x x 周囲流体温度 L dq f dx T P 周囲長 A W Qx dx 矩形フィンの熱収支 t x 4
フィンの温度分布 フィンの熱伝導 m( Lx) m( Lx) T T e e cosh ml ( x) ml ml T T e e cosh ml 0 0 hp 4h m 98.3 ka kd 先端温度 T T > 345 K i T0 T 1 T T cosh ml w i とするためには coshml > 30またはmL > ln (30 30 1) L 41.6mm フィン効率 1.0 0.8 06.6 0.4 0. n 0 n 1 n x L L L n=0 (a) n=1 n= (b) y t / t / t / y=t/(x/l) n 0.0 0 1 3 4 5 ml 各種形状フィンのフィン効率 5 結果の考察 (1) 実際の熱電対は, インコネルの中空パイプに絶縁材料と熱電対素線が封入されている. この熱電対の有効熱伝導率は, 解析モデルで用いた値よりも小さいため, 先端部分の温度はより空気温度に近い. () 熱電対端面の伝熱を無視しているので, 実際の測定温度は空気温度により近くなる. (3) 壁近傍における空気流の温度境界層が顕著な場合は, さらに長い熱電対が必要となる場合がある. 6 3
ジェット機の翼面温度推定 課題 マッハ数 0.87, 高度 1 万メートルで飛行しているジェット旅客機の翼に直射日光が30 度の角度で入射している. 翼弦 ( 翼の流れ方向の長さ ) の中央に設置されている燃料タンクの温度を推定せよ. 高空を巡航するジェット旅客機 JSME テキストシリーズ 伝熱工学 例題 8. 7 第 8 章伝熱問題のモデル化と設計 仮定とモデル化 (1) 太陽からのふく射加熱と平板からの対流冷却との熱収支によって翼面温度が決定される. () 平板を流れる空気流による対流伝熱とふく射伝熱でタンクの温度が決定されるものとする. (3) 平板の裏面は断熱として流れ方向の板の熱伝導は無視する. (4) 太陽の直達日射は宇宙空間の値 ( 太陽定数 ) と等しいものとする. 翼まわりの伝熱モデル 8 4
ジェット機の翼面温度推定 解析マッハ数よりジェット機の速度は, v 0.87 a 63 m/s (7) 翼弦の中央までの距離を代表長さとして, レイノルズ数は vx Re.14 10 7 (8) となり, 流れは乱流である. この場合の局所ヌセルト数は, Johnson-Rubesinの式 () を用いると, Nu 0.096Pr Re 1.7510 /3 4/5 4 (9) となり, 局所熱伝達率は, 以下のように見積もられる. Nuk h 10.0 W/(m K) x (10) 一方, 太陽ふく射で翼表面を加熱する熱流束は, q q cos 545 W/m s 6 (11) 翼の裏面は断熱だから空気と翼面の温度差は, q Tw T0 4.9 K h (1) 翼まわりの伝熱モデル 9 第 8 章伝熱問題のモデル化と設計結果の考察 (1) 本モデルでは, 太陽光照射を受けない翼下面の伝熱を考慮していないので, 実際の燃料タンクの温度は, 空気温度と翼上面温度の間の値となる. () 実際は翼面に沿って流速が変化するので, 平面で近似した本モデルは, 近似的な熱伝達率である. (3) 熱伝達率の大きさと有効ふく射熱伝達率を比較すると, 翼面からの放射冷却は無視できる. 高空を巡航するジェット旅客機 10 5
自動車の屋根の表面温度推定 課題 T 0 300K のとき,qq sol 700W/m の日射を吸収する自動車の屋根の温度を推定する. 自動車が静止している時と, 走行している時の屋根の表面温度を計算せよ. JSME テキストシリーズ 演習伝熱工学 例題 1.8 直射日光が当たっているときの車の屋根の温度 11 仮定 自動車が静止している時の自然対流熱 伝達率を hc 1.3W/(m K), 自動車が v 15m/s で走行している時の強制対流熱伝達率を h 34W/(m K) とする. c 屋根の裏面は断熱されているものとし, 屋根の放射率をとする. 0.9 直射日光が当たっているときの車の屋根の温度 1 6
自動車の屋根の表面温度推定 解析 屋根の裏面が断熱条件なので, q h ( T T ) ( T T ) 0 つまり, 4 4 sol c w 0 w 0 T T q /[ h ( T T T TT T )] 3 3 w 0 sol c 0 0 w 0 w w を満足するなる. T w を反復法で求めることに 自然対流熱伝達と強制対流熱伝達の場合では, 表面温度の収束解は, それぞれ T T w w となる. 375 K(10 ) for v 0, 317 K(44 ) for v 15 m/s 直射日光が当たっているときの車の屋根の温度 13 光ディスク書き込み時の記録層の温度推定 課題 書き換え可能な DVD レーザーディスクドライブでは, ポリカーボネート板中に記録層を挟みレーザーで加熱することによって, 記録層の光物性を変化させる. 出力 Q 15mW のレーザー光を直径 d 0.9 m に集光する. ディスクの初期温度が T 300K i, 加熱時間が t 0nsのとき, 記録層の到達温度を推定する. ただし, レーザー光に対する記録層の吸収率をとする. a 0.1 JSME テキストシリーズ 演習伝熱工学 例題 8.1 光ディスクドライバー ( 資料提供日立製作所 ( 株 )) 14 7
実例 DVD ドライブ ( 日立 ( 株 ) 提供 ) DVD 対物レンズ NA=0.6 λ=650nm 記録情報 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 0 記録信号 記録パワーレベル 1.mm 0.6mm 記録層 LD 出力 再生パワーレベル 0 レベル 光スポット光スポット 0.89μm 1.4μm トラックピッチ0.74μm 記録マーク例 書き込み時の信号パターン 15 光ディスク書き込み時の記録層の温度推定 仮定とモデル化 (1) レーザー光を吸収する記録層は程度で十分薄いため記録層の厚さは考慮しない. () ポリカーボネート板はレーザー光を吸収しない. (3) 記録層に吸収されたエネルギーが両側に拡散するモデルを考える. つまり, DVDディスクを二つ割りにした状態で片面を加熱する1 次元熱伝導問題に置き換える. (4) レーザー光焦点におけるエネルギー密度は一様とする. DVDディスク記録加熱のモデ16 ル化. 8
半無限固体の 1 次元解 熱伝導方程式 : T T t x 初期条件 : x 0, t 0 : T Ti T s Ttx (, ) x q T s Ttx (, ) T, h Ttx (, ) x x 第 1 種境界条件 ( 温度一定 ) t 0, x 0 : T T 第 種境界条件 ( 熱流束一定 ) t 0, x 0 : q q s 0 T s t t T T i T i T i x x x (a) 第 1 種境界条件 (b) 第 種境界条件 (c) 第 3 種境界条件 半無限固体の境界条件 t 第 3 種境界条件 ( 熱伝達率一定 ) t 0, x 0: h h 0 17 光ディスク書き込み時の記録層の温度推定半無限固体の 1 次元解 第 1 種境界条件 ( 温度一定 ) 1 1 erf x 1 erf t F0 (1) 第 種境界条件 ( 熱流束一定 ) T Ti exp( ) erfc( ) T T s ここで T s i T i t 1 x k Fo t q s 第 3 種境界条件 ( 熱伝達率一定 ) T Ti x hx h t x h t erfc exp erfc T T i t k k t k 1 1 erfc expbi Bi Fo erfc Bi Fo Fo Fo () 表面温度一定と熱流束一定の場合の過渡熱伝導温度分布 (3) 18 9
解析 焦点における片面当たりの加熱熱流束は, 全吸収エネルギーの半分となるので, 3 Qa / 1510 0.1/ 9 q (13) s 1.17910 W / m 6 d /4 (0.910 ) /4 t 0ns における表面温度は, 前スライドの式 () より, 9 7 8 qs t 1.17910 1.5410 10 Ts Ti 300 635 K k 0. DVD ディスク記録加熱のモデル化. (14) 19 光ディスク書き込み時の記録層の温度推定 結果の考察 (1) 焦点におけるレーザー光強度はガウス分布をしており, 一様ではない. 焦点中心はこの推定値より高温になる. () ディスクは高速 ( 約 6m/s ) で移動している. 時間 0ns の照射時間では 0.1 m 移動するため加熱領域の移動を考慮する必要がある. (3) 温度変化が大きいので, 物性値の温度依存性を考慮する必要がある. (4) 温度浸透厚さ を x / t 1 の値とすると, 0 ns では 111nm となる. これは加熱直径 900nm に比べて十分薄いのとはいえないので一次元熱伝導は近似的な目安である. (5) 温度浸透厚さは ポリカーボネート板の厚さに比べて十分薄いので無限平板の近似は成り立つ DVD ディスク記録加熱のモデル化. 過渡熱伝導温度分布 0 10
大気圏に再突入する宇宙往還機の断熱材厚さ 課題 宇宙往還機では, 高度 10 km から速度 7.8km/s で再突入する際に, 空力加熱で表面が 1500K から 000K に加熱される. 外周部はセラミック系の繊維を固めた断熱タイルで熱遮断を行っている. 実験機の断熱材裏面を T 450K 以下に保つ必要がある. c 初期温度 Ti 80K の断熱タイルが, 再突入時に表面温度 Ts 1600K の状態で10 分間加熱されるとき, 断熱タイルの必要厚さを推定する. 宇宙往還機の大気圏再突入実験 ( 資料提供宇宙航空研究開発機構 (JAXA)) JSME テキストシリーズ 演習伝熱工学 例題 8. 1 実例 JAXA ホームページより引用 11
大気圏に再突入する宇宙往還機の断熱材厚さ 実例 野村 航技研報告 779 号 (1983) 浅田他 航技研特別資料 SP-4(1994) 3 実例 4 1
大気圏に再突入する宇宙往還機の断熱材厚さ 仮定とモデル化 (1) 断熱タイルを平板の 1 次元非定常熱伝導問題として簡略化する. () 再突入時の表面温度は, 再突入後すぐに断熱タイルの表面温度が T 1600K になると s 仮定する. 断熱タイルの伝熱様式 (3) アルミニウム合金の熱容量と伝熱は考慮せず, 断熱タイル裏面は断熱条件とする. (4) つまり, 断熱材裏面温度は, 両面が等温加熱される厚さ L の平板の中心温度と等価となる. 断熱層内の温度変化 5 解析 時間 t 600s における裏面温度を T 450K c とすると, 無次元温度は, ( T T ) /( T T ) (450 1600) /(80 1600) 0.871 c s i s 右下図において, 平板の中心温度 c 0.871におけるフーリエ数は約 0.15である. 断熱層内の温度変化 第 1 種境界条件における平板の過渡温度分布 断熱タイルの物性値より, 断熱タイルの厚さは, -7 t 4.734 10 600 L 44mm Fo 0.15 (15) となる. 6 各種形状物体の中心部の過渡温度変化 13
大気圏に再突入する宇宙往還機の断熱材厚さ 結果の考察 (1) 大気圏再突入時は, 速度や周囲の気体条件が刻々変化するので, 断熱タイル表面への熱流束も大きく変化する. この熱流束は, 位置によって変化するため, 表面温度も変化する. () 軌道再突入実験機では, 実際の宇宙往還機とは異なる飛行経路をとるので, 加熱時間は本例に比べて遙かに短い, 実験機の断熱タイル厚さは 0mm 程度である. (3) 断熱タイル裏面の金属構造体との接触面では熱流が存在し, このモデル化の条件よりは温度上昇が緩やかになる. (4) 高温における多孔質断熱材内の有効熱伝導率の温度依存性や, 厳密には, 多孔質体内のふく射エネルギー輸送を考慮する必要がある. (5) 表面温度が低下しても断熱タイル内部は高温を保ち, その熱で内部の機器が高温に曝される場合がある. 文献 (1) 第章 伝熱の問題例 (a) を参照されたい. 7 高層ビルの断熱材厚さの推定 課題 高層ビルで火災が発生したとき, 火災によるビルの倒壊を防ぐために 建物を支える構造用鋼材はある一定時間火災の高温から熱を遮断する必要がある. 右図に示すように, ビル火災で断熱材表面が Ts 100K となっているとき, 鋼材表面温度を 時間の間 Tc 870K 以下に保つことを考える. 火災前の断熱材温度が Ti 300K のとき, 鋼材を覆っているロックウール断熱材の最小厚さを求めよ. ただし, 断熱材の熱拡散率は温度によら 7 ず一定で 9.0 10 m /s とする JSME テキストシリーズ 演習伝熱工学 練習問題.13 ビル鋼材の断熱 8 14
仮定とモデル化 (1) 断熱材を平板の1 次元非定常熱伝導問題として簡略化する. () 初期温度 Ti 300K の断熱材表面が になると仮定する. (3) 鋼材の熱容量と伝熱は考慮しないで断熱材中心の温度上昇を考える. T 100K w 第 1 種境界条件における平板の過渡温度分布 (4) つまり, 厚さ L の 次元平板中心の温度変 化を考える 9 高層ビルの断熱材厚さの推定 解析 中心の無次元温度は, ( T T )/( T T ) (870 1500)/(300-1500) 0.55 c s i s 厚さの断熱材中心温度の冷却曲線は右図に示されている. 上記無次元温度の時のフーリエ数は Fo 0.36 である. 7 熱拡散率は 9.0 10 m /s であるから, 中心温度を Tc 870K 以下に保つには, 最小断熱材厚さは, 7 t 9.0 10 3600 L 0.134m Fo 0.36 となり, 約 134mm 以上の断熱材厚さが必要である. 各種形状物体の中心部の過渡温度変化 30 15
結果の考察 (1) 火災発生時は表面温度は高温にならないために耐熱時間は本計算例より長くなる () 構造材の熱容量を考慮すると耐熱時間は長くなる (3) 高温における多孔質断熱材内の有効熱伝導率の温度依存性や, 厳密には, 多孔質体内のふく射エネルギー輸送を考慮する必要がある. 高温の場合 熱拡散率は低温の場合より大きくなるため 耐熱時間が短縮する (4) 温度差が大きくなると断熱層内に対流が発生する場合がある この場合は 耐熱時間が短くなる. 31 熱線流速計の測定 課題 熱線流速計は, 極細線の熱線を気流中で加熱し, その伝熱量から流速を計測する装置である. 一般的には, 熱線を一定温度に保つための電気回路を設け, その電流を計ることによって流速を計測する. 速度 v 10m/s T0 300 K で流れている温度の空気流速を熱線流速計で測定するときの必要印加電流を推定する. 熱線は直径 d 5 m, 長さ l 5mm のタングステン線で, 温度 T に加熱され w 400K ている. JSME テキストシリーズ 演習伝熱工学 例題 8.7 熱線流速計による流速測定 3 16
仮定とモデル化 (1) 熱線は直径に比べて十分長いので, 両端からの熱伝導による熱損失は無視できる. () 熱線内部の温度は一様である. (3) 熱線からの伝熱は, 対流熱伝達率のみを考慮する. 熱線流速計による流速測定 33 熱線流速計の測定 解析 タングステン線の直径を代表長さとしたレイノルズ数は, vd Re 3.165 (16) このレイノルズ数に対応した円柱の平均ヌセルト数は, Collisの式を用いると, hd 0.45 T T w 0 Nu (0.4 0.56 Re ) ka T0, Re 44 熱線からの伝熱量は, Q dlh( T T ) w 0 0.45 T T w 0 lka (0.4 0.56 Re ) ( Tw T0 ) 4.98010 W T0 0.17 0.17 タングステン線の電気抵抗は, l R 0.37 d /4 (17) (18) (19) 34 17
解析 電流 i(a) が流れたときの加熱量は, Q Ri 式 (18) と (0) より, 求める電流は次式となる. (0) i 1/ 1/ dlh( Tw T0 ) 4.96810 4.93910 A R 0.37 右図に各電流における流速の変化を示す (1) 35 印加電流と流速およびその測定精度の変化 熱線流速計の測定 結果の考察 (1) 実際の熱線流速計では, 細線の電気抵抗値の推定精度が高くないため, ピトー管など他の速度計測法を用いて流速を検定してから使用することが一般的である. () 多くの計測器では電圧を測定している. この場合, 回路中の他の抵抗も考慮する必要がある. 4 (3) 仮定 () について, 後述の例題で示されるように, ビオ数は Bi 1.9 10 となる. ビオ数が小さいのでタングステン線内部の温度分布は無視できる. 3 (4) 式 (17) より, 対流熱伝達率は h 6.3310 W/(m K) であり, 有効ふく射熱伝達率に比べて著しく大きいので, ふく射伝熱は無視できる. 36 18
熱線流速計の温度応答特性の推定 課題 前の例題で述べた熱線流速計の速度変動計測特性を検証する. 熱線の温度応答は, 乱流などの気流速度の変動に対して十分早い必要がある. 速度で流れている温度の空気流の変動を熱線流速計で測定するときの温度応答を推定せよ. JSME テキストシリーズ 伝熱工学 例題 8.5 37 熱線流速計による流速測定 仮定とモデル化 (1) 気流温度が突然変化したとき, 熱線の温度変化が気流の温度変化の値に近づく応答時間で応答速度を推定する. () 熱線は直径に比べて十分長く, 両端からの熱伝導による熱損失は無視できる. 38 熱線流速計による流速測定 19
熱線流速計の温度応答特性の推定 過渡熱伝導の分類 T T T T(0, x) i T T(0, x) i T t t t T T T T L L L L L L Bi 1 T T() t Bi 1 T T(, t x) Bi 1 T T(, t x) (a) (b) (c) ビオ数 hl Bi の大きさによる平板内 k 過渡温度分布の違い 各種ビオ数における過渡温度分布 39 集中熱容量モデル Bi 1 では, 物体内の温度分布を無視して 1.0 熱容量だけを集中系として取り扱うことができる. このモデルを集中熱容量モデル (lumped capacitance model) という. 0.6 物体における熱量の収支は次式で表される. dt 0.4 cv hs( T T ) (1) dt 0. 初期条件を用いて積分定数を決めると, 次の解が得られる. 0.0 0 1 3 T T hs exp t exp Fo Bi () FoBi=hAt/(cV ) Ti T cv FoBi hst ( cv ) =(T-T )/(T i -T )0.8 集中熱量系の過渡温度変化 40 0
熱線流速計の温度応答特性の推定 解析 前例題より 平均熱伝達率は Nuk a h d 3 631 6.31 10 W/(m K) このときのビオ数は hd Bi 1.9110 4 1 k w であるから, 熱線内部の温度分布は無視できる. (7) (8) 流体の温度が突然変化したとき, 細線と気流との温度差が気流温度変化に対して, 1/ e 0.368 になるまでの時間を細線の温度応答時間として近似できる. ここで, e.7183 は自然対流の底である. この時間は, A を物体表面積, を物体の体積 s V とすると, 前スライド式 () より応答時間は Vc cd 4 5.1310 s (9) has 4h となり, 約 0.5 msで温度応答する. 41 熱線流速計による流速測定 結果の考察 (1) 実際の流速計測では, 一様温度の気流の流速変化によって熱伝達が変 化し, その変化を流速変化として測定するので, 実際の応答時間は本モ デルの場合より長くなる. この熱線計測システムでは 1 khz 以上の速度 変動はとらえられない. () 実際の熱線流速計の応答特性は, 約 100 Hz といわれている. しかし, 前 例題に示す定温度型の計測システムは, 約 10 khz の応答特性を持つ ものもあるもあ. 4 1
熱電対の温度応答特性の推定 課題 素線径の裸熱電対の接点が直径 d 150 m の球となっている. この熱電対を水に挿入したとき, その無次元温度が 1/e となる応答時間を求めよ. レイノルズ数が非常に小さいとき 球の熱伝達率を表すヌセルト数は Nu hd / k f とする. 熱電対の顕微鏡写真 JSME テキストシリーズ 演習伝熱工学 練習問題.1 43 解析 ヌセルト数から熱伝達率を計算すると, h Nuk d 3 f / 4.069 10 W/(m K) 代表長さは球の体積を表面積で除した値 L 5.5 10 m として, ビオ数を計算すると, 3 5 hl 4.069 10.510 Bi k 90.5 m 3 1.14 10 <<1 FoBi ln(1/ e) 1 つまり, Fo 1/ Bi 熱電対の顕微鏡写真 したがって, 熱電対の応答時間は, となり, 集中熱容量系が適用できるから, テキスト式 (.46) より, 5 L (5 10 ) t 3 5 Bi 1.14 10.9 10 9.71 10 s となる. 44
火力発電ボイラの伝熱 課題 火力発電所のボイラについて, 火炉壁と燃焼ガス間の伝熱量を推定する. 火炉内の燃焼ガスの温度は T g 1600 K, 水を加熱する蒸発管が配置された火炉壁温度は T w 60 K とし, その壁面の放射率は w 1 である. 天然ガスはメタンとし,1 気圧下で空気と理論混合比で燃焼している. JSME テキストシリーズ 伝熱工学 例題 8.6 出力 60 万 kw の LNG 発電ボイラ 45 仮定とモデル化 (1) 伝熱は燃焼ガスのふく射のみで行われ, 対流熱伝達は無視できる. () 火炉を右図に示す矩形容器でモデル化し, 炉内の燃焼ガス温度と炉壁温度はそれぞれ一様とする. (3) 燃焼ガス温度に比べて炉壁の温度は低いので, 炉壁からの熱放射は無視することができる. (4) 燃焼ガスの放射についてはホッテルの指向放射率を使うことができるものとする. (5) 水蒸気と二酸化炭素の混合ガス補正は放射率全体から比べると小さいので無視する. 等温ガス塊による火炉内ふく射伝熱モデル 46 3
火力発電ボイラの伝熱 解析 反応後のガスのモル比から, 二酸化炭素と水蒸気の分圧はそれぞれ p 0.09atm, p CO HO 0.18atm 解析モデルの表面積と体積はそれぞれ 3 A 500 m, V 7000 m である. ガス体の代表長さ R は 4V R 11.m A となり, p R 1.0atm m, p R.0atm m CO HO (31) 炭酸ガスの指向放射率 T g 1600 K におけるこのガス塊の放射率は, 右図より である. 0.15, 0.30 CO HO 水蒸気の指向放射率 47 解析 全圧 p に対する放射率の補正係数は右図より c 1, c 1.1 CO HO となる. つまり燃焼ガス塊の放射率は g cco CO c HOHO 0.48 (3) である. したがって, 放射伝熱量は, 以下のように見積もられる. 炭酸ガスの指向放射率に対する全圧 p の補正係数 QQ A T T 4 4 ( g g w w ) 45 MW (33) 水蒸気の指向放射率に対する 48 全圧 pと分圧 p HO の係数 4
火力発電ボイラの伝熱 結果の考察 (1) () 燃焼炉内のガス温度は一様ではない. また, ガスからのふく射伝熱量は炉壁の位置によって著しく異なるため, ガス体の代表長さの導入は第一次近似であることに注意する. () Hottel ホッテルの指向放射率チャート図は 特に水蒸気の高温領域で誤差が大きいといわれている. より正確な推定のためには火炉内のふく射性媒体のふく射輸送方程式を解析する必要がある. (3) 微粉炭燃焼や重油炊きボイラの場合は すすや未燃炭素から強いふく射が放射されるので, 異なったふく射伝熱解析が必要である. (4) 本例では, 壁からの放射は 5% 以下であるために, 壁の放射を無視した本モデルでも比較的良い近似を与えると考えられる. 49 統計狭域モデルを用いたガスチャート ( 光エネルギー工学より ) 50 5
第 8 章おわり 51 6