概要 第 10 章株価による理論の検証 京都大学経済学研究科藤井研究室修士 回生渡邊誠士 理論 会計実務を説明し, 予測すること 説明 : 観察される実務について理由を述べること 予測 : いまだ観察されていない会計現象を予測すること 第 6 章, 第 7 章 : 契約過程 第 8 章 : 政治過程 会計手続きの変更 第 9 章 第 10 章 株価の変動 1 変更の種類と検定力 強制変更における株価効果 検定力小 任意変更 加速償却から定額法償却への変更 変更が予測されている 便益が大きい変更ほど予測されている 株価変動 強制変更 APB 意見書 16,17 号 FAB ステートメント 19 号 予測されていたとしてもシステマティックな企業間差異が存在する 前提 :APB16,17,FAB19は利益捻出型の会計手続きを制限した 最適契約 ( 株価下落 ) 会計基準の変更が契約当事者の利用可能な契約手法を制限することになる 債務契約を通じて行われる富の移転 ( 株価下落 ) 利益捻出型の会計手続きが制限されると, 経営者が社債権者から株主に富を移転する可能性は減少する 報酬契約を通じて行われる富の移転 ( 微小な株価上昇 ) 経営者が自身に有利になるように会計方法を操作する可能性が減少する 政治費用 ( 株価上昇 ) 利益捻出型の会計手続きが制限されることにより政治費用は減少する 任意変更における株価効果 a: 最適契約 前提 : 加速償却から定額償却への変更は利益を増加させる 債務契約を通じて行われる富の移転 ( 株価上昇 ) 利益捻出型の会計手続きの採用により, 経営者が社債権者から株主に富を移転する可能性が高まり, 技術的債務不履行の発生確率は減少する 報酬契約を通じて行われる富の移転 ( 株価下落 ) 経営者のボーナスの増加をもたらす 政治費用 ( 株価下落 ) 利益捻出型の会計手続きが採用されることにより政治費用は増加する a: 債務契約と報酬制度の有無に関するダミー 当該企業が財務制限条項つきの債務契約を結んでいるか, または会計数値に基づいた報酬制度を設けている場合に 1 をとるダミーを用いる (colln,rozeff,and Dhalwal[1981]) 強制変更 負の影響があると考えられる 任意変更 影響は無し 6 1
b1~: 制限条項への逼迫性の変化 b~9: 債務不履行費用の変化 b1: 報告利益等に及ぼす影響 ( 正の関係 ) 利益額の減少が大きいほど債務情報について技術的債務不履行の発生確率が高くなる よって株主から社債権者に移転する富が増加し株価が下落する b: 負債比率 ( 負の関係 ) 負債比率が大きいほど技術的債務不履行の発生確率が高くなる よって株主から社債権者に移転する富が増加し株価が下落する b: キャッシュフロー分散 ( 負の関係 ) キャッシュフロー分散が大きいほど債務不履行の発生確率が高くなる よって株主から社債権者に移転する富が増加し株価が下落する b: 支払可能資金有高 ( 正の関係 ) 支払可能資金有高が小さいほど資金有高が 0 になる確率高くなる b: 公募債と私募債の割合 ( 負の関係 ) 公募債は私募債と比べ再契約の締結に障害が高く, 契約者も多岐に渡る 公募債の方が会計手続き変更に起因する富の移転と株価下落は大きくなる b6: 社債の名目価値と市場価値との差異 ( 正の関係 ) 市場利子率が高くなると, 起債会社が債務不履行を回避するために社債を買い取ったり, 償還したりする際の費用が大きくなる b7: 償還期間 ( 負の関係 ) 償還期間が長いほど債務契約がもたらす制約を受ける期間が長くなり, 債務不履行費用に与える影響も大きくなる 7 8 b~9: 債務不履行費用の変化 c: 報酬契約を通じて行われる富の移転 d: 政治費用 b8: 任意償還の可否 ( 正の関係 ) 任意償還が可能であれば償還価格が債務不履行費用の限度額となる したがって, 株価の下落は相対的に少ないということになる b9: 転換の可否 ( 正の関係 ) 転換権が付与されていれば社債権者から株主に富が移転される可能性は少なくなる よって, 会計手続き変更に伴う株価下落は相対的に少ない c: 利益変動型報酬制度の有無に関するダミー ( 負の関係 ) 利益捻出型の会計手続きを制限する強制変更が行われればボーナス額を減らすことになるので株価は上昇する 利益捻出型の会計手続きを任意変更によって採用した場合はボーナス額を増やすことになるので株価は下落する d: 会社の負債簿価 + 持分の市場価格 ( 負の関係 ) 大規模会社は政治費用は正の関係にあると予測される 利益捻出型の会計手続きを制限する強制変更が行われれば政治費用を減らすことになるので株価は上昇する 利益捻出型の会計手続きを任意変更によって採用した場合は政治費用を増やすことになるので株価は下落する 9 10 まとめ Leftwch(1981) 強制変更 Leftwch CRD Ly a 最適契約の有無 - b1 報告利益等への影響 + b 負債比率 - b CF 分散 - b 支払可能資金有高 + b 公募債 私募債比率 - b6 社債の価値の差 + b7 社債償還期間 - b8 任意償還の可否 + b9 転換の可否 + d 会社規模 + APB 意見書第 16 号 企業結合会計 および第 17 号 無形資産会計 によって, 持分プーリング法 を適用できる状況を制限された 結合後に計算される利益額が小さくなる 1968 年 11 月から 197 年 1 月までに行われた 119 件の合併実施会社である NY 上場会社 8 社をサンプルとした ( 全社が持分プーリング法を採用 ) 持分プーリング法を制限する基準について市場に影響を与えたであろう 1 の事象を抽出し, 前後各 日の異常投資収益率を算定 9 の事象で有意に 0 とは異なるとされた この 9 つの事象について, 異常投資収益率が会計基準並行によって化される費用の代理の一次関数であると仮定した 11 1
Leftwch(1981): 回帰式 Leftwch(1981): 結果 e 0 PUB PRI CONV LIZ u, 1,,,9 e 事象 の前後各 日間の期間における 社の日次異常投資収益率 PUB 公募債の簿価 ( b -, b - ) PRI 私募債の簿価 ( b -, b - ) CONV 転換社債の簿価 ( b - 9) 持分の市場価格 CALL CALL 任意償還が可能な社債の簿価 ( b - 8) LIZ ( 持分市場価格 + 社債簿価 ) の自然対数 ( d) 1 強制変更 Leftwch a 最適契約の有無 - b1 報告利益等への影響 + b 負債比率 - -,1% b CF 分散 - b 支払可能資金有高 + b 公募債 私募債比率 - b6 社債の価値の差 + b7 社債償還期間 - b8 任意償還の可否 + -,% b9 転換の可否 + d 会社規模 + +,1% 1 Leftwch(1981): 結論 Colln,Rozeff, and Dhalwal(1981) 事象期間に含まれない日を無作為抽出し, それを 事象 として 1 の異常投資収益率を推定し, それが 有意であった事象 と 有意でなかった事象 をそれぞれ回帰を行ったところ, 係数が有意となった度数は対象であった 9 つの事象に関する回帰式よりもはるかに少なかった 会計基準の変更が会社の債務契約を通じてその株価に影響を及ぼすと言う命題を部分的に支持 一次関数で表されることが適切か? 多重共線性の影響は無いか? そもそも代理として適切か? 石油 ガス会社に対して全部原価法による会計処理を禁じた FAB ステートメント第 19 号公開草案の公表に関連した株価変動を調査 報告利益, 留保利益, 株主持分, 資産価値の水準が低下する 報告利益の変動性は増加する 全部原価法採用会社 7 社と直接原価法採用会社 10 社からなる 7 社をサンプルとした 1977 年 7 月 1 日 ( 公開草案 ) で終了する 1 週間と 7 月 日 ( 内容がウォールストリートジャーナルで始めて報道されたのが 7 月 0 日 ) で終了する 週間について異常収益率を推定し, クロスセクション回帰で説明することを試みた Lev(1979) によると最大の株価下落は 7 月 18 日から 0 日の間に生じた Ly(198) によると異常投資収益率が有意であったのは 7 月 19 日のみ 1 16 Colln,Rozeff, and Dhalwal(1981): 回帰式 Colln,Rozeff, and Dhalwal(1981): 結果 e CONTRC TCKQ DBT 0 DBT 負債 / 持分比率 ( b - ) XPLOR 採掘支出額 / 収益総額 PUBD IZ XPLOR u e 1977年 7 月 日までの 週間における 社の異常投資収益率 TCKQ FAB19が株主持分総額に与えた影響 ( b -1) PUBD 公募債の有無に関する0/1ダミー ( b - ) CONTRC 債務契約, 報酬制度の有無に関する0/1ダミー ( a) IZ 普通株の市場価格 + 固定負債の簿価 + 優先株の簿価 ( d) 6 強制変更 CRD a 最適契約の有無 - -,% b1 報告利益等への影響 + +,1% b 負債比率 - b CF 分散 - b 支払可能資金有高 + b 公募債 私募債比率 - b6 社債の価値の差 + b7 社債償還期間 - b8 任意償還の可否 + b9 転換の可否 + d 会社規模 + -,10~0% 17 18
Colln,Rozeff, and Dhalwal(1981): 結論 Ly(198) 間の相関が強く, さまざまなを除外して回帰式を推定してみた いずれの結果も 結果 で有意となった つのが一貫して有意となり続けた 会計基準の変更が会社の契約過程を反映して株価に影響を及ぼすと言う命題に幾つかの裏づけを与えている 負債比率や公募債の有無などが有意でないなど, 理論についての問題も提起 過小定式化の問題 CRDと同様, 全部原価法の禁止が株価に及ぼす影響を再検討 CRDが調査したFABステートメント第 19 号公開草案の公表時点だけでなく, 最終益基準決定時点も調査に加えた FABの公開草案を支持したC 通牒 -861(1977 年 8 月 1 日付 ) の公表 FABステートメント第 19 号の公表 ( 公開草案と基本的に同内容 ) FABステートメント第 19 号を向こうとするCのAR 号の公表 ( ウォールストリートジャーナルで1978 年 8 月 0 日に報道 ) 全部原価法採用会社 89 社と直接原価法採用会社 0 社をサンプルに用いた 全部原価法採用会社からなるポートフォリオの異常投資収益率が有意となったのは7 月 19 日,0 日の 日だけであった 19 0 Ly(198): 回帰式 Ly(198): 回帰式 e TD 0 TM CRD OR RC PD 6 RD 7 8 9 u TR TD 1 e 企業 の異常投資収益率 企業 の日次収益率の標準偏差 ( b - ) TD 負債 / 持分比率 ( b - ) TM 平均償還期間 ( b - 7) CRD 会計基準変更に伴う支払可能資金有高の変化率 ( b - ) RD 会計基準変更に伴う配当制限に与える影響 ( b - ) OR 石油 ガスの収入が全収入に占める割合 ( b -1) TR RC 負債の再調達費用 ( b - 6) PD 公募債の比率 ( b - ) TD Ly(198): 結果 Ly(198): 結論 強制変更 Ly a 最適契約の有無 - b1 報告利益等への影響 + +,10% b 負債比率 - -,1% b CF 分散 - -,1% b 支払可能資金有高 + b 公募債 私募債比率 - b6 社債の価値の差 + b7 社債償還期間 - b8 任意償還の可否 + b9 転換の可否 + d 会社規模 + 1 日について異常投資収益率を算定し,10% 有意に 0 とは異なる 6 日について回帰式を推定したとき, 回帰式の平均 F 統計量は有意とはならなかった 強制的手続き変更の株価効果があることおよび, 負債比率とキャッシュフロー分散と株価との間の関係があるという証拠を提供
強制変更に関する研究の結果 強制変更に関する研究のまとめ 強制変更 Leftwch CRD Ly a 最適契約の有無 - -,% b1 報告利益等への影響 + +,1% +,10% b 負債比率 - -,1% -,1% b CF 分散 - -,1% b 支払可能資金有高 + b 公募債 私募債比率 - b6 社債の価値の差 + b7 社債償還期間 - b8 任意償還の可否 + -,% b9 転換の可否 + d 会社規模 + +,1% -,10~0% つの研究に共通して使用されたが少ない 共通して使用された中では負債比率がもっとも有意な結果 債務契約の下で行われる富の移転が会計手続き選択および会計基準の株価効果の両方について重要 研究対象となったの調査結果が研究ごとに一致しなかった原因 式の特定化が不適切 間の多重共線性のおそれ 代理自体に問題 計量経済学上の問題 誤差項の分散不均一 異常投資収益率にクロスセクションでの相関がある 6 Houlthauen(1981) Houlthauen(1981): 結果 19 年から 1977 年までに定額法に変更した ( 任意変更 ) 企業を抽出し,1 社をサンプルとした 変更の前後計 日間における異常投資収益率を算定したが, 有意に 0 とは異ならなかった 投資収益率を各で回帰した結果も, すべての係数が有意とならなかった 公募債比率の係数は - 日から +60 日までの異常投資収益率について予想とは逆の符号で 1% 有意となった 7 強制変更 Holthauen a 最適契約の有無 無関係 b1 報告利益等への影響 + b 負債比率 +,- b CF 分散 + b 支払可能資金有高 - b 公募債 私募債比率 + b6 社債の価値の差 - b7 社債償還期間 + b8 任意償還の可否 - b9 転換の可否 - c 報酬契約の有無 - d 会社規模 - 8