化膿性汗腺炎におけるアダリムマブの使用上の注意 / 化膿性汗腺炎の診療の手引き アダリムマブ 化膿性汗腺炎診療の手引き策定委員会 照井 1 正 6 鳥居秀嗣 2 大槻マミ太郎 林 7 伸和 3 黒川一郎 8 森田明理 4 佐藤伸一 5 高橋健造 目的 アダリムマブは皮膚科領域において尋常性乾癬, 関

Similar documents
2015 年 3 月 26 日放送 第 29 回日本乾癬学会 2 乾癬本音トーク乾癬治療とメトトレキサート 名古屋市立大学大学院加齢 環境皮膚科教授森田明理 はじめに乾癬は 鱗屑を伴う紅色局面を特徴とする炎症性角化症です 全身のどこにでも皮疹は生じますが 肘や膝などの力がかかりやすい場所や体幹 腰部

汎発性膿庖性乾癬の解明

<4D F736F F D DC58F4994C5817A54524D5F8AB38ED28CFC88E396F B CF8945C8CF889CA92C789C1816A5F3294C52E646

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

鑑-H リンゼス錠他 留意事項通知の一部改正等について

<4D F736F F D DC58F4994C5817A53544C2094E789BA928D5F8AB38ED28CFC834B F94CC94848CB392C78B4C C5292E646F63>

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

161 家族性良性慢性天疱瘡


第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

日本皮膚科学会雑誌第117巻第14号

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

審査結果 平成 23 年 4 月 11 日 [ 販 売 名 ] ミオ MIBG-I123 注射液 [ 一 般 名 ] 3-ヨードベンジルグアニジン ( 123 I) 注射液 [ 申請者名 ] 富士フイルム RI ファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 22 年 11 月 11 日 [ 審査結果

審査報告書 平成 28 年 5 月 16 日 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 る 承認申請のあった下記の医薬品にかかる医薬品医療機器総合機構での審査結果は 以下のとおりであ 記 [ 販売名 ] ヒュミラ皮下注 40 mg シリンジ 0.8 ml [ 一般名 ] アダリムマブ ( 遺伝子組換え )

094.原発性硬化性胆管炎[診断基準]

95_財団ニュース.indd

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

第 112 回日本皮膚科学会教育講演 皮膚病理へのいざない 第 1 回毛包 脂腺に分化する腫瘍 ( 基底細胞癌を含む ) 佐賀大皮膚科三砂範幸 1 毛包腫瘍 :Over view 2 脂腺腫瘍 :Over view 1

医療関係者 Version 2.0 多発性内分泌腫瘍症 2 型と RET 遺伝子 Ⅰ. 臨床病変 エムイーエヌ 多発性内分泌腫瘍症 2 型 (multiple endocrine neoplasia type 2 : MEN2) は甲状腺髄様癌 褐色細胞腫 副甲状腺機能亢進症を発生する常染色体優性遺

別添 1 抗不安薬 睡眠薬の処方実態についての報告 平成 23 年 11 月 1 日厚生労働省社会 援護局障害保健福祉部精神 障害保健課 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究 ( 研究代表者 : 中川敦夫国立精神 神経医療研究センタートラン

PT51_p69_77.indd

己炎症性疾患と言います 具体的な症例それでは狭義の自己炎症性疾患の具体的な症例を 2 つほどご紹介致しましょう 症例は 12 歳の女性ですが 発熱 右下腹部痛を主訴に受診されました 理学所見で右下腹部に圧痛があり 血液検査で CRP 及び白血球上昇をみとめ 急性虫垂炎と診断 外科手術を受けました し

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

治験だより(2010年春号)No.13

スライド 1

タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年


<4D F736F F D B A814089FC92F982CC82A8926D82E782B95F E31328C8E5F5F E646F63>

4 月 20 日 2 胃癌の内視鏡診断と治療 GIO: 胃癌の内視鏡診断と内視鏡治療について理解する SBO: 1. 胃癌の肉眼的分類を列記できる 2. 胃癌の内視鏡的診断を説明できる 3. 内視鏡治療の適応基準とその根拠を理解する 4. 内視鏡治療の方法 合併症を理解する 4 月 27 日 1 胃

スライド 1

Microsoft Word - 届出基準

レクタブル 2 mg 注腸フォーム 14 回に係る医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 販売名 レクタブル 2 mg 注腸フ 有効成分 ブデソニド ォーム14 回 製造販売業者 EA ファーマ株式会社 薬効分類 提出年月 平成 29 年 10 月 1.1. 安全性検討事項 重要な特

日本皮膚科学会雑誌第122巻第7号

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

PowerPoint プレゼンテーション

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

コセンティクスを使用される患者さんへ

_乾癬外来に通院されるみなさんへ

ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

Microsoft Word - todaypdf doc

どく拡張する ( 中毒性巨大結腸症 ) こともあります. このような場合には緊急に手術が必要です. また 大腸癌になった場合にも手術が必要になります. 内科的治療が効きにくい難治例や重症例の場合にも 内科的治療のバランスの点から手術を選択することがあります. 手術の方法は 大腸全摘ですが 肛門を残す

適応病名とレセプト病名とのリンクDB

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

クローン病 クローン病の患者さんサポート情報のご案内 ステラーラ を使用される患者さんへ クローン病に関する情報サイト IBD LIFE による クローン病治療について ステラーラ R を使用されているクローン病患者さん向けウェブサイトステラーラ.j

ルミセフによる治療を受ける方へ

使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

耐性菌届出基準

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

第6号-2/8)最前線(大矢)

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

< F2D C D838A8BDB92CA926D2E6A7464>

恩賜第 42 回社会福祉法人財団済生会中央治験審査委員会 会議の記録の概要 開催日時 平成 28 年 1 月 13 日 ( 水 )15:30~17:17 開催場所 出席委員名 東京都港区三田 三田国際ビル 21 階 社会福祉法人 恩賜財団済生会本部事務局中会議室 豊島

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

序 乾癬治療は,2010 年に皮膚科領域で初となる抗体医薬 ( 抗 TNF- α 抗体製剤 ) が承認されたのを皮切りに, エポックメイキングな 生物学的製剤時代 に突入した. その 1 年後には抗 IL-12/23 p40 抗体も後を追うように承認の運びとなり, それら計 3 剤について, 使用マ

がん登録実務について

Transcription:

化膿性汗腺炎におけるアダリムマブの使用上の注意 / 化膿性汗腺炎の診療の手引き アダリムマブ 化膿性汗腺炎診療の手引き策定委員会 照井 1 正 6 鳥居秀嗣 2 大槻マミ太郎 林 7 伸和 3 黒川一郎 8 森田明理 4 佐藤伸一 5 高橋健造 目的 アダリムマブは皮膚科領域において尋常性乾癬, 関 節症性乾癬, 膿疱性乾癬の適応症を有する生物学的製 剤の一つである.2019 年 2 月に化膿性汗腺炎がアダリ ムマブの適応症として追加承認された. 乾癬においては皮膚科専門医が生物学的製剤を適正 に使用することを目的として 乾癬における生物学的 製剤の使用指針および安全対策マニュアル が作成さ れている. しかしながら, 化膿性汗腺炎におけるアダ リムマブの用法 用量は乾癬と異なり, かつ化膿性汗 腺炎に初めて承認された生物学的製剤であることか ら, 本使用上の注意を作成した. また, 化膿性汗腺炎 の診断 治療について, 欧米で参照されている診断基 準等をまとめ, 参考資料として添付した. 化膿性汗腺炎におけるアダリムマブの使用上 の注意 1. アダリムマブについて 化膿性汗腺炎に適応をもつ TNFα を標的とした初 めての生物学的製剤であり, 既に他疾患に対する適応 症 ( 尋常性乾癬, 関節症性乾癬, 膿疱性乾癬, 関節リ ウマチ, 多関節に活動を有する若年性特発性関節炎, 強直性脊椎炎, 腸管型ベーチェット病, 潰瘍性大腸炎, クローン病, 非感染性の中部, 後部又は汎ぶどう膜炎 ) を有する. 本製剤の使用に際しては, 本資料を確認の上, ヒュ 1) 日本大学医学部付属板橋病院皮膚科 ( 委員長 ) 2) 自治医科大学皮膚科 3) 明和病院皮膚科 4) 東京大学大学院医学系研究科皮膚科学 5) 琉球大学大学院医学研究科皮膚科学 6) 独立行政法人地域医療機能推進機構東京山手メディカルセンター皮膚科 7) 虎の門病院皮膚科 8) 名古屋市立大学大学院医学研究科加齢環境皮膚科 図 1 アダリムマブの投与量と投与間隔ミラ添付文書 に従うことが必要である. 本製剤の使用はこれまでの乾癬における製剤に準じ, 承認施設 ( 日本皮膚科学会生物学的製剤検討委員会における審査を経て理事会にて承認された施設 ) に限定される. また, アッヴィ合同会社, エーザイ株式会社より ヒュミラ適正使用ガイド が公表されており, それも合わせて参照したうえで, 適切と考えられる患者に使用する. 2. 適応化膿性汗腺炎 3. 用法 用量 1 回 160 mg の皮下投与を行い, その 2 週後に 80 mg の負荷投与した後, さらに 2 週後から 1 週間隔で 40 mg 投与を継続する ( 図 1). 本剤による治療開始後, 医師により適用が妥当と判断された患者については, 自己注射も可能である. 長期投与として国内での 52 週継続投与試験 ( 承認時申請資料より ), ならびに海外での 168 週 (3 年 ) 継続投与試験でアダリムマブの有効性が維持され, 新たな安全性の事項は見いだされなかった 1). 海外の Phase III 臨床試験である PIONEER I,II の 2 つの試験では二重盲検プラセボ対照比較の 12 週間後に再割り付けを行い, 実薬からプラセボへの変更群 ( アダリムマブ投与中止群 ) で HiSCR * は減少する傾向にあった 2). 投与継続 中止については, 十分検討しておらず, 今後の国内データの蓄積をもって考慮する必要がある. * HiSCR ハイスコア : 炎症性結節と膿瘍の数が少なくとも 50% 減少し, かつ膿瘍数および排膿性瘻孔数の増加がない状態を達成した患者の割合

4. 使用にあたって注意すべき点 1) 生物学的製剤の使用における一般的な注意点 : 結核や肝炎を含めた感染症 ( とくにその再活性化 ) に対する留意点, その他の慎重投与については ヒュミラ適正使用ガイド を参照されたい. 2) 化膿性汗腺炎では繰り返す病変部位に二次的に細菌感染が発生することがあり, 病変部位の適切な管理が求められる. 3) 化膿性汗腺炎は, 有棘細胞癌の発生母地となりうることが知られている. アダリムマブの導入時および投与中においては有棘細胞癌について十分注意する必要がある. 参考資料 化膿性汗腺炎の診療の手引き 1. 疾患概念化膿性汗腺炎は, 慢性, 炎症性, 再発性で消耗性の毛包の皮膚疾患であり, 一般には思春期後に発症する. アポクリン腺が多い部位で疼痛を伴う炎症病変が継続し, 腋窩, 鼠径部, 肛囲, 外陰部に好発する. 結節, 膿瘍, 排膿とともに瘻孔, 瘢痕形成に至り, 患者の健康状態と生活に影響を及ぼす 3). 臀部慢性膿皮症は肛囲や臀部に発生した化膿性汗腺炎の別称であり, 海外では同一の疾患とされている 4). 2. 診断基準欧州 S1 ガイドライン 5) では, 化膿性汗腺炎は慢性, 炎症性, 再発性, 毛包の消耗性皮膚疾患で, 思春期後に腋窩 鼠径 肛門性器部といったアポクリン腺が多い部位に疼痛を伴う慢性炎症病変を呈する と定義されている. また, 臨床症状は 再発性の炎症が間擦部に 6 カ月の間に 2 回以上再燃する結節, 瘻孔, 瘢痕を形成する. とある. 皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班により重症とされている家族性化膿性汗腺炎に特化した診断基準 ( 案 ) が作成されている 6). 本邦では家族歴のある患者は少ないが, 臨床所見等は共通のため, 参考として診断基準 ( 案 ) を示す. 家族性化膿性汗腺炎の診断基準 ( 案 ) A 臨床診断項目 : 腋窩, 鼠径部, 臀部, 頭部などに下記の症状を 6 カ月以上有する. また臀部は左右それぞれを 1 部位とする. 1 繰り返す膿瘍または排膿. 2 瘢痕または結節 索状硬結. 3 瘻孔. B 検査所見 : 診断基準となるような検査項目はないが, 下記の病理組織学的所見が参考となる. 1 毛包の角栓形成と毛包内への白血球の浸潤. 2 真皮での瘻孔あるいは類洞の存在. C 鑑別診断 : せつ, よう, 毛巣洞, 放線菌感染, ネコひっかき病, 皮膚腺病, 鼠径リンパ肉芽腫症, ク 図 2 医師の判断する重症度 (Physician s global assessment for HS:PGA) 3) (Guideline on Hidradenitis suppurativa. the European Dermatology Forum 2017 より改変 )

図 3 欧州 S1 ガイドライン 5) * 国内未承認, 或いは適応外 図 4 各治療法のエビデンスレベル 9) * 国内未承認, 或いは適応外 (Gulliver W et al. Rev Endocr Metab Disord. 2016;17:343 351. より改変 ) (Gulliver W et al. Rev Endocr Metab Disord. 2016 Feb 1. より改変 )

図 5 エビデンス分類と推奨の強さ 10) 図 6 治療アルゴリズム 9)11) ( 葉山惟大 : 臨皮,2018;72:132 137. 及び Gulliver W et al. Rev Endocr Metab Disord. 2016;17:343 351. より改変 ) PGA: 医師の判断する重症度 ローン病および潰瘍性大腸炎の肛門周囲病変, 悪性腫瘍. D 遺伝学的検査 :γ-secretase 遺伝子に疾患関連変異あり, または家族歴あり. < 診断のカテゴリー > Definite:A のうち 2 部位以上で 1 項目以上を満たし,C の鑑別すべき疾患を除外でき, かつ D の 2 つを満たす. または A のうち 1 部位で 2 項目以上を満たし,C の鑑別すべき疾患を除外でき, かつ D の 2 つを満たすもの. Probable:A のうち 2 部位以上で 1 項目以上を満た し,C の鑑別すべき疾患を除外でき, かつ D の 1 つを満たす. または A のうち 1 部位で 2 項目以上を満たし,C の鑑別すべき疾患を除外でき, かつ D の 1 つを満たす. Possible:A のうち 2 部位以上で 1 項目以上を満たし,C の鑑別すべき疾患を除外できるが,D を満たさないもの. または A のうち 1 部位で 2 項目以上を満たし,C の鑑別すべき疾患を除外できるが,D を満たさないもの.

3. 重症度分類 重症度分類は複数開発されており, 皮膚の遺伝関連 性希少難治性疾患群の網羅的研究班の 本邦における 7) 化膿性汗腺炎の疫学調査 で使用された Hurley 分類 と医師の判断する重症度 8) を示す ( 図 2). Hurley 病期分類 I( 軽症 ): 孤立した膿瘍 II( 中等症 ):1 つの病巣で瘢痕ができ, 瘻孔が形成 される III( 重症 ): 瘢痕と瘻孔からなる病巣が複数癒合し, 炎症と慢性的な排膿をともなう ( 日本語訳は厚生労働科学研究費補助金 ( 難治性疾患 克服研究事業 ) 分担研究報告書 本邦における化膿性 汗腺炎の診断基準, 重症度分類の作成と全国調査 H26 難治等 ( 難 ) 一般 077 より引用 ) 4. 治療選択肢 本邦の治療ガイドラインはまだ作成されておらず, 欧州の S1 ガイドラインを図 3 に示す. 参考として S1 ガイドラインに付随して説明されているエビデンスレベル 9) ( 図 4,5) 及び治療アルゴリズム 11) ( 図 6) を加えた. 文献 1 ) Kimball AB, et al: N Engl J Med, 2016; 375: 422 434. 2 ) Zouboulis CC, et al: J Am Acad Dermatol, 2019; 80: 60 69. 3 )Zouboulis CC, et al: Br J Dermatol, 2017; 177: 1401 1409. 4 ) 厚生労働科学研究費補助金 ( 難治性疾患克服研究事業 ) 分担研究報告書本邦における化膿性汗腺炎の診断基準, 重症度分類の作成と全国調査 H26 難治等 ( 難 ) 一般 077. 5 ) Zouboulis CC, et al: J Eur Acad Dermatol Venereol, 2015; 29: 619 644. 6 ) 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究平成 29 年度総括 分担研究報告書. 7 )Hurley HJ: Dermatologic Surgery, 2nd, 1996; 623 645. 8 ) Guideline on Hidradenitis suppurativa. the European Dermatology Forum 2017. 9 ) Gulliver W et al. Rev Endocr Metab Disord. 2016; 17: 343 351. 10)Guyatt G, et al: BMJ, 2008; 336: 924 926. 11) 葉山惟大 : 臨皮,2018;72:132 137.