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京都府がん対策推進条例をここに公布する 平成 23 年 3 月 18 日 京都府知事山田啓二 京都府条例第 7 号 京都府がん対策推進条例 目次 第 1 章 総則 ( 第 1 条 - 第 6 条 ) 第 2 章 がん対策に関する施策 ( 第 7 条 - 第 15 条 ) 第 3 章 がん対策の推進

がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

3-2 学びの機会 グループワークやプレゼンテーション ディスカッションを取り入れた授業が 8 年間で大きく増加 この8 年間で グループワークなどの協同作業をする授業 ( よく+ある程度あった ) と回答した比率は18.1ポイント プレゼンテーションの機会を取り入れた授業 ( 同 ) は 16.0

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1 単位対象学年 組 区分 1 年 必修 奥村秀章 黒尾卓宏 晝間久美 保健体育 保健 我が国の健康水準 健康であるための成立要因や条件について理解させ 飲酒や喫煙等の生活習慣について考える 薬物乱用 感染症 エイズの予防対策の重要性について認識させる ストレス社会への対処の仕方や身

看護部 : 教育理念 目標 目的 理念 看護部理念に基づき組織の中での自分の位置づけを明らかにし 主体的によりよい看護実践ができる看護職員を育成する 目標 看護職員の個々の学習ニーズを尊重し 専門職業人として成長 発達を支援するための教育環境を提供する 目的 1 看護専門職として 質の高いケアを提供

~この方法で政策形成能力のレベルアップが図れます~

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説明項目 1. 審査で注目すべき要求事項の変化点 2. 変化点に対応した審査はどうあるべきか 文書化した情報 外部 内部の課題の特定 リスク 機会 利害関係者の特定 QMS 適用範囲 3. ISO 9001:2015への移行 リーダーシップ パフォーマンス 組織の知識 その他 ( 考慮する 必要に応

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< 受験生トレンド > 受験生に必須のアイテム 受験生の半数以上が勉強に SNS を活用 3 人に 1 人以上が活用している Twitter が第 1 位に 目的は モチベーションを上げたい 記録に残したい 共有して安心したい が上位に 勉強専門アカウントについては約 5 割が興味 約 2 割が活用

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1 がんに対する印象 認識について (1) がんに対する印象 問 1 あなたは, がんについてどのような印象を持っていますか この中から 1 つだけお答えください こわいと思わない( 小計 ) 22.4% 24.6% こわいと思わない 12.1% 13.6% どちらかといえばこわいと思わない 10.

2 各教科の領域別結果および状況 小学校 国語 A 書くこと 伝統的言語文化と国語の特質に関する事項 の2 領域は おおむね満足できると考えられる 話すこと 聞くこと 読むこと の2 領域は 一部課題がある 国語 B 書くこと 読むこと の領域は 一定身についているがさらに伸ばしたい 短答式はおおむ

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習う ということで 教育を受ける側の 意味合いになると思います また 教育者とした場合 その構造は 義 ( 案 ) では この考え方に基づき 教える ことと学ぶことはダイナミックな相互作用 と捉えています 教育する 者 となると思います 看護学教育の定義を これに当てはめると 教授学習過程する者 と

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市からのお知らせについて 市からのお知らせについて 西宮市では 市民のみなさまに市政への理解と関心を深めてもらうために 市政ニュー スやホームページなどさまざまな媒体を活用して情報発信をしています みなさまからい ただいたご意見を踏まえ より効果的で分かりやすい情報提供に努めてまいります 問 22

このような現状を踏まえると これからの介護予防は 機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく 生活環境の調整や 地域の中に生きがい 役割を持って生活できるような居場所と出番づくりなど 高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた バランスのとれたアプローチが重要である このような効果的

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さらに, そのプロセスの第 2 段階において分類方法が標準化されたことにより, 文書記録, 情報交換, そして栄養ケアの影響を調べる専門能力が大いに強化されたことが認められている 以上の結果から,ADA の標準言語委員会が, 専門職が用いる特別な栄養診断の用語の分類方法を作成するために結成された そ

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13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

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目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

調査概要 1 日 2 回でずっと効く コンタック 600 プラス を製造販売するグラクソ スミスクライン株式会社のコンタック総合研究所 ( は 花粉シーズン到来を前に ドラッグストアや薬局 薬店で販売されている鼻炎薬を含めた 市販薬の知識 & イメージ

(4) ものごとを最後までやりとげて, うれしかったことがありますか (5) 自分には, よいところがあると思いますか


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プロジェクトマネジメント知識体系ガイド (PMBOK ガイド ) 第 6 版 訂正表 - 第 3 刷り 注 : 次の正誤表は PMBOK ガイド第 6 版 の第 1 刷りと第 2 刷りに関するものです 本 ( または PDF) の印刷部数を確認するには 著作権ページ ( 通知ページおよび目次の前 )

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4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

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説明項目 1. 審査で注目すべき要求事項の変化点 2. 変化点に対応した審査はどうあるべきか 文書化した情報 外部 内部の課題の特定 リスク 機会 関連する利害関係者の特定 プロセスの計画 実施 3. ISO 14001:2015への移行 EMS 適用範囲 リーダーシップ パフォーマンス その他 (

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4 月 17 日 4 医療制度 2( 医療計画 ) GIO: 医療計画 地域連携 へき地医療について理解する SBO: 1. 医療計画について説明できる 2. 医療圏と基準病床数について説明できる 3. 在宅医療と地域連携について説明できる 4. 救急医療体制について説明できる 5. へき地医療につ

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サマリー記載について

附帯調査

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

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1: ミレニアル世代のシェアサービスに対する興味 関 場所 モノ 交通手段 3 分野のシェアサービスについて 利 実態 利 意向を調査利 に関 を持つミレニアル世代は6 割超 受容度は親世代の約 3 倍に! 今回は 場所 モノ 交通手段の3 分野におけるシェアサービスについて 調査を実施 その結果

評価方法 ディスカッション等の事例を用いた活動実習ブレインストーミング 定期テストディスカッション等の事例を用いた活動実習ブレインストーミングその他成果物 定期テストディスカッション等の事例を用いた活動実習ブレインストーミングその他成果物 上に示す観点に基づいて 学習のまとまりごとに評価し 学年末に

問 32-2 うちエコ診断 を受けない理由 ( 問 32 で うちエコ診断は知っている ( 聞いたことがある ) が 受けたことはない と答えた方に ) あなたが うちエコ診断 を受けない理由として 次の中からいくつでも選んで番号を で囲んでください ( 回答者数 =73 人 )( 複数回答 ) (

京都立石神井高等学校平成 31 年度教科 ( 外国語 ( 英語 ) ) 科目 ( 英語表現 Ⅱ ) 年間授業計 ( 標準 α) 教 科 : 外国語 ( 英語 ) 科目 : 英語表現 Ⅱ 単位数 : 2 単位 対象学年組 : 第 2 学年 A 組 ~G 組 教科担当者 :(A 組 : 岡本 松井 )(

Transcription:

中山和弘 ( 聖路加看護大学看護情報学 ) 2009.7.5 第 26 回医学情報サービス研究大会北里大学白金キャンパス

本日の内容 ヘルスプロモーションからみたヘルスリテラシー ヘルスリテラシーの構成要素 情報提供側はヘルスコミュニケーション 消費者向け健康情報提供の方法と消費者健康情報学 市民のヘルスリテラシー向上のためにしていること

Center for Disease Control (CDC. USA) より ライフスタイル ( 行動 ) 意思決定 行動 生活状態など 喫煙 飲酒 過食 無謀運転 シートベルト 危険な SEX 薬物 運動 レジャー不足 ストレスコーピング ( 対処 ) 環境も人々の行動で変化

世界の健康政策の中心はヘルスプロモーション 人びとが自らの健康をコントロールし, 改善することができるようにするプロセス ( オタワ憲章 第 1 回ヘルスプロモーション世界会議で採択 ) 個人のスキルや能力を高めることを 個人だけに要求するのではなく それをサポートできる環境を社会的 経済的 政治的に作り出すこと トップダウン式の健康教育で知識を与えただけでは行動変容は起こりにくい 社会的に決定された行動を変えるには 社会を変える必要 その活動に人々が参加して変化に影響を与えること

人びとが獲得すべき能力にヘルスリテラシーを追加 (2005 年バンコク憲章 第 6 回世界会議 ) 自らの健康とその決定要因をコントロールし と決定要因を追加 健康の社会的決定要因 10 項目 (WHO 2003) 社会格差, ストレス, 幼少期, 社会的排除, 労働, 失業, ソーシャルサポート, 薬物依存, 食品, 交通 言い換えると 幼少期からずっと自分に価値があり評価されていると感じること, 友人と打ち解けられる社会, 役に立っていると感じること, 働きがいのある仕事を十分にコントロールできること

健康についての適切な意思決定を行うにあたって必要な健康情報やサービスを手に入れ 整理し 理解する能力の程度 (Healthy People 2010, 2001) 情報を得た選択 (informed choices) をし, 健康リスクを減少させ, 生活の質を向上させるための健康情報と考え方を探し, 理解し, 評価して利用できる, 生涯を通して発達する幅広い範囲のスキルと能力 (Zarcadoolas C et al. 2006)

認識面や社会生活上のスキルを意味し これにより健康増進や維持に必要な情報にアクセスし 理解し 利用していくための個人的な意欲や能力 生活習慣と生活状況の改善を通じて 個人やコミュニティの健康改善を図るよう主体的に行動するための知識 生活上の技術技能 自信の成熟度 パンフレットを読んだり 予約を行ったりできる能力ではなく 保健情報に接する機会を増やし それを効果的に利用する能力の向上によって エンパワーメントするために不可欠

機能的ヘルスリテラシー 事実に基づいた健康情報を獲得 専門家から対象への一方向的な健康教育による 相互作用的ヘルスリテラシー グループやコミュニティのなかで個人が自主的に適切な情報や行動を獲得 グループやコミュニティへの参加による 批判的ヘルスリテラシー 健康の社会経済的な要因について情報交換 政策や組織の変革に参加 コミュニティ活動 リーダーや政治家との交渉 コミュニティづくりの方法の技術的なアドバイスによる

臨床場面 : リスク ケアの場面で リテラシースキルの低い人を発見できるよう実践や組織を変化させる ヘルスリテラシーをアセスメントして その人に合わせた健康情報 コミュニケーション方法 教育方法を用いることで セルフマネジメントやアドヒアランスを促進し ケアの結果を向上させる 公衆衛生 コミュニティ : 資産 教育研究 成人教育 ヘルスプロモーション 人々が自分の健康やその要因を自分でコントロールできるようにスキルや能力を伸ばす ヘルスリテラシーをアセスメントして その人に合わせた健康情報 コミュニケーション方法 教育方法を用いることで ヘルスリテラシーを向上させ 健康や適切な意思決定を促進する

平均 SD 基礎的ヘルスリテラシー (α=0.84) 3.39 0.75 病院や薬局からもらう説明書やパンフレットなどを読む際 字が細かくて 読みにくい( メガネなどをかけた状態でも ) 3.19 1.12 読めない漢字や知らない言葉がある 3.41 0.88 内容が難しくて分かりにくい 3.43 0.84 読むのに時間がかかる 3.27 1.04 誰かに代わりに読んで教えてもらう 3.65 0.86 伝達的ヘルスリテラシー (α=0.77) 2.56 0.70 糖尿病と診断されてから 糖尿病やその治療 健康法に関することについて いろいろなところから知識や情報を集めた 2.43 1.04 たくさんある知識や情報から 自分の求めるものを選び出した 2.18 1.00 自分が見聞きした知識や情報を 理解できた 2.89 0.88 病気についての自分の意見や考えを 医師や身近な人に伝えた 2.70 0.91 見聞きした知識や情報をもとに 実際に生活を変えてみた 2.60 0.99 批判的ヘルスリテラシー (α=0.65) 1.96 0.63 糖尿病と診断されてから 糖尿病やその治療 健康法に関することについて 見聞きした知識や情報が 自分にもあてはまるかどうか考えた 2.71 0.98 見聞きした知識や情報の信頼性に疑問をもった 1.87 0.92 見聞きした知識や情報が正しいかどうか聞いたり 調べたりした 1.76 0.96 病院や治療法などを自分で決めるために調べた 1.51 0.77 Ishikawa H, Takeuchi T, Yano E. Measuring functional, communicative, and critical health literacy among diabetic patients. Diabetes Care. 2008 May;31(5):874-9. Epub 2008 Feb 25.

12 あなたは もし必要になったら 病気や健康に関連した情報を自分自身で探したり利用したりすることができると思いますか 思全わくなそいう 思あわまり ない そう などいちらでも そう 思う まあ そ強うく思う 12-1 新聞 本 テレビ インターネットなど いろいろな情報源から情報を集められる 1 2 3 4 5 12-2 たくさんある情報の中から 自分の求める情報を選び出せる 1 2 3 4 5 12-3 情報がどの程度信頼できるかを判断できる 1 2 3 4 5 12-4 情報を理解し 人に伝えることができる 1 2 3 4 5 12-5 情報をもとに健康改善のための計画や行動を決めることができる 1 2 3 4 5 Ishikawa H, Nomura K, Sato M, Yano E. Developing a measure of communicative and critical health literacy: a pilot study of Japanese office workers. Health Promot Int. 2008 Sep;23(3):269-74. Epub 2008 May 30.

TOFLA( Test of Functional Health Literacy in Adults ) REALM(Rapid Estimate of Adult Literacy in Medicine) Health Activities Literacy Tests (HALS) health-related competencies in five domains health promotion, health protection, disease prevention, health care and maintenance, and systems navigation

基本的リテラシー (fundamental literacy): 読み書き, 話すこと, 計算能力 科学的リテラシー (scientific literacy): 科学の基本的知識, 技術の理解, 科学の不確実性への理解など 市民リテラシー (civic literacy): メディアリテラシー, 市民と政治過程の知識, 個人の健康に関する意思決定がみんなの健康に影響することの認識 文化的リテラシー (cultural literacy): 集団の信念, 習慣, 世界観, 社会的アイデンティティなどの認識

基本的リテラシー アメリカでは 全国調査でそれが低い人々の多さ ( アメリカ生まれの白人が多数派 ) が明確になり 全米で年間 11~25 兆円相当の影響力で, 将来は 160~360 兆円とも 救急サービス利用 入院の多さ コンプライアンス 検診率 予防接種率の低さなど 予防的な保健行動の関連, 特に喫煙や運動などとの関連では, 最近のイギリスの全国調査で 18-90 歳の成人で関連 日本人は高いと思われがちであるが, 健康関連のこととなると必ずしも一致するとは限らない 欧米でも, わからなくてもそれを表に出さないことが明確に 医療者に簡単なことが聞けない パワー

科学的リテラシー 用語やエビンデンスを理解するためには, 基礎的な生物学の知識や, 治療やケアに伴う物理的化学的介入の基礎となる知識, 確率やリスク ( 絶対, 相対リスク, 寄与リスクなど ) についての知識なども必要 手術をするかの意思決定で 医師が手術による生存率は 99% という場合と 死亡率は 1% という場合では 結果が違ってくる可能性 ( 意思決定のフレーミング効果 ) 期待 価値理論 : 確率と意味 OECD の 15 歳の 学習到達度調査 (2006) では, フィンランドが学力世界一で, 日本は 科学的応用力 6 位に転落, 数学的応用力 10 位, 読解力 15 位 科学について学ぶことに興味がある 日本は 50% で 57 の国 地域中 52 位, 理科の勉強は役立つ も 42%,56 位 学校格差は, 高い国で小さく, フィンランドは最小 日本は大

科学的リテラシー ( 続き ) 近年, 科学をわかりやすく伝える 科学コミュニケーション に対する認識が日本でも. 聖路加看護大学の 自分のからだを知ろう 日本での, 生きる力, ライフスキルの視点の中に, ヘルスリテラシーを意識し, 健康でいるために科学が必要で役に立つことを学べるように 例えば役に立つ数学教育 エビデンスの理解 日本版の National Health Education Standards その内容のリストアップと吟味では, 臨床の専門職, 公衆衛生, 健康教育, 学校保健, 教育 学習理論の専門家などの協力が期待される

市民リテラシー 健康関連の用語が理解できても, 複雑化, 高度化した医療場面で意思決定したり 膨大な健康リスク情報から正しいものを選択したり, 健康を決定している社会的要因について認識したりするには別の能力が必要 メディアリテラシー, 情報リテラシーは, 市民のエンパワーメントを目的で, 健康においてはまさにヘルスプロモーション 健康増進法により 健康の義務化, そのため健康でないことの責任が誰に負わされているのかについて考える必要 国民皆保険などの医療のしくみやその導入の経緯, 現状での問題点など, 助け合いのシステムであり国民が選択している認識をもとに, 医療政策, 健康政策の決定過程にも関心を持ち, そこに参加してその選択に関与していく姿勢 その全プロセスの情報公開が必要であり, その要求も

文化的リテラシー 外国人が増加していることもあるが, 日本でも, それぞれの生まれ育った家庭や地域によってライフスタイルが形成 地域の慣習や迷信もエビデンスと一致しているものもあればそうでないものも エビデンスを知り, それをどう利用するかを考えた健康文化形成のしくみが必要 エビデンスをうまく取り入れた文化形成は, 日本の官僚主義や経済優先の文化から方向転換し, 市民のエンパワーメントによって可能? 価値観や世界観の異なる人々とのコミュニケーションスキル 健康な地域づくりにおいては, 年齢, 性別, 職業, 出身地などで多様な構成メンバーがそれぞれどのような文化的背景を持っているのかをみんなで理解していくことが必要

アメリカ Healthy People における ヘルスコミュニケーション 日本の 健康日本 21 のお手本 身体活動, 栄養, タバコなどのそれぞれ重点領域があり 2000 では 22 で, 2010 では 28 に増加 そのなかにヘルスコミュニケーション 縮まらない健康格差の要因 定義は, 個人とコミュニティが健康を高める意思決定をするために情報提供し影響を与えるためのコミュニケーション戦略の研究と利用

6 つの目標 家庭でのインターネットへのアクセス ヘルスリテラシーの向上 ヘルスコミュニケーションプログラムの研究と評価 健康ウェブサイトの質を評価するための情報の公開 ヘルスコミュニケーションのセンターオブエクセレンス (COE) ヘルスケア提供者のコミュニケーションスキル

保健医療関係者と患者の関係 個人の健康情報との接触 検索 利用 個人のアドヒアランス 公衆衛生のメッセージやキャンペーン 個人と集団への健康リスク情報の普及 = リスク コミュニケーション マスメディアや文化における健康のイメージ 公衆衛生やヘルスケアへのアクセスに関する消費者教育 テレヘルス ( 遠隔医療など ) 応用の発展

e ラーニング マルチメディア教材 クイズ テキスト / 資料 健康情報 / 健康資源 リンク集 用語集 ニュース 研究紹介 意思決定支援 Web 版 Face to Face 健康 / リスクチェック 健康教育プログラムの紹介 患者 / 健康教室 ミニ医学校

日本語ブログ記事が全世界の 37% を占め 英語 (36%) 以上に (Technorati 調べ ) ブログ SNS サイトへの 2006 年の年間訪問者は 2734 万人 (VRI) その要因は? 日記文学 私小説の伝統 日本社会は匿名でこそ本音 携帯からの投稿 識字率 100% 27

Web2.0 の世界 参加 = みな情報提供者 ブログ SNS Mixi, GREE Mixi 内コミュニティがんでもいいじゃん mixi 版がん友全国 MAP がん SNS ココロノマド オンナダイエット SNS Carepages 医師用 DoctorsBlog(So-net) Sermo Within3 看護師用ナースカフェ NurseLinkUp 地域 SNS 新しい住民参画のツール拡大 オープンデータベース YouTube, Ameba 患者コミュニティ サポートグループ ヘルパーセラピー効果 一般化 モデリング 感情表出 28

ユーザの作る信頼できる情報 Consumer Generated Media(CGM) 消費者が内容を生成 Q&A サイト Okwave( 教えて goo) Yahoo! 知恵袋では 10 万以上の健康関連の質問 研究対象として ( 市民 患者の情報ニーズ 妥当性確認 ) Wikipedia Portal: 医学と医療 も 著作権や特許よりも知の共有による発展を志向 評価サイト 病院の通信簿 Qlife cf. 患者の語りデータベース DIPEx 研究者の編集

行動主義刺激に対する反応がその結果によって強化され 行動変容 心理的プロセスはブラックボックス 認知主義経験や環境によって インプットの解釈 保持 アウトプットが異なるプロセスに注目ガニェの 9 教授事象や ARCS モデル 構成主義伝達内容は 主観的に変化 学習者は知識や経験と新しい情報を合わせて内的に個別に構成 ナラティブ アプローチ 社会構成主義 他者との交流によって知識が社会的に構成 グループ学習

アメリカ看護協会の看護の定義 the diagnosis and treatment of human responses to health and illness 健康と病気への反応は 刺激にどのように反応し行動変容するかという学習理論の課題と重なる 患者のナラティブ 病い経験などへの関心は学習者の認知や学習プロセスへの関心と共通 看護職の役割が 対象の最も近いところに寄り添い その患者や市民の健康問題についての学習支援であるとすれば 支援される側の患者や市民とともに学ぶ環境が形成できれば効果的 31

消費者健康情報学 Consumer Health Informatics (Eysenbach, 2000) 消費者の情報ニーズを分析し 消費者の入手しやすい情報をつくる方法を考え 消費者の意向や好み ( ナラティヴ ) にあわせた情報システムをつくる 専門家と患者や一般市民のギャップを埋める 患者や市民の状況にあった個別の情報提供ができるしくみ コミュニケーションの問題を軽減し相互理解へ

医師薬剤師 他職種 看護職 患者 家族エビデンス ナラティブ好み (preference) 価値観など インターネット健康情報サイト Q&A サイトコミュニティサイト掲示板 患者会患者サイト ブログメーリングリスト メールマガジン e メール テレビ 新聞 雑誌 書籍 点線部の能力 ( ヘルスリテラシー ) を高め患者中心 ( エビデンスとナラティブ両面 ) でトータルに支援 ( 太矢印 )

市民のヘルスリテラシー向上のために していること ナースに役立つ種類のサイトとは? による看護職の支援から市民の支援へ 市民に向けて 看護ネット 看護職中心 アメリカ カナダの大学や病院のコンテンツの紹介 市民の健康に役立つ北米大学のコンテンツ集 利用少なく 人材の発掘と育成 看護情報学の院生募集中 直接市民 ( 看護職 ) に向けてヘルスリテラシーの向上を紹介する 健康を決める力 残念ながらまだ現在編集中 次に内容を紹介

健康を決める力 : 健康と情報 情報に基づく意思決定とは 健康や医療について後悔しないためには多くの情報を収集しそれに基づいて意思決定することが大切 信頼できる情報とは何か 客観的情報としてのエビデンス それ以外にナラティブが注目される理由 患者自身がどう感じたか を知ることが意思決定に大切 他の人はどうしているのかを知ることも大事 これらの知りたい情報はウェブの時代へ

健康を決める力 : 情報の出し方 受け 取り方 健康情報の提供側は 相手にあわせて 受け取る側もヘルスリテラシーが必要 実際に患者が病院を選ぶ情報はどう出されているか? 良い病院を選ぶ視点 専門機関の情報 病院の情報 口コミなどあるが 患者の意思決定を支える病院が必要 患者の意思決定をささえるのは? 自分自身で決めるために 病院 ( 患者の自己学習をするための図書館 患者が閲覧可能な 電子カルテ 情報交換の為の患者会 ) や 個人にカスタマイズされた健康情報 ( テーラリング ) 意思決定支援システム などが患者の意思決定をささえている

健康を決める力 : 専門家から市民へ 医療だけにたよっていても健康にはなれない 自らのライフスタイルや環境を改善することが大切 = ヘルスプロモーション 場合によっては自分の意識や行動 環境を変えることが必要 現代はなかなか治らない病気ばかりで 今の慢性疾患の多くはその人の行動に由来 治療コストより 予防コスト 個人に責任を負わせるのは難しく 地域の取組 コミュニティ 職場の取組などで戦略的に予防をすることが重要 個人の行動や意識を変えるためには?

健康を決める力 : 信頼と助け合い 健康を決めるために市民が出来ること 自分の生活や環境を変えるためにはどうしたらいいのか そして そこで生まれるストレスにどう対応すべきか ひととのつながりを大事にする 変えるためには人のつながりが大切 ソーシャルネットワークは健康に重要な影響力を持っている 助け合いのネットワーク 信頼できる 安心な地域や組織は 重要な資本 = ソーシャルキャピタル インターネット上のコミュニティにも存在 人とのつながり 信頼のできる空間でエビデンスとナラティブを共有できることが 健康を決める力