コロンビア : 外資導入政策の成功で生産量増加 (Platts Oilgram News International Oil Daily Business News Americas Wood Mackenzie 他 ) 更新日 :2010/5/17 調査部 : 舩木弥和子 1. 原油生産量減退を食い止めるためにとられてきた外資導入政策が奏功し コロンビアの原油生産量が急激な増加を見せ始めた 2003~2007 年に 55~56 万 b/d で推移していた原油生産量は Llanos Basin の重質油開発の進展により 2008 年に 61.8 万 b/d 2009 年に 67.1 万 b/d 2010 年 3 月には 76.3 万 b/d と増加している 原油生産量は 2010 年末までに 84 万 b/d に達する見通しで 2012 年末までに少なくとも 120 万 b/d 場合によっては 140 万 b/d を生産できる可能性があるとの見通しも発表されている 予想以上の生産量急増で パイプラインの輸送能力や製油所の精製能力の不足が懸念され 政府並びに Ecopetrol はパイプラインや製油所の拡張 新設に注力している 生産量は増加しているものの 石油消費量は 26 万 b/d と横ばいで推移しており その結果 石油輸出量が増加している 主な輸出先は米国メキシコ湾岸となっている 2. コロンビアでは 原油とともに 天然ガスの生産量も増加しており 2009 年の天然ガス生産量は 1.01Bcf/d となった これは Guajira 地域の Chuchupa 及び Ballena ガス田からの生産が贈加したことによる 2008 年 1 月に開始されたベネズエラへの天然ガス輸出は 両国の関係悪化に関わらず継続しているが エルニーニョ現象の影響で供給量は減少している ANH の Zamora 長官によると コロンビア政府は パナマやドミニカ共和国 ジャマイカへのパイプラインでの天然ガス輸出や LNG の輸出を検討しているという 3. コロンビアは 6 月 22 日に 228 鉱区を対象としたライセンスラウンドを実施する Zamora 長官は 50~ 60 鉱区を付与できれば今回のライセンスラウンドは成功であるとしているが すでに 83 社がアプリケーションを提出したという 4.Ecopetrol の 2010 年の投資額は対前年比 11% 増の 69.25 億ドルで うち 45 億ドルが探鉱 開発部門 13 億ドルが精製 石化部門にあてられる 2010 年は Llanos Basin の重質油開発に重点が置かれる また 重質油処理のため Barrancabermeja 及び Cartagena 製油所を改修する 5. 5 月 30 日には大統領選挙が実施されるが 有力とされる大統領候補者はいずれも 治安改善と外資導入を進めてきたウリベ大統領の政策を継続するものと思われ 探鉱 開発部門にも大きな影響はないと考えられる 1. 重質油開発進展で原油生産量急増コロンビアの原油生産量は 主要油田である Cusiana-Cupiagua 油田 ( オペレーター BP) Cano Limon 油田 ( 同 Occidental) の生産減退により 1999 年の 83.8 万 b/d をピークに減退した また ゲリラ活動の激化や厳しい契約条件から 1990 年代に探鉱 開発活動が停滞したため 大規模な発見がなく 2000 年以降 原油確認埋蔵量も横ばいとなった - 1 -
(BP 統計より作製 ) このような状態を懸念したウリベ大統領は 2002 年以降 ブラジルに倣い積極的な外資導入政策をと り 生産期間の制限 (28 年 ) 廃止やロイヤルティの変更など契約条件が変更された そして 鉱区付与や 契約手続きを担当する ANH(National Hydrocarbons Agency) が設置され 頻繁にライセンスラウンドが実 施されるようになった 治安面でも 誘拐 石油生産施設やパイプラインへの攻撃が減少し コカ栽培面 積やコカイン生産量も減少し 改善が見られるようになった その結果 コロンビアの契約締結件数は増加し 探鉱 開発活動が活発になり 2003~2007 年に 55~ 56 万 b/d で推移していた原油生産量が 2008 年には 61.8 万 b/d 2009 年には 67.1 万 b/d 2010 年 3 月には 76.3 万 b/d と増加した 2010 年末の原油生産目標は 80 万 b/d とされていたが これを前倒しで 達成し 2010 年末には 84 万 b/d を生産し 2010 年平均で 80 万 b/d を生産できるとの見通しが 4 月に 発表された る このようにコロンビアの原油生産量が急激に増加したのは 重質油の開発が順調に進展したためであ 特にカナダ企業 Pacific Rubiales Energy は Llanos Basin の Rubiales Piriri Quifa 鉱区で探鉱 開発を 行い 重質油の生産量を大きく伸ばしている Rubiales Piriri 鉱区 ( 合計で面積 569km2) にまたがる Rubiales 油田では 2002 年より API12.5 度の重 質油の生産が開始されていたが パイプラインがないために生産された原油はトラックで輸送するしか なく 生産量は伸び悩んでいた そこで Ecopetrol と Pacific Rubiales Energy が Ecopetrol65% Pacific Rubiales Energy 35% の割合で 5.3 億ドルを投じ Rubiales 油田と Monterrey(Casanare) 間に全長 235km の ODL(Oleoducto de Los Llanos) パイプラインを建設 2009 年 9 月にこれが完成した Rubiales 油田で生 産される重質油は カリブ海岸の Covenas まで ODL パイプラインと Ocensa パイプラインを利用して輸送 できるようになり 輸送コストも半減した その結果 Rubiales 油田の生産量は 2010 年初には 12 万 b/d に 増加したが Pacific Rubiales Energy は 2010 年中に 10.5 憶ドルを投資し 探鉱井 36 坑 生産井 113 坑を 掘削し 生産量をさらに増加させる計画だ Pacific Rubiales Energy は Piriri 鉱区の 50% Rubiales 鉱区の - 2 -
40% を保有 パートナーは Ecopetrol である 2010 年 4 月には Rubiales Piriri 鉱区を取り囲む Quifa 鉱区 (Pacific Rubiales Energy60% Ecopetrol40%) の開発も開始された 同鉱区生産量は 現在 3,000b/d だが Pacific Rubiales Energy は 2010 年に Quifa 鉱区で 20 坑を掘削し 生産量を 2010 年末までに 3 万 b/d 2011 年末までに 6 万 b/d に引き上げる計画だ Quifa 鉱区の埋蔵量はまだ発表されていないが Pacific Rubiales Energy は 同鉱区は生産量 埋蔵量ともに Rubiales 油田以上であると期待しており かつての Cano Limon 油田の生産量を凌ぐ生産を数年以内に達成できる可能性があるとしている Pacific Rubiales Energy は現在 Rubiales 油田と Quifa 油田を合わせて約 13 万 b/d を生産しており Cano Limon 油田の他 14 の小規模な油田で 9 万 b/d 弱を生産する Occidental と Cusiana/Cupiagua 油田 Pauto/Florena 油田で 7.3 万 b/d を生産する BP を抜いて Ecopetrol に次ぐコロンビア第 2 の生産者となった Pacific Rubiales Energy は 同社のコロンビアの生産量をさらに増加させ 2010 年末には 20 万 b/d 以上 2015 年までに 50 万 b/d とする計画だ (ANH 資料より作成 ) 一方 重質油ではないものの Petrominerales の生産量も増加している カナダの Petrobank Energy and Resources が株式の 81% を保有する Petrominerales は 2007 年第 3 四半期に Llanos Basin の Corcel 鉱区で Corcel 油田 ( 軽質油 ) を発見 9 月より生産を開始した 同社は 2009 年末までに Corcel 鉱区で - 3 -
15 坑 Guatiquia 鉱区で 2 坑を掘削した Corcel 鉱区の Corcel 油田と Guatiquia 鉱区の Candelilla 油田 の生産量は合計で 2009 年末が 15,252b/d 2010 年 3 月が 45,000 b/d となっている Candelilla 油田は 生産量を 4 万 b/d まで引き上げることが可能との見方もある このような生産量の急増により コロンビアの生産見通しは大きく変化している 2002~2003 年の段階 では コロンビアは 2009 年までに石油純輸入国に転じる可能性があるとされていた そして 2004 年に は 2020 年まで原油生産量 50 万 b/d を維持することが目標とされていた 生産量増加に伴い 2008 年 末には 2017 年以前にコロンビアが石油の純輸入国になる可能性はなくなったとの発表があった 2009 年 9 月に ODL が開通した際には ウリベ大統領は コロンビアが 2015 年までに 100 万 b/d を生産でき るようになることを期待すると語った 2010 年 3 月には 石油自給可能な期間が 2017 年から 2020 年まで 伸びたとの発表があった さらに 2010 年 4 月には ANH が 2015 年には原油 140 万 b/d を生産できる との見通しを発表した 5 月には Ecopetrol の下流部門の Pedro Rosales 氏が 鉱山エネルギー省と Ecopetrol による新しい分析によれば コロンビアの原油生産量は 2012 年末までに少なくとも 120 万 b/d 場合によっては 140 万 b/d に達する可能性があると発表した このように原油生産量が短期間に急増しているたため コロンビアでは送油能力が生産増に追い付か ないという状況が発生しつつある Ecopetrol は 43 億ドルを投じ 送油能力 25~45 万 b/d 全長 550 マイ ルのパイプラインを建設するとしているが 詳細はまだ決まっていないようだ また コロンビア政府は 生産量が増加した原油を国内の製油所で精製処理し 石油製品の輸入を減 らし 製品輸出を増やしたいと考えている 現在 コロンビアには Barrancabermeja 製油所 ( 精製能力 20.5 万 b/d) や Cartagena 製油所 ( 同 7.5 万 b/d) など 5 か所の製油所があり 精製能力は合計で 285,850b/d となっているものの これらの製油所では原油生産量の急増に対応しきれない そこで Ecopetrol は 37 億ドルを投じ 6 月より Cartagena 製油所の改修と新規設備 ( 精製能力 16.5 万 b/d) の建 設を開始した 2013 年には新規設備の操業が開始される予定である Barrancabermeja 製油所の精製能 力拡張も実施されているという 一方 現在のコロンビアの石油消費量は 26 万 b/d と 1990 年代以降ほぼ横ばいの状態にあり 天然ガ ス自動車やバイオ燃料の利用により今後も大幅な増加はないと考えられる その結果 石油輸出量は増 加しており 2010 年中には 70 万 b/d を輸出できるようになる見通しだ Ecopetrol の 4 月の石油輸出量も 1999 年 7 月の 39.8 万 b/d を抜き 40.4 万 b/d と過去最高になったという コロンビア原油は主に米国メキ シコ湾岸 (58%) と極東 (24%) に輸出されているが コロンビアは メキシコ 中国 ペルーなど石油輸出 市場の多様化を目指している Ecopetrol の Gutierrez 総裁によると 効率よく石油を輸出するためカリブ 海岸の Covenas 港の拡張を求めている また 中国やインドへより経済的 効率よく石油輸出を行うため に 新たにコロンビア中部から太平洋岸にパイプラインを敷設することも検討されているという - 4 -
2. 天然ガス生産量も増加コロンビアでは 原油とともに 天然ガスの生産量も増加している ANH の Zamora 長官によると 2009 年のコロンビアの天然ガス生産量は 2007 年の 730MMcf/d 2008 年の 875MMcf/d から 1.01Bcf/d に増加した 生産増は Chevron がオペレーターを務める Guajira 地域の Chuchupa 及び Ballena ガス田からの生産による この他にも Cusiana-Cupiagua 油田で2 Bcf/dが生産され (BP 統計より作製 ) ているが 再圧入されている 2008 年 1 月に開始されたベネズエラへの天然ガス輸出は 両国間の関係悪化に関わらず続いている Ecopetrol はベネズエラに 2008 年 50MMcf/d 2009~10 年 150MMcf/d 2011 年 100MMcf/d を供給することとなっていた ベネズエラ側の要求により一時供給量が契約量を上回っていたが エルニーニョ現象の影響で 2009 年 11 月には供給量が 70MMcf/d まで減少している なお ANH の Zamora 長官によると 天然ガス生産量の増加から コロンビア政府は パナマやドミニカ共和国 ジャマイカへのパイプラインでの天然ガス輸出や LNG の輸出も検討しているという 3. ライセンスラウンド 2010 コロンビアは 6 月 22 日に 228 鉱区を対象と したライセンスラウンドを実施する 228 鉱区のう ち 141 鉱区は面積は狭いが 地質等について の情報が多く 発見の可能性が高い鉱区 ( 地図 に緑で表示 ) 31 鉱区はそれよりもリスクが高い 鉱区 ( 青 ) 56 鉱区は情報がほとんどなくリスク が高い TEA(Technical Evaluation Contract) を 締結する鉱区 ( 紫 ) となっている Zamora 長官は 今回のライセンスラウンドでは 50~60 鉱区を付 与できれば成功であるとしているが すでに 83 社がアプリケーションを提出したという ( 出所 :ANH) - 5 -
4,Ecopetrol Ecopetrol は 2008~15 年に 600 億ドルを投じ 2015 年までに生産量を 100 万 boe/d に増加させ PIW 誌のランキングを 38 位から 27 位に上げることを計画しているが 2009 年 12 月に この計画に基づいた 2010 年の投資計画を発表した Ecopetrol の 2010 年の投資額は対前年比 11% 増の 69.25 憶ドルで うち 45 億ドルが探鉱 開発部門 13 億ドルが精製 石化部門にあてられる 2010 年の生産目標は 55.6 万 boe/d とされている 探鉱 開発部門では 9.51 億ドルを投じて探鉱井を 20 坑 ( コロンビア 13 坑 メキシコ湾 4 坑 ブラジル 2 坑 ペルー 1 坑 ) 掘削することが計画されているが Llanos Basin の Castilla Chichimene Rubiales 等の油田の重質油開発に重点が置かれるという 生産量が増加している重質油処理のため Barrancabermeja 及び Cartagena 製油所の改修も行われている 2010 年 4 月には 5 年以内に国外での生産量を増加させるためブラジル 米国メキシコ湾の資産を取得し これらの地域での活動を拡張する計画が明らかにされた Ecopetrol のコロンビア国外での生産量は現在 1 万 b/dだが これを 20 万 b/dに増加させたいとしている 投資資金を確保するために Ecopetrol は2007 年に株式の 20% 売却を決定し このうち 10.1% を売却 32 億ドルを得た 現在 政府は Ecopetrol 株式の 89.9% を保有しているが Ecopetrol 株式の 15% を売却し その資金を高速道路建設に充てることを計画している 5. 終わりにコロンビアでは 5 月 30 日に大統領選挙が実施され 2 期 8 年間大統領を務めたウリベ大統領の後任が選ばれることになる Juan Manuel Santos 元防衛大臣や Antanas Mockus 元ボゴタ市長など有力な大統領候補者はいずれも 治安改善と外資導入を進めてきたウリベ大統領の政策を継続するものと思われ 大統領の交代により探鉱 開発部門に大きな影響はないと考えられる ライセンスラウンド 2010 によりコロンビアの上流部門への投資はさらに増加し 探鉱 開発活動が活発になり 今後 5 年間でコロンビアは重要な石油輸出国になる可能性があるとの Zamora 長官の発言もあり さらに生産増が期待されるコロンビアの探鉱 開発活動に注目していきたい - 6 -
コロンビアの主要油 ガス田 各種資料より作成 -7Global Disclaimer 免責事項 本資料は石油天然ガス 金属鉱物資源機構 以下 機構 調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが 機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません また 本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり 何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません したがって 機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません なお 本資料の図表類等を引用等する場合には 機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます