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Transcription:

平成 29 年度研究所奨学論文 応募研究所政治経済研究所 タイトル フリガナ 学力の地域間格差と政治 2017 年全国学力調査と政治的立場との関係性 フクムラカオリ 氏 名 福村香織 ( 代表者 ) ( 共同執筆の場合は上記者が代表者となる 代表者他名 ) 所 属 研究科 専攻または 学部 学科政経学部法律政治学科 4 年学生番号 :43196 - 目次 - 共同執筆の場合のみ記入 1. はじめに ( 担当 : ) 2. 先行研究 ( 担当 : ) 3. 仮説 分析モデル ( 担当 : ) 4. 記述統計 ( 担当 : ) 5. 分析結果 ( 担当 : ) 6. 結論 今後への展望 ( 担当 : ) 7. 参考文献など ( 担当 : ) 8. ( 担当 : ) 9. ( 担当 : ) 10. ( 担当 : ) 応募期日 : 平成 29 年 10 月 27 日 ( 金 ) 23:00 必着 厳守 1

Abstract 本論文では 教育面で地域間の格差が生じる要因について分析を行い 政治的立場が全国学力調査の結果に影響を及ぼすのではないかと考えた 仮説として 日教組の組織率が高ければ高い都道府県ほど 中学 3 年生の全国学力調査の合計得点率が高い と設定し 実証分析を行った その結果 日教組の組織率と学力調査の結果との関係に統計的有意性を得ることができなかった しかし 離婚率と中学 3 年生の全国学力調査の合計得点率との間には統計的に有意な結果を得られたことから 家庭的要因は今回の学力調査に影響を与えていると言える 1. はじめに現在の日本において 教育分野 特に学力で地域間の格差が生じる要因とは何であろうか また その要因の一つに政治的要因は存在するだろうか これらの問題提起を検証していくことが 本論文での目的である 学力の地域間格差は 2007 年以降 文部科学省が実施している全国学力 学習状況調査 ( 以下 全国学力調査 ) の結果から見られる その調査は日本全国の小 中学生の最高学年を対象に行われ 2008 年には当時の橋下徹大阪府知事の発言によって大きく注目を浴びた (1) 2017 年度も 4 月にこの学力調査が実施され 例えば中学 3 年生を対象にした国語と数学との合計得点率の平均は 65.8% だった (2) 表 1 は 中学 3 年生の合計得点率の主要な上位 下位地域を表したものである 最も高いのが福井県の 71.5% であるのに対して 最も低かった得点率が沖縄県の 59.8% であることから 2 つの県の間には 11.7 ポイントも格差が生じていることがわかる 表 1:2017 年度全国学力調査 ( 中 3) 上位 下位の合計得点率 (3 ) 2

そのことから 学力で格差が起きている要因とは何であるのか 本論文では 政治的立場が全国学力調査の結果に影響を及ぼすのではないかと考え 日教組の組織率が高ければ高い都道府県ほど 全国学力調査の合計得点率が高い という仮説を立てた 本論文で挙げる政治的立場とは 左派勢力の民進党を支持する日本教職員組合のことを指す そして 日教組の組織率の分布を使用しようと試みたが データ収集の関係上 2016 年参議院選挙比例区から出馬した那谷屋正義氏 ( 以下 那谷屋議員 ) が獲得した得票数で代用した つまり 那谷屋議員が獲得した地域票数が多ければ多いほど 日教組の組織率が高いと見なすことができ 全国学力調査の結果も高いのではないかと予測した その結果 日教組の組織率と学力調査の結果との関係に統計的有意性はなかった しかしながら 離婚率が統計的に有意な結果を得られたことから 家庭的要因は今回の学力調査にも影響を与えていることがわかった 本論文での構成は以下の通りである 第二章で先行研究を挙げ 第三章にて仮説と分析モデルについて説明する また 第四章で記述統計を 第五章に分析結果をそれぞれ示し 第六章で結論と今後への展望について述べたい 2. 先行研究本章では 教育における地域間格差の要因分析について 本論文と関連すると考えられる 3 つの先行研究について紹介する まず始めに 学力に注目した地域間格差について 志水 (2008) は 大都市圏 の子どもたちの方が 市部 や 町村部 の子どもたちよりも平均正答率が高い と述べている また 志水は保護者の意識調査も行った結果 地域による格差が顕著に現れたものは 教育費 の違いであると挙げている 難波 畑中 (2012) は 教育格差の要因の中でも特に家庭に関わる要因について検討した その結果 親の所得水準 学歴 文化資本が基本的に子どもの学力と相関関係を持つと明らかにした さらに それらの中でも親の学歴が重要であり 親が高い学歴であれば 子どもも高い学歴になるといった形で 教育格差の再生産 ( 学歴格差の再 3

生産 ) が生じる可能性があると指摘している そして最後に 全国学力調査を用いた要因分析の先行研究は植松 高橋 (2017) を挙げる 植松 高橋は 2016 年度の全国学力調査における小 中学生の得点率を用いて 都道府県別の順位が決定される要因を分析した結果 敷地面積や持ち家率が統計的に有意であり 特出すべき点として 小学生の成績には影響を及ぼしていなかった離婚率と父子 母子家庭数が 中学生の成績に大きく影響を与えているという 以上の研究についてまとめると 学力の地域間格差には地域性による影響 経済的影響 そして家庭環境からの影響があると言える 確かに 学力に格差が生じる要因としてそれらが挙げられることに一定の説得性はあるが 他にも例えば議会や政治運営 右派や左派といった政治的立場からも影響を及ぼすのではないだろうか そこで 本論文では政治的な要因と学力の地域間格差に焦点を絞って分析する 3. 仮説 分析モデル橋野 (2017) は都道府県知事選挙から教育 子育て関連の政策がどのくらいの頻度で選挙公約として取り上げられ 争点となっていたのかを分析した 橋野は 左派はそうでない者と比べて 人件費削減による行政改革より 待機児童対策や少人数制教育などの教育 子どもに関する公約を掲げる確率が高いと主張している つまり 左派勢力は積極的な姿勢で教育 子育て政策を掲げているとみなすことができる 橋野の研究成果を踏まえ 本論文では以下の仮説を提示する 仮説 : 日教組の組織率が高ければ高い都道府県ほど 全国学力調査の合計得点率が高い 図 1は本論で使う分析モデルである 従属変数は 2017 年度全国学力調査の中学 3 年生における都道府県別合計得点率の平均 ( 以下 合計得点率 ) である 中学 3 年生は国語 A B と数学 A B の 4 科目が対象であるため それらを合計した得点率を平均化したものをデータとして使用した 4

一方で 主要な独立変数は 日教組の組織率 である 日教組は民進党を支持する組織として長年活動し また民進党議員の中には日本民主教育政治連盟に所属して政界へ進出している日教組出身者もいる (4) 本論文は日教組の出身者である那谷屋正義参院議員に注目し 2016 年参議院選挙比例区で那谷屋議員が獲得した票数を用いる (5) コントロール変数として 都道府県別の離婚率と中学校教員の平均所得を設定した 離婚率を使う理由は二つある 一つ目の理由は 離婚率が家庭環境に関わる要因として考えられるからである 二つ目の理由は 先行研究で挙げた植松 高橋 (2017) の論文で主張していることを踏まえ それが今回の合計得点率の結果にも影響しているのかを調べるためである ここでは 離婚率が高い地域ほど 合計得点率は低い と予想している また 経済的要因の一つとして 中学校教員の平均所得 をコントロール変数として使っている ここでは 中学校教諭の平均所得が高い地域ほど 合計得点率も高くなる と予想している 独立変数 予想 従属変数 図 1: 本論文での分析モデル 4. 記述統計以上の分析モデルから それぞれの変数をまとめたのが表 3 である 分析対象は 47 都道府県全てとなっている 従属変数の 合計得点率 の平均は 65.7% 最大値が福井県の 71.5% そして 最小 5

値は沖縄県の 59.8% だった 主要な独立変数の 那谷屋議員の獲得票数 は平均値 3759 票 最大値の兵庫県で 19478 票 最小値の愛媛県は 107 票である コントロール変数の一つである 離婚率 は沖縄県が最も高く 反対に山形県が最も低かった そして 平均所得 は東京都が約 42 万円と最も高いが 奈良県の約 37 万円が最も低かった 表 2: 記述統計 那谷屋議員の獲得票数と得点率を散布図にしたのが以下の図 2 である 0 票から 5000 票の間に集中し 相関係数は 0.0325 と若干ながら正の関係を見ることができたが 相関係数の p 値が 0.8285 であることから 統計的有意性は得られることができなかった 図 2: 那谷屋議員の獲得票数と合計得点率の散布図 6

5. 分析結果重回帰分析を行ったところ 表 4 の結果が得られた 主要な独立変数である那谷屋議員の獲得票数は予想通りに正ではあったが p 値が 0.1 を超えているため 統計的に有意な結果が得られなかった しかし 離婚率は本論文の予想通りの結果となり 1% 有意水準で統計的に有意である 離婚率が 1 ポイント上昇するごとに 合計得点率が 5.43 ポイント下降することがわかった つまり 離婚率の増加は中学生の学力調査の得点率に影響を与えると言える なお 中学校教諭の平均所得も p 値を見る限り 統計的に有意ではなかった そして 補正 R 2 の値が 0.25 であったため 従属変数である 合計得点率 の分散の約 25% がこの分析モデルによって説明することができる 有意確率 :*** p < 0.01 表 3: 重回帰分析の結果 6. 結論と今後の展望本論文では 現在の日本において 特に学力で地域間の格差が生じる要因とは何であり その要因の一つに政治的要因は存在するのか という問いに対して分析した その結果から 日教組の組織率は全国学力調査に影響があるとは言えなかった 橋野が挙げた左派勢力は社民党と日本共産党の 2 つであり 民進党までは分析が行われていない また 日本共産党は全国学力調査の実施に反対する姿勢を示している (6) ため 左派勢力 = 民進党 と本論文で設定したことが正しいのか吟味する必要がある 7

その他にも 那谷屋議員の獲得票数を本論文に取り入れたが そもそも 那谷屋議員の獲得票数 = 日教組の組織率 と定義づける点が正しいのかといった問題点もある 日教組に属しているか あるいは日教組を支持している人は必ずしもその議員に投票するとは限らない また 日教組に属していなかったり 関係がなかったりする有権者がその議員に投票することも考えられる したがって 本論文では 日教組の組織率 の近似値として日教組出身の那谷屋議員の獲得票数を用いたが 本当にその設定が正しいのか再検討する必要がある そして 離婚率が統計的有意性を得られたことから 中学生にとって両親による離婚は学力に影響すると言える 特に中学 3 年生という立場にとっては 将来への進路で悩む時期に親の離婚というのは良い方向に影響があるとは考えられにくい さらに 中学校教諭の平均年収も合計得点率に影響があると言えなかったことから 教諭への報酬によって得点率が左右することがないようにも見える 今後は 先行研究で挙げたような地域性による影響や家庭内の経済的 環境的要因を変数として挿れ 再分析する必要があると考えられる 例えば 地域性による影響は各都道府県の中で都市部とそうでない地域とを分けて差異を確かめるといった分析である だが 2017 年度については政令指定都市のみの得点率は公表されているものの 市町村別の得点率の公開はされていないことから 現時点では地域別の詳細な分析をすることは難しい状況だ 他にも 家庭内の経済状況や環境を要因とする分析に関しても 全国学力調査では保護者の年収や教育費などの細部まではアンケート調査が実施されていないため 独自でアンケートを行う必要がある 本論文で用いた独立変数以外に 地域性や経済状況 家庭環境についての詳細なデータが入手できれば 学力の地域間格差の要因を更に追究できるだろう さらに言えば 本論文で分析対象としなかった小学 6 年生の結果も重回帰分析を行い 中学 3 年生の結果と比較することも必要である 日教組の組織率は小学 6 年生に影響を与えているのかを分析してみるのは勿論 地域的特徴や経済的要因 家庭内要因についてもそれぞれを確かめ 検討する余地はあるはずだ 8

7. 参考文献など 注釈 (1). 朝日新聞デジタル 2008 年 10 月 16 日付 橋下知事 学力調査結果を開示自主公表の市町村分 http://www.asahi.com/special/08002/osk200810160077.html (2). 都道府県別統計とランキングで見る県民性 全国学力テスト中学生正答率 [ 2017 年第一位福井県 ] より引用 http://todo-ran.com/t/kiji/16236 (3). 2017 年度全国学力調査 ( 中 3) 合計得点率の全国分布は次頁の表の通りである 表 4 2017 年度全国学力調査 ( 中 3) 合計得点率の全国分布 (4). 日本教職員組合 関連団体 https://www.jtu-net.or.jp/whats-jtu/jtu-link/ (5). 本来ならば 日教組の都道府県別組織率のデータを使用することが適切であり 分析前に文部科学省や日教組に問い合わせたが 具体的な数値が記された都道府県 9

別組織率のデータを入手することが出来なかった 特に 日教組からは 組織率は当組織にとってもっとも重要なものであり 部外秘扱いとなっております との回答を受けたため その代わりの近似値として那谷屋議員の獲得票数を使用することになった (6). 日本共産党しんぶん赤旗 主張全国学力テスト参加押し付けと序列化やめよ http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-04-23/2007042302_01_0.html インターネット 1. 国立教育政策研究所 平成 29 年度全国学力 学習状況調査報告書 調査結果資料 http://www.nier.go.jp/17chousakekkahoukoku/index.html 2. 時事ドットコム 図解 政治 参院選 / 比例代表における支援団体の集票力 (2013 年 7 月 ) https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_election-sangiin20130716j-04- w410 3. 総務省 第 24 回参議院議員通常選挙結果調都道府県別党派別名簿登載者別得票数 ( 比例代表 ) 民進党 http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/sangiin24/index.html 4. 総務省 平成 28 年地方公務員給与の実態 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/cgyousei/kyuuyo/h28_kyuuyo_1.html 5. 総務省統計局 日本の統計 2017 都道府県別出生 死亡数と婚姻 離婚件数 http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.htm 6. 都道府県別統計とランキングで見る県民性 全国学力テスト中学生正答率 [ 2017 年第一位福井県 ] http://todo-ran.com/t/kiji/16236 7. 日本教職員組合 https://www.jtu-net.or.jp/ 10

8. 文部科学省 平成 28 年度教職員団体への加入状況に関する調査結果につい て http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1382447.htm 著作物 1. 浅野正彦 矢内勇生 Stata による計量政治学 東京 : オーム社,2013 2. 植松康祐 高橋泰代 全国学力調査結果の統計的分析 国際研究論叢 30 (3),( P.1-12), 2017 3. 志水宏吉 学力の地域格差 研究所報 52,( P.50-63), 2009 4. 中室牧子 学力 の経済学 東京 : ディスカヴァー トゥエンティワン,2015 5. 難波安彦 畑中美里 教育格差の要因と問題点 兵庫教育大学研究紀要 40 巻 (P.51-62) 6. 橋野晶寛 選挙公約から見た地方教育政策をめぐる政治の変容 北海道教育大学紀要 67(2), 2017 7. 三浦まり 政権交代とカルテル政党化現象 民主党政権下における子ども 子育て支援政策 レヴァイアサン 53(2),(P.35-56), 2013 8. 文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課 教育委員会月報 2017 年 3 月号 東京 : 第一法規社,2017 11

Appendix 本論文の分析で使用した変数は以下の通りである l pref: 各都道府県の名称 l jhs_score:2017 年度全国学力テスト都道府県別中学生正答率 (%) l rikon: 都道府県別人口 1000 人当たりの離婚率 (%) l ave_salary: 都道府県別中学校教職員の平均所得 ( 円 ) l nataniya:2016 年度参院選における 那谷屋正義参院議員の都道府県別獲得票数 ( 票 ) 12