平成15年度8階病棟の目標                  2003/06/03

Similar documents
<4D F736F F F696E74202D208B678FCB8E9B D C982A882AF82E98AB490F5975C966891CE8DF482CC8A B8CDD8AB B83685D>

耐性菌届出基準

Microsoft Word - <原文>.doc

 

名称未設定

Q&A(最終)ホームページ公開用.xlsx

放射線部

(案の2)

Microsoft Word - B-2 感染経路別防止対策(2018.8)

インフルエンザ(成人)

褥瘡発生率 JA 北海道厚生連帯広厚生病院 < 項目解説 > 褥瘡 ( 床ずれ ) は患者さまのQOL( 生活の質 ) を低下させ 結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります そのため 褥瘡予防対策は患者さんに提供されるべき医療の重要な項目の1 つとなっています 褥瘡の治療はしばしば困難

(病院・有床診療所用) 院内感染対策指針(案)

と役割を明確化し 医療機関内のすべての関係者の理解と協力が得られる環 境を整えること ( 感染制御チーム ) 病床規模の大きい医療機関 ( 目安として病床が 床以上 ) においては 医師 看護師 検査技師 薬剤師から成る感染制御チームを設置し 定期的に病棟ラウンド ( 感染制御チームによ

目 次 1. はじめに 1 2. 組成および性状 2 3. 効能 効果 2 4. 特徴 2 5. 使用方法 2 6. 即時効果 持続効果および累積効果 3 7. 抗菌スペクトル 5 サラヤ株式会社スクラビイン S4% 液製品情報 2/ PDF

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

第 88 回日本感染症学会学術講演会第 62 回日本化学療法学会総会合同学会採択演題一覧 ( 一般演題ポスター ) 登録番号 発表形式 セッション名 日にち 時間 部屋名 NO. 発表順 一般演題 ( ポスター ) 尿路 骨盤 性器感染症 1 6 月 18 日 14:10-14:50 ア

スタンダードプリコーション (標準予防策) と 感染経路別予防策

<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6>

第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

48小児感染_一般演題リスト160909

Microsoft PowerPoint - リーダー養成研修(通所)NO1 

その他の多剤耐性菌

4) アウトブレイクに介入している 5) 検査室データが疫学的に集積され, 介入の目安が定められている 4. 抗菌薬適正使用 1) 抗菌薬の適正使用に関する監視 指導を行っている 2) 抗 MRSA 薬の使用に関する監視 指導を行っている 3) 抗菌薬の適正使用に関して病棟のラウンドを定期的に行って

放射線併用全身化学療法 (GC+RT 療法 ) 様の予定表 No.1 月日 経過 達成目標 治療 ( 点滴 内服 ) 検査 処置 活動 安静度 リハビリ 食事 栄養指導 清潔 排泄 / 入院当日 ~ 治療前日 化学療法について理解でき 精神的に安定した状態で治療が

スライド 1

スライド 1

Taro-入所マニュアル.jtd

胃腸炎による入院患者の管理胃腸炎患者の症状が重くて 入院することがあります 入院患者の管理をしなければいけないことが 病院小児科の特異的なところだと思いますので その点に重点を置いてこれからお話しします 胃腸炎の患者が入院しなければいけない時には多くの患者が脱水になっているため 適切な補液が最も重要

Microsoft PowerPoint - 感染対策予防リーダー養成研修NO4 インフルエンザ++通所

公開情報 2016 年 1 月 ~12 月年報 院内感染対策サーベイランス集中治療室部門 3. 感染症発生率感染症発生件数の合計は 981 件であった 人工呼吸器関連肺炎の発生率が 1.5 件 / 1,000 患者 日 (499 件 ) と最も多く 次いでカテーテル関連血流感染症が 0.8 件 /

医療関連感染

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)


針刺し切創発生時の対応

スライド 1

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

2. 予防 1) 予防接種 入院している多くの免疫不全患者への感染源にならないためにも 病院で勤務するすべての 職員に対してインフルエンザワクチンの接種を推奨する ただし過去にインフルエンザワクチンで 重症なアレルギー反応があった者は禁忌である 接種可能かどうかの相談は感染管理担当課で 行う 患者へ

pdf0_1ページ目

pdf0_1ページ目

サーベイランス

医療関連感染サーベイランス

佐久病院・腎移植患者様用パス

2011 年 11 月 2 日放送 NHCAP の概念 長崎大学病院院長 河野茂 はじめに NHCAP という言葉を 初めて聴いたかたもいらっしゃると思いますが これは Nursing and HealthCare Associated Pneumonia の略で 日本語では 医療 介護関連肺炎 と

pdf0_1ページ目

スライド 1

目次 ページ 1. はじめに 3 2. MRSA 発生時チェックリスト 3 3. MRSA の感染防止対策 5 4. MRSA 患者 家族への説明 指導 7 5. MRSA の治療 7 6. MRSA 感染解除について MRSA サーベイランス 参考文献 11 2


特別支援学校における介護職員等によるたんの吸引等(特定の者対象)研修テキスト

スライド 1

Microsoft Word _ソリリス点滴静注300mg 同意説明文書 aHUS-ICF-1712.docx

<34398FAC8E998AB490F55F DCC91F092CA926D E786C7378>

四国大学紀要 Ser.A No.42,Ser.B No.39.pdf

<593A5C30388AEB8B408AC7979D837D836A B5C8CC295CA8AEB8B408AC7979D837D836A B5C378AB490F58FC796688E7E91CE8DF4837D836A B5C FE18ED243817A8AB490F596688E7E91CE8DF4837D836A B816989FC92F994C5816A2E786C7

僕が、標準予防策をしない理由

院内感染対策マニュアル( 2010年版)

<4D F736F F F696E74202D204E6F2E395F8FC78CF390AB AB490F58FC75F E B93C782DD8EE682E890EA97705D>

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

外来部門

その他の多剤耐性菌

カテーテル管理

割合が10% 前後となっています 新生児期以降は 4-5ヶ月頃から頻度が増加します ( 図 1) 原因菌に関しては 本邦ではインフルエンザ菌が原因となる頻度がもっとも高く 50% 以上を占めています 次いで肺炎球菌が20~30% と多く インフルエンザ菌と肺炎球菌で 原因菌の80% 近くを占めていま

PowerPoint プレゼンテーション

インフルエンザ院内感染対策

PowerPoint プレゼンテーション

重症急性呼吸器症候群 (SARS) 削除. 新興感染症対策を Xに新設. 5. ウエストナイル熱 空気感染する可能性があり, かつパンデミッ これらは改定版 2 刷発行当時 (2004 年 ), クになった際の透析施設の対応を Xに移行. 新興 再興感染症として問題とされてい 4. ウ

院内感染対策サーベイランス実施マニュアル

4. 通常疥癬と角化型疥癬の違い 1) 通常疥癬 (1) 通常疥癬は 長時間の皮膚と皮膚との直接接触によって感染する 稀に寝具やタオル類を介する間接接触感染もあるが 集団感染の危険性は少ない (2) 強い掻痒感を伴い 皮膚症状は丘疹 結節 疥癬トンネルがある 2) 角化型疥癬 (1) 感染経路は通常

病棟における 院内感染対策の視点

その他の多剤耐性菌

通常の市中肺炎の原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌に加えて 誤嚥を考慮して口腔内連鎖球菌 嫌気性菌や腸管内のグラム陰性桿菌を考慮する必要があります また 緑膿菌や MRSA などの耐性菌も高齢者肺炎の患者ではしばしば検出されるため これらの菌をカバーするために広域の抗菌薬による治療が選択されるこ

水痘(プラクティス)

Microsoft Word - JAID_JSC 2014 正誤表_ 原稿

<4D F736F F D D8ACC8D6495CF8AB38ED282CC88E397C38AD698418AB490F58FC782C982A882A282C48D4C88E E B8

2009年8月17日

感染症の基礎知識

第一部院内感染防止体制 院内感染防止のための組織 体制 院内感染の発生を抑止し 感染者の発生後においても感染拡大を制御するためには 病院全体が組織的に感染防止対策に取り組むことが必要とされます また 感染防止対策の実効性を高めるには 病院管理者が積極的に感染対策部門や感染管理担当者を支援し 一体とな

42 HBs 抗原陽性で HBe 抗原陰性の変異株が感染を起こした場合は, 劇症肝炎を起こしやすいので,HBs 抗原陽性 HBe 抗原陰性血に対しても注意が必要である. なお, 透析患者では, 感染発症時にも比較的 AST(GOT),ALT(GPT) 値が低値をとること,HCV 抗体が出現しにくいこ

検体採取法

Microsoft Word - 【要旨】_かぜ症候群の原因ウイルス

目次 石巻赤十字病院の概要 1 防火 防災管理 2 感染防止対策について 4 機密保持及び個人情報保護 9


平成19年度 病院立入検査結果について

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

その他の多剤耐性菌

2015 年 9 月 30 日放送 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE) はなぜ問題なのか 長崎大学大学院感染免疫学臨床感染症学分野教授泉川公一 CRE とはカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症 以下 CRE 感染症は 広域抗菌薬であるカルバペネム系薬に耐性を示す大腸菌や肺炎桿菌などの いわゆる

特別養護老人ホーム愛敬苑 感染症及び食中毒防止のための指針 1. 総則特別養護老人ホーム愛敬苑 ( 以下 施設 という ) は 生活者及び利用者 ( 以下 生活者 という ) の使用する食器及びその他の設備について 衛生管理に努め 衛生上必要な措置を講ずるとともに 医薬品及び医療用具の管理を適正に行

B型肝炎ウイルス検査

はじめに 高齢者施設等で抵抗力が低い利用者をケアするには 介護スタッフの感染予防が必要です 施設は重度の利用者が中心になり さまざまな基礎疾患を抱えているため 感染しやすい状態の方が急増しています 介護スタッフが感染源にならないための予防策と 介護スタッフ自身の安全なケアの方法が重要となってきます

薬剤耐性とは何か? 薬剤耐性とは 微生物によって引き起こされる感染症の治療に本来有効であった抗微生物薬に対するその微生物の抵抗性を言う 耐性の微生物 ( 細菌 真菌 ウイルス 寄生虫を含む ) は 抗菌薬 ( 抗生物質など ) 抗真菌薬 抗ウイルス薬 抗マラリア薬などの抗微生物薬による治療に耐えるこ

webページ掲載原稿CRE コピー.pdf

PowerPoint プレゼンテーション

2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメ

院内感染対策マニュアル

PowerPoint プレゼンテーション

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

pdf0_1ページ目

「             」  説明および同意書

それでは具体的なカテーテル感染予防対策について説明します CVC 挿入時の感染対策 (1)CVC 挿入経路まずはどこからカテーテルを挿入すべきか です 感染率を考慮した場合 鎖骨下穿刺法が推奨されています 内頚静脈穿刺や大腿静脈穿刺に比べて カテーテル感染の発生頻度が低いことが証明されています ただ

「薬剤耐性菌判定基準」 改定内容

その他の多剤耐性菌

Transcription:

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 平成 17 年 6 月 17 日作成平成 23 年 2 月 17 日改訂平成 29 年 2 月 16 日改訂平成 30 年 9 月 20 日改訂

疾患の概要 MRSA( メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 ) は 皮膚常在菌である黄色ブドウ球菌の 1 つであり 多くの人が保菌している それ故 院内感染対策において頻回に遭遇する病原体である MRSA が常在菌のようになっている現状では 定着感染を見分け対応することが重要である また 最近では院外からの持ち込み MRSA( 入院後 48 時間以内に分離 ) の出現が問題となっている 持ち込みの MRSA に対する明確な定義はないが 他施設からの持ち込まれた MRSA と 市中獲得型 MRSA に分けられる 人体における黄色ブドウ球菌の部位別定着率 Wertheim HFL., Melles DC., Vos MC.,et al.:the role of nasal carriage in Staphylococcus aureus infections, Lancet Infect Dis,5,751 62,2005. 1) 症状 (1) 定着の場合が多い (2) 表在性感染 : 皮膚感染症 中耳炎など (3) 深在性感染 : 髄膜炎 肺炎 腹膜炎 腸炎 敗血症 2) 検査 検査材料から分離された黄色ブドウ球菌とその抗菌薬感受性で診断

3) 治療 (1) 抗 MRSA 薬の適応は MRSA による感染症である 患者から MRSA が分離されても定着状態であり 発熱や白血球数の増加 CRP 上昇などの感染兆候を欠く場合は 基本的には治療の適応でない しかし 本来無菌である部位 ( 血液 髄液 血管内留置カテーテル 埋没された留置物 ) から MRSA が検出された場合は 治療の適応となる 4) 院内感染防止対策 (1) MRSA 感染症の報告検査科で MRSA と判定 電子カルテに入力掲示板に赤でコメント 1 病棟看護師長は 電子カルテより 多剤耐性発生報告書を入力する 2 ICT は MRSA 検出数を週報 月報にて ICT 会議 院内感染対策委員会で報告する 3 ICT は MRSA 感染率を毎月 院内感染対策委員会で報告する (2) 具体的感染防止対策 1 接触感染防止対策の実施すべての MRSA 患者 ( 感染者と定着者 ) は 他の患者へ感染させる危険性がある しかし MRSA が分離された患者をすべて個室隔離することは 個室数や倫理的視点からも現実的ではない MRSA が患者の臨床検体から分離 同定された場合 患者本人の感染か定着かを判断した上で 病棟全体のリスクアセスメントを行い 病室を配置する 患者の分類 A 活動性 MRSA 患者 B C 感染源になる可能性のある保菌者 行動制限の必要のない保菌者 表 1 MRSA 患者の感染対策上の分類症状 1 発熱 咳 下痢 嘔吐 排膿 膿尿 腫脹 発赤などの臨床症状がある 2 白血球数 CRP など炎症反応が高い 3 肺炎の場合 : 胸部 X -P で肺炎像を認める 1 咳 下痢 嘔吐など環境を汚染する症状がある 2 痰から検出の場合 : 吸引が必要である 3 尿から検出の場合 : 尿路カテーテル挿入中である 4 衛生行動が十分に取れない 1 臨床症状がない 2 衛生行動がとれる

表 2 MRSA 患者に対する感染防止対策の実際 A: 活動性 MRSA 患者 B: 感染源になる可能性のある保菌者 C: 行動制限の必要のない保菌者 ナースステーションの患者表示板に シールを貼る 病室 個人防護用具 器材 ゴミ 食器 リネン 洗濯 入浴 清掃 検査 移送 スタンダードプリコーション + 接触感染防止対策 1 個室またはコホーティング 2 病室のドアに 接触感染予防用のマグネットを貼る ( 感染経路別予防策 接触感染防止対策の項参照 ) 1 手袋 : 病室の入り口で着用し 出る時に外す 2 エプロン : 患者に直接 接するときに着用 処置 ケアに応じて 袖あり と 袖なし を使い分ける 3 マスク ゴーグル : 処置 ケアに応じてを着用 4 個人防護用具は自らが汚染しないように正しい方法で脱ぐ 1 器材は可能な限りディスポ製品を使用し 個人専用とするやむを得ない時はアルコール消毒をして室外へ出す 2 洗浄 消毒は一般の器材と同じ方法で良いが 洗浄時に環境を汚染しないように注意する 1 ゴミは病室内で袋の口を閉じ 室外に出す 2 針は携帯用ハザードボックスを持参し廃棄する 使用後は 携帯用ハザードボックス側面と底をアルコールクロスで拭いて室外に出す ( 室内に置かない ) 1 食器は一般の洗浄でよい ( 箸 スプーンも一般の洗浄でよい ) 1 患者の洗濯物はビニール袋に入れて持ち帰り 一般の洗濯でよい 血液 膿汁による汚染かある場合は 家庭用ハイターを使用 2 院内洗濯リネン : 透明ビニール袋に入れ 院内洗濯用の汚染リネンカートに入れる 3 院外リースリネン : 透明ビニール袋に入れ 院外汚染リネンカートに入れる 運搬時の接触汚染拡大を防ぐため 1 入浴は最後とし 浴槽は洗剤で洗い流す 1 病室清掃は 除菌クロス ( アルコール ) を用い 毎日行う ( 隔離解除後の病室清掃も同様 ) 1 検査時 ( 放射線 生理検査等 )MRSA であることを 検査依頼場所に伝える 1 咳嗽等の呼吸器症状がある場合 : 患者はサーシ カルマスクを着用 2 創部から膿汁や血液出る場合 : 創部をガーゼなどで覆う スタンダードプリコーション 1. 病室は大部屋で行動はフリーでよい 2. 易感染性患者との同室は避ける 3. 易感染性患者の病室を訪問しないよう指導する 4. 手洗い うがい 速乾性アルコール手指消毒剤による手指消毒を指導する 5. 必要時 サージカルマスクの着用を指導する 易感染者 免疫不全状態にある患者 ( 悪性腫瘍 免疫抑制剤又は抗癌剤投与等 ) 侵襲が大きい手術前後の患者 ( 心臓 大血管手術 腹部大手術患者 ) IVH 施行患者 気管内挿管等による長期呼吸器管理患者 広範囲の熱傷または外傷患者 面会 1 原則として家族のみに制限する乳幼児や体調の悪い人などの面会は避ける 2 面会後の手指消毒 うがいについて説明する 家族が患者と密に接する場合はエプロンを着用 パンフレット 患者さん ご家族へ を渡す

2 隔離の解除 抗生物質の投与終了後 2 週間に 3 回の細菌培養結果が MRSA 陰性の場合 隔離解除とする 但し 抗生物質投与で再発の可能性が高い場合は 長期経過後 (6~12 ヶ月後 ) 再発することもあることを考慮し 適宜検査することが望ましい 創部から MRSA が検出されている場合 : 排膿がなくなり創が閉鎖していれば 隔離解除とする 血液培養から検出された場合 : 症状が消失していても 2 週間に 3 回の細菌培養の陰性を確認して隔離解除とする 3 MRSA 患者の発生予防抗生物質投与の適正化に努め 不必要な抗生物質の使用を控える また 寝たきり患者において褥創の発生を予防する 引用 参考文献 1. Wertheim HFL.,Melles DC.,Vos MC.,et al.:the role of nasal carriage in Staphylococcus aureus infections, Lancet Infect Dis,5,751 62,2005. 2. 満田年宏訳 著 : 多剤耐性菌管理のための CDC ガイドライン 2006, ヴァンメディカル, 2007 3. 栗山千果訳 : 医療施設におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 MRSA の感染制御ガイドライン 2006 4. 賀来満夫他 : 感染対策 ICT ジャーナル MRSA VS ICT, Vol.1 No. 1, ヴァンメディカル, 2006 5. 矢野邦夫訳 : 医療環境における多剤耐性菌の管理, 2006 6. 矢野邦夫訳 : 隔離予防策のための CDC ガイドライン : 医療現場における感染性微生物の伝播の予防, 2007

患者さん ご家族の皆さまへ MRSA は薬に対し抵抗力をもった黄色ブドウ球菌です 通常 健康な方がこの菌に触れても問題はありません しかし 高齢者や抵抗力が落ちた方 乳児 手術後の患者さんにおいて 肺炎や腸炎など重篤な感染症を引き起こす場合があります そのためその方々への影響を考えて お部屋を別にさせて頂く場合があります また医療従事者は 処置やケアに応じて手袋やエプロンなどを着用し 感染防止に努めさせて頂きます 以下の点に ご協力下さい 1. 面会はご家族の方のみにして下さい また 風邪をひいている方 乳幼児の面会はご遠慮下さい 2. 面会の前と後に 手を病室入り口のアルコールで消毒して下さい ( マスク エプロンなどが必要な場合は ご説明します ) 3. 洗濯物はビニール袋に入れて持ち帰り 通常の洗濯をして下さい 血液 膿汁 ( うみ ) などの汚染がある場合は 塩素系漂白洗剤 ( ハイター等 ) で 消毒後 洗濯して下さい ご質問等がございましたら お気軽に看護師に声をかけてください 稲沢市民病院院内感染対策委員