本当の AI: 情報処理技術の先鋒としての AI 中島秀之 公立はこだて未来大学
略歴 1977 AIUEO ( 私的勉強グループだが AI 関連翻訳書 ( エキスパートシステム メンタルモデル の出版もやった ) 創始者の 1/4 ( 命名したのも私 ) 1978 MIT AI Lab 交換留学 (Carl Hewitt) 1983 Prolog 産業図書 1983 東大大学院情報工学専門課程修了 ( 工学博士 ), 電総研入所 1983 知識表現と Prolog/KR 産業図書 (D 論の日本語訳 ) 1985 Syracuse Univ. 夏だけ客員 (PD) (Alan Robinson) 1989 Stanford CSLI 在外研究状況依存性 (Jon Barwise, Stanley Peters) 1991 電総研協調アーキテクチャ計画室長 2000 産総研サイバーアシスト研究センター長 2004-2016 公立はこだて未来大学学長 2010 Handbook of Ambient Intelligence and Smart Environments Springer 2015 知能の物語 公立はこだて未来大学出版会 2016 東京大学特任教授
私の研究分野の変遷 1978-1990 Logic Programming( 第五世代プロジェクト当時 ) IJCAI 85 他で発表 International Joint Conference on AI (AI 最高峰の国際会議 ) 1988-2000 状況理論 IJCAI 91 1990-date 協調計算,Multiagent systems JCAI 97 2000-date Ubiquitous computing IJCAI 07( 招待講演 ) 2003-date 構成的情報学 2006-date デザイン ( 科研費 デザイン学 領域立ち上げ ) とサービス工学
知能 の定義 情報が不足した状況で適切に処理する能力 中島秀之 : 知能の物語 2015, p.154 情報が不足 ヒューリスティクス AI 情報が完全 アルゴリズム IT
AI は IT の先鋒 解法のわからない ( アルゴリズムにならない ) 問題の処理が AI 実用化されると AI とは呼ばれなくなる 郵便番号自動読み取り カメラや Facebook の顔認識 航空機予約システム ( 安い経路の探索 )
情報処理とは INFORMATION PROCESSING
情報 information 三つの世界観 通信路容量 C = W log2(1+(s/n)) : シャノン エネルギー energy E =mc 2 : アインシュタイン 物質 matter 変換可能ということは同じものの別の側面 各層に独自の法則 ただし矢印が一方通行であることに注意 下から上は創発するが逆は不可 7
情報技術 (Information Technology) 情報は第三の世界観 Cf. アービン トフラー 第三の波 第一 : 物質 ( 衣食住 ) 第二 : エネルギー ( 産業革命 ) 単なる通信技術ではない
情報は物質, エネルギーに次ぐ世界観 農耕社会 - 衣食住 工業社会 ( 産業革命 ) ハードウェア 情報社会 ソフトウェア コンテンツ ビッグデータ 人間社会 価値, 物語 サービス AI 物質エネルギー情報個の復権? 現在
加速する歴史 (Society 5.0) 1. 狩猟社会 ( 数百万年 ) 2. 農耕社会 ( 数万年 ) 物質の制御 3. 工業社会 ( 数百年 ) 4. 情報社会 ( 数十年 ) 5. 人間社会 エネルギーの制御情報の制御シンギュラリティ!
Singularity= 特異点
Kurzweil のビジョン ( 対数目盛 )
時間軸を線形にすると
情報技術には 2 つある ( 通信だけではない ) 1. 情報通信技術 (ICT): 情報を加工しない - telephone 電話 - Internet インターネット 2. 情報処理技術 : 情報を加工する ( 通信 / 表示しないことも ) - data mining ビッグデータからの知識発見 (1 も使う ) - data science e サイエンス / データ中心科学 (1 も使う ) - expert systems エキスパートシステム - voice recognition 音声認識 - bioinformatics 遺伝子解析 - fly/drive by wire ( 飛行機や車の ) 操縦系の制御 - weather forecast 天気予報
情報の通信 両端は人コンピュータは内容に関与しない 人 コンピュータ 人 狼煙電話放送インターネット
情報の処理 人が関与しない場合もあるコンピュータ (AI) が内容を操作 対象 コンピュータ 自動制御工作機械, ロボット 対象 コンピュータ データマイニング自動翻訳ロボット 人 コンピュータ 人 仮想現実 CAD
ロボット AI IT 連続概念であることを示したいだけの概念図 鉄腕アトム HAL9000 高 要求される知能レベル 低 ロボット AI IT 介護ロボット 機械学習 レスキューロボット 自動翻訳 囲碁プログラム 自動運転 検索エンジン 株取引 シミュレーション 自動操縦 ワープロ 産業用ロボット 表計算 インターネット 不明確 タスクの明確さ 明確
ロボット = 手足を持った知能 Christmas Bush (designed by Hans Moravec)
AI/IT が可能にする 新しい社会システム
AITechnology が社会を変える 柔軟な組織運営 ( 新しい会社や社会の形態 ) 大企業 / 商社 / 学会は不要 資本主義や民主主義のあり方も見直せるか? (AI に仕事を奪われて ) 仕事がなくても暮らせる社会 Intelligence Amplifier: 知能ブースターとしての AI 人間と分業 & 協調 人間は創造的仕事 ( デザイン ),AI は知的力仕事 プラグインによる脳機能の補強 ( 攻殻機動隊の世界 ) AI ものづくり 自動運転
知能研究の立場 ( 変遷 ) 1. 物理記号システム仮説 (physical symbol system hypothesis): 知能の本質は記号処理にある (Newell, Simon ら AI 創始者たち ) 2. 知能の本質はパターン認識 ( 世界の分節化 ) にある ニューラルネット派, 画像認識派 Deep Learning 3. 環境との相互作用の重視 Brooks の服属アーキテクチャ (subsumption architecture) オートポイエシス (autopoiesis) 状況依存性 (situatedness)
Neural Networks の変遷 パーセプトロン Perceptron 線形分離可能な学習のみ PDP(Parallel Distributed Processing) Backpropagation ( 誤差逆伝播 ) の実用化により多層の学習が可能に 初めて隠れ層のある ( 三層以上の )neural networks の学習法を示したのは甘利俊一 (1967) Deep Learning ( 超多層 ) PDP の一種. 自己想起学習により概念化.
Alpha GO 1. 13 層の SL (supervised learning) policy network 次の一手の教師付き学習 DB から 3 千万局面 2. RL (reinforcement learning) policy network SL policy network と同構造 対戦により強化学習 ( 他のプログラムや自分自身と ) 1 手 10 万回 3. Value networks 局面の評価関数の強化学習 4. RL policy network と Value network を使った探索
服属 (Subsumption) アーキテクチャ 知能システム 認識 推論 Brooks 昆虫の知能 水平型から垂直型へ 上位が下位に介入 (subsume) 行動 環境
McLean の三位一体説
三位一体説 知能システム思考情動生存環境 大脳新皮質 ( 新哺乳類脳 ): 思考 大脳辺縁系 ( 旧哺乳類脳 ): 情動 大脳基底核 + 脳幹 ( 爬虫類脳 ): 生命維持 注 : 現在は進化過程としては認められていないが, 考え方としては面白い
社会知能の考え方 集団としての感情 知能 模倣 ( ミラーニューロン ) 他人のモデル アリの社会は一個体と見た方が良いかもしれない ( 個々の細胞が知能を持った生物?) 社会としての知能 社会制度 文化 ( ミーム ) 社会としての進化 共進化 教育システムや文化の遺伝と進化
スケールに厚いシステム 植物は複数のスケールで有意 km 森 m 樹形 mm 細胞レベル A 分子レベル (DNA)
1 st edition 1969 2 nd edition 1981 3 rd edition 1996 Herbert Simon: The Sciences of the Artificial Everyone designs who devises courses of action aimed at changing existing situations into preferred ones.
学習
遺伝子と学習の共進化 学習が重要である例 鳥やくじらは歌を親から学習する 発生器官が必要 音程認識能力が必要 恐竜は集団による狩を教育されねばならない ( Lost World - Jurassic Park II より ) 母親から離して人間に育てられたチンパンジーはセックスができない ( 性的興奮はする )
進化とは要するに 進化論的方法 [ 遺伝子形の ] ランダムな生成と [ 表現形の ] 選択 ( 基準は動的に定まる ) 選択 次世代の種 生成 環境 ( 他人や社会システムを含む ) における知識や経験の集積を忘れてはならない ( Lamarckism)
問題 進化計算モデルや FNS は学習を捉えていない 現在改変中
学習を考慮した進化 生成 環境環境 相互作用と選択 環境 選択選択
T 型 深い専門 広い知識 / 興味 T 型人材 / アトム型人材 アトム ( 原子 ) 型 自分の専門分野が核 電子の雲が周囲の原子と相互作用してより大きな分子を構成
未来
Singularity( 特異点 ) Ray Kurzweil: The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology (2006) ポスト ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき (2007) 怖がる人の前提は二つ ムーアの法則等 ( コンピュータの処理能力が脳を超える ) 人間より賢いプログラムができる そのプログラムが自分より賢いプログラムを作り続ける ( 再帰的 ) 人間を超える
技術の加速 指数関数的加速 加速度の加速 (2 次 ) 人間が生物を超える コンピュータパワー インプラント ナノテク Kurzweil の議論
ローカルな S 字発展の連続
AI は人間を超えるか? コンピュータ : ムーアの法則 人間の認知機能 教育あり singularity 教育なし
人間より賢いプログラムは ( 人間に ) 書けるか? 速度だけではダメ 人間より賢いプログラム 人間がプログラムできるか? 学習によって人間より賢くなれるか? 将棋 / 囲碁プログラムの例 作者より強いプログラムは作られていない 例外 : モンテカルロ法 学習によって強くなる 棋士 ( 棋譜 ) から学ぶ
知能の物語 ( 中島秀之 2015) から ある石の集団が死ぬとわかったときに, これをどうするかは別問題である. 振り代わるなりして, その石の死を無駄にしないのが知能であり, このあたりのプロの技は注目に値する. このような失敗からの脱出は知的活動のなかでも最もむずかしい部類に属すると思う. 外界からの刺激に反応するだけでは対処できない. 記号処理をもう一度見直す必要があると考えている. 初期の記号処理盲信ではなく, 環境との相互作用などを考えた新しい記号処理パラダイム { 脚注 : 最近 Deep Learning が, 概念獲得を含めた学習ができるということで期待されている. ニューラルネットワークの枠組みで記号処理ができるということである. しかしながら, ここで議論しているような一段抽象的な推論能力, あるいは自分の知識や推論に関するメタ学習能力に関してはまだ示されていない.} が欲しい.
機械学習の問題点 過学習 (over fitting) 騙され易い ( ある意味の過般化 ) 誤認識に導くパターンが容易に作れる 人間にも錯視はあるが トップダウン予期で解決可能
機能環 ユクスキュル 生物から見た世界 図 3
ヤドカリの環世界イソギンチャクに出会ったときの行動 殻付き 保護 殻無し 殻 空腹 食糧
環境との相互作用を重視する知能観 知能システム主体認識推論行動環境 Uexküll: 環世界 Gibson: アフォーダンス Maturana & Varela: オートポイエシス ( 自己産出 ) 神経システムには入力も出力もない 状況依存性 環境に計算させる
AI プロジェクト 第五世代に続く世界的インパクトが欲しい ボトムアップ ( ニューラルネット ) とトップダウン ( 記号処理 ) の融合 脳科学の知見と AI 技術を融合し 予期知能 の実現を目指す
トップダウン ( 予期主導 ) とボトムアップ ( 入力主導 ) の融合 構成的な知能の実現を目指す 大脳皮質の 6 層構造をヒントに Deep learning は基本的にはボトムアップ処理 人間の環境認識 トップダウンが主 脳が処理する情報の 93% がトップダウンだという説も ( 池上高志曰く ) 機械学習の限界 ( 過学習や騙されやすいこと ) を超える鍵 ボトムアップは引金
木村敏の Noema と Noesis 演奏のイメージ C1: 演奏 概念世界 C3: 構想音楽 C2: 聴取 楽器の演奏の例 C1: 演奏行動 C1 2: 楽器の発音, 反響, 聴衆の反応等 C2: 奏でた音楽の聴取 C3: 次の演奏行為の構想 C 2 : 環境との相互作用 楽器の発音 実体世界
FNS ダイヤグラム : 構成の方法論の定式化 目標 C1: 生成 C 2 : 環境との相互作用 C3: 創記 (scripting) 生成物 概念世界 性質 C2: 分析 実体世界 Future Noema Synthesis 実際にはフラクタル & スパイラル 矢印を展開すると FNS たとえば C2 は科学の仮説生成ー検証ループ : 構成は分析を包含している 目標が変化していくのでスパイラル
構成的知能 : 志向性のある意図が認識をガイドする 意図 C1: 動作 C 2 : 環境との相互作用 C3: 志向性 行為 概念世界 現状認識 C2: 観測 実体世界 こちらの方が木村敏の Noema と Noesis に近い 未来を構成的に作り出すことのできる知能 C1: トップダウン フィードバックあり C2: ボトムアップ 観測にもトップダウン予期が入る 環境中の見たいものだけを見る (Cf. 環世界 ) C3: 思考, 概念操作
知覚循環モデル (Neisser 1976) C3 予期モデル 外界のモデル C1 C2 C : 環境との相互作用 2
まとめ :AI 研究の方向性 ( 歴史 ) 独立知能から環境の重視へ 環境の制御 / デザインを視野に含める 個から社会へ これらはどちらも東洋思想的 日本の出番