10_皆生養護学校

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課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

はじめに 我が国においては 障害者の権利に関する条約 を踏まえ 誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い 人々の多様な在り方を相互に認め合える 共生社会 を目指し 障がいのある者と障がいのない者が共に学ぶ仕組みである インクルーシブ教育システム の理念のもと 特別支援教育を推進していく必要があります

Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

2 学校は 防災や防犯についての体制作りや情報収集を適切に行っている 十分 おおむね十分 やや十分 不十分 分からない 不明 計 学校は 防災や防犯についての体制作りや情報収

学校評価保護者アンケート集計結果 2 学校は 防災や防犯についての体制作りや情報収集を適切に行っている 十分 おおむね十分 やや十分 不十分 分からない 不明

実践 報告書テンプレート


平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

生徒指導の役割連携_四.indd

3 昨年度の校内研究の成果を基に本校では 平成 24 年度の校内研究で 授業における 手立て と 評価 のつながりを意識した授業づくりについて 指導評価シート を基に検討した 平成 24 年度北海道鷹栖養護学校研究紀要 また 平成 25 年度から 2 カ年計画で 般化 を目的とした指導方法について研

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資料5 親の会が主体となって構築した発達障害児のための教材・教具データベース

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(2) 記録用サポートブックの作り方 記録用サポートブックは 一般様式 を使って書きます 一般様式 は 項目 本人の状況 支援方法 の 3 つの枠からできています 様式一般様式支援者 : 場所 : 日付 : < 項目 > 例 ) 話を聞く( 授業中 ) 使い ポイント 方 気になるな 困ったな と思

4. タブレット端末の利用状況 ( 利用機材の内容と利用のねらい ) ハードウェア機材名 :ipad ねらい : 水が流れる様子や地形が変化した様子を確認できるよう 動画で撮影し記録する 上流 中流 下流それぞれの様子が撮影できるよう ipadは3 台準備する 機材名 :ENVY110( 複合印刷機

Taro-自立活動とは

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1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

1 寿台養護学校 松ろうキャンパス 院内教室対象生教育相談 学校見学申込書 H30 年度より形式 方法が変わりました 1 別紙 教育相談カード 保護者記入用 学校記入用 と一緒に 寿台養護学校教育相談担当 までお申し込みください 2 個人情報保護のため 郵送にてお送りください 3 宛先

教員の専門性向上第 3 章 教員の専門性向上 第1 研修の充実 2 人材の有効活用 3 採用前からの人材養成 3章43

ICTを軸にした小中連携

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PowerPoint プレゼンテーション

3 特別支援学級における学習指導案 特別支援学級においても 学習指導案は授業の設計図としての働きに変わりはありません しかし 特別支援学級では 児童生徒の実態から指導の内容や計画を考えることに大きな意味があります 通常の学級の学習指導案では 例えば 単元について は学習指導要領に沿った指導計画に基づ

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

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教職課程を開設している学部・学科の専任教員数及び授業科目等_2018

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研究課題 副題 学校名 特別支援学校におけるタブレット端末の活用 ~ 学習支援を横糸に 自立支援を縦糸に織り込む多面的な活用 ~ 兵庫県立西はりま特別支援学校 所在地 兵庫県たつの市新宮町光都 ホームページアドレス

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて


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実践 報告書テンプレート

タイトル(MSゴシック太字16pt)

7月25日(水)  発達研修会

「標準的な研修プログラム《

010国語の観点

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学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

教育支援資料 ~ 障害のある子供の就学手続と早期からの一貫した支援の充実 ~ 平成 25 年 10 月 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

愛媛県学力向上5か年計画

授業の構成要素 学び合う授業で育つ 3 つの力 資料 2 基礎 基本の力知識 理解 技能 問題解決力思考力 判断力 表現力 想像力 学ぼうとする力学習意欲 自己有用感 身に付けた知識 技能を活用したり その成果を踏まえた探究活動を行う中で学び合う授業を展開する 教師の役割 < 問題提示の工夫 > 多

1

2 研究の歩みから 本校では平成 4 年度より道徳教育の研究を学校経営の基盤にすえ, 継続的に研究を進めてきた しかし, 児童を取り巻く社会状況の変化や, 規範意識の低下, 生命を尊重する心情を育てる必要 性などから, 自己の生き方を見つめ, 他者との関わりを深めながらたくましく生きる児童を育てる

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15


山梨大学教職大学院専攻長 堀哲夫教授提出資料

西ブロック学校関係者評価委員会 Ⅰ 活動の記録 1 6 月 17 日 ( 火 ) 第 1 回学校関係者評価委員会 15:30~ 栗沢中学校 2 7 月 16 日 ( 水 ) 学校視察 上幌向中学校 授業参観日 非行防止教室 3 9 月 5 日 ( 金 ) 学校視察 豊中学校 学校祭 1 日目 4 9

A4見開き

特別支援教育 教育経営研修班個人研究テーマ 教職員研修における特別支援教育に関する調査研究 高等学校教職員研修実施状況や意識調査を通して 指導主事仲本邦也 Ⅰ テーマ設定の理由 平成 19 年 4 月に 学校教育法等の一部改正に関する法律 が施行され 盲学校 聾学校 養護学校 ( 以下盲 聾 養護学

本論文のタイトル

実践 報告書テンプレート

p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

(3) 資料について本資料は混雑したお店で孫が積んである段ボールを崩してしまい困っているおばあさんの代わりに わたし とその友達の友子が 整理していると 事情の知らない店員に叱られてしまう その後 おばあさんにお礼を言われたが わたし と友子はすっきりしないで帰る 数日後 店員からお詫びの手紙が来た

系統的で一貫性のあ評価指標 評価指標による達成度 総合評価 るキャリア教育の推進に向けて 小 中 1 卒業後の生活につながる客観的 < 評定 > 学部段階での客観的アセスメントに基づいた指導計画 指標に基づいた卒業を立案することができる A B C 後の生活を見据えた教育活動につながる 2 立案され

2018(H30)学則別表2新 コピー.xls

市中学校の状況及び体力向上策 ( 学校数 : 校 生徒数 :13,836 名 ) を とした時の数値 (T 得点 ) をレーダーチャートで表示 [ ] [ ] ハンドボール ハンドボール投げ投げ H29 市中学校 H29 m 走 m 走 表中の 網掛け 数値は 平均と同等または上回っているもの 付き

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PISA 型読解力と国語科の融合 -PISA 型読解力とワークシート- ( ア ) 情報を取り出す PISA 型読解力ア情報の取り出しイ解釈ウ熟考 評価エ論述 情報を取り出す力 とは 文章の中から無目的あるいは雑多に取り出すことではない 目的つまりこの場合は学習課題に沿って 自己の判断を加えながらよ

第 1 部第 3 章特別支援教育推進計画 ( 第二期 ) の基本理念と施策の方向性 1 東京都特別支援教育推進計画 ( 第二期 ) の基本理念東京都特別支援教育推進計画 ( 前計画 ) の基本理念発達障害を含む障害のある幼児 児童 生徒の一人一人の能力を最大限に伸長するため 乳幼児期から学校卒業後ま

2 研究の対象者 今回の研究に関しては 宮崎県立都城さくら聴覚支援学校の中学部生徒を対象とした また 高齢聴覚障害者の戦争体験映像については 実際にインタビューを行い それを DVD に収め 授業で使用することにした インタビューを行う高齢聴覚障害者は できるだけ 宮崎県立都城さくら聴覚支援学校の卒

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山口大学教育学部附属特別支援学校通級指導教室におけるICT 活用研修プログラム開発プロジェクト 通級指導教室における ICT 活用に関するアンケート タブレット端末の活用事例 本校では 地域の特別支援教育の充実に貢献することを目的に 山口県教育委員会 山口大学と連携を図りながら

単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

詳細に伝えるためにインタビューやアンケートを実施して情報を収集したりする活動を設定することにする 整理する 場面では,CM のテーマをもとに集めた情報の中から伝えたいことが受け手にしっかりと伝えることができる情報を選択する また, 選択肢した情報を加工しながら, 伝えたいことが伝わりやすい CM の

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企救特別支援学校( 病弱 身体虚弱の小 中学部 高等部 ) 門司特別支援学校( 病弱 身体虚弱の小 中学部 高等部 ) 北九州特別支援学校( 肢体不自由の小 中学部 高等部 ) 八幡西特別支援学校( 病弱 身体虚弱 肢体不自由の小 中学部 高等部 ) 2 北九州市における発達障害関連の施策 (1)

≪障がい者雇用について≫

平成 27 年度 ICT とくしま創造戦略 重点戦略の推進に向けた調査 研究事業 アクティブラーニングを支援する ユーザインターフェースシステムの開発 ( 報告書 ) 平成 28 年 1 月 国立高等専門学校機構阿南工業高等専門学校

いろいろな衣装を知ろう


平成18年度標準調査票

個に応じた最適な環境設定のための TT の役割について ~ 特別支援学校高等部の英語教育の模索と同僚教師との連携を通して ~ 北海道拓北養護学校 鴻江康人 1 はじめに昨年度から TT をテーマに 同僚性の高い授業構築の方策を検討してきた 今年度新たに高等部所属となったことにより 対象となる生徒の実

群教セ I01-08 平 集 特 情緒障害 中学校自閉症 情緒障害特別支援学級における人と関わる意識を高める支援の工夫 自己肯定感を高めるための振り返りと ソーシャルスキルトレーニングを通して 特別研修員田子賢一 Ⅰ 研究テーマ設定の理由 自閉症 情緒障害特別支援学級の生徒は 社会生活

安中総合学園の ステップアップサポート事業

Microsoft Word - 研究の概要他(西小) 最終

をゆさぶる 視点の切り替え を授業に仕組むことであり その際 タブレット PC や書画カメラ 電子黒板などを活用する しかしながら 教育の情報化に関する実態等の調査 ( 守山市 2015) によると 1 教材研究 指導の準備 評価などに ICT を活用する能力 2 授業中に ICT を活用して指導す

教育学科幼児教育コース < 保育士モデル> 分野別数 学部共通 キリスト教学 英語 AⅠ 情報処理礎 子どもと人権 礎演習 ことばの表現教育 社会福祉学 英語 AⅡ 体育総合 生活 児童家庭福祉 英語 BⅠ( コミュニケーション ) 教育礎論 音楽 Ⅰ( 礎 ) 保育原理 Ⅰ 英語 BⅡ( コミュニ

17一宮聾号外

第5学年  算数科学習指導案

聴覚障害特別支援学校(聾学校)で取り扱われる特徴的な自立活動の内容に関する調査

補足説明資料_教員資格認定試験

ICT による新しい学び 急速な情報通信技術 (ICT) の進展やグローバル化など 変化の激しい社会を生きる子供たちに 確かな学力 豊かな心 健やかな体の調和のとれた 生きる力 を育成することがますます重要になってきています 2

1. 調査結果の概況 (1) の児童 ( 小学校 ) の状況 < 国語 A> 今年度より, ( 公立 ) と市町村立の平均正答率は整数値で表示となりました < 国語 B> 4 国語 A 平均正答率 5 国語 B 平均正答率 ( 公立 ) 74.8 ( 公立 ) 57.5 ( 公立 ) 74 ( 公立

案3                            ⑤なかまの誘い方(小学校低学年)

トコラージュ というメディアの形態を提案する 本単元では 説明文の 構成メモ をフォトコラージュの形でまとめる このことにより 資料を活用して説明文を書くことが容易になる フォトコラージュとは次に示すように 2 枚以上の写真と それに対する説明文を対応させた情報伝達の形式である 本学級では 社会科の

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(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

平成 30 年度なごや小学校努力点推進計画 1 研究主題なかまとともに感性輝くなごやっ子 (1 年次 ) 2 研究主題について本校では 昨年度までの努力点研究において 道徳や特別活動の時間を中心に 子ども一人一人の成長と互いの認め合いをめざすことで 子ども自らが なごや小でよかった と感じられるよう

Transcription:

平成 28 年度スーパーバイザー事業報告書 発達や障がい特性に応じた指導 支援 ~ 感覚と運動の高次化理論を活用した指導 支援の充実 ~ 鳥取県立皆生養護学校 スーパーバイザー : 淑徳大学池畑美恵子助教 1 はじめに (1) 学校経営方針本校は 肢体不自由と病弱 ( 高等部 ) の特別支援学校である 学校目標を 学び 輝き 感動のある学校 とし それに迫るために学校像 ミッションを設定している めざすべき教師の姿としては 以下の 3 点を掲げている 1 一人一人の子どもに応じた指導ができる教師 2 保護者に寄り添い 適切な対応ができる教師 3 学校組織の一員として協働できる教師 (2) 一人一人の子どもに応じた指導の現状特別支援学校の教師には 個々の子どもの障がいの状態や教育的ニーズに応じた指導が求められている そういった教師を育成するために 本校では研究 研修部が中心となり各種研修会を実施してきた 教材を活用した学習に関しては 平成 23 年度から 感覚と運動の高次化理論 の研修を行い 一人一人の子どもに応じた指導を深化してきた (3) 感覚と運動の高次化理論を活用した指導 支援感覚と運動の高次化理論は 教材を活用した学習支援を発達に応じて進めていくことができる点で分かりやすく使いやすい 特別支援学校や就学前施設の中で注目されるようになってきている ( 高橋,2015) 感覚と運動の高次化理論の特徴は 子どもの発達を 感覚と運動のつながり と その処理システム の高次化として捉え 4 層 8 水準の枠組みの中で発達支援につながる学習を展開する点である ( 宇佐川,2007) 本校では これまでの取り組みにより以下の成果があがった 1 子どもの実態把握ツールの開発と活用 2 教材や教材を用いた指導 支援方法の充実 3 教材室の整備その結果 全国肢体不自由教育研究大会で実践発表できる程 指導 支援のレベルが向上してきた しかし 本年度のアンケート調査では 感覚と運動の高次化理論を知らない教師の数が知っている教師の数を上回るという結果であった 教師の異動により 理論についての学校としての専門性が低下していると考えられた 新たな研修機会を作る

ことで 一人一人の子どもに応じた指導 支援の充実をさらに目指す必要があった 2 研究のねらい 感覚と運動の高次化理論を活用し 一人一人の子どもに応じた指導 支援が充実する 3 研究内容 (1) 対象となる授業小学部 中学部 高等部から 1 名ずつ対象となる児童 生徒を選び その担任との教材を使った授業を対象授業とした (2) 年間計画授業公開を 2 回 (6 月 12 月 ) 実施した 当日はスーパーバイザーを招き 各授業を 45 分間ずつ参観してもらい 授業後に教師への助言を 20 分間ずつ受けるようにした 授業公開の前後の期間 ( 下の に示した部分 ) は 実践を振り返ったり 充実させたりしながらスーパーバイザー助言活用シートを記入する期間とした 4 月 5 月 6 月授業公開 スーパーバイザーによる助言 ( 第 1 回 ) 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 指導 支援上の教師の困り感の整理 助言の取捨選択 方法や手立ての修正 児童 生徒の変容の整理 教師自身の変容の整理 12 月授業公開 スーパーバイザーによる助言 ( 第 2 回 ) 1 月 2 月 3 月 助言の取捨選択 方法や手立ての修正 児童 生徒の変容の整理 教師自身の変容の整理 (3) スーパーバイザー助言活用シートの活用先行研究 ( 諫早特別支援学校,2008) を参考にしてスーパーバイザー助言活用シートを利用することとした その利点として 以下の事を想定した 1 教師が授業で困っている内容をスーパーバイザーに事前に伝えることができる 2 教師がスーパーバイザーの助言をもとに 指導 支援を充実させていくための道筋が分かりやすい 3 教師が行ってきた指導 支援により 子どもの変容を記録しておくことができる 4 指導 支援が充実していく過程を振り返り 教師自身が自分の変容に気づくことができる

スーパーバイザー助言活用シート 児童生徒氏名 担当氏名 関連する年間目標 学習内容 問題に感じていること 行っている方法や手立て 専門家からの助言 助言を受けて 修正した方法や手立て 児童 生徒の様子や変容 教師の変容 担当教師には 活用シートの記入の流れを説明し 1 年間の指導 支援の充実に向けた取り組みについて見通 しが持てるようにした スーパーバイザー助言活用シート 児童生徒氏名 関連する年間目標 学習内容 1 2 担当氏名 問題に感じていること 行っている方法や手立て 専門家からの助言 助言を受けて 修正した方法や手立て 児童 生徒の様子や変容 3 4 5 6 7 8 教師の変容 9 1: 担当の児童 生徒の現在 指導上問題に感じている事を 3に記載し それに関する年間指導計画や学習内容 手立てを 個別の指導計画 より抜き出し 1 2 4 に記載する 2: 研修担当者と記載内容の検討 3: シートは 連絡調整役を通じて専門家に渡す 4: スーパーバイザー来校による授業参観 助言 担当者が内容聞き取り

5: スーパーバイザーからの助言を 5にまとめる 6: 受けた助言を整理し 6を記入する 7: 助言の際のビデオなどを参考にしながら 指導改善に向けて検討を行い 7に記載する 8: 実践の中で 指導改善を行ったことによる児童 生徒の変容を 8に記載する また この一連のやりとりの中で 教師自身に起こった変化について 9に記載する 9: シートの 助言をどう整理したか ( 6) 教師の変容 ( 9) に記載した事項を整理し 教師としての専門性の高まりにつながったかを見つめなおす 10: 完成したシートをもとに研修担当者は研究の成果と課題をまとめる 4 研究のまとめ (1) 成果スーパーバイザーの助言を活用した指導 支援により 児童 生徒の変容した姿を紹介する 高等部生徒 Aは 感覚運動の高次化では Ⅰ 層 ( 初期感覚の世界 ) ステージ Ⅱ( 感覚運動 ) の段階の実態であると考えらえた 処理系 知恵自己像情緒 視覚運動協応 聴覚運動協応 基礎視知覚 視覚入力系細部全体視知覚視知覚 感覚入力系 基礎聴知覚 聴覚入力系細部全体聴知覚聴知覚 手先の運動 表出系 粗大運動協応 発語 Ⅰ: 感覚入力水準通過通過通過通過 第 Ⅰ 層 Ⅱ: 感覚運動水準通過通過通過通過通過通過通過通過通過通過通過 Ⅲ: 知覚運動水準 - - 通過 - 通過 - - - 通過通過通過 - - - 第 Ⅱ 層 Ⅳ: パターン知覚水準 - - - - - - - - - - - - - - Ⅴ: 対応知覚水準 - - - - - - - - - - - - - - 上の実態把握等から Aのねらいを設定しスーパーバイザーの助言を活用しながら学習を重ねた その結果 実践の終盤には教材を見て操作できるようになった そこに至るまでの過程は以下の通りである 問題に感じていたこと 提示された教材をちらっとしか見ない 見続けることが難しい 外部専門家からの助言 対象物に目が向けられるようにコントラストに留意してはどうか 机上に箱か円盤状のシートを置くことで空間に枠ができるので目が向きやすいのではないか 教室の隅を使うなどの目が使いやすい学習環境を検討してはどうか

助言を受けて修正した方法や手立て 対象物に目が向けられるように机上に円盤状のシートを置いてその中に課題を置いた A の周りに黒い衝立を設置した 自分に近づいてくる教材 ( 歩く犬 ) を使う 生徒の変容 学習の始点と終点が円盤の中にあることで視線のぶれが少なくなった 教材に目を向けることが増えた 2 つの教材を見比べて輪抜きができるようになった 授業場面以外では CD プレーヤーの小さなスイッチを見て押して音楽が流せるようになる変容も見られた (2) 課題本研究は スーパーバイザーの助言を活用した研究であったが エキスパート教員など校内の専門性のある教師が果たした役割も大きかったと考えられる 一人一人の子どもに応じた指導 支援の充実を図るには スーパーバイザーの活用とともに 校内の人材も大切であるとわかった 校内において専門性のある教師を計画的に育成することが今後の課題である 5 おわりに本研究は 感覚と運動の高次化理論を活用し 一人一人の子どもに応じた指導 支援が充実することを目的にした研究であった スーバーバイザーの助言を受けて 一人一人の子どもに応じた指導 支援が充実し その結果 児童 生徒の変容がみられた このような機会を与えてくださった鳥取県教育センター そして 2 回にわたり本校で助言をしてくださった池畑美恵子先生には心から感謝を申し上げたい 6 引用 参考文献 (1) 高橋浩 (2015) 感覚と運動の高次化理論研修会案内.http://www2t.biglobe.ne.jp/~doremi/k20150517.pdf ( アクセス日 : 平成 29 年 1 月 9 日 ) (2) 宇佐川浩 (2007) 障害児の発達臨床 Ⅰ 感覚と運動の高次化からみた子ども理解. 学苑社. (3) 諫早特別支援学校 (2008) 外部専門家活用研修事業. 諫早特別支援学校ホームページ, http://www2.news.ed.jp/shared/uploads/2016/03/1459382476.pdf ( アクセス日 : 平成 28 年 9 月 29 日 )